the GazettE、14年ぶりのクリスマス
公演で見せた熱狂と歓喜

LIVE 2023-HERESY LIMITED- A HYMN OF THE CRUCIFIXION ver.2

2023.12.25(月)パシフィコ横浜 国立大ホール
鮮やかな光を点滅させるモミの木。街が完全にクリスマス色に染まる12月25日、the GazettEがパシフィコ横浜 国立大ホールで『LIVE 2023-HERESY LIMITED- A HYMN OF THE CRUCIFIXION ver.2』を開催した。ライブタイトルからも分かるように、バンドのファンクラブ限定ライブだ。
会場が暗転し、讃美歌「Silent Night」が広がるが、同時に流れるのは重低音。恐怖心も煽る不気味な音に困惑していると、今度はパイプオルガンの旋律が流れ始め、会場の天井や壁にはステンドグラスの装飾が映し出され、パシフィコ横浜は教会や聖堂へムードを一変させた。スモークが立ち込め、青い照明と赤いスポットライトが光を交差させるステージ。シルエット状に姿を浮かび上がらせながらメンバーが現れると、ファンは狂乱状態へと豹変していった。
RUKI(Vo)
その狂乱ぶりを鎮めるように、麗(Gt)のアルペジオフレーズと共にthe GazettEの聖なる夜は「DIM SCENE」で始まった。重々しく、そして悲壮感も漂うその曲に、どっぷりと浸かり、the GazettEが放つ異端の世界観に酔いしれるファン。そして曲が転調したときだ。それまで薄暗いライトの中にいたメンバーが、激しく点滅するライトを浴び、全貌が露わになった。the GazettEの5人はこの夜、純白のスーツ姿。バンドや曲のイメージとは真逆の5人に、ファンは身もだえながら、熱を高めていくばかりだ。
それをさらに加速させるがごとく、the GazettEは攻めのモードに入っていく。炎もゆらめくステージでヘヴィネスに決める「DOGMA」、RUKI(Vo)が煽りも喰らわせながらラウドもメタリックも炸裂させる「NINTH ODD SMELL」など容赦なし。フロントに立つ麗も葵(Gt)もREITA(Ba)も全身全霊で豪快な音やプレイを決めまくる。戒(Ds)は魅せるスティックワークもしながら、しかし、すさまじい音圧でリズムを刻み続ける。会場に集ったのは熱狂的なファンばかりゆえ、全てを捧げるかのようにthe GazettEとひとつになっていった。
麗(Gt)
「YOKOHAMA!! メリークリスマス! よくこんな12月25日という日に、時間を空けて来てくださいましたね。2023年も今日で俺らのライブ、ラストになります。今夜は忘年会ということで、ド派手にかましたいと思います。いいか! やれるのか! 気合い入れて掛かって来い!!」――RUKI
結成から約20年、ライブで培った圧倒的な実力も発揮しながら次々にブッ放すバンドサウンド。それに刺激されながらヘドバンを繰り返すファン。そうしたエネルギーのやり取りを繰り返しながら、ライブの全ての瞬間は業火となり、心も身体も激しく突き動かすthe GazettEの5人と5,000人のファン。すさまじき一体感の中心軸には、相思相愛の愛情が存在し続けている。
一気に攻めるライブだが、そのムードが変わったのは中盤。アコギによるアルペジオも印象的な「WITHOUT A TRACE」、続いてインディーズ時代のラストシングル曲の「reila」を披露。優しい旋律もあるメロディを心を込めて歌い上げるRUKIの姿も歌声も印象的だ。目の前にいるファンの一人ひとりを、そっと抱きしめているようにも見えた。
葵(Gt)
そこから続くのは、この20年間でthe GazettEが生んできた楽曲たち。キャリアに裏打ちされた安定感あるプレイとボーカルで、様々なアプローチを発揮する。曲ごとに違うバンドになったと錯覚させるほどの幅広さでもある。そんな多彩さもthe GazettEの魅力だ。
「何年ぶり? 14年ぶりにクリスマスにライブをやってみました。今年はツアーも廻ってきたんだけど、最後に一発、ライブやりたいなと思って今日を選びました。数カ月前に武道館だったじゃん。そこで初めて声出しを解禁したんです。歌モノをやった後に、シーンとするじゃないですか? 開口一番、誰が最初に言うかって。いたね、やっぱ勇気ある人が(笑)。当たり前だったのが当たり前じゃないような。逆にプレゼントもらっちゃった感じがします。そしてクリスマスということでいろんな曲が混じってますが、ついてこれますか? 俺らも、20年以上やってますけど、いつぶりだってぐらいの曲もやってたりして。心臓がそのへんにコロコロ転がっていったんですよ。やっと今、胸に戻ってきたんで、さらに暴れていきたいと思います。やれるか、YOKOAMA!!」――RUKI
REITA(Ba)
ライブはここから再び爆獣モードへ突入。忘年会というより暴年会。いわば無礼講。派手で過激なライティングの中、メンバーは表情をギラつかせ、自らも覚醒させながら楽曲をたたみ掛けていく。さっきは心臓がコロコロ転がり出るほど自分たちも緊張してこのライブに臨んだという。だがプレイするのは、曲を生んだ時期こそ違うものの、どれもライブのキラーチューン。それに5人の目の前には愛すべきファンたちがいる。でかいホール会場ながら、ファンとはゼロ距離でライブするthe GazettE。「サイコー!」と、エンディングで歓喜するRUKIだった。
集まったファンに贈るラブソング「Cassis」で幕を開けたアンコール。そこでは改めて、みんなに向けて語るRUKI。
「この時間を共有できていることに感謝。メリークリスマス。みんなのおかげで走り切れた2023年だったと思います。ついてきてくれて、本当、ありがとう。2024年にまた新しいものを生み出して、進化したthe GazettEを届けたいと思っています。期待して待っていてください。コロナという長いトンネルを抜けても、まだ一緒にいてくれるみんなが誇らしくて、カッコ良くて、自慢に思います。そんなファンがいるからこそ、the GazettEというものは唯一の存在でありたい。いつまでも異端な存在であり続けたい、と俺は思います。いつでも人生最後の作品になってもいいと思うぐらいの気持ちで、後悔ないよう命がけで、取り組んでいきたいと思います。命を捧げるつもりで、ここに立っています」――RUKI
戒(Ds)
また、ファンを自分たちできっちりと幸せにしたい、とも言葉にしたRUKI。強い愛で鳴らし、そして歌うthe GazettEの5人。絶対的な信頼感を抱きながら、曲やthe GazettEに食らいついていくファン。2度目のアンコール「LAST SONG」までやり切ったとき、客席にもステージ上にも広がるのは、幸せに輝かせた表情のみ。けがれのない、まさに聖なる一夜となった。

取材・文=長谷川幸信
撮影=田辺 佳子、上溝恭香

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