若村麻由美、岡本圭人、岡本健一が出
演する、『La Mere 母』『Le Fils 息
子』の同時上演が決定

2024年4月~6月、東京ほかにて(地方公演あり)『La Mere 母』『Le Fils 息子』を同時上演することが決定した。
『La Mère 母』は、劇作家フロリアン・ゼレールが『Le Père 父』、『Le Fils 息子』の執筆に先立って、彼が31歳の時に3部作の最初に書いた作品。2010年に本国パリで初演され、その後、さまざまな国での上演を経て、最近ではフランスが誇る名女優イザベル・ユペールの主演でブロードウェイでも上演されて大きな話題となった。
『Le Fils 息子』は、フランス演劇界で最高の栄誉とされるモリエール賞を受賞するなど高い評価を受け、ロンドンのウエストエンドなど世界13か国以上で上演された。22年にはハリウッドでゼレール自身の監督によりヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーンの出演で映画化、23年に日本でも公開された。
演出は、緻密に人間の本質を描き出す演出力に定評のあるラディスラス・ショラー。フランスオリジナル版も手掛け、19年に上演された『Le Père 父』、21年の『Le Fils 息子』で演出を務めたショラーは、家庭内で起こるメンタルな病の諸相に新たな視点で迫り、話題に。シビアな現実を描きながらも、洗練されたスタイリッシュなステージを創造するショラーが日本人の実力派キャスト・スタッフとタッグを組んで、どのように表現するのか。
『La Mère 母』
演出家ラディスラス・ショラーからのラブ・コールを受けて、『La Mère 母』では若村麻由美がタイトル・ロールの母を演じる。『Le Père 父』『Le Fils 息子』『La Mère 母』3作品にアンヌ役で出演。『Le Père 父』ではこのアンヌ役で第27回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。主演舞台となる本作で、生粋の舞台女優・若村は全く違う2つの役をどう演じ分け、魅せてくれるのか。
息子ニコラ役は、アイドルとして活躍後、アメリカの名門演劇学校での武者修行を経て『Le Fils 息子』で初舞台を踏んだ岡本圭人。一流の演出家たちとタッグを組んでの数々の大作舞台、映像作品への出演経験を重ねて、着実に舞台俳優としての力をつけてきた。
父ピエール役には、第26回読売演劇大賞最優秀男優賞、第45回菊田一夫演劇賞、第55回紀伊國屋演劇賞など数々の演劇賞を総なめにし、舞台俳優として高い実力をもつ岡本健一。昨年は30年間活動を休止していた男闘呼組を再結成し、全国21都市でツアーを実施。俳優としての円熟期を迎えた彼が演劇というホームグラウンドで見せる姿に期待したい。
そしてピエールの再婚相手ソフィア役とニコラの恋人エロディ役に伊勢佳世、『Le Fils 息子』では医師役に浜田信也、看護師役に木山廉彬が出演する。
『Le Fils 息子』
なお、本公演では、実力派キャストが結集して、2つの劇場で2作品を同時に競演する。
【Story】『La Mère(ラ・メール) 母』
アンヌはこれまで自分のすべてを捧げて愛する子どもたちのため、夫のためにと家庭を第一に考えて生きてきた。それはアンヌにとってかけがえのない悦びで至福の時間であった。そして年月が過ぎ、子どもたちは成長して彼女のもとから巣立っていってしまった。息子も娘も、そして今度は夫までも去ろうとしている。家庭という小さな世界の中で、四方八方から逃げ惑う彼女はそこには自分ひとりしかいないことに気づく。母は悪夢の中で幸せだった日々を思い出して心の万華鏡を回し続ける。
【Story】『Le Fils(ル・フィス) 息子』
両親の離婚後、学校にも登校せず一日中独り行くあてもなく過ごしていたニコラは、とうとう学校を退学になってしまう。そんなニコラの様子を聞いた父親ピエールは、離婚・再婚後、初めて息子と正面から向き合おうとする。生活環境を変えることが、唯一自分を救う方法だと思えたニコラは、父親と再婚相手、そして年の離れた小さな弟と一緒に暮らしはじめるのだが、そこでも自分の居場所を見つけられずにいた。

[演出]ラディスラス・ショラー コメント
私が東京芸術劇場で演出するのは今回で3度目になります。ですが、フランスで初演していない作品を日本語で日本人の俳優で演出するのは初めてです。
実はフロリアン・ゼレールが『La Mère 母』を書いたとき、私はまだ彼のことをよく知りませんでした。彼が私を信頼し、フランスでの演出を任せてくれるようになったのは『Le Père 父』からです。
『La Mère 母』は、私には珍しく両親と共にパリの劇場で鑑賞した作品です。両親と一緒に週末を過ごす前に、芝居を見に行ったのでした。観劇の後、いつまでも芝居の話をし続けたことが長い間心に残っていました。
フロリアン・ゼレールの戯曲はシンプルな言葉で観客の心に語りかけます。この3部作(『La Mère 母』『Le Père 父』『Le Fils 息子』)は、悩み苦しむ家族の心を扱っています。
3作それぞれで起こる出来事(『Le Père 父』の消えていく記憶、『Le Fils 息子』の両親の問題で高校に行かなくなる息子、『La Mère 母』の親元を離れる年頃になった子供の旅立ち)が、家族という小さな世界を危うくし、安全と思えた家族を泡のように破裂させようとします。
フロリアン・ゼレールの主人公は幸運な人々です。社会的に成功した層に属すると言ってもいいでしょう。何の苦労もなく楽園に住んでいる人々ですが、ゼレールは彼らの人生が地獄に変わろうとする瞬間を捉えます。
物語が進むにつれて、相手を理解する力も、状況を打開する力もないことが分かってくる主人公とは、何と悲劇的でしょうか。
私は9月22日に父を亡くしました。アルツハイマー病でした。父の傍らで、私は『Le Père 父』のことをよく考えていました。記憶が消えていくと同時に人生のすべての思い出が消えてしまう、この恐ろしい瞬間を、フロリアン・ゼレールは何と見事に捉えていたのだろうと理解したのです。
私はこの3部作の舞台を美術的に似せることにしました。3部作が互いにリンクしているという考えが気に入っているからです。
『Le Père 父』と『Le Fils 息子』に出演してくださり、今回『La Mère 母』でも演出することになる若村麻由美さんに再会できること、また、『Le Fils 息子』で岡本圭人さん、岡本健一さんと一緒に舞台を創れることを心から楽しみにしています。
そして、長く、実り豊かなお付き合いとなったプロデューサー、アーティスト、技術スタッフの皆さんと再会できることを嬉しく思います。
私を感動させてやまないこの3部作を、東京で完成させることをとても幸せに思います。
キャストコメント
■岡本圭人
『Le Fils 息子』初演時に、観に来ていた友人の言葉が、今でも耳に残っています。
「この舞台を上演してくれてありがとう。本当に観られてよかった。救われたよ」
この言葉を聞いたとき、途端に涙が流れました。今までの人生が報われたような気がしました。そして新たに、役者としての自覚が芽生え、舞台に来てくださる皆様に「何か」を感じていただけるために、「今後の人生を歩み続けよう」と切に思いました。
『Le Fils 息子』の再演、そして新たに『La Mère 母』の同時上演が決まったと聞いたとき、心から喜びを感じました。ですが今は、役者としての使命感に駆られています。
一人でも多くの方々を救えるように、信頼するキャスト・スタッフの皆様と共に、稽古を重ね、フロリアン・ゼレールの2作品を皆様に届けられる日を心待ちにしています。
■若村麻由美
尊敬し信頼するラディスラス・ショラー氏の演出で、世界が注目する劇作家フロリアン・ゼレール氏の家族三部作、全作品に出演させていただくこととなり光栄です。三作品に共通するのは、夫婦とは、親子とは、家族とは。そして人間の永遠のテーマである、生・老・病・死、そして愛と喪失。
三部作は連作ではなく異なる家族の話のようですが、私は『Le Père父』(2019)では娘アンヌ、『Le Fils 息子』(2021,2024)、『La Mère 母』(2024)では妻であり母であるアンヌです。今回のような2作品同時上演では、同じアンヌという名前には、娘、妻、母、女、人間を象徴していて、それは観客のアナタであると感じさせてくれます。作品同士の出来事や同じ台詞がミステリーの面白さを倍増してくれます。
今回日本初演の『La Mère 母』のように子離れをする難しさは万国共通なのかもしれません。日本にも「空の巣症候群」という言葉があるのを初めて知りました。自分の居場所とは。生きる甲斐とは。稽古を前に、再会するメンバーと新たな扉を開けるトキメキでいっぱいです。
■岡本健一
『Le Fils 息子』が再演されます。
2021年に台本を初めて読んだ時に感じた、とてつもない苦しみと、どうすることも出来ない哀しみが、信頼する演出家、役者、スタッフと稽古を重ねることによって日に日に具現化されていき、劇場では物語に引き込まれ、演じているのか何なのかわからなくなり、ただ存在した事実だけが残っていたことを思い出します。あのような辛い思いは、もう「体験したくない」というのが正直な気持ちでした。
けれども、この親子の物語をより多くの方々に観劇して貰うことが、どれだけ大切なのかも実感しています。
同時に上演する新作『La Mère 母』が描く世界には、愛の始まりから長い年月を経て、いつの間にか愛情があふれ出して、あらゆる方向に流れ、その思いをどのように受け入れて、消えゆく時間をどのように過ごしたら良いのか、限りない愛の行方を彷徨い、どこまでも巡らせてしまう作品です。
これからの稽古で、予想もつかない感情が生まれることを楽しみにしています。
この特別な二作品は、観た方の感情を揺さぶる、とてつもなく凄い作品になることを確信していますので、是非、劇場で観て感じて欲しいと心から願っています。
劇場でお待ちしています。

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