Sou、多彩な表現力で「やりたい曲」
を存分に披露したZepp Haneda公演を
レポート

Sou LIVE 2024「inside」

2024.1.19 Zepp Haneda
心の中=insideで、ずっとSouが大切に愛してきた歌たち。それらに今だからこそのあらたな息吹を与えていくことで、この夜の彼はボーカリストとしてのアイデンティティを再獲得したことになるのかもしれない。
『Sou LIVE 2024「inside」』と題され、東京・Zepp Hanedaで開催されたライブは、オープニングで「人マニア」と「新興宗教」が連打されるところから始まり、それ以降の流れにもいわゆるボカロ曲たちがふんだんに詰め込まれていた。
Sou LIVE 2024「inside」
Sou LIVE 2024「inside」
「今回のライブには「inside」っていうタイトルをつけました。僕はみなさんもご存知のとおり、ボカロとかが好きで“歌ってみた”をいろいろ勝手に投稿させてきてもらってます。そして、有名な曲や流行ってる曲だけじゃなく、個人的に「この曲やべー!」みたいなのもけっこう歌ったりしてるんですよね。こういう曲もあるんだよっていうことが、僕きっかけで皆の中で広まったりしたら熱いんじゃないかみたいな、そういう想いを持ちながら活動してるんです。ただ、ライブってなるとさ。特にアルバムを出したあとのライブだと、どうしてもアルバム曲を中心としたセットリストになるので、そういう意味でも、前から「もっとやりたいことがあるんだけどな」っていう気持ちもありました。今回は10周年の節目で去年やった『Sou LIVE 2023「Orbit」』の時以上に、もっと「やりたい曲、やったれ!」という選曲をさせてもらってます。ということで、次も攻めましたよ」(Sou)
Sou LIVE 2024「inside」
といった言葉のあとに続けられたのは、2017年にCapsLackが発表した「囮と致死毒」という楽曲。音の面でも詞の面でも中毒性の強いこの歌を、Souはまさに2017年当時に動画投稿している。曲の持っているトリッキーかつディープな要素をSouが歌っていくことで生まれる“聴きやすさ”には特筆すべきところがあり、それはたとえるなら毒薬錠を糖衣化させるようなアプローチにも似ていた。さらに、この夜のライブで聴けたSouのボーカリゼイションは、当時とはまた違った表現力をたたえていたことは言うまでもない。
Sou LIVE 2024「inside」
2013年よりweb上での動画投稿を中心とした活動を開始したのち、2015年にはアルバム『水奏レグルス』でメジャーデビューを果たしたSouは、ここまで着実にソロシンガーとしてのキャリアを積んできたことになるわけで、その成果は今回のライブでもおおいに反映されていた。だが、そんなSouには弱点も実はあったりする。
「僕は人前で何かやるのがほんとに苦手なんです。今日もヤバいくらい裏では緊張していて。でもやっぱり、みんなが「ライブやって欲しい!」って言ってくれたり、こうして駆けつけてきてくれるので、いつも逆に僕がみんなから元気をもらっているような気がします。僕の方がみんなのことを楽しませたり、みんなに対して「頑張れよ!」っていう気持ちを伝えなきゃいけないのはもちろんわかってるし、そうしようと思ってやってはいるけど……みんなと直接会った時に元気をもらってるのは僕の方なんで、本当にありがとうございます! これからも不器用に頑張っていくので、よかったらこれからも僕のことを応援してあげてください。よろしくお願いします!」(Sou)

Sou LIVE 2024「inside」

この飾らないスタンス、妙に浮かれたりはせず、いつも真っ直ぐに音楽や観客と向き合おうとするSouの心持ちは、そのまま彼の歌に誠実さとしてこの日も色濃く織り込まれていたように思う。ラップをまじえた「CH4NGE」でもチャラくはならず、病み要素を含む「妄想感傷代償連盟」にもさりげなく甘さと透明感をアドオン出来る彼のボーカリストとしての能力は、やはり彼の生真面目なメンタリティに根ざしている可能性が高そうだ。
Sou LIVE 2024「inside」
「次はね、僕がどうしても歌いたかった曲なんです。聴いてください」(Sou)
それぞれに思い入れのあるボカロ曲を、次々とこの場で生バンドスタイルのオケにより披露していったなか、Souがアンコールにおいてこう告げてから歌い出したのは「炉心融解」。2008年12月にiroha(sasaki)によって投稿されたこの曲は、なんでもSouにとって「初めて聴いたボカロ曲」であったのだという。

Sou LIVE 2024「inside」

そうした背景を前提にすると、今回Souが“心の中=insideで、ずっと大切に愛してきた歌たち”にフォーカスしてワンマンライブを行ったことの意味と意義は相当に大きい。自身がたどってきた音楽的な歩みを今一度こうして確かめることで、きっと彼はボーカリストとしてのアイデンティティを再獲得したものと確信する。アンコールの最後で、Souがオリジナル曲の「バブル」と「ノイド」を続けて歌ったのは、きっとそのことを示すためもあったのではなかろうか。
Sou LIVE 2024「inside」
なお、Souはこの羽田公演後に行われた『Sou LIVE 2024 「inside」』大阪公演ののち、ボカロP・Neruが書き下ろした新曲「世界を射抜いて」が、2024年放送のTVアニメ『THE NEW GATE』のOPテーマに決定したことを発表した。
心の中=insideでは古きをこよなく愛しながらも、たゆまず新しきを目指すSouの未来に光あれ。

文=杉江由紀
撮影=川﨑龍弥(isai Inc.)

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