高城れに×三浦直之インタビュー~舞
台『最高の家出』は「遊園地みたいな
作品だな、と思ってもらいたい」

2024年2月4日(日)~24日(土)、パルコ・プロデュース 2024『最高の家出』が東京・紀伊國屋ホールにて上演される(その後、高知・大阪・香川・宮城・北九州を巡演)。
作・演出は、自らが主宰する劇団「ロロ」をはじめ、ドラマ、映画等の脚本や外部作品の演出を手掛けるなど幅広く活躍する三浦直之。
主演を務めるのは、ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)のメンバーで、今回、単独での舞台初出演となる高城れに
三浦の書き下ろし最新作はどのような舞台になるのか、そしてそれに挑む高城はどのような心境なのか、2人に話を聞いた。
高城さんを見ていると周りも幸福感に包まれていく(三浦)
ーー高城さんはロロの公演をご覧になったそうですが、見た感想を教えてください。
高城:ファンタジーなんですけど、リアルもあって、すごく不思議な気持ちになったというのが率直な感想です。面白い部分もあれば考えさせられる部分もあり、私はこう感じ取っているけど、他の人はどうなんだろう、と思いました。ひとつの物語として楽しみながら、自分の価値観というものも改めて考えさせられるような舞台でした。きっと1度見るだけではなくて何回か重ねて見ることで、自分の中に眠っていた感情だったり、人を思いやる心だったり、いろんな発見があるんじゃないかなと思いました。
ーー三浦さんにお会いになった印象はいかがでしたか。
高城:お会いする前に先に舞台で作品を拝見したので、実際にお会いしたときにいい意味ですごくギャップがありました。舞台の演出家さんというとちょっと怖いイメージがあったのですが、三浦さんは初対面なのに初めてではないような感じですごく話しやすくて、お互いにお仕事の話からプライベートな話まで、なんの気負いもなく、気取ることもなく、素のままでお話しができたな、というのが最初の印象でした。
ーー三浦さんは高城さんにどのような印象をお持ちでしたか。
三浦:大学時代に友達と集まって「Chai Maxx」の動画を見ながら振り付けをずっと練習していた、というのがももクロに関する最初の記憶です(笑)。高城さんが笑っていたり楽しそうにしてる姿を見ていると、周りも幸福感に包まれていくような印象があります。今回の物語は、自分のそれまでの生活というものに疑問を持って家出をした主人公が、最終的にどんなふうに笑えるか、というようなことを想像しながら作っていて、高城さんならラストにふさわしいめちゃめちゃハッピーな笑顔を舞台上で見せてくれるんじゃないかな、と今からすごく楽しみにしています。
三浦直之
自分と向き合いながら箒という役を作っていきたい(高城)
ーー今作は家出をモチーフに書かれていますが、演劇愛も非常に感じられる内容だと思いました。
三浦:主人公の箒が家出した先に劇場があって、そこで演劇をやることになるんですけど、「箒が家出した先でどんなものと出会うといいかな」と思ったときに、「現実から家出して虚構にたどり着く」という物語を書こう、というのが最初に思ったことでした。現実の生活に疲れて逃げ出した先で、物語に出会ったことによって箒自身が変化して、またどこかに帰っていくという物語を作りたい、と考えたんです。あと、パルコ・プロデュースでオリジナル作品をやらせてもらうのは初めてなので、これまで自分が作ってきた演劇への思いとかも一緒に乗せられたな、と思って演劇の物語にしました。
ーー高城さんは台本を読んで、どんな感想を持ちましたか。
高城:すごく面白い作品だと思いました。箒ちゃん自身が私とは真逆なところもあるんですが、その反面私が幼少期に抱いていたような気持ちが盛り込まれている台本だったので、「三浦さんはなんで私のことを知ってるんだろう」と思ってしまったくらいでした(笑)。今作の内容はちょっとファンタジー的なところもあるので、現実ではありえないようなことも起きるんですが、でも違和感なくスッとその世界観に入り込める内容で、使われているワードも身近なものばかりなので、演じる私もそうですが、観客の皆さんにとってもこの作品は身近に感じられる存在になるんじゃないかな、と今からすごくワクワクしています。
ーー高城さんが箒を演じるにあたり、三浦さんはどういったことに期待していますか。
三浦:箒はずっと自分の居場所を探していて、基本的には内気な女性だと思うんです。逃げ出してたどり着いた先が劇場で、そこがひとつの居場所になったり、そこで役を演じることで自分の居場所を作ったり、というふうにいろんな居場所を探していくんですけど、そのときに内気なところが気弱な感じに見えすぎちゃうともったいないなと思っています。内気なんだけどちゃんと自分の芯は持っているし、強さもちゃんとあるという、そのバランスを高城さんなら両立させてくれるんじゃないかなと思っていて、強さと優しさと弱さと明るさと、そういうものを全部一緒に持っている箒になるんじゃないかな、というふうに思います。
ーー高城さんは、箒という役をどのように立ち上げていきたいと考えていますか。
高城:三浦さんがおっしゃったように、箒ちゃんの芯の強さというものは台本からすごく感じました。弱気なんだけど意志があって、家出するぐらいだから行動力もあって、居場所を求めて自分から変わろうとしている強さを持っている箒ちゃんにどういうふうに寄り添えばいいのか考えながら、自分ともう1回向き合いながらこの役を作っていきたいです。

高城れに

節目を迎えたからこそ表現できることもある(高城)
ーー2023年はももクロ結成15周年、そして6月には30歳の誕生日を迎えてソロコンサート『30祭』を開催、と高城さんにとってメモリアルイヤーでした。そんな1年を過ごしたうえで迎える今作、どのような意気込みでしょうか。
高城:箒ちゃんという役を今の私に演じられるかと言ったら、今はまだそんな自信を持って「できる!」とは言えないですけど、これまでいろいろな経験を積んだ今の自分だからこそ、理解できることや表現できることもあるな、と思っているので、15周年だったり自分の30歳だったり、そうした節目を迎えてから演じる今作は、自分の中でもひと皮むけて自信につながるようないいきっかけになるんじゃないかな、なったらいいな、と思いますし、そうなるように頑張りたいと思います。ももクロの一員としてではなく「高城れに」として、舞台でゼロの状態から演劇に飛び込んでみたい、というのがずっと夢だったんですよ。なので今回は記念すべきというか、私にとって人生の中で宝物のような経験になるんじゃないかなと思います。
ーー三浦さんははじめてのパルコ・プロデュース公演ということで、どのような思いを抱いていますか。
三浦:お話しをいただいたとき、めちゃめちゃテンションがあがりましたね。演劇をやっている人間にとってパルコ・プロデュースって目指す目標のひとつだと思いますし、オリジナルの作品で、と言ってもらえたのもすごく嬉しかったです。パルコ・プロデュースでオリジナルの作品をやることになったとき、ちゃんとエンターテインメントをやり切りたい、という思いで臨もうと思いました。ちゃんと楽しいというか、ずっと楽しいというか、シンプルに「ああ、楽しかった」と思えることも大事にしたいなと思っています。
ーー高城さんにとって演劇の舞台を経験することは、アイドル活動にどのような影響があると感じていますか。
高城:演劇とアイドルって、やっていること自体は全く別ですけど、何かを伝える、表現するという部分では、同じなんじゃないかなと思っています。グループで初めて演劇をやらせていただいたあとに「すごく歌の表現がよくなったね」とか「表情がよくなったね」とダンスの先生に言っていただいたことがあったんです。やっぱり演劇とかいろんなことからアイドル活動に繋がることはたくさんあるんだな、とそのとき改めて思いました。
「ちょっと家出しよう」という気持ちで見に来てほしい(三浦)
ーー三浦さんは今回、高城さんはじめ出演者の皆さんにはどういったことを求めていくのでしょうか。
三浦:箒は家出した先でいろんな人たちに振り回されるというキャラクターなので、高城さんに関わってくる俳優たちには思いっきり高城さんを振り回してほしいし、高城さんはそれにどんどん振り回されていってほしくて、その振り回される姿がキュートだったりコミカルに見えるといいなと思っています。
ーー三浦さんが俳優に求めるものというのは、作品によって違ってくるものなのでしょうか。
三浦:キャラクターを演じるというより、どういうふうに関係を結んでいくか、みたいなことにすごく興味があるんです。例えば家族の前で振舞っている自分と、友人の前で振舞っている自分と、恋人の前で振舞っている自分と、ってそれぞれ違うと思うんですよ。箒はいろんな人たちと出会うから、出会った人たちそれぞれとどんなふうに関係を結んでいくのか、そして箒を取り巻く登場人物たちがどういう関係を結んでいってくれるのかをすごく楽しみにしています。
ーー高城さんは今回演じる上で、何か意識したいと思っていることはありますか。
高城:やっぱりまずは箒ちゃんをいかに自分のものにできるか、自分が箒ちゃんになれるか、というのをすごく意識しています。稽古場で皆さんと読み合わせをしたら、きっと箒ちゃんに対する印象だったり、自分の中で動く感情というのも、ひとりで読んでいたときとは違ってくるだろうし、そこが今からすごく楽しみです。初めましての方ばかりなので、そこから広がるご縁も楽しみにしています。

高城れに

ーー最後にお客様へのメッセージをお願いします。
高城:今作は、いろんな方々が共感したり、いろんな角度から考えさせられるような内容になっています。自分の居場所ってどこなんだろうとか、本当の自分って何なんだろうと思うことは今までもたくさんありましたし、きっとこれからも環境や出会う人によって葛藤することはあると思います。そんなときにふと思い出してもらえるような作品になるんじゃないかなと思いますので、1回と言わず何回でも見て楽しんで、そうやって重ねるごとに新たな発見があったりして、自分にとっても、見てくれる方々にとっても「遊園地みたいな作品だな」と思ってもらえたらいいなと思います。
三浦:今、高城さんが言ってくれた「遊園地」っていうのはすごくいい言葉ですね。僕もそこを目指したいなと思いました。演劇に限らず映画だったりライブだったり、エンターテインメントの場に足を運ぶというのは、僕は「なんかそれってすごく短い家出みたいだな」という気分でいつも出かけるんですよね。今自分がいる場所からちょっと離れた非日常的な場所で演劇とか映画とかライブを見たり聞いたりして非日常の時間を味わって、それで家に帰って「よし、また明日から頑張ろう」と思えるので、ぜひ今作を見に来る人たちも「ちょっと家出しよう」という気持ちで来て、見て、そして帰って行ってほしいな、と思います。
取材・文=久田絢子

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