一度聴くと忘れられない、2024年大注
目のバンド・からあげ弁当に迫るーー
フルアルバム『I am hungry』リリー
ス全員インタビュー

関西で結成されたバンド・からあげ弁当が、昨年12月6日(水)に、老舗インディーズレーベル・UK.PROJECTから1st フルアルバム『I am hungry』​をリリースした。コロナ渦に出会い、2021年末の結成から2年でフルアルバムのリリースというスピード感もさることながら、周りを巻き込んでシーンを駆け上っていく様が痛快で、2024年は目が離せないバンドである。一度聴くと頭から離れないグッドメロディーと爆発力のあるステージング。それでいて野外や大きなホールが似合うようなスケール感もあり。「からあげ弁当」という親しみやすい名前からは想像もつかない音を鳴らし、着実に動員を伸ばしてきた。
バンドの鍵を握る、バンドのボーカル・ギターが焼きそば。これまた名前はさることながら、彼のもつカリスマ性というのか、なんとも牽引力のある人柄がバンドを引っ張り、そして同じ専門学校でそれぞれベースとドラムのグランプリを獲得するほどのスキルを持つ春貴(Ba)、こーたろー(Dr)と絶妙なバランスでスリーピースを形成している。今回SPICEでは、バンド結成の経緯から、フルアルバム『I am hungry』についてメンバー全員に話を訊いた。直前に控えた、東名阪を回るバンド初のツアー『満腹になれツアー』を経て、いかにバンドは成長していくのか、ぜひその躍進を見届けてほしい。

焼きそば(Vo.Gt)

周りを巻き込んでいく天性の人柄、スキル、そして遊び心
ーー先ずは、からあげ弁当の結成の経緯からお聞かせください。みんな同じ専門学校なんですよね?
焼きそば(Vo.Gt):そうです。ずっと野球をやっていたんですけど、高校を卒業してからは気持ちを切り替えて音楽をやろうと音楽の専門学校でギターボーカル専攻に入りました。音楽は好きで聴いてたけど、なんの技術もないし曲が作れるわけでもないから、入学してすぐの頃は友達もいなくてバンドを組むこともなく……。だけど周りで「今度バンド組んでライブすんねん!」みたいな話をしているのを聞いて「やばいなぁ」と焦って。でも、SNSだけは何かあった時のためにずっと動かしながら、その時を待ってて。それで、とにかくバンドをしたいと思って、からあげ弁当の前に「ゴールデンレトリバー」というバンドを、この3人ともうひとりギターの4人でやってました。それはすぐに解散したんですけど、もう1回2人を誘ってからあげ弁当を始めることに。
春貴(Ba):僕はベースがしたくて専門学校に入ったんで、バンドには最初あんまり興味がなくて。でもせっかくやし、バンドもしてみようかなと思っていたところでみんなに出会って、今に至る感じですね。まったくの初対面の時に、前身バンドのギターが僕が友達で、「あいつバンドやるらしいけど」って紹介されて。ゆーへー(焼きそば)の第一印象は、めっちゃ愉快なやつやなと。そのバンドがなくなってから連絡もらって、またバンドを組むという話を聞いて、楽しいし人をがっと連れていくのも上手いし、僕も引っ張って行ってほしいタイプやからふたつ返事でもう一回一緒に始めました。
こーたろー(Dr):僕はドラムを小学6年生からずっとやってて、極めたいなと思って専門学校に入りました。からあげ弁当に入る前には、2個ぐらいメタル系のバンドを組んでて。それで、ゆーへーからドラムが就職活動であんまりライブに出れないからと言われて、前に一緒にバンドを組んでたよしみでサポートで出たのがキッカケです。その時、卒業後に大学に行こうと決めてたので、単発のサポートならいいかと思って入ったんですけど、前任のドラムがその後も都合がつかなくなったのと、僕がサポートで入った時のライブに手応えを感じてくれたみたいで、ありがたいことに正式に誘ってもらって。大学に行くことも話してそれでもいいと言ってくれたから、バンドに対する想いがすごく強いところがいいなと思ってついて行こうと。リーダーシップというか、先頭に立つ人の気質があるんですよね、彼。

こーたろー(Dr)

ーー春貴くんとこーたろーくんは、それぞれ学校内のドラムとベースのグランプリを取られてるんですよね。
春貴:学校内の学年グランプリで、ベースとドラムのチャンピオンになりましたね。
ーー焼きそばくんは、そういうスキル面も踏まえて2人に声をかけて?
焼きそば:もちろん、技術面が上手いのも知ってたんですけど、というよりはこの2人となら楽しくバンドを一緒にできそうやなという気持ちが大きかったですね。最初はほんとノリというか、とにかくバンドを組んで早くライブがしたかったんです。
ーーふたりとも焼きそばくんのリーダーシップに惹かれたと言ってますが、そういう役回りは昔からですか?
焼きそば:そうっすね。でも「先頭に立とう!」という気持ちは別になくて。どちらかというと引っ張っていくのしんどいんで、本当はサブ役でやってたいんですけど、気づいたら体が勝手にノってくんですよね。地元で友達と遊ぶ時も、別に俺が仕切りたいわけじゃないけど、気づいたら俺が「次、どこいこか!」と言っちゃってるみたいな。
こーたろー:たまにクラスにいるじゃないですか、なぜか周りに人が集まって中心にいる人。何がそうさせているのかは、うまく言葉にできないんですけど、彼にはそういう気質というか魅力があると思います。
春貴:直感を信じて生きてる感じですよね。
春貴(Ba)
ーーその牽引力というか、すごい自信に溢れた感じに惹かれるのはわかる気がします。その自信の源ってどこからなのかなって。
焼きそば:アホならではの自信ですよ(笑)。なんの根拠もない! もちろん音楽を始める時も、10年間野球しかしてこなかったやつがいきなり「バンドマンになる!」と言い始めて、親もびっくりしてたんですけど、何を言われても「売れるから大丈夫!」と言い続けてました。そしたら親も「そうか、あんた売れるんか」と言うようになって(笑)。だから自分でも謎の自信なので、そこはあえて深掘らずにアホなまま生きていこうと決めてますね。
ーーちなみに、野球をしていて今に繋がってる部分もありますか?
焼きそば:野球の練習もなんですけど、昔から「やるぞ!」となったらとことんやるタイプで、そこは今も一緒かもしれないですね。例えば、ビリヤードを人生で初めて知った時、4日間ぐらい連チャンで友達とオールしてビリヤードしたんですよ。音楽を始めてからも同じで、ハマったらとことんやるところは昔からそうかもしれないですね。
ーー気が済むまでやると。
焼きそば:それで野球は10年続いて、ある日突然、ぱっと火が消えちゃって音楽を始めたんです。その時に、近すぎてもあかんなということを学んで。
ーー近い、というのは?
焼きそば:野球は週7でずっとやってたんです。外出もできへん寮生活で、窓を開けたら目の前にグラウンドがあって。集合がかかったらグラウンドで野球をする、みたいな生活を年中やってたんですね。そこまで日々、近い距離にあると、好きで始めたはずが嫌になってくるんですよ。だから今は、平日はバイトしたり友達とも遊んだりしながら音楽に打ち込めているので、いい距離感を保ててるかなと。いいメロディーに限って、バイト中に思いついたりするんですよね。これからもしかすると音楽漬けの日々が続くことになるかもしれないけど、そこは息抜きを見つけておくとか対策をとっておかないとなと思ってます。
ーーのちほどアルバムの話にもつながるのですが、多作というか曲を作るスピード感が早い方ですよね? それもとことんやる気質からなのか……。
焼きそば:どうなんすかね。遅くはないと思いますね。早い?
こーたろー:早いよ。作りこみすぎて、完結してからしか人に聴かせれない人もいるしね。そういう意味では、からあげ弁当はみんなが専門学校卒業してるから音楽のこともわかってるし技術もあるから、粗い弾き語りでゆーへーが持ってきても、ある程度その日のうちにカタチにできるので、そういう意味でも早い方だと思います。
春貴:ゆーへーの持ってきたデモの段階で、「ドラムはこんな感じで」と頭の中でニュアンスを作ってきてくれてるから、こっちも作りやすいところもあります。
焼きそば:学生の頃はガレージバンドで作れるじゃないですか。ああいうのを周りがやってて、俺も無理やり覚えて始めたんですね。ギターを携帯に繋げて、ライン録りしてみてみたいなことをいちいちしてたんですけど、どう考えてもコストが悪いなと。それやったら自分の中である程度弾き語りでまとめて、ドラムとベースの部分は口頭で二人に伝えるのが1番いいなと。結局ベースとドラムも俺の中でやっててもレパートリーがないから似てきちゃうんで、そこは二人に聞いて曲を作るのが1番早いなと。
こーたろー:アナログですよね。デジタルが弱いんで、結局みんなで集まって作った方が早くできる。
焼きそば:だから世の中のバンドマンになりたいみんなに言いたい。パソコン使えなくても大丈夫!
ーー説得力!(笑)。
焼きそば:めちゃくちゃ脅されたんですから、学生時代に。「パソコン使われへんかったら世の中に出れないよ?」「卒業したらどうするん?」って。
こーたろー:DTMの授業があったからね。デジタルの時代やから使えないとダメですよみたいな。そこをアナログでやってるから、逆行してる感じですね。
思わず歌いたくなる歌詞とメロディー、そしてライブの変化
焼きそば(Vo.Gt)
ーー焼きそばくんが作詞を担当していますが、曲と詞はどちらが先に浮かぶんですか?
焼きそば:メロディーが先の方が多いですかね。バイト中とか、思いついたら「トイレ行ってきます!」と携帯持ってボイスメモで残したり。それを家に帰ってギターコード起こして、そこから膨らませていきます。サビのメロディーと歌詞を大事にしてるんで、ポンと出てきたメロディーほどめっちゃいい曲になるんです。たまにボイスメモに残さなくても覚えてる時があって、そういうのはめちゃくちゃいい曲。音源になってないですけど、「青春に揺られて」とかそうだったんですよね。
春貴:初期中の初期やな。バンドを組んで、2曲目か3曲目ぐらいにできた曲で、作った時も気に入ってたもんな。
焼きそば:あれは、メモに残さんくてもずっと覚えててんなぁ。だから歌詞が先にくることはあんまりないかな。「次の歌でこういう歌詞を入れたいな」とメモは残してたりするけど。それを当てはめていく感じですね。
ーー曲を聴いていると、歌詞とメッセージ性がバチっとメロディにハマっているのが気持ちよくて。「今、これが歌いたい!伝えたい!」という言葉やメッセージも常に考えているのでしょうか。
焼きそば:メッセージ性ももちろん気にはするんすけど、そこまで考えてないですね。どちらかというと、自分が今まで聴いてきた好きな曲はメロディーがいい曲なんですよね。ずっと聴いてたONE OK ROCKとかも、英詞で意味がわからんくても歌えてたってことは、やっぱメロディーに惹かれてたということやから。だから、僕もメロディーを大事にしています。
ーー焼きそばくんから上がってきた曲に、ドラムとベースを入れて行く中で、曲についてどんな話をしますか?
こーたろー:「こういう曲を作りたい」という話はしないんですけど、何を伝えたいと思って書いた曲かは聞くようにしてますね。それによって、僕と春貴のアプローチも変わってくると思うので。
春貴:僕はメロディーを聴きながら、合わせてベースのフレーズを作っていくんですけど。たまに歌詞の方がメロディーより入ってくることがあるので、その時は歌詞の意味を聞いたり考えて、それに合わせてあえて力強く弾いたりと変えるようにしてます。
春貴(Ba)
ーーメロディーを大事にしながら、歌詞がしっかり届くようにドラムとベースを入れてると。ライブもそうなんですが、からあげ弁当の曲ってどれもメロディーが本当にすごくいいですよね。1回ライブで聞けば、帰りにはもう口ずさめて、家でも気づいたら鼻歌で歌ってる、みたいな。
焼きそば:めっちゃうれしい! ほんまにそこを大事にしています。凝って、凝って、凝って、こんなメロディーは誰も歌わんやろぐらいの唯一無二の曲を作ってるつもりなので、それが歌いたくなるぐらい、いいメロディーやと言ってもらえるのはすごく嬉しいです。
ーーバンド名が「からあげ弁当」というシンプルさで、名前も焼きそばに改名したり、バンド名やスタイルではなくて、あくまでも曲で勝負している感じが伝わってくるところもたくましくて信頼できますよね。
焼きそば:ほんまに、名前とかノリで何でもいいです(笑)。今はまだことの重大さに気づいてないもん。
こーたろー:これからずっと、「焼きそばです」と言い続けなあかんからね。
焼きそば:ラジオに出させてもらってスタッフさんに挨拶するときも、「ボーカルの焼きそばです」と紹介されてほんまにこれでええんかなと思ったり(笑)。
ーーバンド名は、どういう流れで決まったんですか? 「からあげ弁当」で満場一致で?
春貴:僕は特にこれがいいとか、なかったんですよね。その場のノリでよかったというか。
焼きそば​:逆に他に候補あった? こーたろーはバンド名決まってから入ってるけど、春貴はもし俺がなんでも良いって言ってたらどうしてた?
春貴:ほんまになんでもよくて。覚えてるかわからんけど、LINEを遡ると候補が2つ送られて来てて……。
焼きそば:「雨天決行」ちゃん?
春貴:違います! 最初、出してきた提案が「からあげ弁当」と「日替わり弁当」で弁当は絶対ゆずらんくて。そしたら僕とギターが「日替わり弁当派」で、ゆーへーだけ「からあげ弁当」だったんですよ。だから「もう、日替わりでいいんじゃない?」て言ったら、こいつが「絶対にからあげ弁当がいい!」って。
こーたろー:この人、自分で一回決めると譲らないんです(笑)。
焼きそば:ほんまや! LINEを遡ってみたら「パッと見て頭に残る名前がいい」「からあげ弁当 最強やん」「せやろ」「しかもそんなダサすぎず、可愛いやん」と。いや、ダサいやろ!(笑)。
春貴:しかも「サンドウィッチマンみたいにさ、食品が名前に入ってたら覚えやすいやん!」て、ちゃんと理由をつけて説得してくるんですよね(笑)。
ーーLINEでバンド名決めちゃうんですね(笑)。
焼きそば:結成が2021年12月と言ってるけど、その年の5月の終わりにこのバンド名を決める会話をしてるから……ガチで動き出したのが12月なんやろな。それまでもうグダりにグダってたんやろ。
こーたろー:5月から12月までグダってたん! 何してたん!?
焼きそば:学生ってこともあったし、いきなりスイッチ入ったんかな。インスタのアカウント作ったのもでかかったわ。僕がTikTokをずっとやっていて2万人ぐらいにフォローしてもらっていて、その人たちもバンドのアカウントをフォローしてくれたりしてたから、「もうやるしかないみたいな」みたいな。
ーーそこから今日までのスピード感がすさまじいですよね。
焼きそば:その実感もあんまりないんですよね。1年前は10本もライブをしてなかったのに、2023年は50本ぐらいライブをやってて。だから、1年後がどうなってるかわかんないですね。そう思うとマジで良い年やったなぁ。
こーたろー(Dr)
ーーライブがめちゃめちゃ増えたことに関連して、僕が最初に見たライブはどちらかというと初期衝動が剥き出しのアグレッシブなイメージだったんですけど、それから半年後ぐらいした去年の10月ぐらいにライブを見ると、力強さはそのままにすごい音がまとまって、いいライブになってたんですよね。例えるなら、エネルギーの爆発が、凝縮されたビームになったような。メロディーの届き方も全然変わっていて、それは何かキッカケがあったんですか? あるいはライブを重ねることで自然とそうなったのか。
こーたろー:キッカケじゃないですけど、ライブの映像を録画して、それを何度も見返せるようにしたことが大きいかもしれないですね。メンバーとスタッフしか見れないようにしてアップしたら、再生回数が伸びてて、たぶんゆーへーがガンガン見てて。そうやって客観的に見ることで、自分たちの音が届いてないんじゃないかなとか、わかるようになってきたというか。
焼きそば:確かに1年目は「ガンガンいけいけ!」「ライブなんか喉を枯らしてなんぼや!」と思ってたんです。だけど、年始のライブをUKプロジェクトの人に見てもらった時、「青春パンクなんか、ギターロックなんかどっちなんかわからん!」てスパーンと言ってくれて。「メロディーがいいと思うからちゃんと歌を届けて」と言われたのと、こーたろーが撮ってくれてる動画を見てから意識し始めて、的を絞れた感はありますね。まだまだ自分の中でも答えを探しながらではあるんですけど、最近ようやくいいライブができてる実感はあります。
全曲新曲で挑んだ、1st フルアルバム『I am hungry』
ーーライブを重ねながら、アルバムも制作されてリリースされたのが、全部新曲というのも驚きでした。ライブの代表曲がたくさんあるのに、今回は全部新曲でアルバムを作るというのは決めていた?
焼きそば:全部新曲にしようと決めてましたね。昔からサブスクに同じ曲でジャケ写が2個あったり、プレイリストに2パターン入ってたりするのがあんまり好きじゃなかったので。とはいえ新曲を10曲収録して、一気に出されてもびっくりしてついてこれないと思ったので、先行配信で少しずつリリースしていこうと。
ーー曲は比較的スムーズに10曲ができた?
焼きそば:順調に出来ていきましたね。とはいえ、なんやかんやで1年ぐらいかけて作りました。23年の1月後半ぐらいに、ボイスメモで「ちくしょう」が残ってたんで。
ーーさっきのボイスメモ残さなくてもいいぐらい、ビビッと来た曲をあげるとするなら?
焼きそば:「ちくしょう」が一番好きかもしれないですね。実はこの曲、バンドを始めた3ヶ月後ぐらいに歌詞とか大体の形はできあがってて。でも当時はどうにもうまく作れなくて、一回寝かしていたんです。それを今回掘り起こしてみたらめっちゃいい曲になって。<ちくしょう俺たちはこのまま空になって 名も知れずにそっと消えていく>という歌詞は、まさに当時の気持ちをそのまま書いてますよね。
ーー普遍性がある悔しさですよね。どの時代でも、音楽をやっていない人でも感じるような悔しさだったり虚しさに共感できると言うか。
こーたろー:ほんまいい歌詞書くよなぁ……。
ーーお二人の中で、特に印象に残っている曲は?
こーたろー:個人的には、「brother」の歌詞とメロディがとにかくいいなと。<未開封だらけの人生の 先読みは誰にも出来やしないから>とか、こんな歌詞思いつく!?と思いました。それから「金曜日」の<夏が過ぎ去って君想う 気がつけば金木犀の匂いがして 遠回りだって愛なのさ そう言って掴んだ僕の左手>の歌詞も切なくて、ノスタルジックな感じが好きですね。
からあげ弁当 - 金曜日(Official Video)
春貴:僕も「brother」は、上がってきたときに「お!」となりましたね。最初にゆーへーから説明があって「どう?いいかな?」と意味深な感じで聞いてきたので、何やろと思ったら「これ弟に書いた曲やねんけど」と話してくれて。お兄ちゃんとしてこんな曲書いていい奴やなと。ほかにも「乾杯をしよう」はメロディーがライブでやっても楽しいし、聴いてても楽しい曲で好きですね。最近はライブでやると最前の子が「乾杯をしよう」の時に乾杯のジェスチャーしてくれてて、それもすごくいいなと。あと、僕らがレコーディングには立ち会ってなかったんで、「BLUE」のギターソロを楽しみにしとこうと話してて、「できたぞ!」て聴いたら、ちゃんといいの作ってきたから感動しましたね。明るいギターソロって最近少ない気がするから、ああいうザ・明るい青春ギターソロ!みたい感じがすごくよくて。
こーたろー:最近の子は、ギターソロを飛ばして聴いてるとテレビで見て、めちゃくちゃむかついたんですよ。だからあえてギターソロを入れた方が俺らの性格にも合うやろうしね。
ーー今回のアルバムを通して、自分らしく、思いっきりやりきることの大切さを歌っているようにも感じて。それが今、バンドと焼きそばくんのモードなのかなと。それからそのメッセージを届けているようで、同時に自分自身にも言い聞かせているのかなと感じました。
焼きそば:自分自身に向けても歌っているところはありますね。「バカ野郎」の<ギター背負って乗る環状線 路上なんてやる勇気無いけど>とかも自分のことやし、曲を聴いた人が自分のことと思ってくれるかもしれないけど、俺も俺に言ってる感じ。確かにそういうイメージの曲は多いですね。
ーーアルバム通して、メッセージがリンクしている点も気になりました。例えば、「brother」で<時代がお前になる>と歌ってて、「ちくしょう」では<時代が追いついてこなくとも どこかのチキン野郎にさえ届いていればいい>と、弟に向けたメッセージが自身への焦りや鼓舞に繋がってたり。過去の「チキン野郎」という曲名も出てきたり、これまでの曲との関わりだったり、アルバム内での連鎖も1枚を通して聴く醍醐味にもなっているなと。
焼きそば:え、ほんまや! 
こーたろー:気づいてなかったんかい(笑)。
ーー他にも「ベルロード」では、<大人になんてなってたまるかよ>と歌われてて、「金曜日」では<大人になれてないのは 僕の方だった気がしたんだ>とむしろ大人になりきれていないことを気にしていたり。もちろん誰に向けて歌っているのかによって意味合いも変わってくるとは思うんですけど、そういう変化や感情の揺れ動きも、焼きそばくんがひとりで歌詞を書いているからこそなのかなと。
焼きそば:すげえ、気づいてなかったかも……。
ーー「バカ野郎」では、<おもいっきし転べ>と歌って、「ちくしょう」では<転んだあの日々を想って 僕らは歌うよ>と歌っているのも? 曲順的に、「バカ野郎」が1曲目で「ちくしょう」が4曲目なので、順に聴くとすごいドラマチックなんですよね。一人の青年がしっかりと成長していくようなストーリーになっていて……。
焼きそば:ほんまっすね!
こーたろー:計算して作ったことにしといてもらったら?(笑)。
からあげ弁当 - バカ野郎(Live Movie)
ーー無意識な方が、リアルな心情の変化なんだなと思います! 同じメッセージが繰り返されていれば、それだけ強くそう思ってるんだなと感じとれますしね。個人的には「again」が特に好きでした。ほかの曲に比べて、この曲だけ初めて弱さをしっかりと見せてくれたような曲で。
こーたろー:<あぁもう投げ出してしまいたい>なんて、他の曲では言わないもんね。
焼きそば:この曲は<いつか出会うだろう最高の自分 涙を流す君は美しい>の部分が浮かんで、たしかに寄り添うようなイメージで作りましたね。
ーーこのアルバムがライブではどう聴こえるのか、ツアーが楽しみです。
焼きそば:初めてのツアーやし、俺の中でもバンドとしてもひとつの起点になるような3本やと思っています。持ち時間もたっぷり作って、ひと皮剥けるチャンスやなと。絶対に今まで通りのライブにもしたくないから。
こーたろー:ライブの方がインパクトあるし、気持ちも強く感じてもらえると思うんで。音源と違ってライブで聴いたらめっちゃよかったとか、アルバムの聴き方も変わったと言われたらやっぱり嬉しいので、ライブに来てほしいですね。
春貴:僕ら音源は割とシンプルめにしてるんですけど、ライブは僕とこーたろーがフレーズとか動きで遊びまくってて。僕はベースのフレーズを変えたり、1人だけリズム変えて遊んだりしているところも楽しんでほしいですね。
焼きそば:それからライブでよく、「楽しむだけじゃなくて、音楽を感じ取ってください!」と言ってるんですけど、マジでそう思ってるんですよね。俺はライブを見に行って楽しいという感情があんまりなくて、音楽を体の中を巡ってる感じが好きで。そんなライブが、俺が今まで好きやったライブやし、俺がしたいライブやから「楽しかった!」を通り越して、体と感覚がボコっと膨らむようなライブをできたらと思います。
ーー2023年のスピード感を思うと、アルバムのリリースとツアーを経て、2024年がどんな年になるのか期待感でいっぱいです。
焼きそば:来年の今頃どうなってるんやろうな。想像できひん! 次のリリースに向けて動いているので、楽しみにしていただけたら!
取材・文=SPICE編集部(大西健斗) 撮影=toya

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