シド、日本武道館公演のオフィシャル
レポート到着 「シドの第二章は今日
から始まると俺は思っています」
「シドの第二章は今日から始まると俺は思っています」
2023年12月27日東京・日本武道館で開催された、シドの結成20周年を締め括る<SID 20th Anniversary GRAND FINAL 「いちばん好きな場所」>公演での大ラス「いちばん好きな場所」を歌う前に、マオ(Vo)はそう語った。「いちばん好きな場所」というタイトルは、2008年のインディーズラストツアーのタイトルであり、2018年の結成15周年を飾るツアーでも使われた。その15周年を終えてからの5年間は、コロナ禍でのライブ自粛や、マオの喉の不調によるライブ活動の休止と、シドにとって試練が続いた。そして2023年1月、結成20周年の開幕とともにライブ活動を再開し、このアニバーサリーイヤーを感無量の思いで駆け抜けてきた。そのファイナルを迎えたこの日本武道館は、15年前、メジャーデビューの始まりに立った場所でもある。冒頭のマオの言葉に、並々ならぬ決意を感じた。
Shinji
ステージにはドレープを作った大きな白い布がかかり、天井からは大きなシャンデリアのようなモチーフとミラーボールが下がっている。BGMが消えて会場が暗転すると、ミラーボールが光の粒を放った。白い布がライティングで虹色に輝いた頃、ゆうや(D)、Shinji(G)、明希(B)、マオと順に登場。20秒の時を刻む時計の針の音が緊迫感を煽ると、Shinjiの憂いのあるギターイントロから「紫陽花」が始まった。マオが歌い始めると、武道館の天井に紫陽花が咲くように淡い青が広がる。この日のステージは、楽曲の世界観を押し広げるような、または感情と呼応するような、ライティングと演奏とのシンクロが見事だった。再会の歌である「NOMAD」、未来に光を照らす「ANNIVERSARY」ではShinjiと明希が左右の花道を歩み、マオは観客と一緒に拳を上げる。アクティブなステージングに会場のテンションは上がったまま、「アリバイ」「罠」「妄想日記」と初期の人気曲が連投されると、メンバーにも観客にも笑顔が広がった。
武道館でアカペラをするのに必要なものは「度胸です」と笑いを誘ったマオは、葉山について「俺の息遣いだったり、呼吸や背中の動きだったりをしっかり汲み取って演奏してくれました。ありがとうございました」と感謝を述べた。そして楽器隊も入れた5人で2024年1月8日(月・祝)に配信シングルとしてリリースする新曲「面影」を披露。切なさとオリエンタルな雰囲気をもつミディアムナンバーに、観客は静かに耳を傾けていた。
Shinji
大きな拍手の後、開口したのは明希。「今の曲、めっちゃいい曲じゃない?……まあ、俺が作りました。2024年のシドの何か道標になってくれると思います」と語った。「いけるかー?」とマオの煽りを起爆剤に、ここから本編ラストに向けて怒涛のアップチューンを畳み掛ける。まずはメンバーコールから「循環」で「回れ〜!」と観客をぐるぐる回転させたところに、「そろそろ結婚しようか!」とハードロックナンバーの「プロポーズ」、ラウドな「park」で翻弄する。ステージの前方で大きな炎の玉が上がった「眩暈」でさらにボルテージを上げると、ラストはハードコアチューンの「吉開学17歳(無職)」でカオス展開。巻き舌でシャウトするマオ、一心不乱に楽器を鳴らすShinji、明希、ゆうや。そんなメンバーの様子に意識を集中していたので、最後にドカーンと上がった特効の大きな音に心臓が止まりそうになった。興奮さめやらぬ状態のマオは、何やらイケナイ言葉を連呼しながらステージを降りていった。あー、楽しかった。何か憑き物が落ちたように、純粋にそう思った。
「夏恋」ではShinjiや明希に絡みにいったり、ステージ上にいたカメラマンに絡んだり、ランニングマンや(新しい学校のリーダーズの)首振りダンスをやってみせたりと、誰よりも楽しんでいる様子のマオ。「Dear Tokyo」では、Shinji、明希、ゆうやと観客と、会場が一体になってのコーラスに多幸感が広がった。そんな温かな空気の中で、「ここ数年はうまく歌えるかなとか、喉は大丈夫かなとか、そういうことばっかり考えていたけど、今日のライブは始まる前からずっと楽しみだった」と素直な心情を吐露。「俺が生きる場所はここだし、俺がいちばん好きな場所はこのライブのステージです。そこにはみんながいないとダメだし、スタッフのみんなやメンバーがいないとダメだし、うまいとかヘタとか取っ払って、気持ちで歌います」と大ラスの「いちばん好きな場所」へ。優しくも力強いアンサンブルが胸を打つ。ステージにはキラキラと光る紙吹雪が舞い、感慨深そうにそれを見上げながらプレーするメンバーの姿が印象に残った。
文=大窪 由香
撮影=今元 秀明、西槇 太一
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