松岡依都美×朝海ひかるインタビュー
~反戦と平和への願いが描かれた寺山
修司の音楽劇『不思議な国のエロス』
で初共演

2024年2月16日(金)~25日(日)新国立劇場 小劇場にて、音楽劇『不思議な国のエロス』~アリストパネス「女の平和」より~が上演される。
アリストパネスの代表作であるギリシャ喜劇「女の平和」をベースに、寺山修司ならではのユニークな視点を加え描いた音楽劇で、執筆当時には上演されなかった幻の異色作。今回は気鋭の若手演出家、稲葉賀恵の演出で、音楽は世界で活躍するシンガー、演奏家である古川麦が全曲書き下ろす。
戦争を止めるために集結したアテネの女たちのリーダー・ヘレネー役の松岡依都美、物語の案内人・ナルシス役の朝海ひかるに、今作に挑む思いを聞いた。
初対面の2人、お互いの印象は?

松岡依都美

──お2人は今回が初共演で、しかも今日が初対面だとうかがいました。
松岡 そうなんです! 初めまして、よろしくお願いします。
朝海 こちらこそ、お会いできて嬉しいです。
──お互いに出演舞台はご覧になっているということで、どのような印象をお持ちでしたか。
松岡 それはもう美しくて、その中にとてもチャーミングな部分とか、すごくいろんなお顔を持っていらっしゃる方だな、という印象がありました。
朝海 うわあ、すごく嬉しいです。
松岡 なので、共演が決まってとっても楽しみにしているんですが、あまり絡むシーンがないんですよ。
朝海 ね、そこが残念! がっつり絡むのは次回以降のお楽しみですね。
松岡 そうですね! とにかく、今回ご一緒できることが本当に嬉しいです。
朝海 松岡さんは2016年に上演されたこまつ座の『紙屋町さくらホテル』で初めて拝見しました。遅ればせながら「素敵な女優さん、見つけた!」と思いました。しかも、宝塚出身の役をやっていらっしゃったんですよね。
松岡 そうです! いや、お恥ずかしい。私、歌えないし踊れないのに、なんでこの役なんだろう、と思いながらやっていました(笑)。
朝海 いえいえ、全然そんなことなくて、とても忠実にやってくださったな、と思いましたし、こんな素敵な女優さんがいるんだ、とそこから松岡さんの作品はいろいろ拝見しました。だから今回、ヘレネー役と聞いて、「そう!私も松岡さんがいいと思ってた!」みたいな(笑)。それくらい、本当に松岡さんにぴったりな役だと思います。
朝海ひかる
──今お話しに出ましたが、松岡さんは女たちのリーダー・ヘレネー役です。
松岡 ヘレネーは、戦争を止めるためにセックスストライキなんて突拍子もないことを言い出すんです。でも、ここ数年で戦争が身近になってきていると感じている今の自分にとっては、ただの物語で終わらない、「本当にこうなればいいのにな」とどこか願ってしまう部分もあります。
──そして朝海さん演じるナルシスという役は、物語の案内人です。
朝海 稲葉さんからは「ドローンのような存在で」と言われましたので、それは今回のテーマとして自分で持っておこうかなと思っています。ナルシスは、せむし男なんです。なぜ寺山さんがせむし男にしたのか、そしてなぜ稲葉さんが私をその役にキャスティングしたのか、そこを考えながら役を作っていければと思っています。
松岡 きっとこの戯曲を読むと、ナルシス役を男の人、しかも年配の方が演じることを想像する人が多いと思いますが、それを朝海さんがやられることで、また違う印象を受けると思いますし、2024年という今の時代のことも表現できるんじゃないかな、と思います。
朝海 戯曲を読んだとき、朽ちた古木がいきなりニョキッ!と動き出す、みたいな印象をナルシスから受けたんです。稲葉さんにそれをお伝えしたら、稲葉さんも「そんな感じです」と同意してくださったんですが、逆に「古木か、どうしようかな」と思っているのが今の段階です(笑)。どうやって最初のセリフを言い出すかが課題になってくると思いますし、まだまだ未知数な役ですね。
演出家・稲葉賀恵は「粘り強くあきらめない」
──演出の稲葉さんは文学座所属で、松岡さんとは劇団の先輩後輩です。
松岡 稲葉は、私より5期下の後輩です。プライベートでは仲良くしているんですが、演出家と俳優として一緒にやるのは今回が初めてなんです。だから今回声をかけてもらったとき、作品の内容を聞く前からもう「やる!」みたいな感じでした(笑)。実は、劇団の先輩の高橋ひろしさんも今回出演されるのですが、私は初共演なんですよ。
朝海 えー! そんなことあるんですね。
──朝海さんは、稲葉さんとは『サロメ奇譚』でご一緒されています。
朝海 役者が納得いくまで、どうだろう、ああだろう、と一緒に考えてくださる演出家だな、という印象でした。壁にぶち当たっても決してあきらめなくて。
松岡 粘り強さはありますよね。
朝海 本当にそうです。その力強さが、ものすごく信頼できますよね。だから今回も、楽しみながらこの船に乗って一緒に越えていこう、と思っています。
──今回は音楽劇で、音楽はこれまで稲葉さんと何度もタッグを組んできた古川麦さんによる書き下ろしです。
松岡 古川さんのことは稲葉から聞いていて、今回どんな音楽になるのかとても楽しみにしています。最近は毎日古川さんの音楽を聞いていますが、いろんな情景が浮かんでくる優しいメロディーが特に印象的です。
朝海 途中で合唱の掛け合いがあるんですが、そこがどんなふうになるのか早く聞きたいな、と今からワクワクしています。
松岡 でも私、音楽劇は初めてだし、音楽劇とミュージカルと何が違うのかもわかっていなくて……。
朝海 ね! どう違うんでしょうね。ほぼ同じだと思うんですけど、音楽劇の方が芝居のパートと音楽のパートの区別がよりしっかりされているような気はします。ミュージカルはセリフや心情が歌になって、セリフを聞いていたはずがいきなり歌になる、みたいなことがありますよね。
松岡 なるほど。でも、歌うことには変わりない、ということですね(笑)。本当に不安だらけなんですが……頑張ります!
朝海 今回は寺山さんが日本語で書いた戯曲で、古川さんが書き下ろした音楽で上演する音楽劇であることが、すごくポイントになってくると思います。いわゆる海外物のミュージカルとは全く違うものになる、ということは一つ言えますね。
──最後にお1人ずつ意気込みをお願いします。
松岡 演じている私自身も、そして見てくださるお客様もきっと、物語と現実の狭間の絶妙な場所に立たされるというか、なんだか単純に楽しめる物語というだけではない、本当に人間って繰り返してしまうんだな、どうしようもないな、という痛いところを突かれているような感覚も伴う作品だと思います。この時代にやることの意味を大事にしながら、でもとにかく皆様に興味を持って劇場に来ていただけるように、精一杯心を込めて、愛を込めてお届けします。
朝海 戦争とかジェンダーレスとか、人を愛することとかが描かれている作品で、私は戯曲を読み終えたときに「今を大事にしよう」ととてもシンプルに思えました。「生きよう」という強い力をもらえる作品だと思いますので、皆様に見に来ていただけるように、私も愛を込めて頑張りたいと思います!
取材・文=久田絢子

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