山口祐一郎×平方元基×平野綾が繰り
広げる、チャーミングな“親子”の和
やか座談会〜トーク&コンサート『Y
uichiro & Friends -Singing! Talk
ing! Not Dancing!-』

山口祐一郎と豪華ミュージカルスターによるトーク&コンサート『Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-』が、2024年1月より東京と大阪で上演される。
山口と気心の知れたキャスト総勢10名が集い、日替わりで4名ずつゲスト出演していく本公演。2024年1月6日(土)の初日まで1ヶ月を切った師走某日、都内の稽古場で山口祐一郎、平方元基、平野綾に話を聞いた。
舞台で共演する中で築き上げられた信頼関係が滲み出る、まるで親子のような三人の笑顔がそこにはあった。
前代未聞!? 気になる“セトリ”の1曲目
ーー今回の公演では、ミュージカルナンバーに加えてこれまでにないようなジャンルのナンバーも登場するとうかがっています。山口さんご自身は普段どんなジャンルの音楽を聴いていらっしゃいますか?
山口:リクエストされる曲が時々あるんですよね。ですから自分が選ぶというよりも常に課題が押し寄せてきて、それによって毎回違うジャンルの曲を聴くことが多いです。最近はようやく自分の自由な時間が増えつつあります。そして現代は本来だったら思い出だけで終わってしまうような曲が、インターネットを通じて信じられないタイミングで目の前に現れることがあるわけです。10代の頃にバンドを組んでクラブやディスコで歌っていた曲なども含め、色々な曲を聴いて楽しく過ごしています。
山口祐一郎
ーーいろいろお聴きになっている中で、最近特に印象に残っている曲はありますか?
山口:先ほどインタビューの前に平野さんが話していた、えーと、“セトリ”って言うんでしたっけ? 今回の公演のセットリストの中にその曲があるんですよ。ところで僕ね、“セトリ”と言われると漁船と網が出てきておいしそうな魚を取って焼いて食べる、みたいなイメージがあるんですけれど……。
平方:なんでなんで?(笑)
山口: もうご覧になりました? “セトリ”の最初に歌う曲。
平野:見ました!
平方:本当にびっくりしました!
山口:演出の山田(和也)さんのアイディアには僕もびっくりです。そういう発想もあるのか、と。その曲を聞いて、歌を合わせて、その現場に自分も参加する。それが特別な時間になるかもしれないなあってね。
撮影中もトークは止まりません!
ーー曲名は出せないまでも、何か読者にとってヒントになるようなものを……。
山口:教えてあげないよ〜〜〜。
一同:(笑)。
山口:ジャンル分けもできないんです。なぜならば、楽器や編曲やテンポによって同じ曲でもあらゆるアレンジができるわけですよね。もしかしたらクラシックの壮大なる交響曲が始まるのかなとか、自分の人生の中でこの歌を聴いた記憶があるかもしれないなあとか、そして最後に「あ〜そうなんだ」と思えるような、そんな楽しみな曲だと思います。この曲に関しては山田さんが「崖の上から自分の大切なものを突き落とすような気持ちだった」とおっしゃっていたんです。
平野:ライオンみたいですね(笑)。
山口:突き落とさないでくださいよってね(笑)。でも山田さんは「海に突き落とす」とおっしゃるので「海だったら大丈夫ですよ」と答えたのですが、「海にサメがいるかもしれない」とおっしゃるんです。そんな考えもありながら、それでもなお選ばれた曲です。
ーー観客のみなさんの予想を超えたところにあるということですね。平方さんや平野さんから、山口さんに歌ってほしい曲のリクエストはありますか?
平方:まさにそういうことを考えていたんですよ。そしたらその曲が1曲目にあったから「え〜〜〜!」って思っていたんです(笑)。お客様はきっとびっくりするでしょうけど、僕は側で聞けるし、得をしているなあと思いました。祐さんが歌っているところの想像がつかないんです。だからこそ聞きたいし、どんな風になるのか今からすごく楽しみにしています。
平方元基
平野:私も本当に1曲目を見たときの衝撃がすご過ぎて! だからこそ自分の歌いたい候補曲を出すときに、どうしようってすごく迷っちゃいました(笑)。「私たちはどういう方向で攻めたらいいんだろう?」と平方さんに相談をしたぐらい。1曲目はある意味それがルーツなのかなと思える曲でもあって。お客様はどういう反応をされるんだろうなと、初日がすごく楽しみです。
ーー平野さんが山口さんとデュエットするとしたら、どんな曲がいいですか?
平野:今まで共演させていただいた作品はもちろん、いろんな曲でデュエットしてみたいんですけれど、今回のコンサートの方向性を考えるとそういうことじゃないんだなあと(笑)。なので、どんな曲が来てもどんとこいと思っていなきゃいけないなと思っています!
山口:よろしくお願いします(笑)。
舞台上から舞台裏の思い出〜『エリザベート』『レベッカ』『レディ・ベス』〜
ーーこれまでの共演時の思い出を聞かせてください。平方さんは2012年のエリザベートで山口さんと初共演されましたが、当時の平方さんにとって山口さんはどんな存在でしたか?
平方:最初にお会いしたときは「本当に存在していらっしゃるのだ」と思いました(笑)。僕にとっては初めての製作発表だったので緊張していたんです。そのときに祐さんが「熊川哲也さんに似ている人がいるんだよ」って僕のいじりをしてくださって。そこでやっと「お話ししても大丈夫なんだな」という雰囲気になれました。
『エリザベート』は祐さんが長年ご出演されている作品だったので、僕ら新キャストと比べて稽古はそんなにされないのかなと思っていたんです。でも全然そんなことなくて! 他の人の稽古中も柱の向こう側でずっとお稽古されているんです。当たり前なのかもしれないですけど、その姿を見た当時の僕は「芸事にずっと携わっていく人はこういう気持ちでいないといけないんだな」と思いました。今もどの稽古場に行っても、あの姿は思い出しますね。
山口:ありがとうございます。みなさまの前で魅力的なコメントをしてくださるような、優しい気持ちや思いやりがある素敵な方ですよね。なかなか大変なこともあると思いますけど、頑張って末永く活躍してくださいね。
平方:頑張ります!
ーーその後も今に至るまで共演を重ねられ、お二人の関係性はどう変化しましたか?
平方:舞台袖でもお話しさせていただけるようになりました。最初は緊張して何を話していいかわからないという感じだったんですけど、例えば「どうやって緊張を解いていますか?」と自分が思っていることを素直に話すようになりました。舞台袖って、誰も見ていない秘密の時間なんです。
山口:そうなんですよ。やっぱり同じ九州出身だからか、本人の意志とは別に遺伝子にちゃんと組み込まれているような一言をね、袖でボソっと言うんですよ。ちょうど自分も30年前に先輩と同じようなことを話していたなあなんて、思い出しますね。
「撮影は広い場所で」というカメラマンの声にこたえてくださり、このポーズ!
ーー平野さんはこれまで山口さんと共演された中でも、2018年の『レベッカ』でご夫婦役を務められました。印象に残っている山口さんとのエピソードを教えていただけますか?
平野:『レベッカ』で夫婦役をやらせていただくに至るまでに、真面目な作品から愉快なコメディまでご一緒させていただいていて、それを経ての夫婦役だったんです。すごく印象的だったのは、『レベッカ』のカーテンコールで「では宇宙人からどうぞ」と紹介されたこと(笑)。私と保坂知寿さんの役のバトルを「宇宙人対ゴジラ」とおっしゃられて、いろんなものを経てそう言ってくださるまでになったんだなあと(笑)。
山口:今、(平野さんは)ある程度普通にお話しされているじゃないですか。彼女は会った瞬間瞬間、違うキャラクターで話すんですよ。声優さんというのはそういうものなんですって。いつでもリクエストされたキャラクターに、自分の持っている一番いいものをパッと表現するトレーニングをされているんですね。平野さんは「今そういうことを求められていると思うからそうやって話す」とおっしゃるんですけれども、『レディ・ベス』で初めて会った瞬間の声がね、「△□✖〰◑♪◈*☆◇」といった感じでね。
平野:そんなにひどくないですよ〜! 製作発表のときだったので多分もう少しちゃんと喋ってます(笑)。
山口:本当?
平野:そういえば『レディ・ベス』の製作発表の映像で、祐一郎さんが私のことを二度見されているのを発見したんです(笑)。私よっぽど変だったんだろうなあって(笑)。
山口:いえいえ、でも、何でも慣れるものでございます(笑)。
ーー『レディ・ベス』といえば御三方がご一緒された公演ですが、振り返ってみていかがですか?
平方:僕は(山口さん演じる)アスカム先生とは本当に絡みがなかったんですけれど、やっぱり祐さんがいると安心感が全然違うんですよね。祐さんと袖で会ったときの優しさやチャーミングさが大好きなんです。そんな風には全然なれないけれど、なりたいなと思います。
山口:(振り返って後ろのスタッフ陣に)何かお土産持ってきてなーい?
一同:(笑)。
平野:私は『レディ・ベス』が帝劇初主演だったのでいっぱいいっぱいでした。初演も再演もずっと緊張していたんですけれど、舞台に出るときに袖から舞台上の祐一郎さんの背中を見て、「よしっ」と思ってから行くことを習慣付けていたんです。本当に安心感が違いますね。
平野綾
山口:優しくて思いやりのある息子と娘に囲まれてね、お父さんは本当に幸せです。もうね、思い残すことはありません!
平方:早い早い早い!(笑)
平野:だめぇ〜!(笑)
山口:あと印象的だったのが平方さんのフェリペですね。彼自身のキャラクターがみんなに求められ、舞台上でどんどん上半身裸になっていくんですね。王子の役だから最初は詰め襟なんだけど、出ている部分が段々大きくなる。要はみんなが求めているわけです。「平方さーん、私たちあなたの全てが見たい!」と。本人は気付いていなかったかもしれないけれど、上半身裸でビリヤード台の上にバッと乗ってね、前方席の女性がこうやってジーッと見ているんですよ。
平方:ビリヤード台の上に立つシーンは日によって衣裳がズレちゃうこともあって、本当に上半身裸になっちゃうんです。そうすると客席でオペラグラスがギラギラ上がってくるのがわかって(笑)。でも求められているならやらなきゃと思って、とりあえずこの上半身だけでやりきったっていうのはめちゃめちゃ覚えてますね。
山口:きっと平方さんがあまりにもチャーミングだから、みなさんの「もう少し見せて!」という願いが通じて本来なら外れるはずがない衣裳が外れて、普段以上に上半身裸でやってくださったんです。
平方:普段以上に上半身裸(笑)。
ーー日本のミュージカル界の第一線を走り続ける山口さんの背中を見て、平方さんと平野さんが俳優として学んだことを挙げるとしたらどんなことでしょう?
山口:……ちょっと脂肪が増えたよね?
平方&平野:(笑)。
(左から)平方元基、山口祐一郎、平野綾
ーー俳優として、でお願いします(笑)。
平方:祐さんが人に対して汚い言葉を吐いたり怒ったりしているところは一度も見たことがない。稽古場って感情を調理して舞台に上げていくために整えていく場所だから、そういうことが起きることもあると思うんですけれど、祐さんからはそれを1mmも感じたことがないんです。そういう背中はいつもすごく見てますね。見習いたいけど僕にはまだまだ無理そうです(笑)。チャーミングという言葉を先輩に言っていいのかわからないけれど、誰しもが持てるものではないじゃないですか。だから羨ましくも思うし、つい祐さんのことを見ちゃいますね。
平野:見ちゃうっていうのはすごくわかります。祐一郎さんにしかできないお話で、祐一郎さんにしか持てない目線というものがあるので、「今どういうことを考えてこの舞台に臨まれているんだろう」といつも気になります。祐一郎さんと一緒のものを見たくなっちゃうんです。本番の素晴らしいお芝居はもちろん、お稽古場やこういうお話をしているときから良い雰囲気を作ってくださって、みんながすごく幸せな気持ちで舞台に取り組めるようにしてくださるんです。
山口:ありがとうございます。コロナ禍が始まったことは残念ですし、マイナスな事件が彼方此方で起こっていて。みなさん家庭でも学校でも会社でも、色々なことがあって大変な世の中。その中でこんなにチャーミングなことを言ってくれる息子や娘と一緒にいられるかと思うとね、本当に幸せでございます。今回の公演でもそんな雰囲気がみなさまに伝わって、一緒に楽しんでいただければ本当に幸せなことですね。

山口祐一郎さんがイープラスポーズ!?をしてくださいました
取材・文 = 松村 蘭(らんねえ)    撮影=福岡諒祠

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