「互いを愛し合うことは、自分自身を
愛することから始まる」話題のシンガ
ーソングライター・Furui Rihoが語っ
た人生を懸けた目標、インディポップ
的表現

北海道出身のシンガーソングライター・Furui Riho。今年は年明けに『Spotify Early Noise 2023』へ選出され、夏には『SUMMER SONIC 2023』にも初出演を果たした。楽曲ではA.G.Oと制作した「ピンクの髪」、Shin Sakiuraとの「n.o.y.b」、knoakとの「Super Star」、「PSYCHO」と立て続けにリリースすると、感度の高い音楽ファンのハートを掴んで話題を集めいている。今回SPICEでは、今年1年の自身のテーマとなったインディポップ的な表現、NewJeansの衝撃、そして原点回帰となった最新曲「LOA」など、たっぷり語ってもらった。
ーー現在も北海道と東京を行き来しながら暮らしているのでしょうか?
1ヶ月の半分は北海道、もう半分は東京という暮らしをしています。でも最近は忙しくて北海道に帰れなくなってきて、ここ数ヶ月は東京にいる時間の方が長いかもしれません。楽曲は基本的に北海道で制作しています。北海道で楽曲の原型をある程度作って、その後に東京でトラックメイカーの方々と一緒に制作する、という形が多いです。
ーー色んなトラックメイカーの方々と作業をしていますが、制作の流れは同じですか?
トラックメイカーによって少しずつ変わりますね。「ピンクの髪」を一緒に制作したA.G.O君との作業では、お互いに楽曲のリファレンスを出し合って、その後にA.G.O君にトラックを作ってもらって歌を乗せる、という流れで制作しました。それに対して「Super Star」「PSYCHO」「LOA」などを一緒に制作したknoakとの作業では、自分が主体となって舵を切っていき、knoakと共に音を作り上げていく形をとっています。
Furui Riho - ピンクの髪(Official Music Video)
ーーA.G.Oさんとはどういう流れで一緒に楽曲を制作することになったのでしょうか?
私は元々A.G.O君のファンだったんです。A.G.O君がCIRRRCLEにいる時からのファンでした(CIRRRCLEはAmiide、A.G.O、Jyodanから成る3人組。〈88rising〉✕『Red Bull Music Festival』によるコラボ・イベントや『Spotify Early Noise Night』などにも出演するなど話題を集めていたが、2020年に解散)。数年前、私が渋谷でライブをした時に遊びに来てくれて、そこから交流が始まりました。その後、私から「一緒に曲をやりませんか」と声をかけて、共作することに。「ピンクの髪」では、ティファニー・デイというアーティストがリファレンスで挙がって。A.G.Oさんとは以前にも「Candle Light」という楽曲を一緒に制作しているのですが、その時からティファニー・デイの様なインディポップ・アーティストの話はよく出ていましたね。
ーー2023年にリリースされたFurui Rihoさんの作品はインディポップを感じるものが多かった様な気がします。
そうですね。ここ1年くらい共通したテーマだったかもしれません。
ーー楽曲だけでなくアートワーク、MVなどにもインディポップの世界観が多く表現されているように感じます。
そうだと思います。Furui Rihoとしてどういう音楽を表現するのか、ということをこれまで模索していたのですが、2022年の終わり頃にティファニー・デイが好きになったこともあり、インディポップが一つの答えになるんじゃないかと感じたんです。そしてA.G.O君とインディポップを意識した「ピンクの髪」を作った時に、「これだ!」という様な感覚になりました。リスナーの反応にも今までと違う手応えを感じたんです。そういう流れで、2023年はインディポップをテーマに活動してきました。
Tiffany Day - IF I DON'T TEXT YOU FIRST (Official Video)
ーーティファニー・デイ以外に現在影響を受けているポップアーティストはいますか?
最近だとNewJeansですね。ここ数年K-POPを聴くことも多いんです。まず最初はBIGBANGにハマって、今はTWICEも大好きになって、色んなK-POPアーティストを聴くようになりました。自分が作家として楽曲提供する時にもK-POPを意識して作ったこともあります。そのK-POPシーンに新たにY2KというテーマやUKガラージなど、音楽好きな人が反応するサウンドを持ち込んできたことには衝撃を受けて……。日本だとaikoさんにも影響を受けています。リスナーと距離が近い感じに憧れがあって、自分が歌い手になるなら、aikoさんのようなシンガーになりたいと思っていました。ティファニー・デイにも共通するかもしれませんが、無邪気さや自由さ、みたいなところに憧れているんだと思います。それからNakamuraEmiさんの弱さを見せる歌詞、まっすぐ素直な歌詞にも影響を受けています。そういう色んなアーティストに影響を受けながら、自分なりにミックスしているのかもしれません。
NewJeans (뉴진스) 'Super Shy' Official MV
ーーそうして色んな模索をしながら、Furui Rihoとしてのアーティスト像が固まってきたのでしょうか?
今年1年で固まってきたと思います。「ピンクの髪」でインディポップ的な表現をして、その反応に手応えがあり肯定された気持ちになりました。新曲の「LOA」を作った時には、自分のルーツを元に曲を作ることが自分の武器になると感じました。楽曲をリリースする度にアーティスト像が固まっている感触があります。
ーー「LOA」はFurui Rihoさんのルーツにあるゴスペルサウンドが印象的です。原点に戻った感じがします。
そうですね。「Super Star」や「PSYCHO」はポップスを作るぞ、と意気込んで制作しました。もちろん素晴らしい曲が出来たと思っているのですが、次は少しあったかい曲というか、心が揺れ動く曲を作りたいなという気持ちになりました。自分を素直に出せるものは何だろうと考えた時に、ゴスペルかもしれないなと思ったんです。私のゴスペルの師匠のSayo Oyamaさんに参加してもらうことにしました。
ーー「LOA」にクレジットされている、Sayo Oyamaさんという方は、どんな方なのでしょうか?
私が小学生の時に初めて見たゴスペルがSayoさんが作ったチームのもので、そのパフォーマンスを見てゴスペルを自分もやりたいと思ったんです。その後Sayoさんのクワイアに入ったりして、​Sayoさんのやり方、選曲などに大きく影響を受けているんですね。ずっとSayoさんの背中を追いかけてた、という様な感じです。カリスマ的な感じで、オーラが凄くて、昔は少し怖かったんです(笑)。でも今は月に1回くらいは会ってお話ができるような関係で、Sayoさんに参加していただくことにしました。
ーー制作はどの様に進んだのでしょうか?
元々サビのメロディを作っていて、ボイスメモに入れていました。それを元にして軽いデモを作り、knoakのスタジオでブラッシュアップして、さらにそれを北海道のSayoさんのスタジオでふくらましていきました。ピアノはSayoさんに弾いてもらっています。
ーーそれをまた東京に戻ってknoakさんと仕上げていくと。
そうです。knoakのトランペット​などを足していきました。彼はトランペット​も吹けるんですよ。「LOA」では最終的には差し替え、山田丈造さんに演奏して頂きましたが、「PSYCHO」のトランペットはknoakが吹いているんです。knoakは非常にクレバーで穏やかな人です。CMの音楽なども多く手がけているので、イメージを伝えてその要望に答える能力が非常に高いんですよ。今回も色々とやってもらいました。
ーータイトルの「LOA」は「Love One Another」(お互いに愛し合う)という意味だそうですね。
はい。戦争があったり、SNSを見たら嫌な言葉が飛び交っていたり、なんでお互いをもっと愛し合えないんだろう、それが出来たら世の中はずっとよくなるのにな、とずっと思っているんです。その事について書こうと思ったのがキッカケです。
ーーお互いに愛し合うというのをテーマにしながら、自分を大切にする、というメッセージも凄く感じます。
そうなんです。自分でもタイトルと中身が少し違うなと感じています(笑)。最初は”自分”と”他者”がいて、お互いに愛し合うということをテーマに書き始めたんですけど、妹からの電話がキッカケで歌詞が変わっていきました。ある日、突然妹から泣きながら電話がかかってきて、話を聴くと色んなトラウマが爆発したような感じで……自分に自信がない、自分には価値がない、と思っているような状態だったんです。自分を愛することが出来ていない状態の妹を見た時に、私が掲げる「Love One Another」は、まず自分自身を愛することから始まるんじゃないかなと感じました。そこで少し方向を修正していきました。
ーー妹さんには「LOA」を聴いてもらいましたか?
はい。「泣きました」と連絡が来ました。伝わるかどうか不安だったんですが、想いが届いたみたいで安心しました。
Furui Riho - LOA(Official Music Video)
ーーMVも楽曲の世界観が存分に表現されていると感じました。最後のシーンではFurui Rihoさんが棺桶に入っていますが、これはどういう意味を表しているのでしょうか?
この「Love One Another」というのは、私にとって人生をかけた目標なんです。死ぬ時に「たくさんの人を愛することができたな」「たくさんの人に愛されたな」「やりきったな」と思っていたいんです。それを監督のISSEIさんに伝えたところ、こういう表現にしてくれました。その部分だけでなく、シンガーとしてのFurui Rihoの人生を表現してくれたMVになったと思います。
ーー2023年も終わりますが、今年を振り返ってどうですか?
楽しかったです。やっと色々なことが実を結んだという感覚も大きいです。下積みが長く、全然人が入っていないクラブやライブハウスで歌うことも多かったので。自分で東京で企画したライブで結構な赤字が出たりとか(笑)。 どんどん仲間も増えて、『ONE PIECE』のルフィみたいな気持ちです。1人で大海原に漕ぎ出して、仲間が増えて、軌道に乗ってきたなという様な。やっとメリー号に乗ったというような感じですかね(笑)。
ーー12月には5大都市ツアーが開催されます。
不安とドキドキが混ざってますが……Furui Rihoとして初めてライブをやる場所もあるので、みんな楽しんでもらえたらなと。今年は1年たくさんライブをしてきましたし、信頼できるバンドメンバーなので、のびのび、楽しくやれたらいいなと思っています!
取材・文=竹内琢也 撮影=ハヤシマコ

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