一筆書きで『プレバト!!』出演、イ
ラスト、仕事、ダンスの3足のわらじ
を履くYUIHALFが向き合う「自分らし
さ」

今年9月に行われたアートフェア『紀陽銀行 presents UNKNOWN ASIA 2023』でイープラス賞を受賞したYUIHALF(ゆいはん)。現在横浜在住で、会社員として働きながら、イラストレーターとして企業HPのイラストやロゴ、CDジャケットなどを手掛けている。そんな彼女は、一筆書きのスタイルで知名度を上げ、TBS系芸能人の才能発掘バラエティ『プレバト!!』にも「一筆書きアート」の先生として出演するなど活躍中。11月23日(木)19時からは、『プレバト!!』に2回目の出演を果たす。今回はイラスト、仕事、ダンスの3足のわらじを履いて活動するYUIHALFに、イープラス賞を受賞した時の気持ちや経歴、制作スタイル、今後の目標について話を聞いた。
YUHALF
●『UNKNOWN ASIA』を振り返って
ーー改めて、イープラス賞受賞おめでとうございます。今年で3回目の『UNKNOWN ASIA』出展でしたが、2021年はスポンサー賞を含む3つの賞を、2022年は4つのレビュアー賞を、そして今年はイープラス賞のほかに、審査員賞と3つのレビュアー賞を受賞されました。受賞の感想をお聞かせください。
単純に嬉しいのと、去年もすごく褒めていただいたので「やっといただけた」という気持ちです。イープラスさんは全国で色んな方が使われているサービスを提供されてる会社さんなので、そんな大きな会社さんの賞をいただけると思わなくて、びっくりと嬉しいが半々くらいです。
ーー3日間『UNKNOWN ASIA 2023』に参加してみて、いかがでした?
楽しかったですね。オフラインの展示自体、去年の『UNKNOWN ASIA』が初めてで。今までSNSやデジタルデバイスでしか作品を発表していなかったので、キャンバスに絵を起こす方法も全くわからなくて、ちょっと言い方が悪いですけど、去年は少し雑な参加になってしまったんです。それを審査員の方からご指摘いただいて。賞をいただけて本当に嬉しいと思いつつ「悔しい、来年はもっとちゃんとかまそう」と思っていました。だから、当たり前ですが、今年は「壁のサイズがこれぐらいだから、これくらいのサイズのものをいくつ作ろう」と決めて制作したり、カラー額縁をイラストの色に合わせて用意したり、配置もちゃんと考えて出展した結果、色んな方から褒めていただいて、すごく嬉しかったです。
『UNKNOWN ASIA 2023』の様子
ーー直接お客さんとお話できる機会は良いものですか?
めちゃくちゃ嬉しいですね。お客さんが絵を観ているところを見て「そういうところが気になるんだな」、「そこで可愛いと思ってもらえるんだ」と、意外なところに惹かれることがすごく感じられたので、参考にもなりましたね。
ーー『UNKNOWN ASIA』出展以降、お仕事が増えた実感はありますか?
2021年にスポンサー賞をいただいた企業様には、今も継続してお仕事をいただけています。出展していなかったら絶対になかった繋がりが確実にできたので、そこは大きかったかなと思います。
●好きだったイラストが、大学生の時に仕事に
ーーではYUIHALFさんの経歴をお聞かせください。まずは「YUIHALF」と書いて「ゆいはん」さんとお呼びしますが、お名前の由来は?
高校生から友達にずっと「ゆいはん」と呼ばれていたんです。入学1週間後くらいに突然呼ばれ始めたので、特に意味はなくて。そのまま大学生まで呼ばれ続けて、イラストレーターとして活動するにあたって名前を何にしようかなと思った時に、「ゆいはん」にしようと。ゆいはんの「はん」を半分の「半」にして、英訳すると「YUIHALF」になるので、字面も良いし「これにしよう」と思ってそのまま使ってます。
ーーイラストを描き始めたのは、いつ頃、何がキッカケだったんですか?
小さい時からずっと絵が好きだったんですよ。人に頼まれて描くようになったのは大学生の時。所属していたダンスサークルで「フライヤーのイラストをお願いできない?」みたいな感じで頼まれて、徐々に仕事になっていきました。
ーーそこからイラストレーターになりたいと。
小さい時から絵は好きだったんですけど、ずっとイラストレーターになりたかったわけじゃないんです。大学卒業後に就職したら、社会人1年目のタイミングでコロナ禍に入ってしまって。会社の仕事もしつつ、イラストも自宅で描いていて、SNSで発信するうちに、少しずつお仕事がいただけるようになってきました。だから明確に「なろう」と思ったわけではなく、流れでなったという感じなんです。
ーーその時の画風は、まだ一筆書きじゃなかったんですよね。
そうですね、全然違います。以前は線も切れていましたし、グラデーションで色を塗ったりしていましたが、今は服は単色で塗ったり、ハートは赤1色で塗るような感じで着色しています。
「赤い糸」
ーーアナログでも絵は描かれるんですか?
イラストレーターとしては描いていないものの、絵を描くのは好きなので、最低限は描ける程度です。でも、やっぱり立体的な表現はオフラインじゃないとできないので、いつかはやってみたいですね。去年出した「赤い糸」という作品は、赤い糸で2人が結ばれてるイメージで、赤い線の上から本物の糸を貼り付けたんですよ。デジタルでも赤い線で描いても伝わるけど、オフラインだと説得力が違うじゃないですか。絵の具やキャンバスなどの画材も好きなので、いつかそれらを使って制作をしてみたいです。
ーー制作していて、1番の喜びを感じる瞬間は?
やっぱり依頼してくださった方が「本当に頼んで良かったです」と言ってくれる時が1番嬉しいです。展示会用で作ってる時は、周りの反応ですかね。高校時代から結構ストイックと言われることが多いので自分では「微妙かも」と思っていても、SNSで出すと「これめっちゃ良いじゃん」と言ってくれる時があって。「良いんだ」と思うと、やっぱり嬉しいですね。
●「やっぱり発信することはすごく大事」
ーーお仕事のスタイルについてもお聞かせください。
平日の昼間は会社員をしていて、それ以外の時間でイラストとダンスをしています。
ーー元々スポーツがお好きなんですよね。
大学の時、スポーツ系の学部にいたんです。スポーツをやるのも観るのもすごく好きで。今はダンスと、趣味でボルダリングをしています。
ーー最初からスポーツ関係のお仕事を希望されていたんですか?
本当は最初、就活で広告系のデザイナーやクリエイターを受けてたんですけど、スポーツ健康学部卒なので、どこも履歴書で落とされちゃって。でもやっぱりスポーツ好きだしなと思ってスポーツに関連する仕事に方向転換して今の会社に入りました。
ーー会社員とイラストを両立されていますが、元々そこを目指されていましたか?
実はダンスの方でもちょっとだけお仕事をさせていただいてて。所属しているチームでイベントのゲストに呼んでもらったりしています。いずれイラストとダンスだけで食べていければなという気持ちはあるんですけど、会社員はフリーランスでいきなり社会に出たら学べなかったことがたくさんあるなと思っていて。今は大きな会社とやり取りすることが多いですし、名刺交換やビジネスメールの打ち方といった、社会人として最低限のマナーは会社にいないと学べませんでした。勉強させてもらっていると言うと会社に失礼かもしれないですけど、人生でなかなかできない経験をたくさんさせていただいてるので、もうしばらくは続けたいと思ってます。
ーー仕事が終わってからイラストを描いてらっしゃるのですか?
9〜18時、残業がある日は19〜20時まで仕事した後、ご飯を食べてそのまま作業の日もあれば、仕事終わりでダンスレッスンやリハーサルに行って、終電で帰ってきて作業する日もあります。あとは土日ですね。そもそも家にいる時間が少なくて。家にいる時は描いてるか、結構ゲームもしてますね。
ーーイラストのお仕事はどういうルートで受注することが多いですか?
最初は本当に知り合いや友達、先輩・後輩からが多かったんです。例えばサークルの友達が頼んでくれたのを見て後輩が頼んでくれたり、その友達からお願いされたりというケースが、SNSの投稿数に比例して増えていって。コンテストで賞をいただくようになってからは、企業さんがインスタでDMをくださったり、メールでご連絡いただいたりですね。倍数くらいの感じで増えてますね。
受賞作
ーー外部とのお仕事で印象に残ってるものはありますか?
コンテストだと最優秀賞を受賞した『Manhattan Portage ART AWARD2021』が1番印象に残っています。依頼していただいたお仕事だと、1個に絞るのが難しいんですけど、ゼクシィさん(付録の婚姻届イラスト)と保育園さん(さいたま市のはなまる保育園)。まさか自分の絵のスタイルで保育園の教室の看板のイラストをやる日が来ると思わなかったのでびっくりしたのと、周りからの反響が良くて嬉しかったですね。
ーーいずれダンスとイラストの2軸でやっていきたいとおっしゃいましたが、どんな生活ペースが理想ですか?
わがままだけを言うと、週3休みが1番いいんですよ。そうすると単純に活動できる時間が増えるので。いつかは独立したいとは思いつつ、やりたいことは全部やりたいという気持ちです。
ーー今会社員をしながらイラストを描きたいと思ってる人も多いと思いますが、そんな方にアドバイスするとしたら?
やっぱり発信するのがすごく大事だなと思います。3年前は友達しか見てなかった200人くらいのアカウントで、「意味あるのかな」と思いながら発信してたんですけど、見てくれてる人は絶対にいる。好きなことや「私はこれが強いんだ」という分野をちゃんと発信するのは大事だと思います。
●どうしたら「YUIHALFの絵だ」とわかってもらえるのか
『UNKNOWN ASIA 2023』の様子
ーー『UNKNOWN ASIA 2023』でお話を聞かせていただいた時、一筆書きのスタイルは『UNKNOWN ASIA 2020』に初参加する少し前に、他のイラストレーターとの差別化をはかるためにたどり着いたとおっしゃっていましたが、改めて一筆書きアーティストに行きついたキッカケをお聞きしたいです。元々線画を描かれていたとはいえ、絵をあそこまでシンプルに分解するのは、結構難しいんじゃないのなと。
最初は難しかったです。一筆書きをやり始めた最初の頃は、もっとぐちゃぐちゃだったんですよ。そこからブラッシュアップして今の感じに落ち着きました。コロナ禍に入った時はまだ前のイラストで、2020年の秋か冬ぐらいからは完全に転換しているので。ちょうど3年くらいですかね。最初は海外のアーティストの方に似た描き方をしてたんです。でも人と似てるのは意味がないなと思って、描き方を少しずつ変えて今の画風になっています。
ーー憧れのアーティストさんはいらっしゃいますか?
めちゃくちゃいます。私は「そのお仕事が手掛けられるのいいな」という憧れのパターンと、スタイルに憧れるパターンがあって。前者で言えば、YOASOBIのツアーやMVを手掛けておられる藍にいなさん。あとは写真家の吉田ユニさん。発想が天才すぎてずっと眺めてます。
ーー広告やデザイン系の方もお好きなんですね。
全然見ますね。大好きです。例えば東京ディズニーランドに行った時、私、建物とかすごく見ちゃうんですよ。物の形や色、デザインが好きで。大阪に行った時も、東京にない窓の形の建物の写真を撮ったり、本の装丁や靴のデザインもめちゃくちゃ見ます。小さい時からの癖かもしれない。家の形や表札のフォントをずっと見ながら歩いているので、それで道を覚えられる変な癖があって。
ーーではスタイルに憧れるアーティストは?
一筆書きじゃない方ですけど、榛葉大介さんというデザイナーさん。TBS系のバラエティ番組のロゴなどを手掛けられていて、シンプルにデザインが好きなんです。そして自分がずっと好きなのは長場雄さんやキース・へリングさん。多分イラストを見たら絶対に知ってると思うんですけど、大尊敬してます。線が少ないのに何を描いているか伝わるし、全員「長場さんだ」とわかるじゃないですか。私が基本的に目指したいゴールはそこです。あのシンプルな表現で誰かわかるのはすごい。
ーーシンプルな分、差別化が難しい気もします。
多分、習字と同じなんです。習字は一とか二とか、画数が少なければ少ないほど、バランスを取るのが難しいじゃないですか。影や色の付け方、もっと線が多ければきっと細かく表現できる描写があるけど、そこを全部削ぎ落として、最低限で描いているので。脳内にある絵を簡略化した時、人に伝わらなかったりすることが結構あって。例えば自分には「手」に見えてるし、「手」を書いてるつもりだけど、出してみたら「これ何ですか?」と言われることがあるんですよ。
ーー確かに。
一筆書きは、ライセンスの商用利用OKの画像のフリーサイトでも検索すると、簡単なものがあったりするんですよ。そういうものが街中で使われているのを友達が見て「これってYUIHALF?」みたいな連絡が来ることが結構あって。自分的にはこだわってるところが全く違うから「全然私の絵じゃないじゃん」と思うんですけど、他の人からしたら別に変わんないのかと思うと、パッと見て「これはこの人の絵だ」とわかるポイントをこれから探して、ちゃんと身につけたいですね。
ーーうまく伝わるように線を活かす難しさがありますよね。これからやってみたいお仕事は?
やっぱりゲーム、お笑い、スポーツ関連のお仕事をしてみたいですね。Creepy Nutsさんとか大好きなので、関われたらめちゃくちゃ嬉しいです。
●『プレバト!!』出演でもらった刺激
『プレバト!!』の企画タイトルも作成
ーー最後に『プレバト!!』のお話も聞かせてください。浜田雅功さんの一筆書きを描かれていましたね。
いつもファンアートで描いている芸能人の方の絵を描かせていただけて、直接本人に届くことがあるなんて思わなかったので、すごくびっくりしました。
ーー番組出演のキッカケは何だったんですか?
番組の制作サイドから、突然メールが来たんです。スタジオの雰囲気も良かくて収録もすごくスムーズでした。1時間くらい収録して30分放送かと思ったら、収録自体が30分ちょっとでした。
ーー好きな芸人さんがYUIHALFさんの絵を参考に描かれているところを観たお気持ちはいかがでした?
芸人さんに限らず、すごく嬉しかったです。自分の絵が色んな方に観ていただけるのも嬉しかったですし、でもその反面、今後確実にプレッシャーになるなと。そう言うと天狗になってると思われるかもしれないですけど、観られることが増える分ハードルが上がるというか、自由に描きづらくなっちゃったなというのはあります。「もっと頑張んなきゃな」と思いますね。
『プレバト!!』で披露した作品
ーー今年9月に放送された『プレバト!!』では、南海キャンディーズの山崎静代さんと千原ジュニアさんが特待生になられましたね。裏話があればお聞きしたいです。
千原ジュニアさんは私と違う描き方なんですよ。私は線が重なるように描いているんですけど、ぐるぐるぐると線がどこを通ってるかわからなくなるようにはしていなくて。それは別にそうすることが悪いわけじゃなくて、ジュニアさんはその描き方だったので、どうしても私の描き方だとできない表現ができる分、「それが描けるのか」と。発想がすごいなと思いました。しずちゃんさんはシンプルに絵がめちゃくちゃ上手ですね。
ーー出演の反響は大きかったですか。
友達が意外と観てくれました。今は見逃しでも観られるので、オンタイムで観ていなくても「友達から聞いて見逃しで観たよ」という連絡がめちゃくちゃ多くて、ちょっと恥ずかしかったです。放送後はInstagramのフォロワーが500人くらい増えました。
ーー2回目(11月23日(木)19時〜)が放送されたら、またフォロワーが増えるでしょうね。お話できる範囲で、2回目の見どころはありますか?
前回とまた違うお題になってるので、前回にはなかった描く際のポイントを知ってもらえたらいいなというのと、今回もやっぱり芸能人の方はすごく絵が上手な方が多くて。私にはない感性を持ってる方がたくさんいらっしゃるので、出演者の方の絵にもぜひ注目していただきたいです。
取材・文=久保田瑛理 

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