TOMOOが2つの月に込めた想いを奏でる
 一夜限りの弾き語りライブでツアー
初日を非日常の空間に

TOMOO LIVE TOUR 2023-2024"TWO MOON" 2023.11.02(thu)EX THEATER ROPPONGI
シンガーソングライター・TOMOOにとって、自己最大規模となる新しいツアーが始まった。〈TOMOO LIVE TOUR 2023-2024"TWO MOON"〉は、メジャー・ファーストアルバム『TWO MOON』のリリースに伴う、2024年1月まで8公演をおこなう全国ツアーだ。『TWO MOON』は、過去2年間の配信リリースを中心にした選曲で、ツアーもきっとベストのセットリストになるはずだ。しかも初日の東京・EX THEATER ROPPONGI公演はスペシャルメニュー、一夜限りの弾き語りライブだ。ステージ上には、二つの月をイメージしたような二つの丸い舞台と、グランドピアノとキーボード。静かに流れる「ムーンリバー」のBGM。あちこちに月の要素を散りばめたロマンチックなライブ、いよいよ開演。
1曲目は、メランコリックなスローバラード「Mellow」。澄んだピアノの音色に乗せた、温かくて飾りのないTOMOOの声が、耳元で歌っているようにすぐそばで聴こえる。たくさんの星球を散りばめ、ステージ全体が満天の星空のような輝きに満たされた照明が、息を呑むほどに美しい。続く「Ginger」は、自然に湧き起こった盛大な手拍子をリズム代わりに、アップテンポで軽快に。きゃしゃな腕からは想像できない、左手の激しいタッチにほれぼれする。最小限の光と音と歌声だけで、オーディエンスを一瞬で非日常の空間へと連れ去る引力。まるで魔法にかかったようなオープニング。
TOMOO
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「初日は一夜限りの、スペシャルな弾き語りでお届けする夜です。いろんな意味でスペシャルなことがいっぱいで、『TWO MOON』のイメージにどっぷりと、一緒に浸かる夜を作れたらいいなと思っています」
二つの舞台のもう片方に置かれているのは、TOMOOお気に入りの電子ピアノ、ウーリッツァーだ。柔らかい音色をポロンポロンともてあそび、ドビュッシー「月の光」をちょこっと弾いてみせたり、自宅にいるような気楽な感じがとてもいい。アルバムには入っていないが、アルバムのイメージに合わせて選んだという「レモン」と「ネリネ」は、儚く幼い恋心の風景が、電子ピアノのふんわりと温かい音色で、なおさらせつなく胸に迫る。刻々と色を変える星空の照明の、冷たい美しさが身に沁みる。そこに、大人になる痛みと渇きをまとった「Grapefruit Moon」が輝く。コンサートというより、小劇場で朗読や演劇の舞台を見ているような気持ちになる。
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「『TWO MOON』は、いろんな時期に書いた曲が入っているアルバム。バラバラに見えるけど、何か共通していることはあるかな?と思ったら、少女の頃から大人になってもずっと変わらず、本当を探したいと思っているまなざしが、共通していると思います」
真面目な話になっちゃった。どこから来たのー?とか、そういう感じにすればよかった。でもそういう雰囲気じゃないかも。――MCでは、一人で先走って一人で突っ込んで一人で笑って、オーディエンスが優しくそれを見守るスタイルは、TOMOOのライブの自然体だ。「POP’ N ROLL MUSIC」ではミラーボールがまばゆい光を投げかけ、満天の星が七色のグラデーションに染まる。「ベーコンエピ」はリズミックに力強く、「Cinderella」はソウルバラードのように味わい深く、「夢はさめても」はメロディックなピアノポップの魅力を全開に。弾き語りと言えどもすべての曲のアプローチが違う、なんて個性的で表現力豊かなピアニストだろう。この歌にしてこのピアノあり。
「人の心は実際に見えるものじゃなくて、自分がそう感じ取ったものだけど、その想像と想像の思い合いでもいいかなと、思ったりします。そして、明日の天気を思うことと、人の気持ちを想像することは、近い気がしています」
本物の月と、湖や海に映る月と、二つの月があります。――『TWO MOON』に込めたいくつかのイメージの一つに触れながら、人と人との思い合いについて語る、独特でみずみずしい感覚の言葉。そのあとに歌われた「窓」の中にも、TOMOOらしい優しさと繊細な感性がたっぷりと詰まっている。「夜明けの君へ」の中に出てくる月が、その柔らかな光で夜明けに向かって走り出す恋心を後押しする。悲しい歌も希望の歌も、TOMOOの歌には確かに一つのまっすぐな道筋がある。本当を探したいと思っているまなざしが、いつもここにある。

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「人は人の光を受け取って、受け取られて、そうやって一緒に生きていくようにできているんだなと思います。そんなこと、十代の頃は考えてもいなかったけど、10年ちょっと経って気づかせてもらいました」
ラストソングは「Super Ball」。込み入ったリズムパターンを、歌いながら何なく弾きこなす姿がかっこいい。それを会場いっぱいの手拍子がしっかりサポートする。素敵な一体感に包まれたフィナーレから、鳴りやまない拍手に呼び戻されたアンコールは、ウーリッツァーで弾く「ムーンリバー」のノスタルジックなメロディに乗って。さらに、この季節にぴったりの「金木犀」の美しい調べと共に。TOMOOの歌は、特にバラード調の楽曲は、風景と感情と、匂いと音と、思い出と空想が入り混じって、色鮮やかなストーリーを作り出す。聴くたびに新鮮で、季節と共に移り変わってゆく魅力がある。
「今日は私一人でしたけど、ここから始まるツアーはまた違った形で、いろんな音が一緒になって、あらためて『TWO MOON』を届けていくツアーが始まるので、また会えるのを楽しみにしています。元気でまた会いましょう」
TOMOO
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最後を締めくくる「オセロ」は、手拍子のリズムが作り出す一体感と共に、名残り惜しくも明るく楽しく元気よく。12月15日の北海道から再開されるツアーは、アルバム『TWO MOON』の世界をバンドサウンドで、より深く豊かに表現する形になるはずだ。セットリストも変わるだろう。TOMOOのライブは日進月歩、ファイナル公演・1月30日のTOKYO DOME CITY HALLにたどり着く頃には、どんな景色と感情を見せてくれるだろう。この冬いっぱい、『TWO MOON』をリピートしながら、再会の時を楽しみに待とう。

取材・文=宮本英夫 撮影=Kana Tarumi
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