L→R SHAL(Vo)、Takeshi(Gu&key&Ba)

L→R SHAL(Vo)、Takeshi(Gu&key&Ba)

【THE UNCROWNED インタビュー】
未発表曲集みたいな感じじゃなくて、
純粋な3rdアルバム

THE UNCROWNEDが3枚目のアルバム『STOPOVER -Dedicated to SHAL-』を完成させた。コンポーザーとして評価の高かったTakeshi(Gu)が、“未完の逸材”だったSHAL(Vo)とともにバンドをスタートさせたのが2016年のこと。既報のとおり、SHALは2022年8月に癌との闘病の末に他界。本作は彼女の歌をフィーチュアした最後の作品ということになる。Takeshiはどのような想いで制作に臨んだのか? 90年代J-ROCK/J-POPのアツくキャッチーな要素を湛えたメロディアスなハードロックチューンにじっくりと耳を傾けたい。

これは純粋に新曲として
リリースできるんじゃないかと思った

THE UNCROWNEDの音楽性をTakeshiさん自身の言葉で説明するなら、どのようになるのでしょう?

デビュー当時のアルバム(2016年12月発表の『REVIVE』)は、完全にメタルリスナーを狙ったようなものをあえて作ったんですね。前のバンドで活動していた頃に、その辺のところでいかないと支持を得られそうもないと痛感していたんですよ。ただ、それ以降はジャンルの壁を取っ払って、とにかく自分たちならではのメロディックな音楽を作りたいと思って、2ndアルバム(2022年9月発表の『WITNESS』)からはその姿勢を実行した感じなんです。基本的なメロディーは90年代のJ-ROCKの影響が色濃く出ていると思っているんですけども、それも意図的にやっているわけではなくて、“90年代っぽいね”とか“大黒摩季っぽいな”とか(笑)、そう人に言われるまで全然自覚はしていなかったんですよ。今ではそれが自分たちの売りのひとつなのかなとは思っていますね。

以前のバンドの頃からTakeshiさんが活動していたフィールドではメタル系のバンドが多かったということですよね。

そうですね。そのバンドは2ndアルバムを制作中に解散してしまったんですけど、その時にメタル方向に振ろうという感じで曲を作っていたんです。だから、その流れでTHE UNCROWNEDの1stが出たかたちなので、実質的に自分のソロアルバムみたいな感じだったんですよ。自分が作った曲をSHALが歌い、当時はメンバーだった弟がベースを弾いて。その後はメンバーとどういうものがやりたいのかを話し合った上で、制作を進めていったんですね。もちろん自分もヘヴィメタルは好きなんですけども、もっと幅広く聴いてもらえる普遍的なロック…実践できているかどうか分からないですけど、それがやれていればいいなと思っています。

90年代のJ-POP、J-ROCKの時代はTakeshiさんは小学生だったそうですが、どういうところに惹かれたのでしょう?

そこは本当に無意識で聴いていたので、どこがいいのかと訊かれると、なかなか答えるのが難しいですけども、時代が流れるにつれて作り手側としては、できるだけ過去のものと被らないものを作らなきゃならないわけじゃないですか。そうなると必然的にどんどん複雑になっていくと思うんですよ、メロディーの作りなども。まだ90年代というのはそういうのがギリギリなくて、素直に人の心に響くメロディーが作られていた時代だと思っているんですね。それがその当時の音楽の魅力なのかなと。あと、あの頃は80年代のLAメタルなどの影響を受けた人たちが作っていたものも多かったと思うんですね。だから、比較的ハードロック寄りな音楽性であったり、今と比べるとヴォーカルの歌い方もわりと熱唱系の人たちが多かったりして。それも自分に刺さった要因だったとは思いますね。

確かにいわゆるビーイング系全盛の時代ですからね。かたや、TM NETWORKなども愛聴していたんですよね?

はい。知ったのはTM NETWORKが活動終了するかどうかという時だったんですけど、彼らに関しては、まず見た目とかが好きだったんですよ(笑)。小室哲哉さんがカッコ良くて。ギターで初めてコピーしたのも「Time To Countdown」だったんです。TM NETWORKがちょっとハードロック路線に振った時の曲ですね。彼らに関しては曲もメンバーのキャラクターも含めて、今も一番好きですね。もともと音楽に興味を持ったきっかけはB’zだったんですよ。ただ、その頃『シティーハンター』の再放送がお昼にやっていて、“そう言えば、あの曲(「Get Wild」)がすごく良かったな”とふと思いついて、“これは誰の曲なの?”って親に訊いたんです。そこでTM NETWORKの存在を教えてもらって。

HR/HMに関してはどんなルーツになるんですか? もちろんB'zもその流れの中に入ってくると思いますが。

きっかけはMR.BIGでしたね。高校生の時だったと思うんですけども、ラジオで「Take Cover」を聴いたんですが、それを洋楽に詳しい友達に話したら“たぶん君が好きな感じだと思うよ”とベスト盤を貸してくれたんですよ。

『BIG,BIGGER,BIGGEST!』ですか?

そうです、そうです。その1曲目の「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」に、それまでに聴いたことのないような速弾きとかがあって、それでノックアウトされた感じですね。

その時にはすでにギターを始めていたんですね。

はい。中学の終わりぐらいから始めて、TM NETWORKに始まり、JUDY AND MARYのコピーを一生懸命していました。MR.BIGを聴き始めてからは彼らの曲のコピーをするようになって。それがハードロック系のギターを弾くようになったきっかけですね。

今に通じるテクニカルなギターの基盤はその頃に培われいたんですね。今回のアルバム『STOPOVER -Dedicated to SHAL-』はどのように制作が進められたのでしょう?

今回の収録曲の大半は2ndアルバムのリリースまでに書いてあった曲なんですよ。制作すると決めてから新しく書いたのはインストゥルメンタルの2曲だけです。レコーディング自体は今年の初めぐらいからスタートしました。

前作のリリースまでに存在していた曲ということは、その時点で今回のアルバムの構想があったわけではなさそうですね。

ないですね。2ndアルバムを作るにあたって、さっき言ったような自分たちならではの音楽を作るという流れでできた曲たちがあったんですけども、わりとポップな仕上がりで、それまでのTHE UNCROWNEDのファンの人たちに提示するのはちょっとどうかという感じがあったんですよ。だから、その時点ではお蔵入りにしていた曲だったんです。でも、2ndアルバムを提示した今だったら出しても大丈夫だろうという感覚もあって。あとは、SHALがせっかく残してくれたものをちゃんとかたちにして出すことで、ファンの人たちもきっと喜んでくれると思ったんので。もちろん、自分の気持ちにちょっと踏ん切りをつけるためにやった部分もありましたね。

2020年にSHALさんの病気が発覚して以降、彼女は闘病しながら活動を続けてきた歩みがありますが、傍から見ていても2ndアルバムがリリースされたことも、すごく奇跡的なことだったのだろうと思ったんです。

まさにそのとおりだと思いますね。そもそも歌のレコーディング自体も体調的に困難だったんです。彼女は栃木県に住んでいたんで、たまたま体調の良い日があれば連絡があって、自分がすぐに東京から駆けつけて歌を録るみたいな。その繰り返しでした。それに制作途中で彼女が首の手術をしたことで声が変わってしまったり、それまで出ていた音域が出なくなったりしたこともあったんですよ。そういうトラブルもあって、なかなか制作は大変でしたけど、本当に彼女の頑張りのおかげで、なんとか仕上げられたという感じです。

だからこそ、今回のアルバムの制作が進められていると伝え聞いた時、すでに録音していたヴォーカルトラックがあったことに驚かされたんです。今作を作る決意をしたのはいつ頃だったんですか?

今年の初めぐらいですかね。彼女が歌を残してくれたデモ音源が結構あったので、当初はとりあえずちゃんとレコーディングをし直して完成形にしようと思って作業をしていたんです。リリースするとかは関係なく。自分にとってのセラピーというか、それに打ち込んでる間は悲しいことも忘れられますし。ただ、完成したものを聴いた時に、これは純粋に新曲としてリリースできるんじゃないかと思ってレーベルに相談させていただいたんですね。でも、未発表曲集みたいな感じじゃなくて、純粋な3rdアルバムとしてリリースしたいという話もして。
L→R SHAL(Vo)、Takeshi(Gu&key&Ba)
アルバム『STOPOVER -Dedicated to SHAL-』

OKMusic編集部

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