【水樹奈々 インタビュー】
人それぞれに考え方が違って
十人十色、それでいい
“水樹、鬼”と思われた方が
多かったかもしれない
ラテンぽい感じのリズムの楽曲で、ちょっと舌を嚙みそうなメロディーや畳みかける感じがあって、さすが水樹さんの楽曲だなと思いました。
見た目はとても可愛いけど、触れると火傷するみたいな(笑)。私らしくひと癖ある曲になっていて、ブレスポイントがすごくシビアなのが特徴です。特に1番は“どこで息をすればいいの?”と思うほど息継ぎをする場所がありません。言葉も畳みかけていくので、滑舌も命ですが、それ以上に肺活量が大事で、心肺機能を高めていかないと大変です(笑)。
ツアーの前にレコーディングされていたのですか?
今年のお正月明けに行いました。制作自体はアフレコと同じく昨年の10月から行なっていて『でこぼこ魔女の親子事情』の世界にギュッと入っていた時だったので、すごくいいテンション感で楽曲に臨むことができました。なので、ようやくみなさんに届けられる!という想いが強いです。
楽曲はコンペで選ばれたのですか?
コンペでした。『でこぼこ魔女の親子事情』の原作漫画を作家のみなさんに読んでいただいて。私たちからはでこぼこ感ということで、楽曲はハッピーで踊れるようなサウンドだけど、それをストレートに表現するのではなく、いろいろな表情が見せられるような、それでいてちょっとひと癖ある展開がほしいというお願いをして、いろんな作家さんに書いていただきました。そんな中で、歌詞にもあるとおりまさしく《ビビビッ》ときたのが、サカノウエヨースケ(Blue Bird's Nest)さんのこの曲だったんです。実は、デモのタイトルは“大恋愛”だったんですけど(笑)。
そうなんですね!? 全然想像がつかないです。
もともとサカノウエさんがつけてくださった仮の歌詞があって。改めて藤林聖子さんに多様性をテーマに作詞していただいたかたちです。実はサカノウエさんにはサビのメロディーを何度も書き直していただいたんです。当初から構成がとても面白かったのですが、サビをもっと突き抜けたものにしたくて。約2カ“もうちょっとこんなふうにしたいんです”と何度もお願いをして。サカノウエさんの曲に決まったのが12月だったんですけど、そこから年末年始も返上で作業をしていただきました。
それだけこだわって制作した楽曲だけに、キャッチーなポイントが多数あります。例えばサビの《ジュワッとLove is in the air》というフレーズは、舌を嚙みそうだけど耳に残って、口に出して言いたくなりますよね。
そうなんです! キメのフレーズがたくさんあるので、クセになるし、そこに藤林さんの印象的な歌詞が加わって、とてもキャッチーでインパクトのある曲に仕上がりました。歌う時も《ジュワッと》のところなど、どういうニュアンスをつけるのか考えるのも楽しくて。英語も畳みかけるから、どうやったら鮮明に伝えられるかとか。
2番の《優しさの素は...You know,LOVE is the answer》のところもそうですね。
本当に速いんですよ!(笑) そこも聴いては録ってを繰り返して、どういう方向性がいいかを検証しながらレコーディングしました。
“今何て歌ったんだろう?”と、何度も巻き戻して聴き直しちゃいましたよ。
すみません(笑)。直球だけではない、水樹らしさが随所に散りばめられています!
歌声としてはとても明るくて、リズムに乗ってパキパキとした歯切れの良さがあって、とても気持ち良かったです。
ありがとうございます。何度も聴きたくなる心地良さを目指しました。一曲の中で同じ歌詞のフレーズが何度も出てくるのですが、実はメロディーがどんどん変化していくんですよ。そこがサカノウエさんの楽曲の魅力的なところで、1番に出てきたAメロが、2番ではかなり変化していたり。ライヴで演奏した時に、バックバンドのCherry Boysが“可愛い曲だけど可愛くない”と言っていました(笑)。キメもメロディーも展開や小節数も変わるので、トラップに引っかからないようずっと緊張感が続くそうです。オーソドックスな曲は、1番のAメロ、Bメロ、サビを覚えれば、2番以降は流れで演奏できるのですが、この曲はそうはいかないので、本当に演奏者泣かせの曲です。
ラスサビで合唱っぽくみんなで歌うところもいいですね。
愛がつながって輪になるイメージと、最後はより印象的にしたいという想いから、みんなで大合唱するパートを作りました。レコーディングではキングレコードのスタッフさんやマネージャーさん、アレンジャーさんなどみんなにブースに入ってもらって収録しました。
フルで最後まで聴かないと全体像が見えない曲ですね。
「ダブルシャッフル」(2022年4月発表の配信シングル)もそうで、それはサカノウエさんの曲の特徴のひとつですね。今回はキュートだけど個性が光る構成にしたいとお話したところ、サカノウエさんの持ち味を存分に活かした形に仕上げてくださったので、またこれまでの水樹楽曲にない面白いものになりました。
ちなみに、歌詞の最後に《そこら中Loveでいっぱい》とありますが、水樹さんが最近感じた《そこら中Loveでいっぱい》だったことは何かありますか?
ライヴの時が、まさしくそうでした! たくさんの愛に満ちあふれていて“本当にありがとう!”って、ひとりひとりを抱きしめたいくらいの気持ちでした。特に今回のツアーはめちゃくちゃ激しいセットリストで、バラードがほとんどなくて…まぁ、それはいつものことですけど(笑)、特に今回は声出しを意識したセットリストだったので、跳んで歌ってコールしてという曲が揃っていて。それをマスクをした状態で約3時間、みんなずっと変わらず声援を送ってくださったことは、もう本当に“愛”でしかありません! 猛暑でしたし、酸欠になっちゃうのではと、みんなの体を心配しながらステージに立っていたのですが、“水樹、鬼”と思われた方もいらっしゃったかもしれません(笑)。
ここ数年のライヴは毎回“鬼”のような気がしますが(笑)。
あははは。コロナ以降、ライヴができることが本当に特別で嬉しくて、ついつい攻めたセットリストになってしまって。ライヴの定番曲は体を動かしてこそという曲が多いですし、今回はみんなの声が復活するライヴだったので、余計に(笑)。
ハードなセットリストにこそ、水樹さんの愛が詰まっているという。
取材:榑林史章
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配信シングル「Sugar Doughnuts」2023年10月1日リリース
KING RECORDS
ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。水樹奈々 オフィシャルHP
「Sugar Doughnuts」