“クラッシュ・ギャルズ”の長与千種
&ライオネス飛鳥が10/1に復活ライブ
! ジャガー&アジャのレジェンドタ
ッグマッチも

1980年代、日本中に女子プロレスブームを巻き起こした伝説のタッグチーム、クラッシュ・ギャルズが結成から40年を経て一夜だけ復活。長与千種とライオネス飛鳥が10月1日(日)、神奈川・横浜武道館にて『CRUSH GALS 40th AnniversaryスペシャルライブーTHE TOP―』を開催する。
当日は長与&飛鳥のクラッシュ・ギャルズがライブとトークで当時の熱狂を再現。また現役選手たちによるプロレスも3試合行われるとあって(長与&飛鳥は試合なし)、懐かしい時代と現代の女子プロレスが融合する唯一無二のイベントとなりそうだ。
長与、飛鳥とも1980年に全日本女子プロレスでデビュー。83年1月に飛鳥が保持していた全日本女子王座に長与が挑戦したことを機に意気投合。空手を取り入れたスタイルで頭角を現し、同年8月、ジャンボ堀&大森ゆかり組のWWWA(World Women's Wrestling Association)世界タッグ王座に挑戦した試合が大ブレイク。クラッシュ・ギャルズ人気が沸騰した。
2人は、マッハ文朱、ミミ萩原、ビューティー・ペアらが世間をにぎわせた女子プロレスラーの歌手デビューも踏襲。タッグ王座挑戦と同時期にリリースした「炎の聖書」も大ヒットした。芸能活動もプロレス界を飛び出す大きな話題となり、クラッシュ人気は全国に飛び火したのである。
翌年8月にはビューティー・ペアの大ブーム以来、6年ぶりの日本武道館大会を開催。セミファイナルで長与がデビル雅美のオールパシフィック王座に挑戦し、その年の年間ベストバウトに輝いた。飛鳥はメインでジャガー横田のWWWA世界シングル王座に挑んだ。いずれも王座奪取こそ至らなかったものの、クラッシュ人気で武道館開催が実現したことは明らかだった。
また、クラッシュに対抗する悪役レスラーの徹底ぶりもブームに拍車をかけた。ダンプ松本率いる極悪同盟とクラッシュの抗争は、長与vsダンプの敗者髪切りマッチに発展。大阪城ホールを舞台におこなわれたデスマッチは長与が敗れてまさかの丸坊主に…。当時の女子プロレスは若い女性ファンが中心で、まさかの結末に超満員の場内はパニック状態、女性ファンの悲鳴で阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのである。
絶頂期には、テレビをつければ毎日クラッシュの姿を目にするのが当たり前。歌番組やバラエティーに加え、全女の中継が多いときには週に3度見られることもあった。そんな女子プロ人気により、オーディションには第2のクラッシュ・ギャルズを夢見てレスラー志望者が殺到。現在も現役で活躍するレジェンドレスラーだけではなく、マーベラスの彩羽匠のようにYouTubeからクラッシュの試合に憧れレスラーを目指した選手もいる。クラッシュの放つオーラは時代を越えて、人々を魅了し続けているのだ。
また、クラッシュが現在の女子プロレスの礎を築いた事実も忘れてはならない。クラッシュが出てくるまで、女子プロは前述したように若い同性のファンが大半を占めていた。が、クラッシュが男子プロレスのエッセンスを取り入れたことにより、男性のプロレスファンもクラッシュの試合に注目するようになっていく。それ以前の女子プロはプロレスマスコミでもほとんど報じられることがなかったのだが、クラッシュの出現により多くのメディアが注目。90年代の団体対抗戦ブームが男性ファン中心に支持されたのも、クラッシュのプロレス観が伝わったからこそだ。
長与は89年5月、飛鳥は同年8月に引退するも、ともにリング復帰。長与が95年旗揚げしたGAEA JAPANに、飛鳥が98年末に登場した。当初は敵対していた両者だが、2000年3月に「クラッシュ2000」として再始動。再びファンを熱狂させた。
新生クラッシュは05年のGAEA解散ともに消滅したが、長与はプロレス界に関わり続け、14年にマーベラスを設立するかたわら、飛鳥はプロレス界から身を引いていた。
しかし、クラッシュ結成40周年の節目を機に再び両者が顔をそろえた。今回のイベントは6月30日に行われたイベントで発表され、長与と飛鳥が2人揃って公の場に姿を見せたのは、実に18年ぶりの出来事だった。飛鳥は両ヒザが人工関節になっており、長与もヒザが悪く、リングに上がるのは不定期。よって2人で試合をすることには無理があるが、ブーム当時はステージでもファンを満足させてきた。「炎の聖書」「嵐の伝説」をはじめとするヒット曲の数々が、当時の興奮を再び呼び起こしてくれるだろう。
そして、クラッシュの2人が同時に期待するのが、リングを設置しておこなわれる女子プロレスの試合だ。ここでは3試合がマッチメークされ、それぞれテーマが異なっている部分にも注目したい。
▼Next Leadersタッグマッチ15分1本勝負
桃野美桜(マーベラス)&ウナギ・サヤカ組(フリー)vs笹村あやめ(2AW)&青木いつ希組
「ネクストリーダーズ」をテーマとする、次代を担う若い世代のタッグマッチ。ここで注目すべきは女子プロの枠を飛び越えて男子団体にもケンカを売るウナギ・サヤカの存在だろう。男子と女子が完全に別だった過去において、男子のエッセンスを初めて取り入れたのがクラッシュだった。
そしていまでは、男子と女子が直接闘うケースも増えている。その先鋒に立つのがウナギで、老舗・全日本プロレスのリングに上がり、ゼロワンのシングルリーグ戦にも女子で唯一エントリー。もちろん女子プロでも複数の団体で闘っている。そのひとつが長与のマーベラスで、その一期生としてデビューしたのが桃野美緒である。
桃野は小柄ながらもきびきびとしたファイトが好感度大で、今年5月には長与が初代王者となった、GAEAから受け継がれたAAAWシングル王座に初めて到達した。現在は無冠ながら、近い将来再び最高峰のベルトを狙ってくるだろう。
対する笹村あやめと青木いつ希は、元気いっぱいの闘いぶりが気持ちいい。笹村も男子と闘うのが当たり前の団体に所属しており、これもまた時代ということにもなるのだろう。今後の女子プロを担うであろう4人を見に来るファンも多いはず。クラッシュのライブや当時を再現する盛り上がりは、彼女たちのファンにとって新鮮な驚きとなるに違いない。
▼Leaders6人タッグマッチ15分1本勝負
橋本千紘(センダイガールズ)&彩羽匠(マーベラス)&葉月(スターダム)組vs朱里(スターダム)&優宇(プロレスリングEVE)&雪妃真矢(フリー)
「リーダーズ」をテーマとするタッグマッチには文字通り、現在の女子プロ界のトップが揃ったと言えるのではないか。橋本千紘は里村明衣子、彩羽匠は長与千種の弟子である。里村はGAEA時代、長与の後継者に指名された。GAEA解散後には里村がセンダイガールズを旗揚げし、長与はマーベラスを設立した。両団体のエースが橋本と彩羽で、ともに女子プロ界のトップでもある。
シングルでも闘ってきた両者がこの場ではタッグを結成。そして、ここに加わるのがスターダムの葉月だ。現在の女子プロでトップを走るスターダムは、彩羽がデビューした団体でもあり、橋本は今年20年ぶりに行われた女子プロ(スターダム)の横浜アリーナに参戦。朱里と一騎打ちをおこなった。両者ともかかわりのあるスターダムからどんなファイトスタイルにも対応する葉月が参戦するとあって、注目のトリオ結成と言えるだろう。
また、相手方が朱里&優宇&雪妃真矢組となるだけに、橋本と朱里の再会も見どころのひとつとなりそうだ。“モノが違う女”と呼ばれる朱里は、プロレス格闘技とも実績十分。21年末から約1年に渡りスターダム最高峰のワールド・オブ・スターダム王者に君臨し、昨年のMVPに選出された。橋本との再戦はもちろん、かつてスターダムに所属し長与の遺伝子を継ぐ彩羽との対戦も興味深い。
この朱里と組む優宇と雪妃は、フリーランスの売れっ子レスラーだ。重量級の優宇と、ヒールスタイルも華麗にこなす雪妃。このコントラストがこの試合のアクセントになりそうである。
▼Legends6人タッグマッチ15分1本勝負
ジャガー横田(ディアナ)&永島千佳世(フリー)&DASH・チサコ(センダイガールズ)組vsアジャコング(フリー/超花火プロレス)&加藤園子(OZアカデミー)&Sareee(フリー)
試合パートのメインと言える「レジェンド」は、その名の如く女子プロの伝説を作ってきた選手たちが一堂に集う豪華カードだ。
長与、飛鳥が目指してきた先輩で、いまなお現役として君臨する女帝ジャガー横田に、長与のGAEA JAPAN1期生である永島千佳世と、永島と同期の里村が設立したセンダイガールズの旗揚げ戦でデビューしたDASH・チサコが合体。歴史のつながりを感じさせてくれるトリオが結成される。
この3人に対するのが、アジャコング&加藤園子&Sareee組だ。アジャはクラッシュを追いかける形で女子プロ入り。ヒールのトップとして闘い続け、GAEAでは里村らの壁として立ちはだかるとともに、クラッシュ2000とも激闘を展開してきた。いまでも衰えることなく第一線で活躍。ジャガー横田、ダンプ松本とともに、全国でもっとも知名度の高い現役レジェンドと言っても過言ではないだろう。
加藤は里村、永島と同じくGAEA1期生で、長与イズムが浸透しているひとりだ。ここに加わるのがSareee。Sareeeは井上京子が設立したディアナで2011年にデビュー。京子、伊藤薫といった全女レジェンドの英才教育を受け、ジャガーとのタッグで実践教育を受けた。ジャガーがヒール軍団CRYSISを結成したのは、Sareeeの奮起を促すためだった。
そのジャガーはもちろん、Sareeeはアジャともディアナの最高峰WWWD(World Women Wrestling Diana)世界シングル王座をめぐり激しい闘いを展開してきた。そのかいあって大きく成長し、打たれ強さは女子プロ最高クラスと言えるだろう。21年には世界最大のプロレス団体WWEに移籍し、今年5月から日本での活動を再開させた。WWEで闘ってきたという部分では歴史を塗り替えたレジェンドとも言えるが、実績や将来性からも現リーダーと言えるSareee。ここではあえてレジェンドに属することで、日米での経験を存分に披露してもらいたいと思う。
このように、『CRUSH GALS 40th AnniversaryスペシャルライブーTHE TOP―』とはクラッシュギャルズをキーワードに、ライブと試合で女子プロレスのなんたるかを体感できるイベントと言えるだろう。クラッシュの時代をリアルタイムで体感した人はもちろん、知らないファンにもお勧めしたい今回のイベント。2023年10月1日もまた、伝説の一夜となる!
加えて『CRUSH GALS 40th AnniversaryスペシャルライブーTHE TOP―』では、SPECIAL GUESTとしてゆりやんレトリィバァさんの出演が決定。Netflixシリーズ「極悪女王」にてダンプ松本を演じるゆりやん。さらに…!? 当日は一緒に会場で見届けよう。
(新井 宏)

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