茅原実里と富士河口湖町の蜜月な関係
 大空に咲く花火の元で響いた「約束
のシンガロング」ライブレポート

2023.8.4(Fri)『富士河口湖町制20周年記念花火大会 茅原実里 LIVE 2023 "We are stars!"』
富士急行線を下車してのんびりと歩いて、会場となる県営河口湖平浜駐車場大池公園駐車場まで20分ちょっと。空が赤く夕焼けに染まる中、茅原実里の歌を聴くために集まったファンは確かな熱量を持って開場を待っていた。
『富士河口湖町制20周年記念花火大会 茅原実里 LIVE 2023 "We are stars!"』と名付けられた今回のライブは、富士河口湖町の町制施行20周年を祝う式典として開催される。やまなし大使を務める茅原だからこそ実現したものだが、何よりも茅原実里が歌手活動を再始動するという大きな事実が僕らを河口湖まで呼び寄せたのは事実だ。
2021年12月の『Minori Chiara the Last Live 2021 〜Re:Contact〜』以来、約一年半ぶりのライブ。ステージはサイドにスピーカータワーが設置され、野外ならではのシンプルな作り。場所柄の制約も非常に多いのだと思ったが、それ以上に後方に広がる河口湖と広い空が、何にも変えられない天然の舞台美術だ。
日が暮れていく中、SEとしてフジファブリック の「若者のすべて」が響き渡る。会場も、観客も、感情も全て整った、満を持して茅原実里がステージに現れる、一曲目は「純白サンクチュアリィ」。初速から会場は大爆発。
「みんな久しぶり!元気にしてた!?」
満面の笑みで客席の感性に応える茅原、復活ライブであると同時に、これは茅原実里の4年ぶりの声出しライブでもあるのだ。「身体なまってない?忘れちゃってない?」しっかり確認した後に扇を持った彼女から放たれるのは「美歌爛漫ノ宴ニテ」。和風テイストでコール&レスポンスも客席と一体になって盛り上がる。
続く「FEEL YOUR FLAG」では茅原のライブ定番となったフラッグをはためかせながら歌う。客席は今回のライブのフラッグだけではなく、過去のライブのフラッグも多数散見された。茅原実里の道は今もずっと繋がっている。
ここまで町の式典とは到底思えない雰囲気と一体感で進んできたライブ。だが、次のMCで改めて茅原実里と富士河口湖町とのつながりを感じることになる。茅原の呼び込みで富士河口湖町長の渡辺喜久男氏がステージに登壇。万雷の拍手で迎えられた渡部氏が「わたしも一曲披露したくなりますね」とにこやかに語ると会場からはおもわず町長コールも。
「茅原さんと一緒に楽しんで下さい!」とエールを送る町長の姿を見ると、本当に町そのものに茅原実里が愛されているというのを実感する。勿論2009年から毎年河口湖ステラシアターでのライブを続けてきた彼女の事は知っているが、現地に来て初めて分かるものというのは沢山ある。コロナに関するエンタメ界、そしてファンの辛さを語った後にしとやかに歌われたのはTVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ED主題歌「みちしるべ」後ろから照らされた照明、自然をバックに歌うその姿には、静かなメロディの中に茅原の強い思いが感じられた。静かに上がっていくリフター、ステージから数メートル上の茅原の後方、楽曲に合わせて花火が上がる。
思わず「うわぁ…」と声が漏れた、夜空に咲き誇る花火をバックに歌い上げる茅原実里。富士河口湖からの「おかえり」と、僕らの「おかえり」が結実する瞬間。ここで彼女が歌手活動を再開させることは必然だったと思ってしまった。
「この街に生まれたから、あなたに巡り逢えた」今ここでそれを歌うのはずるいよ、そう思いながら天空に思いを馳せる。花火の上がるドーンという音と、それをも包み込むような歌声。感慨に浸っていると、すっと茅原がマイクスタンドを持っていた。
ということはあの楽曲だ。客席のギアが変わる。「Paradise Lost -at next nest-」。茅原実里の代名詞であり、最強の武器であるこの曲でも花火が大輪の華を咲かす。曲のイメージ通りの赤が空を染める。勿論客席のペンライトも赤一色だ。
ライブ本編の最後はライブタイトルにもなっている「We are stars!」
「今日はみんなの声を聴くためにここに来ました!」そう叫ぶ茅原の後方で花火が鼓舞するように上がっていく。みんなと声を重ねるために作ったがコロナ禍のためにわなかった全員でのシンガロング。星型の花火も上がる、楽曲とのシンクロもそうだが、フリーライブでこの打ち上げ数はとんでもない。本当に茅原実里が愛されているからこその演出。
そして一年半のブランクがあっても歌は全く衰えることはなかった。茅原実里の楽曲は、茅原実里が歌わないと生まれない独特のグルーヴがある。世界中の名歌手が歌っても出ない不思議な気持ちよさがあるのだ。それを感じたくて僕らはライブに通う。だから歌っていてよ、そう思い続けた一年半だったのを改めて振り返る。
「ということで続きはこの先で!またね!」最後の決めに合わせて特大の花火が上がる。ステージを去る茅原にアンコールが鳴り止まない。
アンコールで姿を現した茅原。最後の曲は「purest note ~ あたたかい音」感謝と笑顔を詰め込んだ一曲。これまでのサマーライブでも奏でられてきたこの曲にも客席から響き渡る「ラララ」の声が帰ってきた。この声が途絶えない限り、茅原実里の居場所は無くならない。彼女にしか繋げない縁がある。わずか七曲だったが、茅原実里が全部詰まった極上の時間は「みんな大好き!」という茅原のマイクを通さない叫びと花火で幕を下ろした。
帰り道の背中に爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」が聴こえてくる。ああ、そういえばフジファブの志村正彦もサンプラザ中野くんも山梨県出身だ、とことん地元愛に溢れて粋な時間だったと思い知らされ、完全に夕闇に沈んだ富士河口湖町を後にした。
来年の8月3日~4日の二日間。デビュー20周年の記念ライブを河口湖ステラシアターで行うことも発表した茅原実里。586日ぶりに動き出した彼女の音楽は、きっともう止まらない。
レポート・文=加東岳史

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