UVERworld、「心の底から笑顔で言え
るよ。やりきりました!」 72,000人
のシンガロングが響いた日産スタジア
ム初日公演をレポート

UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM

2023.7.29 日産スタジアム
DJとして、ひとりステージに上がった誠果(Sax, Manipulator)が20分、クイーンの「We Will Rock You」やボン・ジョヴィの「Livin’ On A Prayer」も交えながら、スタジアムを揺らしたあと、ステージの左右にあるLEDビジョンで15、14、13……とライブの開始を告げるカウントダウンが始まる。そして、大量のスモークの中、メンバー6人を乗せた舞台がせり上がり、空中で止まる!
ついに始まったUVERworld史上最大規模となる日産スタジアム2デイズ公演『UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM』。その1曲目にバンドが選んだのは、10日前にリリースしたばかりの最新アルバム『ENIGMASIS』収録のアンセミックなロックナンバー「VICTOSPIN」だった。
「行こうぜ! UVERworldの歴史的最高の日! ヤバい日!」と叫んだTAKUYA∞(Vo)に応え、72,000人の観客が早速、声を上げる。
バンドの姿を背後から捉えたカメラの映像がLEDビジョンに映し出される。6人が演奏している舞台はかなりの高さだ。なるほど、UVERworldには高所恐怖症のメンバーは1人もいないらしい。
そこから2時間30分。観客の度肝を抜くスペクタクルな演出も交えながら、TAKUYA∞をはじめとする6人は一丸となって熱演を繰り広げていった。それが観客を楽しませるだけのエンターテインメントなショーではなく、たとえば、UVERworldに日産スタジアム2デイズなんてできっこないとせせら笑っていた奴らに対する怒りや、たとえばコロナ禍の名の下に見えない圧力によって、突然、すべてを奪われてしまった悔しさといったネガティブなものも含め、さまざまな感情を曝け出す、それこそタイトルでも謳っているとおり“THE LIVE”になってしまうところがいかにもUVERworldらしい。
以下、メンバーたちがMCに込めたさまざまな思いもぜひ読み取りながらこのレポートを読んでいただきたい。
「もう気づいてもらっていると思うけど、俺たちはこのステージに人生を賭けている。ピークを作ろうよ。声が出せるようになったら、一緒に歌おうって言ってきただろ? その約束はここで果たそうぜ!」(TAKUYA∞)
いつもなら終盤という印象がある「IMPACT」を序盤に持ってきたのは、ここで作ったピークをこの後いくらでも超えられるという自信があるからだ。
「最高のセットリストで来ています。長年、UVERworldを応援してくれる人、最近、UVERworldを知った人、東京から来た人、横浜から来た人、北海道から来た人、沖縄から来た人、みんなの思いを乗せて最高のライブにしようと思います!」
そう意気込みを語った真太郎(Dr)が言った最高のセットリストとは、『ENIGMASIS』からの7曲を軸に新旧の代表曲を織りまぜた全25曲。「IMPACT」はもちろん、この日、ほぼ全曲で72,000人のシンガロングがスタジアムに響きわたったのだった。
「遠くからずっと応援してくれる人、すごく近くから支えてくれたみんな、すべての人に心からの笑顔で、やりきれましたと言えるような1日します。よろしくお願いします!」
72,000人に対峙する覚悟をTAKUYA∞が改めて語ってからの中盤は、ダンサブルなサウンドがスタジアムを揺らした「CHANCE!」から懐かしい曲の数々を繋げながら、「UVERworldが全員に会いにいくよ!」(TAKUYA∞)とメインステージからアリーナを1周するように伸びた花道や、アリーナの最後列とスタンド席の最前列の間に作ったサブステージでも演奏する6人のエネルギッシュな姿に観客のシンガロングの声もどんどん大きくなっていった。
「(自慢げに)全員が近くになるようにステージが設定されているでしょ? いつもに比べて、みんなの声が大きい気がしているんだけど! ここはサッカー競技場だから、下は芝生なんだけど、ちゃんと芝が傷つかないように養生もされているから、思いっきり楽しんでもらって大丈夫です。全力で声を出してください。みんなの声がないと、最高のものにならない。行こうよ! やっと始まったね。新しい時代の匂いがするよ。ここで何を歌うかけっこう迷ったんだけど、やっぱりこの曲を歌いたい。俺たちの始まりの合唱。全員で歌おう!」(TAKUYA∞)
披露したのは、それまでサポートという位置づけだった誠果が初めて正式メンバーとしてクレジットされた2014年発表の8thアルバム『Ø CHOIR』収録のアンセム「Ø choir」。もちろん、観客は冒頭のバラードパートからTAKUYA∞と一緒に歌っている。
その後も、これまでライブでやろうとしても曲に込めた思いが強すぎてどうしてもできなかったというバラード「モノクローム」を、「最初で最後。今後は俺だけの曲にする」(TAKUYA∞)と言いながら披露したり、「ENCORE AGAIN」では音源通りTAKUYA∞からSHUNTO(BE:FIRST)をサプライズゲストとして迎えたり、「(音漏れによるネタバレを避けるため)リハーサルで1回もやってないから不安でしかたない」と言いながら、「本当の初披露を見せたい」(TAKUYA∞)とエモーショナルなロックナンバー「ビタースウィート」をぶっつけ本番で演奏したり――ライブのタイトルで謳っているプレミアム感を演出する曲を、日が暮れる絶妙のタイミングで立て続けに披露して、この日を忘れられない1日にするため全力を注ぎこむ。
「新旧織りまぜたセットリスト、けっこうよくない? がんばったよ。みんな気に入ってくれるといいな。昔の曲はさらに輝いてくれるし、新曲がすごくかっこいいから相乗効果が生まれている」(TAKUYA∞)
「僕たちを素敵な場所に連れてきてくれてありがとうございます!」(克哉/Gt)
「夢の舞台に立つことができました。この景色、忘れたくない」(信人/Ba)
感無量の面持ちで語る3人の言葉からもスタジアムの熱狂が想像できるだろう。しかし、それはまだ前半戦の話。
「アゲていくぞ!」(TAKUYA∞)
ラップロックの「Don’ t Think, Sing」で緊張感を高めるようになだれこんだ後半戦は、「PRAYING RUN」「Touch off」とお馴染みのアンセムを繋げ、観客のシンガロングの声の大きさをさらに更新していく。
「これをやりたくてUVERworldをやってます。この感動が欲しくて、ずっとUVERworldを続けてます。これが俺の人生!」
TAKUYA∞が快哉を叫ぶ。すると、向こう意気、誇り、悔しさ、憤り、怒りなど、さまざまな感情が入り混じる熱い思いが言葉となって、TAKUYA∞の口から溢れ出てきた。
「今の俺たちのように好きなことを好きな場所で好きなだけやっていることを歓んでくれる人だけを愛せればいい。俺のことを嫌いな奴の人数なんて数えるヒマはねえよ。この先、どんな未曽有の災害が起きるかわからない。3年前みたいにすべてを奪われる可能性だってある。でも、俺たちはあの瞬間でさえも匍匐前進で少しづつ進んできた。それはみんなが感じてくれてると思う。リリースも止めなかったし、配信ライブもみんな見てくれたし、半分しか人を入れちゃいけない時もがんばってチケットを取ってくれた。あそこで止まってたらきっと俺たちはここにはいない。これからもそうだ。だから、次のメッセージはこうだ。俺たちは何があっても進み続けるけど、おまらは一体どうなんだ!? 今一番大切な曲です。心を込めて歌います!」
演奏したのは「EN」。コロナ禍の真っ最中、匍匐前進を続けているUVERworldが放った新しいアンセムがスタジアムに鳴り響き、それを72,000人がじっと聴き入る光景に鳥肌が立つ。
「俺は絶対に今日を忘れない。あなたにとっても忘れられない1日になってたらいいな」(TAKUYA∞)
そこから繋げたエモーショナルなロックナンバー「Theory」の演奏中、ここにいる全員を祝福するようにステージの上に花火が上がる。
「もっと強くなりたい。本当の強さが欲しい。心ないことを言われて、傷つくのはあたりまえだ。急に自信がなくなるのもあたりまえ。何もないのに死にたくなることだってあるんだよ。そんな時、正論をぶつけるんじゃなくて、がんばったな、つらかったなと言ってあげられる強さが欲しい。強くなりすぎて、人の気持ちがわからなくならないようにこの曲は新しいアルバムの中でも一番大事にしている曲です」(TAKUYA∞)
ライブの最後を飾ったのは、バラードの「ピグマリオン」。バラードとは言え、そこはロックバンドが演奏するバラードだ。彰(Gt)と克哉が奏でるギターの轟音、信人と真太郎が響かせる重低音は、UVERworldが持つロックバンドとしての矜持を印象づける聴きどころだったと思う。
「これからだって、今以上に大きな規模のライブをしたいけど、今はとにかくいい曲を作りたい。いいライブをしたい。そのために誰かの思想や言葉に対して、考えすぎて表現の幅を狭めたくない。だから、俺たちは好きなことをやって、好きなことを歌っていくんだけど、その中で離れていく人もいるかもしれない。それもいい。ただし、あなたがUVERworldの何を好きだったのか、何の曲が好きだったのか、それだけ伝えてから去ってくれよ。そしたら、それ以上の俺たちになって、それ以上の曲を作って迎えにいくから!」
いつもはアンコールをやらないUVERworldがライブに欠かせない大事な曲をやっていなかったと思ったのか、この日はアンコールとしてもう1曲だけ演奏した。「MONDO PIECE」。まだ聴いていない曲があると誰もが思っていたに違いない。
ダメ押しで72,000人にシンガロングの声を上げさせると、TAKUYA∞は言った。
「心の底から笑顔で言えるよ。やりきりました! 新しい時代に足跡をつけた。さらなる未来に足跡をつけた。俺たちがUVERworldだ!」
それはコロナ禍を乗り越えた6人の勝利宣言に他ならなかった。突然、すべてを奪った見えない圧力に対するリベンジの舞台として、日産スタジアムほどふさわしい場所はなかったと思う。
取材・文=山口智男 撮影=平野タカシ

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着