DEZERT、ツアー初日公式レポート到着
 「DEZERTに触れてきたこと、絶対意
味がある。ここにあんたらの居場所が
ある。俺はそう信じてる」

DEZERTが6月17日(土)にCLUB CITTA'にて開催した『DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”』初日公演のオフィシャルレポートが到着した。

DEZERTが、『DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”』の初日公演を、6月17日に神奈川県川崎市・CLUB CITTA'で開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
公演前日には、新曲「君の脊髄が踊る頃に」のミュージックビデオと新しいアーティスト写真を解禁。そのどちらにも、風船、カメレオン、猫、ひまわりなど、DEZERTのこれまでの歩みを象徴するようなモチーフが散りばめられており、本ツアーが彼らにとって極めて重要なものになることを予感させていた。
深緑色に照らされた不穏な空気漂うステージへ登場したメンバーは、黒一色の新衣装。近年はカラフルでポップなイメージのビジュアルが多かった彼らが、いま改めて提示してきた黒には決意や覚悟といった重みを感じる。ストロボのような強い光が瞬き、SORA(Dr)が咆哮し、高まる緊張感の中でライトが真っ赤に切り替わると、新曲「君の脊髄が踊る頃に」からライブは幕を開けた。
この曲は、本ツアーと、9月23日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催するワンマンライブの会場限定で販売されるシングル「僕等の脊髄とブリキの夜に」の収録作品で、最新のDEZERTの姿を象徴するような激しくもメロディアスな楽曲である。ライブ初披露にもかかわらず、拳を振り上げ、頭を振り、最初から全力でノる観客たち。「調子はどうだい? 川崎! 精一杯、息して帰ってくれよな!」と千秋(Vo)が煽ると、大きな歓声が返ってくる。ステージ上もフロアも気合いは十分のようだ。
勢いをそのままに、「再教育」へ。フロアに掲げられた無数の右手はリズムに合わせて揺れ、曲の盛り上がりに合わせて激しく突き上げられる。「胃潰瘍とルソーの錯覚」ではフロアの隅から隅までほとんど全員が激しくヘッドバンギング。まるで一つの生き物のように見えるほどすさまじい一体感だ。
「6月17日。良い一日にしましょう」。ライブへ真摯に向き合う姿勢を示す千秋の言葉から始まったのは、「The Walker」。昨年リリースしたこの曲は、前に進み続ける、というDEZERTとしての強い決意を表明する作品。マイクを握り、お立ち台からステージ前方に出てきた千秋は、“立ち止まらないで歩くんだ 未来なら僕等の再会の果てでいつまでも待っているんだ”、“きっと綺麗な未来だけじゃないけど 僕は諦めないと決めた”と観客一人一人に語り掛けるように歌い上げる。
「あんたらの心を今日見せて帰ってくれよな。暴れるだけじゃ物足りないんよな。もっともっと上に行くから。もっとあんたらを求めていくから。今日は俺の心、全部やるから。その耳かっぽじって、その目かっぴらいて、刻み付けて帰ってください。なぁSacchan、なぁSORAくん、なぁMiyakoくん。全部心出してってくれよ」(千秋)。
観客はもちろん、メンバーをも焚きつける千秋。そこから披露したのは、今年1月に開催した東名阪ツアー『DEZERT LIVE TOUR 2023「てくてくツアー」』で無料配布された「「誰にも渡しちゃいけない場所を心と名づけ」」だ。悶え苦しむ心の奥底に触れるようなこの曲は、会場の雰囲気を一気にダークに変えていく。張り詰めた空気の中、暗闇に包まれたステージの上で千秋が黒い感情を吐き出し続ける。SORA、Sacchan(Ba)、Miyako(Gt)も渦巻く負の感情を音にぶつけるように激しいプレイを繰り広げ、観客たちは身動き一つせずステージをひたすらに見つめていた。
そのまま「神経と重力」へとなだれ込む。ジャケットを脱いで上半身裸になったSORAが叫ぶと、Miyakoがドラム台へ華麗に駆け寄り、激しくヘッドバンギング。Sacchanもアグレッシブなパフォーマンスを見せ、高ぶる感情を露わにする。
ヘヴィなサウンドでライブの勢いを加速させる「「変態」」では、コロナ禍に入ってから封印していたWall of Deathを再開することに。しかも、今回はCLUB CITTA'の柵の位置を考慮した結果、フロアを3分割して2つの道を作り、それぞれでぶつかり合うという斬新なやり方を千秋が指示する。すると、Wall of Deathが始まった途端にフロアのど真ん中から綺麗に人が居なくなるという何とも不思議な光景が広がっていく。数年振りに身体をぶつけ合った観客たちの中には、楽しさのあまりマスクをしていてもわかるほどに笑顔の人もいた。
「大塚ヘッドロック」が始まると、観客たちが上手から下手へと一斉にフロアを大移動し、会場は大きく揺れる。間奏部分では千秋がSacchanからリコーダーを強奪。手持ち無沙汰になったSacchanがステージ上をウロつくというシュールな展開に笑いが生まれる場面も。さらに暴れ曲は続く。「「秘密」」のイントロが流れると、歓喜の声があちこちから上がり、“待ってました”と言わんばかりに拳ヘドバンやモッシュの嵐が巻き起こる。
「一人も残さずに行くぞ。後ろ、見えてないけど見えてるからな。(前、)眼中にないけど見えてるからな。真ん中、見えてるからな。だからさ、声でないやつも声出るやつも、まとめて……遺書を書こう!」。そんな千秋の煽り文句から始まったのは、「「遺書。」」。ステージで繰り広げられる激しいパフォーマンスに共鳴するよう、全力で暴れる観客たち。フロアには熱気が立ち込め、ボルテージは最高潮に。サビを会場全員で歌うパートでは、最近のライブから導入された“1オクターブ担当“の効果により、ロックバンドのライブとは思えない美しいハーモニーが生まれる。さらに、千秋の思いつきで急遽録画や録音がOKに。観客たちは“今日の遺書”として自分の歌声とステージの景色をスマートフォンに収めた。(この動画は、後に「#今日の遺書」というハッシュタグと共にTwitterへ投稿されている)。
「楽しいな! 俺は楽しいぞ。でもこれからDEZERTのファンたちに色々求めてしまうと思います。ノリとかじゃなくて。いい奴になるの疲れたから。いい奴じゃないねん、求めちゃうから。今日ここにいる全員、生きてる証を私らにちょうだい。声でもいい、拳でもいい、汗でもいい。生きてる証をちょうだい! きっとここに集まった俺たちになにか意味があると信じて、一生懸命歌います」(千秋)
ライブの前半でも口にしていた、貪欲に観客の心を求め続ける千秋の思いは、そのまま「ミザリィレインボウ」へと繋がっていく。《笑えば伝うほどの 痛み背負って 愛を歌っていて》、《夜明けを待たずともさ 一つになれる そんな気がした》と全身全霊で叫ぶように歌い上げ、観客たちの心を震わせる。途中、「君も、君も、君も!」とメンバーを指さしてから《君と僕 誰かのために 架かる虹は色んな色だ》という歌詞に繋げる場面も。まさに一人も残さず、今この瞬間を共にしている全員の心をまとめて引っ張っていってくれた瞬間だった。
「今日来たお前らに歌いたい歌があるねん。今俺が思うこと、歌にしました。綺麗事で吐き気がするやつもいると思うけど、そのゲロも俺が飲んでやる。DEZERTに触れてきたこと、絶対意味がある。ここにあんたらの居場所がある。俺はそう信じてる。来てくれてありがとう! またDEZERTやろうな」(千秋)
バンドマンからファンへ贈る愛のメッセージとして、これ以上の言葉はきっと存在しないだろう。そんな最大級の愛を込めて届けたのは、「僕等の脊髄とブリキの夜に」の2曲目に収録されている新曲「僕等の夜について」だった。「どうしてもライブを見に来たファンに初めて歌いたかった」というこの曲は、まさに千秋がこれまでMCで伝えてきたメッセージをそのまま歌詞に込めてメロディーをつけたような、不器用で繊細な直球のラブソングだ。4人の溢れる思いが込められた音楽に胸を熱くさせた観客たちは、「オイ! オイ!」と叫びながら拳を突き上げ、フロアから精一杯のアンサーを返した。
本編ラストの「「君の子宮を触る」」から、アンコールの「半透明を食べる。」「Sister」「脳みそくん。」までは、怒涛のラッシュで観客を暴れさせる。メンバーも観客も汗だくになりながら迎えたフィナーレには、「TODAY」が掲げられた。《生きててよかった そう思える夜はきっとここにある》と、祈りを込めたメッセージは、このライブという空間を特別な場所に変え、会場にいるすべての人々の心を瞬間的に救う力を持っている。2018年にリリースして以来、何度もライブで丁寧に届け続けてきたこの曲に、4人は今抱える思いの全てを託した。
なお、本公演は事前に渡されたセットリストから変更した箇所が多く、おそらくライブ直前にリアルタイムで作り変えていったのだろう。それでも約2時間の公演を振り返ってみれば、絶妙なバランス感で勢いと緩急のある完璧なライブが展開されており、そのセンスと対応力に感服させられたことも記しておきたい。
異なるメッセージを放つ2つの新たな楽曲を携え、DEZERTのツアーは最高の形でスタートを切った。彼らの伸ばした手は、全国各地でどれだけ多くの人の心に触れるか。そして、ツアーの先に待つ『DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-』で、何を表現するのか。着実に前へ進み続けるDEZERTを目に焼き付けたい。

取材・文=南明歩 撮影=西槇太一

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