須田景凪、メジャー2ndフルアルバム
『Ghost Pop』オフィシャルインタビ
ュー公開

ボカロP“バルーン”ことシンガーソングライターの須田景凪(読み方:すだけいな)。5月24日(水)にリリースする、メジャー2ndフルアルバム「Ghost Pop」のオフィシャルインタビューが公開された。さらに、「Ghost Pop」初回生産限定盤、通常盤のパッケージ全貌が公開となった。

須田景凪の真骨頂を示す一枚が届いた。一度聴いたら耳を掴まれてしまうような即効性の強い楽曲から、胸にゆっくりと染み渡っていくようなメロウなナンバーまで。新作のメジャー2ndフルアルバム『Ghost Pop』は、以下のインタビューで語られているように、「ゴースト」と「ポップ」という言葉を通して、須田景凪のアーティスト性の核心にある二つの要素を突き詰めた作品だ。
新作はどんな思いのもとに作られていったのかを、じっくりと語ってもらった。
――アルバムを作り始めたタイミングはいつ頃で、その時にはどんな考えがありましたか?
アルバムを作るということが自分の中で現実的になってきたのは、去年自分がメトロックやロック・イン・ジャパンのようなフェスに初めて出させてもらう機会があった頃ですね。そのとき、やっぱり自分は昔からポップスを作りたい、よりいろんな人に知ってもらいたい、いろんな人に認められたいという気持ちがあることを再確認して。それが『Ghost Pop』の“ポップ”の部分であるならば、一方で“ゴースト”という場所もある。音楽を作る前から、すごくほの暗い場所にいるという自覚があって。どうしても埋まらない穴みたいなものが一生つきまとっている感じがする。とはいえ多くの人に認められたい、より大衆的なものを作りたいという気持ちもある。傍から見たら矛盾するかもしれないんですけど、確かにその二つが自分の中には大きな核としてある。そういった感覚を一つの作品にまとめたいと思って、そこから制作が始まっていきました。
――ということは、『Ghost Pop』というタイトルは制作の初期段階からキーワードとしてあった?
そうですね。フェスに出た頃からタイトルだけはぼんやりと自分の中にありました。『Ghost Pop』という名前に相応しいものを作りたいということは、前から思っていましたね。
――より開けたものにしたいという意識はありましたか?
初めましての人にもより届くようなものを詰め込みたかったというのはありますね。長いこと音楽をやってると自分の中で地続きになってしまう部分も多いと思うんですけど、あえてそういうものを無視した要素も多く入れたくて。最初は全部で10曲くらいの予定でしたが、いろんなバランスを考えた結果、最終的にこの14曲に落ち着きました。
――『Ghost Pop』というアルバムを作っていくにあたって、一つの手がかりになった実感があった曲はどれでしたか?
「ラブシック」ですね。歌詞や内容も含めて、この曲がいわゆる『Ghost Pop』というものを一番体現している曲なんじゃないかと思います。だからこそこれを1曲目に置きました。
――この曲は「わかるかしら」という歌詞のちょっと狂気性を感じるような声の出し方や、病んだ恋を思わせる歌詞など、いろんな部分で強いフックを持つ曲だと思います。これはどういうモチーフから書いていったんでしょうか?
この曲は一聴するとラブソングだと思うし、もちろんそう捉えてもらってもいいんですけど、自分の中ではAメロの「もう どうでも良かった 誰かにどう思われようと」という箇所が一番強く思っていることなんです。というのも、最近は昔では考えられないくらい人前に出させてもらうことも増えて、自分が思いがけない形で誤解されることも多々あって。それでも、その一つ一つを気にしてたら生きていけないと思う。そういう気持ちを音楽に昇華したかったというのがあります。
――自分の心情がスタート地点になっているけれども、書き方としては「私」と「あなた」のラブソングにもとれるようなストーリーテリング的な書き方になっている。
自分の曲はそういうものが多いんじゃないかなと思います。一聴したらラブソングではあるけれども、自分は主観的なことを歌うことが多いし、その時々の自分の思考を曲全体に反映させる書き方が多いので。この曲は特にそれが色濃く反映されていると思います。
――この曲の最後に「心に穴が空いてるの」と「心に花が咲いてるの」という韻を踏んだ歌詞がありますが、その意味合いがまさに「ゴースト」と「ポップ」に対応しているようにも思います。
まさにそうですね。矛盾してるなって昔から自分でずっと思ってるんですけど、でも、その二つがあるから自分なんだということはずっと思っていて。このアルバムの大前提のテーマとしてそういう部分があります。
――「メロウ」はTVアニメ『スキップとローファー』のオープニングテーマとして書き下ろされた曲ですが、これは原作に寄り添うように書いていった感じでしょうか。
そうですね。この『スキップとローファー』という作品は、もともと原作の漫画から読んでいて。今までタイアップさせていただいたお話はダークな作品も多かったんですけど、今回はめちゃくちゃキラキラした青春のラブコメディで。そういうお話をもらった時に、自分が書けるもの、自分がここに寄り添う形は何が一番相応しいんだろうと思って、何回も漫画を読み直しました。主人公のみつみちゃんは田舎からやってきた女の子で、志摩くんは東京に慣れている男の子なんですけど、みつみちゃんという存在との出会いで、志摩くんのなかで今までの当たり前が、全て当たり前じゃなかったかのように、景色がどんどん変化して見えるような心情描写があって。これを音楽で書きたいなと思ったんです。で、いざ曲を書き始めた時に、少しでもひねくれたら全く伝わらないものになる、相応しくないものになってしまうんじゃないかという気持ちがどんどん強くなって。結果として作品に強く寄り添った感じがします。
――須田さんのもともとの世界観の中には、爽やかな青春ラブコメはなかったわけで。
絶対なかったですね。
――けれどこの「メロウ」も違和感なく須田景凪の曲として成立している感じもします。
『スキップとローファー』の制作の方々からこのお話をもらったってことは、自分にどんな表現を期待してくれているんだろうとか、どういうアンサーが一番正しいんだろうとか、そういうことを長く考えました。この話がなかったらここまで振り切ったものは生まれなかったんじゃないかなと思いますし、それこそ今までの自分が知らなかった自分を見せてくれた曲でもあったので。ひとつ開けた曲だったのかなと思います。
――昨年には映画『僕が愛したすべての君へ』の主題歌と挿入歌として「雲を恋う」と「落花流水」がリリースされましたが、その時のインタビューで「シンプルな言葉を書くようになった」と言ってましたよね。持ってまわった言い方や難しい言葉をあえて選ぶんじゃなく、直球の表現を選ぶようになった。
なりましたね。特にここ最近はそれがマイブームでもあり、結局その方が伝わることも多いなと思っていて。意図的にそれを選んでいる節があります。
――アルバムを聴くと、そういう意図が曲の根っ子や骨格の部分に作用していて、そのモードが全体に作用している感じがします。
「メロウ」は本当に大きなきっかけになりました。自分の鎧を剥がすというか、今まで培ってきたものを一回崩す作業が必要になった。それを経て、さっき言った自分の核や根本にあるものを赤裸々に書いた方が説得力が増すんだろうなと思った。それが大きなきっかけになったので、他の曲にもだいぶそれが反映されていると思います。
――「いびつな心」はドラマ『沼る。港区女子高生』の主題歌として書き下ろされた一曲で、配信されたバージョンではむトさんをフィーチャリングに迎えていますが、アルバムでは一人で歌っています。この曲はどういうモチーフから作っていたんでしょうか?
この曲もお話があって作り始めたんですけど、言ってしまえば、わかりやすく自分が思う人生観みたいなものを書きたかった曲です。自分も含めて、過去を振り返っても、何が正解で何が不正解なんて一つもわからないということをずっと前から思っていて。たぶん、ここからもっと長いこと生きても、ずっとわからないの繰り返しなんだろうなと思うんです。10代の頃はその一つ一つに一喜一憂したり絶望したりしていたんですけど、最近はその一つ一つで悩み苦しむこと自体が素晴らしいことなんだろうとも思うようにもなった。それをより伝わる形で書こうとしました。
――曲調やサウンド、メロディに関してはどうですか?
むトさんは自分がネットで見つけてオファーさせてもらったんですけど、配信されているバージョンに関しては、そもそも10代とか若い年代の方に届くものにしたいドラマというお話をもらっていて。むトさんがfeat.参加したアレンジにはCarlos K.さんに入っていただいたんですけれど、サウンドに関しては言ってしまえば、あまり日常的に音楽を聴かない人にも届くものにしたいという気持ちが一番強かったです。『Ghost Pop』で自分が歌うときは、自分のアレンジで、同じ歌詞、同じメロディーではあるけれども、もう少しパーソナルな目線を持ったものとして聴く人に伝わるためにはこういうサウンドが相応しいんじゃないかなと思って作ってきました。
――「ダーリン」についてはどうでしょうか。この曲もアルバムのすごく大事なピースになっているし、「ラブシック」と同じくらいアルバムのトーンやムードを象徴している曲のように感じるんですが、この曲はどういう感じでできていたんですか?
「ダーリン」は「ラブシック」を作った直後に作った曲なんです。この曲は依存とか中毒みたいな言葉について考えている時に作った曲で。音楽についても「中毒性がある」ってよく言いますけど、そもそも中毒性のある音楽とは何かみたいなことを考えてました。ミュージックビデオでも顕著なんですけど、薬だったり、お酒だったり、自分の心の拠り所となるもの、中毒になるもの、依存してしまうものが出てくる。そこを軸に作っていったラブソングです。
――曲のモチーフが「中毒」であるというのを聴いてなるほどと思ったんですけれど、曲自体がまさに中毒性があるサウンドや曲構造になっている。そういう狙いはありましたか?
この曲に関しては結構狙いましたね。何度も同じ言葉を使ったり、短い時間軸の中で展開していく曲調だったり、まさに何回でも聴きたくなってしまうみたいな、中毒性みたいなところは意図的に作りました。
――「ダーリン」と「ラブシック」はこのアルバムを象徴している曲であると同時に、すごく今の時代っぽい感覚でもあると思うんです。というのも、かつてのJ-POPって、もっとパッセージがゆっくりな曲が多かったと思うんです。おおらかなメロディをたっぷりと情感を込めて歌い上げるようなタイプのバラードがJ-POPの王道だった。今はそれとは違って上下に飛び回る速いパッセージのメロディがポップスとして成立する時代になっている。そういう意味で、これがポップなんだという今の時代の価値観を打ち出してる感じもしました。
そうですね。おっしゃる通りで、プラス『Ghost Pop』の別の意味合いにもなるんですけど。時代ごとに音楽のトレンドは変わっていくと思うんですけど、今って本当に目まぐるしいじゃないですか。言ってしまえば、音楽が消耗品みたいな扱いをされてしまっている一面もあると思っていて。自分はそれが悲しいことだなと思っているんですけど、それと同時に今だから言えること、今だから伝えられるものを一番大事にしたい気持ちもある。そういう意味合いも「ダーリン」だったり「ラブシック」だったりに含むことができたんじゃないかなと思います。
――「ダーリン」や「ラブシック」では、ボーカリストとしての須田さんの成長がより現れていると思います。声の表現力がより幅広くなってきたと思うんですが、そのあたりの意識の変化はありましたか?
「ラブシック」のポエトリーの部分もそうですけど、一番大きいのは自分の声をより客観的に、自分だけの楽器として捉えるようになったことだと思います。たとえばこのキーだったら少し苦しそうな声になるけれども、その方がより感情的に聴こえるんじゃないかとか、「ダーリン」のAメロは優しめに歌った方がより寂しさや胸がキュッとなる感覚が伝わるんじゃないかとか、全体を通して客観的に見て歌えたんじゃないかなと思います。
――たとえば「バグアウト」には、エッジボイスやがなりのような歌い方もありますよね。それが単なるテクニックというより、表現としての必然性とちゃんと結びついているという感じがします。
それも意図的かもしれないですね。「バグアウト」ではサビ前でわざとがなっている部分があったりするんですけれど、この曲はヘイトをテーマにしている曲で、だからこそがなりの表現がこの曲に似合うんじゃないかと思います。
――「バグアウト」はワンループでありつつ表情豊かな曲ですが、これはどういう風に作っていたんですか?
この曲はもともとフィンランドの民謡のポルカというものを作りたかったんです。そこまで思って、一回それを自分の中で眠らせて。数ヶ月後に曖昧になったものをアウトプットしたら、この結果になったという。だからオケはすごいノリノリだし楽しそうなんですけど、そこにヘイトの言葉を乗せているというアンバランスの部分が自分は気に入っている曲です。人って、感情的になるとついつい早口になったりするじゃないですか。そういう部分が歌に反映できたら面白いかなと思ったりもしました。
――「Howdy」に関してはどうでしょう。これは『Ghost Pop』の中では、最もゴースト感がある曲という感じもしますが。
一番暗い曲かもしれないですね。この曲に関しては実は前回の『Billow』というアルバムにも入れようかと思っていたくらい前に出来た曲なんですけど。この曲がホラー映画を題材にして作ったこともあって。世に出すならアルバムのタイトル的にも、今回のタイミングしかないんじゃないかなと思って入れました。
――「ノマド」と「パメラ」についても、改めて聞かせてください。これはバルーン名義のセルフカバーですが、前のアルバムからの変化として、須田景凪名義の活動とバルーン名義の活動が並行して進むようになってきていることが挙げられると思います。
そうですね、言われてみれば。
――須田さんの中で、シンガーソングライター・須田景凪とボカロP・バルーンのアウトプットって、どういうバランスで両立しているんでしょうか?
バランスみたいなものはそんな重要視はしていないんです。ただ、前回のメジャー1stフルアルバム『Billow』を出すタイミングまでは、今よりもより一層、いろんなことを同時にできなくて。でも、前回のアルバムが終わったあたりから、多少自分のマインドの余裕も出てきて、たまにバルーン名義のものも出せるようになってきたという感じです。自分はボカロカルチャーのことを、言ってしまえば実家みたいなものだと思っているんですけど、年によってたくさん帰れる年もあれば、全然帰れない年もあるみたいな感覚で。バランスというよりもその時々でやりたい事をやりたいなと思っています。
――バルーンとしてのアウトプットがあること、そちら側での反応や届く先としてのリスナーがいるということは、須田景凪としての表現に何らかの影響はありますか?
ありますね。まず須田景凪名義で沢山曲を作った後にバルーン名義で作る時にすごく影響があったし。バルーン名義で作った後に自分の曲を作った後ももちろん影響があるし。もちろん一人の人間で同じクリエイターではあるんですけど、その相互作用みたいなものをすごく感じています。
――それぞれの住み分けはありますか?
自分の中で一番大きなものとして、作るときの根源の部分で、ボーカロイド曲のときは、いろんな人に歌ってもらって、それぞれの表現になるっていうものをまず考えます。須田名義だったら、もう一歩自分のパーソナルな部分に踏み込んだものというか。そういう住み分けをしています。そこから両名義でいろんな曲を出すことによって、この方がもっと伝わりやすいとか、その二つの名義同士で共通しているものとか、共有できるものとか、そういうものは増えていく感じはありますね。
――このアルバムって、歌詞に一人称と二人称の言葉が多いと思うんです。
そうかもしれないですね。
――例えば「ラブシック」だったら「私」と「あんた」、「メロウ」だったら「僕」と「君」、「ダーリン」だったら「私」と「あなた」。「雲を恋う」では「貴女」だったり、「美談」でも「あなた」と「二人」という言葉があったり。自分と目の前にいる他者との関係性が曲の中に表れている曲が多い気がします。これについてはどうでしょうか?
これも結果論なんですけど、特に最近思うのは、半分綺麗事に聞こえるかもしれないですけど、やっぱり人間は一人で生きていけないよなという考えが強くあって。音楽を作ったらその向こうには音楽を聴いてくれる方がいるし、いろんな人間といろんな話をして、その時は何も感じないかもしれないけど、その会話を数年先に、ふと思い出したりすることもある。いろんな人間との関わりが結局自分を構築しているというのは間違いなくある。そういうことを最近特に意識的に考えることが多くなって。その結果自然にその形になったのかもしれないですね。
――で、このアルバムの中で一人称しか出てこない、「私」しかいない曲って「ノマド」なんですよ。
あ、そうかもしれないですね。気付かなかった。
――このあたりについてはどうでしょうか?
「ノマド」は完全に自分の中の心象描写を歌っている曲なので。外に向かうのではなく、すごく内側に向いている曲です。他の曲は、結果として「君」だったり「あなた」だったり「あんた」だったりはするんですけれど、たしかに全部ありますね。そう言われてみると、より外に向けた作品になったんだなと思います。
――ラストの「美談」に関しても聞かせてください。前半が早いテンポで畳み掛ける曲が多いので、こういうゆったりとしたアコースティックな曲の存在感も大きいように思います。これはどういう風に作っていったんでしょうか。
この曲はアルバム制作の最後に作った曲です。最初から一番最後の曲にしようと思って書き始めていて、『Ghost Pop』という名前の通り、ゴーストから始まったのだったら、最後はいわゆるポップスで終わりたい。そこに相応しい曲調だったり、たぶん数年前の自分だったら言えなかったような言葉だったり、そういうものを詰め込みたいなと思った。今自分が思ういわゆるポップスっていうものを描けたんじゃないかなと思います。
――アルバムにはいろんなラブソングがありますが、「美談」が一番ラブソングとしての濃度が高い感じはあります。
そうですね。曲調としても説得力としても、飾りのないラブソングなんじゃないかと思います。
――こうして14曲が揃って、アルバム全体が仕上がっての実感はどういうものでしたか。
ちょっと時間が経って聞き直してみて、初めましての人でも今まで聴いてくれた方でも、より多くの人に伝わるアルバムが、今までの作品の中で一番良いバランスで世に提示できるんじゃないかなと今思います。
――最後に聞かせてください。“ゴースト”という言葉って、須田さんの中でどういうイメージ、どういう象徴なんでしょうか。“ゴースト”という言葉から思い浮かぶものを、思い浮かぶままに挙げてもらうとどんな感じでしょうか?
今作で言う“ゴースト”という部分では、さっき言ったような、胸に穴が空いていて、虚ろな場所にいるという感覚がやっぱりまずはあります。須田景凪名義の最初のアルバムの『Quote』の時に作った「Cambell」という曲に、当時はあまり深く考えずに書いていった歌詞だったんですけど、「未だ この幽霊の様な毎日だ」という歌詞があって。それを自分で聴き直した時に、ここまで自分を正しく書けた文章ってこれ以上にないんじゃないかと感じた記憶があった。音楽を始める前から、仄暗い、どこかに穴が空いている感覚があったこともそうだし、ボーカロイドカルチャーを経て、今よくインターネットミュージックみたいに言われるものも、常に実体性がないというか肉体性がないというか、すごくおぼろな存在だということをすごく感じていて。そこは自分の思う“ゴースト”という部分でもあるし、この作品におけるテーマにもなっていますね。
――そういうおぼろさって、ひょっとしたら、心地よさでもあったりしますか? 苦しさと痛みのような感覚と居心地の良さで言うと、どちらでしょうか。
たぶん両方ありますね。もちろん胸に穴が空いている虚無感みたいなものはすごくあるんですけど、同時にそこに飲まれている時間が心地いいんだろうなという自覚もある。その感覚に関しては、こればかりはもう変わっていかないんだろうという感じもあって。なかば自分の人生観みたいなところにもなってくると思うんですけど、それを今回タイトルとして提示できたんじゃないかなと思います。
――フェスに出たりたくさんの人に届いていくことによって、よりその虚無の部分が色濃くなるみたいな感覚もある。
色濃くなりましたね。やればやるほど、音楽を続ければ続けるほど、どんどんいろんな人に届いている実感もあるんですけど、それでも自分が満たされる感覚っていうのは全くなくて。ある種の孤独感がより強まる時もあって。自分は結構その正体を知りたいがために音楽をやっているみたいなところもあるので。多分、何十年もその感覚を見つめながら生きていくんだろうなと思います。
文=柴 那典

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