DEZERT、3年越しのリベンジツアー『
天使の前頭葉-結ふ-』東京公演オフィ
シャルレポート

DEZERTが4月24日にSHIBUYA CLUB QUATTROで開催した『DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉-結ふ-』のオフィシャルレポートが到着した。

DEZERTが、2023年4月24日に『DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉-結ふ-』を東京・SHIBUYA CLUB QUATTROで開催した。同公演のオフィシャルレポートを届けたい。
このライブは、3月から4月頭にかけて全国6都市で行われたツアー『DEZERT LIVE TOUR 2023 / 天使の前頭葉-零』の追加公演。セットリストは、「天使の前頭葉」が収録されたアルバム『black hole(2019年リリース)』の楽曲が中心となっていた。彼らは2020年にも『DEZERT 2020 TOUR 天使の前頭葉』というタイトルの全国ツアーの開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全公演中止。つまり、今回は3年越しのリベンジツアーだったのだ。
チケットはソールドアウト。週初めの月曜日にもかかわらず、フロアは満員だ。暗転後、SEのない無音の空間にメンバーが登場すると、大きな歓声と拍手が沸き起こる。
《生まれてしまったことがもう間違いだ》というフレーズから始まる「Dark In Black Hole」でライブは幕を開けた。生きる苦しみと絶望を音に込めて発散するように、滑り出しから爆音を轟かせる。そんな彼らに共鳴するよう、観客たちもイントロから思い切り頭を振っていた。不協和音が響く中、ステージを照らすライトが真っ赤に変わると「「誤解」」が始まり、会場の空気が張り詰める。ダウナーかつ緊張感のある独特の雰囲気は、DEZERTのライブならではだ。
続く「バケモノ」は、対照的に疾走感のあるキャッチーな曲。先ほどまでの重たい空気がガラリと変わり、観客たちは「オイ! オイ!」と声を上げながら拳を突き上げる。千秋(Vo)は、Miyako(Gt)、Sacchan(Ba)の元へ順番に近づき、メンバーをも煽るような仕草を見せた。すると、「Thirsty?」では、2人がお立ち台に乗ってフロアを扇動。後方でSORA(Dr)も全身の力を叩きつけるような激しいドラムプレイを見せ、ステージとフロアが一緒に熱を高め合っていく。
ミラーボールが回るムーディーな空間で「ラプソディ・イン・マイ・ヘッド」を披露したあとは、「みぎて」へ。間奏部分ではドラム台の周りにメンバーが集まり、アイコンタクトを交わし合いながら各々の楽器をかき鳴らす。その美しい光景と、音源以上に迫力のある音の洪水は、まさにロックバンドの生ライブにおける醍醐味だ。
このツアーのキーとなる「天使の前頭葉」、そして「白痴」を続けて披露した後、楽曲の作詞・作曲を手掛ける千秋は、2019年から2020年にかけてのことを思い返しながら、“『black hole』はあまり好きではなかった”と語り始める。
「『black hole』は僕のエゴで作ってたような気がして、これがバンドになるのか不安だった。そんなときにコロナが来て、ライブが中止になって、一瞬ラッキーって思っちゃったんよ。そんな自分が恥ずかしい。(中略)でも3年は長かった。3歳年をとってるってやばくないですか。」
そうコロナ禍におけるバンドマンとしての焦りや赤裸々な感情を吐露すると、「でもとりあえず僕は、普通に戻った世界をありがとう、嬉しいわと思ってます。この4人多分真剣に人生やってこなかったけど今真剣にやってると思うよ。今日だけは君たちも真剣にやってみようよ!」という煽りから、「御法度」へ。千秋の言葉通り、勢いのいい手拍子から気合の入ったヘドバンを繰り出す観客たち。上がったボルテージは「大塚ヘッドロック」でさらに急上昇。ステージのギリギリまで身を乗り出す千秋は熱狂するフロアへ、今にも飛び込んでしまいそうだ。
「こんな社会に一言申す。楽しく生きてくださいね! 流されんなよ!」と力いっぱいの愛あるメッセージから始まったのは、「感染少女」。DEZERT流の応援歌のようなこの曲を受け取った観客たちは、相変わらず激しく頭を振って応える。
次の「Call of Rescue」を始める前に、千秋はこんな言葉を観客たちにおくる。「今日あなたたちが残した声や存在、それが僕の救いだったと死ぬとき胸を張って言えるように、精一杯生きよう。最近は毎回そう思うことにしてます。名前のわからないあなたたちのその手と声が、きっと俺たちの人生に意味がある、救いがあると、僕は信じてこの曲を歌います。改めまして、DEZERTです。よろしくお願いします」。
バンドマンとして、そして表現者として、あまりにも誠実な言葉だった。その言葉に精一杯応えるよう、観客たちは真っ直ぐにステージを見つめながら4人の音に聴き入る。
言葉で刺したあとは、音で心を震わせる「神経と重力」へ。高く跳んだり自由に回ったりとアクティブに動き回りながらギターをかき鳴らすMiyako。キーボードとコーラスも器用にこなすSacchan。そしてすさまじい雄叫びを上げながら重たい音でリズムを刻むSORA。盛り上がりのピークが延々と続くような爆発力で、フロアを圧倒した。
ここからライブはフィナーレへ向かって加速。活動初期の名曲「遮光事実」のイントロが始まると、「ワァッ!」と大きな歓声が沸き起こり、飛び跳ねて喜んだり、マスク越しに思わず口元を抑えたりするファンの姿も見えた。ライブ定番曲の「「遺書。」」では、サビの合唱パートで観客たちに1オクターブ上で歌うように千秋が指示すると、まるで合唱隊のような美しすぎるハーモニーが生まれ、会場には笑いが巻き起こる。「再教育」で最高潮のテンションに達した会場へ、満を持してドロップされたのは、「半透明を食べる。」。積み重ねてきた勢いと熱を爆発させながら、本編は終わりを迎えた。
アンコールで再びメンバーが登場すると、緩い雰囲気でMCへ。千秋は「思い描いたバンドマンにはなれんかった。もっと喋らない感じのヴィジュアル系やりたかったけど、何が正解かわからんくて。楽しいだけでもおもろない。酒飲んだだけじゃ満たされんし、良いことあってもすぐ病んじゃうやん。どうやって生きる? その答えがわからんからライブしよう。楽しくない日もあるでしょう。これから先、千秋老けたなとか思う日もあるでしょう。そういうのもひっくるめて、これからもよろしくお願いします」と、また誠実に言葉を重ねる。
温かい拍手と共に始まったのは、「I’ m sorry」。アコースティックギターの優しい音色に合わせ、観客一人一人に語り掛けるように歌う姿からは慈愛すら感じられた。「春の歌を一曲やります」という前フリから「さくらの詩」へ。突然のレア曲に、驚きと喜びの声が上がる。
急遽セットリストに追加したという「ミザリィレインボウ」の前には、「世界なんて僕たちには早すぎるんで。僕とあんたらの今日この夜が、正しかったと胸を張って言えるように、2023年まだまだやっていきます」と頼もしい言葉をおくる千秋。壮大なサウンドと美しいメロディーで普遍的な愛を存分に歌い上げたあと、さらに「これは何回でも証明していくんで。寒いと言われようと、変わっちまったと言われようと、俺はそう生きていくんで」と宣言した。この言葉は、自らを鼓舞しているようにも感じられた。
「True Man」で希望を歌ったあとは、キラーチューン「「君の子宮を触る」」へ。約2時間かけて積み重なったステージとフロアの繋がりが、この曲で完全にリンクし、勢いと熱狂がもう止まらない。彼らの強い感情を最後に昇華させるのは、やはり「「切断」」だった。千秋は「そうや! 2019年の12月にここで言ったこともう一回言わせてもらうわ! 絶対武道館に連れてったるから!」と、バンドとしての野望を改めて宣言。その力強い言葉に賛同するように、フロアにいるほぼ全員が激しく頭を振る。DEZERTとファンで作り上げるこの光景が武道館に広がる様子が、このとき確かに想像できた。
熱狂のまま「天使の前頭葉」ツアーに決着をつけたDEZERTは、6月1日から開催される東名阪ツアー『DEZERT ✕ vistlip 2MAN TOUR “でざとりっぷ!”』へと進み、6月17日からは『DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”』で全国へ。そして、9月23日にはバンド名を冠した『DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-』を開催する。
一本一本のライブで思いを伝え、観客の心へ丁寧に訴えかけるDEZERT。千秋が不安を感じていたという『black hole』の楽曲たちも、既存のライブ定番曲に劣らない盛り上がりを巻き起こしていた。それは、ツアーを通して楽曲がしっかりと育ったという確かな証拠だろう。
バンドとしての役割を愚直に果たそうとするDEZERTに、私たちは安心してついていこう。その誠実な音楽と不器用な言葉で、何度でも救ってくれるはずだから。
取材・文=南明歩 撮影=Taka"nekoze photo"

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