光、色、音、香りに包まれてゴッホの
人生を追体験ーー座って観られる没入
型の展覧会『ゴッホ・アライブ』で新
しいアート体験を

3月18日(土)から兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリーにて、映像技術を用いた没入型の展覧会『ゴッホ・アライブ』が開催中だ。正直な感想だが、同展はこれまでのひとりで静かに作品と向き合う美術館では全く味わうことのできなかった、完全に新しい角度のアート体験だ。ゴッホを知っている人も初めて触れる人も、大人も子どもも、ドラマチックな鮮やかさと衝撃に心を奪われるに違いない。今回は一般公開に先駆けて行われた内覧会の模様をお伝えする。

『ゴッホ・アライブ』

最新技術が結集した唯一無二の空間
同展はオーストラリアの企画会社であるグランデ・エクスペリエンセズが開発した最新技術「SENSORY4™」を用いた没入型の展覧会。これまで世界6大陸、70以上の都市を巡回し、850万人以上を感動させた。そんな『ゴッホ・アライブ』が昨年12月〜3月まで金山南ビル美術館棟(旧名古屋ボストン美術館)で行われた名古屋会場を経て、いよいよ関西にやってきた。日本では、神戸会場で最後のチャンスとなる。
ゴッホ・アライブ展示風景
エントランスを抜けると、イントロダクションとしてゴッホの生涯や、同展で使用する主要作品がパネルで紹介されている。
ゴッホ・アライブ展示風景
また、ゴッホの残した名言の数々も登場。彼がどのような一生を終えたのか、生前の評価はどのようなものだったのか、ご存知の方も多いと思うが、改めて作品の描かれた背景や、彼の言葉に想いを馳せながら歩を進めてほしい。
アルルの「黄色い家」のゴッホの寝室の再現。中に入り込んで写真撮影が可能
フォトスポットである「ゴッホの寝室」を通り過ぎて暗幕をくぐると、いきなりメインギャラリーに。2つの部屋が繋がった奥行きのあるギャラリーには、高さ最大7mの大型プロジェクターが24面、室内をぐるりと取り囲むように設置されている。

360度プロジェクターに囲まれた環境
最新技術のマルチチャンネル・モーショングラフィックスと映画館品質のサラウンド音響、そして高精細のプロジェクターが圧巻の空間を創り出す。足を踏み入れた瞬間に、目の前に広がる景色に思わず息を呑んでしまうだろう。
約40分で追体験する、ゴッホの画業と人生

1853年にオランダに生まれ、1890年に37歳で亡くなったゴッホ。約40分間のアート映像で辿るのは、創作活動を始めてからゴッホが人生を終えるまでの10年間。

ゴッホの人生を音楽と映像で辿る
故郷のオランダ時代(1880〜1885年)からスタートし、パリ時代(1886年2月〜1888年2月)、アルル時代(1888年2月〜1889年5月)、サン=レミ療養院時代(1889年5月〜1890年5月)、晩年を過ごしたオーヴェール=シュル=オワーズ時代(1890年5月〜7月)と、時系列で展開する。
『ゴッホ・アライブ』

会場にはクラシック音楽が流れ、音楽のリズムやメロディーに合わせて、それぞれの時代に描かれた作品がプロジェクターいっぱいに次々と映し出される。その数は実に3,000カット。時には穏やかに、時には激しく、時には迫るように。当時のゴッホの心情や背景を表現するかのようだ。照明やモーショングラフィックスがくるくると視界に踊り、上下左右から、光と音の波に包まれる。
クラシック音楽に合わせてどんどん映像が切り替わる
静止画だけでなくアニメーションも映し出される
彼が見た景色、出会った人々、弟テオや友人に送った手紙の数々、お気に入りの場所……。360度作品に囲まれていると、自分自身もゴッホの暮らした世界にいるかのように錯覚してしまう。美術館ではよーく目を凝らさないと見えない細かな筆致や色使いも、プロジェクターにどん! と大きく映し出されるため、作品自体についても発見があるかもしれない。
ゴッホが生きた世界に入り込んだよう

ゴッホにとって、黄色は幸せを象徴する色だった
ゴッホの生前、唯一売れた「赤いブドウ畑」1888年

さらに会場にはアロマが焚かれている。シーンごとに変化する香りも楽しんでほしい。
ビーズクッションや椅子に座って鑑賞すると、迫力が増す
頭上のモニターには、ゴッホの言葉が英語で表示される
おすすめの鑑賞方法としては、用意されている椅子かビーズクッションに座って見ることだ。もちろん立ったままの鑑賞も素晴らしい体験になるが、低い視点から観ることで、感じられる迫力が段違いになる。ぜひ圧倒的な臨場感を味わってほしい。
スマホでも『ゴッホ・アライブ』を楽しもう
自分だけの視点から『ゴッホ・アライブ』を記録できる
会場は全て写真、動画撮影OK!
フォトジェニックな写真が撮れる「ひまわりの部屋」
アルル時代の「黄色い家」のゴッホの寝室を再現したフォトスポットや、一面のひまわり畑に立っているようなフォトスポットも登場。
QRコードを読み込むと、踊る「ゴッホさん」がひまわり畑に登場
「ひまわりの部屋」では、スマホでQRコードを読み込むことでひまわり畑に「ゴッホさん」が現れるARも体験してみよう。
また、美術紹介動画クリエイターの耳で聴く美術館(Avi)によるコラボレーションも決定。InstagramやTikTokで、『ゴッホ・アライブ』を語ってくれるとのこと。こちらも楽しみにしていよう。
ここでしか買えないオリジナルグッズも登場
オリジナルグッズも多数販売

グッズも要チェックだ

会場を出ると廊下沿いに『ゴッホ・アライブ』のグッズや、ゴッホ関連の書籍などがズラリ。同展では音声ガイドが存在しないので、公式カタログでより深くゴッホのことを学ぶのもおすすめだ。
『ゴッホ・アライブ』
『ゴッホ・アライブ』は、まだ美術館に行ったことのない人や、初めてアートに触れるお子さんなど、アートへのハードルが高いと感じている人に訪れてほしい展覧会である。ゴッホの歩んだ人生はもちろん、作品の全体的な雰囲気から細部までを、五感を通して楽しみながら体験することができる。全身を使って感覚的に体験できるので、アートの入り口としては最適なのではないだろうか。全世界に愛されている新感覚没入型展覧会に、ぜひ飛び込んでほしい。
『ゴッホ・アライブ』は6月4日(日)まで兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリーで開催中。
取材・文・撮影=ERI KUBOTA

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