『在宅ひとり死のススメ』書影

『在宅ひとり死のススメ』書影

入籍が報じられた上野千鶴子への「左
翼ビジネス」という批判は的外れもい
いところ

独身を推奨しつつ結婚していた『週刊文春』が2月22日発売号(3月2日号)で報じた、社会学者の上野千鶴子さんが結婚をしていたというニュースに激震が走っています。
 男女問わずアイドルが結婚していたとかなら話題になるのももっとも。しかし上野さんは学者で、古希越え。ではなぜ上野さんの結婚がこんなにも話題になるかというと、上野さんは“おひとりさまの教祖”として、多くの信…ファンに支持されていたからなのです。
 上野さんが独身を勧める著書としては、単著だけでも『最期まで在宅おひとりさまで機嫌よく』(中央公論新社)、『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)、『男おひとりさま道』(文藝春秋)、『おひとりさまの老後』(法研)、『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版)、『みんな「おひとりさま」』(青灯社)と多数。まさに独身界のカリスマです。その上野さんが結婚していたというから(現在は死別)、これは青天の霹靂だ、というわけです。
 上野さんといえば近年は「平等に貧しくなろう」とも主張しています。一方、ご本人は武蔵野市のタワーマンションの上層階に居を構え、BMWを乗り回し、八ヶ岳に別荘を所有するブルジョアっぷり。貧乏を許容しようと言いつつ自身は金持ち。独身を勧めつつ自身は結婚。そんなこともあって、言行不一致ぶりを指摘されているのです。

「ビジネス左翼」という批判の的外れ とはいえ、上野さんへの批判でよく出てくるフレーズ、「ビジネス左翼」という言葉もどうかと思います。「貧乏の推奨」や「独身の推奨」って別に左翼的な言説というわけではないですよね。上野さんご自身は一般的に左翼と分類されるタイプの方かもしれませんが、「結婚をしていた」「金持ち」という理由で「ビジネス左翼」だと批判されるのも違う気がします。「ビジネス独身」とか言われるのならともかく。
 それから、もう一つ。「ビジネス」「ビジネス」と言いますが、そもそも何か主張して、それでもって本を出したり講演したりメディアに出たりしてる人はそりゃあビジネスでしょう。
 新型コロナのワクチンが危険だ危険だと煽っている自称識者の中には、正直ワクチン打ちまくりの人もいるのでは。嫌韓や嫌中を煽っている人が実際はそんなにネトウヨじゃなかったりとか。『月刊Hanada』の名物編集長花田紀凱さんが、ご自身も『Hanada』の誌面のような韓国嫌い&中国嫌い&朝日新聞嫌いで頭の中が凝り固まっているかといったら怪しいでしょう。陰謀論系のYouTuberや有名人が本当に陰謀論を信じているかも甚だ疑問です。一定の需要があって、それがビジネスとして成立するから、トンデモ言説を振りまいている人というのは実は世の中にたくさんいます。
「財務省がとにかく悪い」「国債をバンバン刷って国民にカネをバンバンばら撒いても大丈夫」とか言って財務省陰謀論を煽る自称識者たちが万が一本当にそう思っていたら、いくらなんでもヤバすぎです。
 薄っぺらいことしか言っていないと批判されがちな杉村太蔵さんのワイドショーでの発言・主張は、全部番組側の意向に沿ったものだと東野幸治さんが言っていたこともありました。最近では成田悠輔さんが「集団自決」発言で大炎上しましたが、それも過激なことを言ったら耳目を集めるだろうというビジネス的打算で言った可能性もあります(結果、ビジネスとして大失敗でしたが)。とにかく著名な人の主張というのは多かれ少なかれビジネスがゆえに発せられているものと言っていいでしょう。
 というわけで、上野さんが“おひとりさま”を推奨しつつ結婚していたとしても、責められることではないでしょう。もし上野さんの言説を鵜呑みにして、結婚したい相手がいたのに、あえて“おひとりさま”を選んだという人がいたのならお気の毒ではありますが、かのひろゆきさんも「嘘を嘘と見抜ける人でないと(ネットの掲示板を使うのは)難しい」と言っていました。これはネットだけの話ではなく、本や雑誌にも通じることです。週刊誌でワクチンの危険性とか食品の危険性とか病院でもらうクスリの危険性とかやっていたとしても、作っている記者や編集者は絶対そんな危険性を気にはしていません。本というのは、ネット同様嘘を嘘と見抜ける人のみが読むべきものなのです。まあ、上野さんの場合、嘘というよりも言行不一致なだけですが、上野さんに影響されて独身を選んでしまった人は、そのことを肝に命じるしかありません。
 嘘を見抜けない人は地上波のテレビとか大手新聞だけを情報源にしておいたほうが無難でしょう。とはいえ、最近は成田悠輔さん、三浦瑠麗さん、橋下徹さんなどよく分からないことを言っている人が大手メディアで重宝されているという現実もあるのが難しいところですが……。

文/田崎寿司郎写真/『在宅ひとり死のススメ』書影

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