アルルカン、4人編成となった新たな
決意を胸にファンと共に撮影した最新
MV「手放して掴む零」&撮影レポート
公開

堕門(Ds)の突然の解雇により4人編成となったアルルカンが、新たな決意を胸にファンと共に撮影した最新ミュージックビデオ「手放して掴む零」を公開。そのミュージックビデオ撮影のオフィシャルレポートが到着した。

歩みを止める――――という選択肢はアルルカンの4人にはなかったようだ。
“アルルカン Drum堕門 解雇のお知らせ”という衝撃的なニュースが世間を駆け巡った翌日。新曲「手放して掴む零」のMV撮影を予定通りに敢行するべく、アルルカンの暁・來堵・奈緒・祥平の姿はGARDEN新木場FACTORYにあった。
年明け早々から、アルルカンの公式サイトではMV制作に向けて大々的にエキストラを募集。ファンを前にしたライヴスタイルでのシューティングがこの場所で実施されることになっていたのだった。
撮影当日、参加者は今年で10周年を迎えるアルルカンのアニバーサリー・デザインが施された真っ赤なTシャツを受け取り、エントランスで着替えや準備を済ませ、緊張の面持ちでスタジオ内へ案内されていく。
当然、今回この場に集結した人々全員が前日になって突然の報を受け取ったわけであり、さぞかし心中穏やかならぬ複雑な胸中だったことだろう。ただ、彼ら・彼女らの表情には「まずはアルルカンの4人とこの場で会って、4人の今の気持ちを直接確かめたい」という強い意思のようなものが宿っているようにも感じられた。そのような意味では、このシビアな“昨日の今日”というシチュエーションはある種の好機であった、とも考えられるのかもしれない。
「今日は新曲「手放して掴む零」のMV撮影ということで、本来はみんなに楽しい気持ちで参加してもらいたいと思っていたんですが、昨日発表があったとおりドラムの堕門がいなくなりました」
MV撮影は、フロントマン・暁の言葉から始まった。
「正直なところ、今の僕の心境としてはなんで?っていう気持ちが大きくて、いろんなものがぐちゃぐちゃとなっている状態です。ただ、やることは決まってるんで。僕たちは止まらずに進んでいきます。去年の9月に5人でもう1回やろうって決めたあの瞬間の気持ちに嘘がなかったように、……まだ過去にすらなりきらない、あの時間が大事やからこそ僕たちはここから4人になっても変わらずに進んでいきます」
ひと言も聞き漏らすまいと静寂に包まれる会場全員の視線が暁に注がれるなか、悩みながらも率直で真摯な言葉を紡いでいく。
「こういうことになっても今日の撮影をキャンセルしようとは思わなかったし、この曲が俺らにとって必ず力になるっていうこともわかってたんで。それが一番の意思表示やし、俺らに出来る唯一のことだと思うからです。その意思表示も、この曲も、君たちとの未来も、今日ここで全部かたちにさせてください。よろしくお願いします!」
力強い言葉で締めくくられた暁の決意表明に、会場からは温かく力強い拍手が鳴った。かくして「手放して掴む零」のMV撮影は、歩み続けていくことを選択したアルルカンと、そんな彼らを支持する大勢のファンによって幕を開けた。
今回の撮影にあたっては、「手放して掴む零」の歌詞が観客全員に配られており、準備時間には場内のスピーカーから曲が何回もリピート再生されていた。そのためか、新曲とはいえどもそれなりにメロディや歌詞を頭の中にたたきこむことが出来たらしく、いざ撮影がスタートしてみるとほぼ普段のライヴと変わらないくらいの高いテンション感で、メンバーもファンもダイナミックな動きをみせてくれていたところは日ごろの信頼関係の証ともいえるだろう。
2テイク目に入る前には、発声ナシの撮影ではあるが「みなさん、マスクを外してもらっていいですか?」と呼びかけ、“将来的なライヴスタイルをも見据えた”シーンがしっかり押さえられた。アルルカンの臆せず前進していくのだ、という強い覚悟が感じられたテイクだったように思う。
「今日は本当に来てくれてありがとう。気持ちの整理とか出来てないとは思うけど、みんなで良い作品にしていきましょう」(奈緒)
「みんなほんとにありがとう。既にライヴと同じくらい楽しいです。最後までよろしくお願いします」(祥平)
「今日はみんなでカッコいい作品を作っていきましょう。撮影とはいってもライヴと同じなんで、思い切り楽しんで帰ってください。よろしくお願いします」(來堵)
3テイク目を撮り終わったタイミングでは、楽器隊のメンバーからも感謝が伝えられ、おそらく参加していた観客らは、よりいっそう安堵感のようなものを感じたはずだ。SNSやリモートアプリなどを使えば非対面でも簡単に人とつながれる時代ではあるが、やはりそれでも対面のコミュニケーションから生まれる説得力は大きい。
「今回のMVに関しては、とにかく臨場感が欲しかったんですよ。そして、観客を入れてのライヴスタイルにしたのはお客さんが目の前にいると、やっぱりメンバーの表情が全然違うから。「手放して掴む零」という曲は歌詞の持っているメッセージ性も強いので、アルルカンがファンのみんなを力強く引っ張っていくような様子を出来るだけリアルに映像化していきたいと思ってます」
撮影の合間を縫って語ってくれたのは、近年サウンドプロデュースのみならず映像制作のブレーンとしてもアルルカンに携わっているYUTARO氏。自身も、清春プロデュースのもと、ゼリ→のメンバーとしてメジャーデビューし、SADSのベーシストとしても活躍するプレイヤーである。確かに、ライヴさながらの熱いパフォーマンスを展開する中、フロアで揃いの真っ赤なTシャツを身にまとったオーディエンスが一丸となって躍動する様は高揚感たっぷりだ。
しかも、この「手放して掴む零」の撮影では、観客の視点を再現するステディカム、場内やメンバー間の隙や頭上を縦横無尽に飛び回る超小型のFPVドローンカメラ(パイロットの中川絵梨さんがゴーグルを装着して操縦するというシステムとなっていた)も投入されていたので、大迫力かつ革新的な映像が仕上がるだろうという期待が高鳴る。
「ドローン、なんか動きが凄いよねぇ。みんなの近くにも飛んできてる?」
セッティングチェンジの合間には、暁が少しくだけた雰囲気でファンに尋ねたり、ステージ上のモニターにぐったりともたれかかる奈緒に突っ込んだりと、このような状況において“いつも”と変わらないメンバーの関係性に笑みがこぼれるシーンも。
「みなさん、今日はお疲れさまでした。ここから、必ずこの曲が俺たちの力になっていきます。まだ全部過去になってないから今はうまく言葉で言えないけど、俺はそれでいいと思う。4人になったことでどんな気持ちのやつがいてもいいと思うし、いろんな気持ちがあると思います。だからこそ、俺は俺の道を進みます。昨日は凄く心細い気持ちもあったけど、今日みんなとこの撮影を出来たことでちょっとだけ振り切れた感じがしてます」
撮影の最後に、暁が再び語りかける。
「10周年だけど、今はちょっとお祝いとは違う感じになっちゃってますが、今すぐには無理だとしても何時か必ず笑えるようにするので。そういう10周年をみんなと過ごしていきたいと思います。その先もね!今日はこの場所を選んでくれて本当にありがとうございました。アルバム、期待しててください!!凄いの作ってツアーに行きます!!!」
7テイクでこの日の全行程を終えた暁の言葉から感じられたのは、頼もしさと逞しさ。4月5日には新曲「手放して掴む零」を含むニューアルバム『δυσ-τόπος ~Dystopia~』が発表され、全国ツアー[10th Anniversary Tour “escape from dystopia" ]でも、そんな彼らの底力はさらに発揮されていくことだろう。何があろうとも歩みを止めぬアルルカンは、今ただひたすらに未来へと向かっている―――。
取材・文=杉江由紀 撮影=川島彩水

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