内野聖陽・瀬戸康史が時に反発し、時
に歩み寄る 三谷幸喜の傑作二人芝居
『笑の大学』が開幕~公開フォトコー
ルレポート

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』が、2023年2月8日(水)~3月5日(日)PARCO劇場での東京公演を皮切りに、新潟、長野、大阪、福岡、宮城、兵庫、沖縄と巡演する。
今作は1996年にパルコ・プロデュース公演として青山円形劇場で初演され、第4回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞、1998年にPARCO劇場で再演された後は、様々な言語に翻訳されて海外でも上演されたり、2004年には映画化されるなど、二人芝居の傑作として人気が高く、日本では四半世紀ぶりとなる今回の上演に期待が高まっている。
昭和15年の警視庁取調室を舞台に、劇団「笑の大学」の舞台上演を中止に追い込もうとして台本に難癖をつける検閲官の向坂睦男(さきさかむつお)と、なんとか上演許可をもらおうと書き直しに応じる座付作家の椿一(つばきはじめ)の攻防が描かれる。
一度も心から笑ったことのない男・向坂を演じるのは内野聖陽、劇団で喜劇を上演するために奮闘する椿を演じるのは瀬戸康史という、舞台でも映像でもその存在感で強い印象を残す2人の俳優の顔合わせが、三谷の希望により実現した。
作・演出の三谷幸喜、出演の内野聖陽と瀬戸康史から届いた開幕コメントと、東京公演の初日に先立ち行われた公開フォトコールの様子をお伝えする。
開幕コメント
■作・演出:三谷幸喜
三谷幸喜
『笑の大学』は僕にとって思い入れのある作品です。登場する劇作家は僕の理想像。
そんな『笑の大学』が25年ぶりに再演。感無量です。
演じる役者さんは、今、僕がもっとも信頼している二人。
内野さんは、ああ見えてとても繊細。瀬戸さんは、ああ見えてとても大胆。年齢も個性も全く違う二人が、丁々発止とやりあう2時間弱の演技バトル。一秒たりとも飽きるところがありません。作った本人が言っているのですから、間違いない。
二人芝居は演劇の原点。 堪能してください。面白いですよ。
■向坂陸男役:内野聖陽
演劇は演者とスタッフワークだけでは完成しないものです。
ドキドキワクワクですが、お客様の皆さんと一緒に心地よく『笑の大学』という劇世界を旅したいと思っています。
稽古をしていくうちに、表に見えてない部分が大切だなぁと感じるようになりました。
三谷さんは僕らの芝居を見ながら、今回の二人にしか出せない面白さを探してくださって、僕らに合わせて現場でセリフがどんどん変わっていくのが嬉しく感じました。
瀬戸くんとはセリフの掛け合いが日々面白くなり、信頼関係もバッチリできたように思っています。
皆さんと楽しい劇空間を共有できますこと、楽しみにしております!!
■椿一役:瀬戸康史
『笑の大学』いよいよ始まります。
約1ヶ月の稽古期間は、今まで関わってきたどの作品よりもあっという間でした。2人しかいないのに。
いや、2人だけだからか……?
とにかく、毎日がとても濃い時間でした。初共演の内野さんとは、最初はお互い様子をうかがいつつ話をしたり、ストレッチしながら台詞を合わせたり。そして稽古を通じて距離を縮めていき、今では、大変な時も楽しい時も共に味わった大切な相棒……だと勝手に思っています(笑)。なんだかこれは、向坂さんと椿さんが台本直しを通じて感じていく事と近い様な気がしています。年齢や立場をなしにして人間同士が認め合っていく。こういう人間関係、憧れます。
三谷さんの演出、内野さんと僕の2人だけでお送りする『笑の大学』を、是非多くの方に楽しんでいただきたいです。
『笑の大学』フォトコール (右から)内野聖陽、瀬戸康史
公開フォトコール
マスコミに公開されたのは、7日間の物語のうち、5日目と6日目の部分。椿は向坂に言われた通り、大河原という警察官が登場するように台本を書き直してくるが、向坂は台本に納得がいかないと言う。それは向坂が椿に意地悪で言っているのではなく、警察官の登場の仕方に必然性を感じないことが気になってしまい、つい本気でアドバイスしてしまうのだ。2人で実演しながら台本の手直しをしていき、椿は台本がより面白くなったと喜ぶ。
『笑の大学』フォトコール 内野聖陽
内野は、自らの職務に忠実で堅物な向坂を重厚な芝居で見せる一方、いつの間にか椿の執筆の手助けをしてしまい実際に椿と台本を使って演じてみるシーンでは、職務を忘れて純粋に楽しんでいる向坂の人間的な一面を茶目っ気たっぷりにのぞかせる。向坂自身は面白いことをしようとしているわけではないが、生真面目すぎるがゆえに何事にも真剣に向き合い、職務を全うするために必死になるその姿が、逆に人間らしいおかしみを生み出している。その様が喜劇作家である椿を刺激し、向坂の本意ではないが2人で台本を磨き上げる方向になっていくところにぐっとくる。向坂のまっすぐさと、人間らしさを過不足なくにじませる内野の巧みさが物語の根幹を担っている。
『笑の大学』フォトコール 瀬戸康史
瀬戸は柔らかい雰囲気をまとい、どこかとぼけた味わいのある椿を体現している。内野の胸を借りて挑んだ初の二人芝居で、またひとつ俳優としての階段を上ったと感じさせる堂々たる姿が印象的だ。向坂がくり出す無理難題に対し、喜劇を上演したいという信念を曲げずにひたむきに立ち向かう様子は、力強くも愛らしい。自分にとって敵のような存在の向坂に対して歩み寄り、人間同士として心を寄せようとする椿の姿勢は、大なり小なり争いの絶えない現代社会に疲弊した観客の心にもそっと寄り添ってくれるのではないだろうか。
『笑の大学』フォトコール (右から)内野聖陽、瀬戸康史
今作は、ワンシチュエーションコメディとして大いに笑えるが、作品の肝はにじり寄る戦争の気配と、検閲によって脅かされる表現の自由だ。緩急の付け方が絶妙で、ただの笑える作品ではなく、過去そして現在の社会的背景についても考えさせられる。検閲官と喜劇作家の対決に勝負はつくのか、2人には戦うしか道はないのか、どちらかが負けるまでこの対決には終わりが来ないのか。時に反発し合い、時に歩み寄る2人の攻防を目撃して欲しい。
『笑の大学』フォトコール (右から)内野聖陽、瀬戸康史
取材・文・撮影(舞台写真)=久田絢子

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