シド、1年2ヵ月の空白を一瞬で埋めた
復帰ライブ初日レポート 「どれだけ
時間が経っても、オレはライブのため
に生きてるし、ライブに生かされてる

ID-S限定 SID LIVE 2023 ~Re:Dreamer~

2023.1.21 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
およそ1年2ヵ月ぶり、シドがライブの現場に帰って来た。マオの喉の不調による休止期間を乗り越え、待ち続けたファンに元気な姿を見せるために。そしてここから始まる結成20周年のアニバーサリーに向けて、スタートアップの号砲を鳴らすために。2023年1月21日と22日、LINE CUBE SHIBUYAで開催された、シドのオフィシャルメンバーズクラブ「ID-S」の会員限定『SID LIVE 2023 ~Re:Dreamer~』の、初日の模様をレポートする。
紗幕で遮られたステージに青い闇が揺れ、静かな波音が響く。やがて明希のベース、Shinjiのギター、ゆうやのドラム、そしてマオの歌と、一つずつ音が重なるたびにメンバーのシルエットが浮かび上がる。ゆっくりと紗幕が上がり、1年2ヵ月ぶりに4人がステージに姿を現す――。1年2ヵ月の空白を一瞬で埋める、これが唯一無二のシドの存在。静寂からエモーショナルの高みへ、荘厳なドラマ性に満ちた1曲目「海辺」から、翳りあるメロディとマイナーグルーヴでじっくり聴かせる「紫陽花」へ。スリリングな変拍子を織り込んだフュージョン調の「KILL TIME」へ。ゆうやが堅実にリズムを支える。明希とShinjiが前に飛び出してソロを決める。そしてマオが、ファルセットを交えた艶やかな歌を響かせる。曲が終わると、“やったぜ!”と言うかのようにフロント3人が高く指をかざす。間違いない。シドが帰って来た。
マオ
「こんばんは、シドです。約1年以上振りの活動再開ということで、みなさんお待たせしました。オレたちのことをずっと一番近くで応援してくれたID-Sのみんなと、最高の1年のスタートを切れそうな気がします。最後までよろしく」(マオ)
少し懐かしい曲を――。マオが「ミルク」のタイトルを告げた瞬間、思わず客席から声が漏れる。アダルトでメロウな、物憂げなグルーヴが体を揺さぶる。「hug」はゆうやと明希のどっしりしたロックビートに乗せた、Shinjiのブルージーなソロがかっこいい。マオのhugポーズも愛らしい。「刺と猫」もマイナーグルーヴのフュージョン調の曲で、マオに寄り添うもう一つの歌声のような、Shinjiのギターの存在感が絶大だ。明希、マオ、Shinjiが寄り添って見せ場を作る。マオが左右に動き回り、スキャットで盛り上げる。久々のステージだが緊張や不安はない。水を得た魚のように生き生きと歌う、シドのマオがそこにいる。
Shinji
ライブ中盤のインストによるソロパートは、ゆうや、明希、Shinjiの3人でたっぷり10分以上。ゆうやは変幻自在に緩急つけて、明希はプログレッシブなハードロック、Shinjiはスムーズなフュージョンロック。それぞれのプレイヤビリティの高さを見せつけたあと、再び4人に戻って「涙雨」へ。静かに燃える炎の演出をバックに、せつなくドラマチックに聴かせるロックなワルツ。ライブ前半、じっくり聴かせる曲を並べてシドの帰還を、何よりマオの復活をしっかり確かめる。セットリストに込めたバンドの意図は明白だ。
「シド20周年、今日この瞬間からスタートです。久しぶりに見るこの景色、本当に最高です。この拍手を1年間待ち望んでいました。今日を最高の夜にしましょう」(明希)
「僕らがバンドを始めた時は、自分が自分が、というものがあったんですが、20年やってきて、みなさんの歴史の1ページになっているんだなと思うと、一回一回のライブを大事にしたいと思うようになりました。今日も、みなさんの素敵な1ページになったらいいなと思って最後まで頑張ります」(Shinji)
「僕らが出てくる前に、ドキドキして待ってて、緊張して、出て来て安心して、泣きそうになってとか、ありますよね。価値の大きさをすごく感じます。やっぱり大事な場所だということを感じながら、今日このステージに立っています」(ゆうや)
「20年前のオレたち、ギラギラしてたな。今もまあまあギラギラしてるけど(衣装のスパンコールのキラキラに引っかけてか?)、もっともっとギラギラしてた。あれから20年経って、こうしてステージに立っていられることがすべてなんじゃないかと思ってます。どうもありがとう」(マオ)
明希
真面目にしゃべっている明希に、マオがちょっかいを出して笑い合う。「後半は盛り上がって行こう。行けるか!」と叫んだあと、「この“行けるか!”のトーンが懐かしいね」とマオが自分に突っ込む。激しさと楽しさとあたたかさをかき混ぜて、曲は「アリバイ」から「夏恋」へ。久々の手振り、久々のジャンプ、客席の一体感を煽るように、マオが客席最前列のぎりぎりまで身を乗り出して歌っている。誰もがこの場にいる幸せをかみしめている。
「楽しんでる? オレたちは見ての通り、めちゃめちゃ楽しんでます。いっぱい楽しんで、いっぱいいろんな思い出を持って帰ろうね。いいかい?」(マオ)
そんなに叫んで大丈夫か?と思うほど、激しいマオのシャウトが聴けた「CANDY」。明希が強烈なスラップを決め、Shinjiとの息の合ったパフォーマンスを見せる「MUSIC」。そして猛烈に吹き上がる炎の中、ヘッドバンギングで客席が揺れた「プロポーズ」。息をも付かせぬアッパーチューンの連発で締めくくる、これが2023年1月のシドの現在位置。これが結成20年のバンドの底力。
ゆうや
「アンコール、どうもありがとう。バンドを始めた頃はアンコールをやることにすごく憧れがあって、今は当たり前のようにやらせてもらってるけど、当たり前じゃないんだなって思った、ここ1年数ヵ月でした。待っててくれてありがとう」(マオ)
アンコール1曲目「君色の朝」を歌い終えたマオが、4月から始まる『SID 20th Anniversary TOUR 2023 「海辺」』の開催を告げる。「そのツアーから声出しOKにしようと思います」という言葉に、盛大な拍手が湧いた。誰もが待ち望んだ状況が戻って来る。ゆうやがツアーへの抱負を語っている最中に、明希とマオが全然違う話題で盛り上がって、ゆうやが拗ねている。そんな何気ないシーンさえ愛おしい、シドの日常=ライブの日々がついに帰って来る。
最後は「ドラマ」、そして「Re:Dreamer」と明るいアップテンポをたたみかけ、金銀テープの発射、全員参加のクラップ、拳の振り上げ、ヘッドバンギング、ステージの上も下も一つになっての盛大なフィナーレ。そして記念撮影。誰もが笑ってる。20周年という新たな旅が始まった喜びを、誰もが実感してる。
「今日は本当に素敵な思い出をいただきました。ありがとう!」(Shinji)
「今年のシドは最高のバンドになってみせます。最後までついてきてください。愛してるぜ!」(明希)
「わかってたけどさ、最高だよね。20周年は始まったばかり、これからいろいろなことが起きると思いますが、ついてきてくださいね」(ゆうや)
「どれだけ時間が経っても、オレはライブのために生きてるし、ライブに生かされてるんだなって思いました。最高のライブでした。どうもありがとう」(マオ)
4月から始まる『SID 20th Anniversary TOUR 2023 「海辺」』。そして7月からは『SID EVENT TOUR 2023』の開催も決まった。変わらぬシドと変わり続けるシド、その両面を見せながら突っ走る20周年のアニバーサリー。お楽しみはこれからだ。

取材・文=宮本英夫 撮影=今元秀明

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