キタニタツヤ 自分に染みついたもの
で勝負した『BLEACH』最終章OPテーマ
「スカー」完成の経緯と音楽家として
の欲求

隙のないアレンジと刺さるメロディと歌詞、というのはボカロPの基礎体力とも言えるが、表に立つ表現者としても恐るべき瞬発力と個性を持つ人は珍しいだろう。自身のアーティスト活動はもちろん、ヨルシカのサポートメンバーとして、また、Ado、まふまふ、TK from 凛として時雨の音源制作への参加、ジャニーズWEST私立恵比寿中学ら多くのアーティストへの楽曲提供や、神はサイコロを振らないなどとのコラボレーションなど、世に出た楽曲は枚挙にいとまなし。そんな稀有な活動を続けるキタニタツヤが『BLEACH』シリーズ最終章“千年血戦篇”オープニングテーマ「スカー」を担当。昨年の『BLEACH』原画展から続く、ひとつの世界観をまとめたEPをリリースする。
――アルバム『BIPOLAR』のリリースとツアー後のフェーズはどういう感じでしたか。
アルバムをちゃんとコンセプチュアルに作り切って、“さてどうしたもんか”って、特に何も予定がないというか(笑)、自分の中でアルバムめがけて頑張っててツアーも終わって、“あーやること一旦なくなっちゃったな”ってタイミングで。『BLEACH』の主題歌はコンペだったので、“受けてみない?”ってなって。割と自分の中がすっからかんの状態で、そこに対してエンジンをかけるトリガーがないとちょっとやばかったんですけど(笑)、そこにちょうどエンジンをかけてくれる原動力として、こういう話が飛び込んできて。割と空っぽの状態で、難しいことを意識せず作ったりもできました。「スカー」に関してはちょっと違うんですけど、「永遠」っていう曲ともう1曲コンペに出した曲があって、それらをまず久しぶりに“作曲ってどうやってやるんだっけ?”みたいな、純粋に作りたい音を作ることから始まりましたね。
――まず「永遠」が先にできていたと。
そうです。もう1曲はボツにしましたけど、「永遠」の方は気に入ってたので、今回ちゃんと完成させてEPに入れようと。「スカー」の真裏みたいな感じにしたかったんですよね。
――このEPは昨年の『BLEACH』原画展のテーマソングである「Rapport」も収録されていて、ひと連なりの作品として制作したんですか?
原画展を作っていたチームとアニメを作るチームって座組み的には全然違うので、今回その原画展をやらせてもらった自分がアニメの曲をまた改めてやらせてもらえたのはたまたまというか。曲を出して、たぶん久保(帯人)先生が覚えていてくださったのもあると思うんですけど。でも、ほんとにたまたまうまく引っかかって、どっちもやるアーティストになったっていうことで、縁があったなという。それでこういう盤も作れたというか。
――“曲の作り方忘れちゃったな”みたいなところから、ギアが入ったきっかけはありましたか?
実際に“これに対する曲を作ってください”っていう、今回だったら“『BLEACH』に対する曲を作ってください”っていう、(依頼を受ける)責任と、その原画展をやらせてもらったっていうのがあって。『BLEACH』のオープニング、絶対俺が取らなきゃあかんでしょ!みたいな(笑)。俺以外の曲になったら絶対嫌だ!っていう、そういう焦りもありましたし。「永遠」っていう曲に関しては、好きな音を貼り付けたコラージュみたいな、“作詞作曲をするぞ”って感じじゃなくて、音で遊んでみよう、パソコンの上で、みたいな感覚で曲を作ったので。徐々に自分の中の創作のエンジンをかけるのにちょうどよかったんですよね、作り方として。作詞作曲をするぞ、メロディを書くぞ、歌詞を書くぞ!だと結構重たいんですよ。それはエンジンがかかっている状態じゃないとできなくて。「永遠」みたいな、なんとなく面白い音を組み合わせてみようかっていうところの方がやりやすいんですよね。僕の中でそういうタイプの曲ってあるんですけど、そういうのは意外と自分の調子を取り戻すために作って、“いや、意外といいじゃん”ってなることが多い。音遊びという感じに近い、作曲というよりは。
――そして「スカー」はその後にできた、と。
主題歌として書き下ろしてくださいっていうのがあって、「永遠」ともう1曲も作ってて。“でもなんか2曲じゃやる気示せねえかな”と思って(笑)、 もう1曲書いて、3曲も出したら注目してくれるかなと思って。で、最後にダメ押しで作ったのが「スカー」で。「永遠」があったので、全然違うことをやってみようというか。“どうですか? いろんなことできまっせ”っていうアピールをしたかったので(笑)。こう、なんか自分の少年漫画的なイメージというか、少年漫画原作のアニメって、自分にとってどんなものだろう?みたいなところをよく思い出して。俺が好きだったアニメのオープニング映像どんな感じだっただろう?っていうのを考えて、自分にとっての王道というか、自分が幼い頃、最初に好きになったものを1回思い出してみて、トレンド的じゃなくてもいいからやってみようっていうところから作ったのが「スカー」で。それを含めて3曲出したら、「スカー」が通ったと。
――なるほど。その幼い頃好きだったものっていうのはアニメですか?
アニメも曲でもですね。普通に日本のインディーズのロックバンドもそうですし、ギターロックのメジャーのバンドがアニメのオープニングに書いている曲とか。そういうものの中で、疾走感のあるものですよね。子どもの心がワクワクしちゃうもの。そういうものをさかのぼって、“俺、昔何の曲好きだったかな?”と思って。“なんかこの曲テンション上がるけど、どこにテンションが上がってるんだろう?”とか、“それはこういうギターなんだな”“俺こういうギターが好きなのか。じゃあこの曲でもやろう”みたいな、そういう要素を一つひとつ思い出していって作ってみた曲です。
――例えば小学生のキタニタツヤ少年にとってのアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)であったりとか?
うん、そうですね。小学生のキタニタツヤ少年に聴かせたら、ヨダレたらして大喜びする曲がいいなあっていうのは思いました(笑)。
懐古趣味というか、個人的な好みすぎた気もするから、これを2022年に出すのはどうなんだろう?みたいな気持ちもあった。
――『BLEACH』ってすでに完結していて、今回アニメになることも話題だし、トータルの物語が長いじゃないですか。キタニさんは何にフォーカスしていったんですか?
やっぱり久々のアニメ化ですし、主に見る人も多分僕と近い感覚で見ると言うか、僕の世代だろうし、深夜にやるアニメなので。だから自分たちが子供の頃好きだったものっていうのは一番様になる気はしたんですよね。とは言え、できたときはあんまり自信なかったんです、トレンドの音じゃなさすぎるんで(笑)。自分の懐古趣味というか、個人的な好みすぎた気もするから、これを2022年に出すのはどうなんだろう?みたいな気持ちもあったんですけど、選ばれたのはこっちでした。『BLEACH』っていう作品自体がエバーグリーンなものなので、トレンド感とかあまり関係ない、むしろそういうものを越えた普遍性みたいなものの方が必要で。そこに関しては「スカー」にはちゃんとそれがあって、選んでいただけたんだろうなあっていう気がします。
――キタニさんのバックボーンとかあまり考えずに1回目聴くじゃないですか。意外とオーセンティックだなあって。
(笑)。オーセンティックっていうのはどういう部分ですか?
――なんでしょうね、“わ、ロックだ”“ガレージみたいなリフだ! ミッシェルじゃん”とか(笑)。
最初のギターのジャジャジャジャ・ジャジャとか泥臭い。ま、好きなんで、アベフトシは。
――狙いみたいなものを感じないんですよね。“わ! 来た!”って(笑)。
(笑)。ギターリフとかちゃんと考えるときは、むしろギターリフをピアノで1回作ってから、それをリフに起こすとか、ギターにするとかもやっていたりするんですけど。この曲に関しては、ただ遊びでギターを弾いてて、“あ、これいいじゃん”っていうのをそのままイントロにするっていう、古のバンドマン方式というか(笑)、そういう方法を取っていたので。ちゃんと自分の体に染みついているものが表に出てきたなあっていう感じもします。
――でもそれをキタニさんは客観的に手法として選べるわけですよね。
そうですね。適当にそうしているわけじゃなくて、“こういうのもアリやろ!”と思ってます。そうじゃないのもやるんで。ギターのフレーズとか、ベースのフレーズとか、全然今回、推敲しませんでしたね。いつもはめっちゃ気にするんですけど。
――あえて推敲しない?
うん、そうですね。なんとなく手が選んだものが多分いいだろうっていう信頼というか、自分ひとりでスタジオセッションしてる感じというか。
――その、こねくり回さないっていうことを選んだ曲が選ばれたっていうことだから、狙い撃っていくのは難しいことなんだなと思います。
曲の良し悪しを自分で客観的に判断は意外とできない、全部親バカになっちゃうんで。それでこう選んでもらえたのが正義だなという感じがします。オープニングの映像が付いた時“これでよかったなあ”って思いましたし。
“え? なになに? スカーって何?”と思ってほしい。ちょっと中二病感をくすぐるのって、すごく大事なんですよ。
――再び作曲のギアが入ったタームだったと同時に、EPは既発曲も入って。
なんかシングルっていう形式が、アニメのタイアップだったら普通「スカー」とカップリングとインスト音源と、みたいな感じで出すじゃないですか。それは僕自身、シングルよりアルバムが聴きたい少年だったので、ちょっとでもアルバムっぽい聴き心地にはなってほしいなあと思ってて。せっかく一つの軸で作っている曲が「永遠」「タナトフォビア」「Rapport」ってあったので、それを一ヵ所にまとめたらちょっとコンセプトアルバムっぽい聴き心地にはなるのかな、ちっちゃいアルバムとして聴こえてほしいなあっていうのはあって、こういうことになりました。
――もうちょっと「スカー」に関する思考を深めると、タイトルをカタカナ表記にするセンスも抜群というか、この文字と音の感じが印象的で。“傷跡”とか英語表記よりも妙に残るんです。
そうですね。やっぱり子供にも覚えてほしいんでね。“傷”とか“傷跡”ってなんか仰々しいじゃないですか(笑)、痛そうだし。
――むしろ「スカー」っていうのが新たな痛みのイメージを生む気がしたんです。あんまり日常で聴かないじゃないですか。
何も曲を知らない状態で曲名が先に出てくるってあるじゃないですか、告知とかで。そういう時にワクワクしてほしいなあとは思っていて。自分もそういうのでワクワクしてきた人間なんで。曲名だけで予告編になっているというか、そういう感じにはなってほしいなあと思って。だからそういう引っ掛かりは意識します。これは理屈とかはないんで、感覚ですけど。“え? なになに? スカーって何?”と思ってほしい。
――キタニさんご自身はどういうことにワクワクしてきたんですか?
やっぱりBUMP OF CHICKENの「カルマ」じゃないですかね?
――子供の時は意味分かんないですもんね。
“カッコいい! カルマって意味なんだろう?”って辞書を引いても“業”って書いてあるだけで。業って何だろう(笑)。そういうちょっと中二病感をくすぐるのって、すごく大事なんですよ。イマジネーションを想起させるものなんで。
――バンプってアルバムタイトルとかでも『ユグドラシル』とか。
僕も今『ユグドラシル』かなと思いました。
――なんやこれ? みたいなところは常にありますよね。
そういうのって大事なんですよ。アジカンだって「アフターダーク」ですからね。“何それ?”って。大人になってから意味がわかる言葉って大事ですね。「Rapport」とか「タナトフォビア」とか普通に意味わかんないもんな。
――これをカタカナにされるセンスと今回のオケのストレートさは前作が『BIPOLAR』だけに、意外ではありました。
曲調としては脈絡なくいきなりギターロックですからね。でもこういうことをするので、そういうつもりでいてくださいねっていう、ファンの人達へのメッセージでもあります。これがあったらあとで何しても“あのタイミングでいきなり「スカー」みたいな曲出してきた人だし”って思ってもらえるじゃないですか(笑)。 何でもしたいというか、どんな曲でも作りたいと思うので、それに対して自分のことを好きな人に、“こういう曲調はらしくないよ”って思ってほしくないんですよ。僕の“らしさ”は別に曲調にあるわけじゃないんだよっていうか。で、そういう受け皿をみんなに用意しておいてほしいから、脈絡なくこういう曲を出すのはよかったかもしれない。
>>次のページは、「スカー」の歌詞、そして音楽家としての欲求について聞いています。
『BLEACH』最終章の中で自分が最も共感できるなというところに、「スカー」では焦点を当てた感じ。
――ところで今回の『BLEACH』の「千年血戦篇」って後半の方じゃないですか。
そうですね、最終章です。
――歌詞的にはどういう接点がありました? 何かインスピレーションとして。
ラスボスがその手前にいて、最終章ではあんまり出てこないんですけど、その手前までずっと大ボスみたいなやつがいたんですよ。で、そいつが本編の一番最後に“勇気とは何か”ってことについて、その人の哲学を解く、静かな独白のシーンがあって。ざっくり言うと、死を恐れるとか、恐怖を克服することは難しくて、克服するとか乗り越えるではなくて、それを胸に抱きながらちゃんと歩くことをやめないというか。死なない世界を望むのではなくて、死がここにあって、それまでちゃんと生きること、前進を続けることが勇敢さであるみたいなことを言うシーンがありまして、僕はそこがすごく好きなシーンなんです。それは自分の人生観としても共感できる部分だし、折れそうな瞬間っていうのはままあって、何か先が怖いっていう瞬間も全然あって。それを全部受け入れつつ、でもちゃんと歩みを止めないっていうか、そこは自分の理想とする人物像としてあるので。『BLEACH』最終章の中で自分が最も共感できるなというところに、「スカー」では焦点を当てた感じですかね。
――《僕だけの痛みだ》という歌詞が象徴的ですね。
ああ、そうですね。うん。人に渡したり捨てたりするものではなく、それを大事に、自分の与えられた運命に対して嘆くとかではなく、ちゃんとそいつを大事にして受け入れるというか。そうありたいよねっていう感覚はずっとあります。
――勝手な解釈なんですけど、「スカー」に出てくる《青天井》と「タナトフォビア」の《青い空があった》っていう、青い空が象徴する何かがありそうだなと感じて。
別に何も意識してなかったですけど、どっちも青空っていうものを抜けるような明るいイメージでは捉えていなくて。割と、そこに対する不信感とか虚無感とか、焦りを促すようなイメージで捉えていて。これはこの2曲で繋がっている部分というよりは、多分自分が、みんなが諸手を挙げて賛美するベタな美しいものに対してなんとなく信じきれない部分があるんでしょうね。
――たとえとして“悲しいほどお天気”とか。
うん。そういう文脈ですよね。《どうしようもなく澄み渡っている》、ですからね。“今日はお天気がいいな”ぐらいに思えればいいんですが(笑)、なぜか落ち着かない感じがするというか。
――ところで、キタニタツヤというアーティストはシンガーソングライターというには逸脱した活動形態ではあると思うんですけど。
ふふっ(笑)。
――曲提供であったり、コラボレーションだったり、もしくはベースプレーヤーでもあり。
それで言うと最近は人に呼ばれて歌うことが、三連チャンぐらいあって。“歌だけ? 俺が?”みたいな。ボーカリストとして“フィーチャリング・キタニタツヤ”っていうのがあって、嬉しいんですけどなんか照れくさいというか。今までボーカロイドを使っていたけど、自分でも歌えるし歌ってみるか、という気持ちで初めてみたっていうだけで、歌いたい欲求がそんなにあったタイプではないんですよね。自分の歌にめっちゃ自信があるかと言われたら、そうでもないし。ただそれで今みたいな活動を何年も続けてくると、ただただ歌声を楽器として求めて声をかけてくれる人もいるんだ?っていうのがとっても不思議で。今まで他人の曲に関わるときに、作詞作曲編曲、もしくはベースぐらいしかなかったのが、そういう関わり方もできるようになったんだなあっていうのが不思議だし。しかも歌声なんてその曲の顔じゃないですか。だからなんか“俺でええんか?”っていう気持ちにもなっちゃうし。でもなんにせよ、いい経験させてもらっているなというか、自分のボーカリストとしての技量はほんとにまだまだだなっていうのが自覚としてあるので、自分が作らない曲の上で歌わせてもらうと、普段しない歌い方とかも必要に迫られてやるわけじゃないですか。それがスキルアップに繋がっている自信もあるので。これからもやっていきたいと思うし、みんな声かけてください!って(笑)、思ってますね。この記事が出る頃にはある情報が解禁になってるとも思うので。
――リリースの前後ですかね?
その頃には告知が出てるんですけど、一人コラボレーションした曲があって、それはお呼ばれして共作した曲が出ます(ソロアーティスト・泣き虫■との共作曲「どーだって。(feat. キタニタツヤ)」 )。あとはこの間初めて会ったネット出身のミュージシャンとも仲良くなって、“一緒に曲作ろうよ”っていう話をしたり、それもいつか動こうかなと思ってるんですけど、なんかいろいろありますね(笑)。(※■=雨粒がついた傘の絵文字)
僕、結局人が好きなので、一緒にものを作ればそれだけ深く対話することになるので、それは純粋に自分の人間性を耕す助けになる。
――ご自身の軸みたいなものはあって、自分の活動の範囲っていうのはどこまでも増えてもいいっていう感じですか?
今のところは、そうですね。忙しすぎてもう無理ってなるまでは、“ああ、忙しい忙しい”ぐらいはちょうどいいのかなというふうに思っているので。キタニタツヤとして曲を作って自分で歌うっていうのがもちろんメインではあるんですけど、それを邪魔しないで、むしろそれの助けになるぐらいの範囲だったら、どんどんやっていきたいですし。僕、結局人が好きなので、一緒にものを作ればそれだけ深く対話することになるので、それは純粋に自分の人間性を耕す助けになるじゃないですか。なので、色んな人と友達になれて嬉しい!っていうのがあります(笑)。
――その中でも一緒に曲を作るっていうのは、単に友達とかと何が一番違うと思いますか?
純粋に、例えば中高の時から仲いいただの飲み友達とかと比べると、その人の哲学に対して、お互い尊重してこれ以上は接近しない、みたいなのがあるかもしれないです。音楽を人前で歌って生きている人なんて、自分の考えがドン!ってある人じゃないですか。なんとなく生きているわけではないので。そうすると、互いの心情みたいなのがぶつかったりこすれたりする場面があったときに、どっちかがどっちかを食うじゃなくて、どっちもが並立するバランスでコミュニケーションをとるみたいな感覚があって。それは全人類そうであればいいのにとさえ思うので(笑)。そしたら争いごとはなくなるでしょ?と。だから自分の中では神聖なコミュニケーションだなあっていう気はしています。
――今の音楽シーンの中、エコシステムの中で、今までにいなかった人になりたいみたいなことではなく?
そういう欲求はなくはないか。例えばですけど、ネット発ミュージシャンっていうものに対してみんなが思い描いているイメージって、なんとなくあるかもしれないなあって思っていて。そういうものとはちょっと違うようにありたいとは思いますけど。音楽家全体での生態系の中で、俺はこの地位とかは別に何も思ってないな(笑)。
――ネット発ミュージシャンも自分でやり始める人があまりに多いので、だんだんイメージが変わってきましたね。
もう多様化しまくってますからね。それでいいと思っていますし、僕みたいなタイプの人がいてもいいし、完全に表には出ない人がいてもいいし。
――現在、次のツアーであったり、何かコンセプチュアルなことをやりたいっていう欲求はありますか?
次に決まってるライブが12月2日に、それは1回こっきりのイベントなんですけど(『LIVE IN CLUB UNREALITY Vol.2』)。ツアーは割とコンセプチュアルに筋を通して曲順にも全部意味を持たせてやったし、自分にとってこの曲はこういうものだからっていうのをMCで喋ってからその曲をやるとか、いろいろ頭でっかちに考えて作るんです。だから次はそういうところではなくて、ちょっとお楽しみ会みたいなことを(笑)、ホールを使ってやりたいなあっていうのは思ってて。だから演奏も原曲の再現とかではなく、変にアレンジしても面白いなあって思ってるし、ホーンセクションも今度呼ぶんですけど、あとはアコースティックパートでなんか変なことしてもいいし(笑)。 で、曲もセトリ自体もぐちゃぐちゃでいいなあと思ってます。トータルで見て、なんかキタニタツヤってこんなことをするんだ、こういう曲もあるんだ、面白いなあってなることが目標の、気軽なライブをしたくて、今度のライブでそれをやります。
取材・文=石角友香 撮影=大橋祐希

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着