DEZERT × Royz “混ぜたらヤバい”
2マンライブ公式レポート到着

DEZERTが11月15日に東京キネマ倶楽部で開催したRoyzとのツーマンライブ『DEZERT ✕ Royz “デザートとロイズでアナタのハートに火はツキマス~?...多分ダイジョウブデスっ!”』のオフィシャルレポートが到着した。

混ぜたらキケンではなく、混ぜたらヤバい組み合わせ。
どうやら、それがこの両者の組み合わせだったようだ。むろん、ここでのヤバいとは褒め言葉でしかない。
題して『DEZERT ✕ Royz “デザートとロイズでアナタのハートに火はツキマス~?...多分ダイジョウブデスっ!”』。
このたび東京キネマ倶楽部にて11月15日に開催された注目の2マンライブは、現在ともにシーンの中核でそれぞれに異なるポジションをしっかりと確立しているDEZERTとRoyz が初の一騎打ちするものとなったのだが、案外その内容はバチバチだのギスギスしたものにはならず、それどころか予想以上の素晴らしい盛り上がりぶりを呈しながら、結果としては終演予定時間を大幅に超えてしまうほど大充実したものとなったのだった。
Royz
「一番手をつとめさせていただきますのはRoyzです。よろしくお願いいたします! まぁ正味、このタイバンが発表されたときは9割くらいのヤツが「DEZERTとRoyz!?」って意外だったと思う。想像が簡単につくようなライブも悪くはないけど、でも結末どうなるんやこれ??っていうライブの方がめっちゃ面白そうじゃない」(昴)
Royz
今や活動歴が13年にもなってきたRoyzは、今宵どっしりとしたリズムと美しいメロディで深みのある光景を描き出した「月光」からそのステージをスタートしたあと、ヴォーカリスト・昴の高らかなアカペラからドラマティックなバンドサウンドへと展開していく「クロアゲハ」でしょっぱなから観衆を魅了していくことに。「次にやる「α」という曲は、8年とか9年前くらいに初めて千秋と出会った時から「Royzがこれをシングルで出した頃、俺らは池袋のBlackHoleで動員5人とかでやったわ」ってずーっと今でも言われ続けてる曲で、アイツ呑むたびに毎回おんなじ話をすんねん(笑)。その頃から縁はあったとはいえ、これまでそれが交じることはなかった中で、今回はせっかくの機会だからその曲をやろうと思います。普段のライブではあんまりやらないんで、Royzのファンはアイツに感謝した方がいいかもしれないです」(昴)
Royz
ちなみに、このライブの直前に千秋がtweetしていた内容によると、彼から見たRoyzとは“ピカピカなバンド”であるのだとか。実際、ここで奏でられた「α」はギタリスト・杙凪の繰り出すタッピングや、ベーシスト・公大の躍動感あるプレイ、智也のシンコペを利かせたスティックワーク、昴のキラめくようなヴォーカリゼイションで渾然一体となったキラめきに彩られていたと言っていい。
そして、このあと中盤に差し掛かったタイミングでは、なんと千秋がギターを持って突如乱入することになり、昴いわく“5人のRoyz”での「JOKER」を派手にブチあげてみせ、場内はよりいっそう沸き返ることになったのだ。「千秋とは同じ関西の出ということもあって、お互い波長が合ったんやろな。仲良うさせてもらってます。ほんまはちょっとくらい憎まれ口のひとつでも言うたろかなと思ってたりしたけど(笑)今はこうしてお呼ばれされたことを純粋に感謝してます。ありがとう。(中略)この2マンに向けて千秋といろいろ話してたのは、たった1回こっきりの2マンだけじゃなく、ここからヴィジュアル系というシーンの中で何かを動かしていく切っ掛けに出来たら良いなっていうことだったんやけど、俺らは本気でそう思ってるから。これからもよろしくお願いします!」(昴)

Royz
Royz

百戦錬磨のライブバンド・Royzとして、限られた時間の中ではあったもののワンマンにも匹敵する凝縮されたパフォーマンスを見せつけてくれた彼らが、この夜「これが俺たちとおまえたちのアンチテーゼ!!」という言葉と共に放ったのは、強い訴求力をたたえた「ANTITHESIS」。13年のキャリアに裏打ちされた貫録を漂わせる一方、今もって鋭く尖り続けているRoyzの矜持がその音の中にはあふれていた。
DEZERT
では、そんなRoyzをこの場に召喚した側のDEZERTは果たしていかなる応戦ぶりをみせていったのかというと。まず、彼らが1曲目としてこの空間に投下したのは重苦しさと痛みが音と詞から沁み出してくる「「絶蘭」」で、なんでも風の噂によるとリハーサル段階ではもともと全く別の曲がここで演奏されることになっていたとかいないとか…。DEZERTとしては、当初のプランよりもさらに“勝ちに行く”ための選択をしたのだろうか。確かに、次いでの「カメレオン」と「胃潰瘍とルソーの錯覚」への緩急ある流れも鮮やかであったし、何よりそのあとに奏でられた最新シングル『The Walker』のカップリング曲「モンテーニュの黒い朝食」で聴けたバンドアンサンブルは、ドラマー・SORAの叩きだす肉感的なリズム、ベーシスト・Sacchanが聴かせた懐の深いフィンガリングプレイ、ギタリスト・Miyakoが響かせる軽妙かつモダンなカッティング、フロントマン・千秋による絶妙にラップ要素をコンフュージョンさせた歌と、各人の発する音の編みあわせぶりが実に秀逸で、そこには10年以上のキャリアを詰んできたバンドだからこその粋な風情が備わっていたように思う。
DEZERT
「はじめまして。俺らはRoyzとやるのも初だし、キネマ倶楽部でやるのも初めてです。(中略)このところDEZERTは2マンシリーズというわけではないですけど2マンが続いてまして、10月には夕闇に誘いし漆黒の天使達とやって、このあいだはdeadmanとやってきました。そして、今日のライブはある意味でそのファイナルです。昴とは何ヶ月か前に一緒に呑んで、正直そこまで意気投合はしてへんねんけど…」(千秋)
というところから始まって、ここではしばし千秋がRoyzとDEZERTをめぐる四方山話を披露してくれたのだが、逐一それに対して2階の関係者席から昴が良く通る地声でツッコミを入れていく様は完全に仲睦まじいの一言(笑)。「まぁ、別にここからRoyzとDEZERTでヴィジュアル系を盛り上げていこう!なんて大それたことは考えてなくて。ただ、どっちも10年超えのキャリアで、やっぱり意思とか目標がないとやっていけないのも事実なのかなと。最近は物価も上がってるし、チケット代も上げなあかんし、バンドマンを続けてくのもめっちゃ大変やねん。そんな夢や自由なんてものは枯れ果てた我々10年プレイヤーですが、それでも“行く”しかないんですよ。だから、今日はケンカしないで仲良くやっていきたい」(千秋)

DEZERT
この言葉のあとに聴けた『The Walker』収録曲である「あの風の向こうへ」と表題曲「The Walker」から感じられたのは、それぞれに曲調こそ違えどいずれもDEZERTが音楽で表現する率直にして実直な志そのもので、それはとかくアマノジャク体質なバンドとしての表情をみせがちなDEZERTの抱く本音としても受け取れた。もちろん、年明けの1月に行われる東名阪での[DEZERT LIVE TOUR 2023 「てくてくツアー」]でも、きっとDEZERTは揺るぎなき志を礎に現在進行形のリアルな姿をライブの場でいきいきと発揮してくれるに違いない。
なお、このあとの「「殺意」」では先ほどの千秋による乱入に対するお礼参りのかたちで昴が舞台へと登場。お立ち台の上に一緒に乗って歌ったり、肩を組んだり、向かい合ってデスボで吠えあったりと、曲自体の醸し出す殺伐さをよそにまたもや微笑ましい様子をこれでもかとみせつけるに至った。
DEZERT
このような千秋と昴の関係性を仮に友情と呼んだとしたら、彼らはきっと「そんなえぇもんちゃう」とでも否定しそうだが。同じ時代に生き、同じフィールドで闘い、同じように人生を賭して音楽を続けてきた彼らの間には、やはり何か特別な絆があるのではなかろうか。そのことを思うと、DEZERTがこの夜のラストソングとして聴かせてくれた「ミザリィレインボウ」での〈違いを赦して 違いを愛して〉という歌詞が、ことさらに意味深いものとして聴こえてきた。認めあう、ということはつくづく尊い。

さて。なかなかの長丁場となった[DEZERT ✕ Royz “デザートとロイズでアナタのハートに火はツキマス~?...多分ダイジョウブデスっ!” ]の顛末がここからどうなったのかというと、アンコールでは千秋と昴がほぼ上方漫才と言って差し支えなかった長尺トークで場内をおおいに湧かせたほか、SacchanはSacchanでキネマ倶楽部の名物であるバルコニーミニステージで何故か天童よしみの名曲「珍島物語」をひとしきり熱唱するなど、通常のライブではありえない場面が続出。また、Royzの「蒼蓮花」を昴が千秋のアコースティックギター、Sacchanの鍵盤をバックに歌い上げる一幕もあり、最後は出演者総出でDEZERTの「「君の子宮を触る」」をもって締めくくられた次第である。
集った人々のハートに火が着くどころか、勢い良く燃え上がるほどの盛況ぶりをみせ、混ぜたらキケンどころか混ぜたらヤバい領域にまで達したDEZERT ✕ Royzの2マンはひとまずこれにてお開きとなったとはいえ。この夜からあらたに始まっていく未来がありえそうに思えることが、今はとても喜ばしい。そう、多分ダイジョウブ!
取材・文=杉江由紀 撮影=上原俊

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