前編:営業妨害ゴメンなさい! ヒール
レスラーちょっとイイ話

ヒールなのにイイ人といえば蝶野正洋

 ヒールレスラーはプロレスの楽しさ、おもしろさ、かっこよさを、凝縮した存在だ。観客を盛り上げるため、分かりやすい対立構造として「勧善懲悪」のストーリーを、レスリングに取り入れたのが起源だ。しかし現在のように、ヒールはあくまでキャラ設定ということがあまり知られていなかった当時は、外国人レスラーは日本の観客から本気で憎まれている部分があった。
 国民からの嫌われ者として生きていくヒールレスラーだが、嫌われ役を買って出るということは、逆に良い人ということもできる。
 ヒールレスラーなのに良い人で有名なのは蝶野正洋だ。
 ある日の新日本プロレス中継。実況は辻よしなりアナウンサー、解説は蝶野正洋というコンビで放送は行われた。

辻「本日は解説に蝶野正洋選手をお招きしています」
蝶野「アイム・チョーノ!! ファッキンガッデムガチャメラエー!!」
辻「では蝶野選手、よろしくお願いします」
蝶野「はい、こちらこそお願いします(口調が一変、紳士的に)」

 蝶野も上田馬之助と同じくデビュー当時は地味なレスラーだった。同期入門の武藤敬司、橋本真也と「闘魂三銃士」として活躍したものの、人気では2人の後塵を拝した。蝶野がプロレスラーとして花開いたのは、1994年に現在のヒールスタイルを確立してからである。サングラスに革ジャン、黒ずくめのリングコスチューム。入場テーマ曲も変え、エゴイスティックな雰囲気の悪役に変貌を遂げた。
 蝶野が結成した「nWo JAPAN」はプロレス界のみならず、野球界、サッカー界なども巻き込み一大ムーブメントへと発展。
「nWo Tシャツ」は40万枚を売り上げた。ちなみに「nWo Tシャツ」は、今年9月から復刻版が発売される。
 このころから蝶野は芸能活動もスタートさせる。当然nWo総帥のヒールレスラーとしてテレビ番組に出演するのだが、リングを下りた蝶野からはどうしても常識人・いい人オーラが垣間見えてしまうのである。
 2006年に『どっちの料理ショー』(日テレ)に出演したときは、途中からまったく喋らなくなり、松本明子に「蝶野さん! 蝶野さん! 喋ってくださいよ!」と言われ、「アイム・チョーノ!!」と叫んだ。ユー・アー・チョーノなことは知ってるよ。
 また2012年に新宿駅で開かれた「駅構内での暴力撲滅キャンペーン」に参加した蝶野は、「アイム・チョーノ! 安全な社会を! 暴力撲滅!!」とドスのきいた声で絶叫。「暴力撲滅キャンペーン」にプロレスラー、しかもヒールを呼ぶ鉄道会社もどうかと思うが、「男気とかではなく、逃げることが正しいです」と演説する蝶野の適役感はかなりのものだった。

(文・編集部)

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