大貫勇輔×三浦涼介 互いに信頼を寄
せる二人が生み出すケンシロウとレイ
の関係性とは〜ミュージカル『フィス
ト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜
』インタビュー

ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』が、さらにパワーアップして帰ってくる。
2021年の日本初演で大反響を呼び、“アタタミュ”という言葉も誕生するなどミュージカル界の話題をさらった本作が、2022年9月25日(日)〜10月10日(月)に東京と福岡にて再演される。
開幕まで残すところ1ヶ月を切り、稽古も佳境を迎える中、初演に引き続きケンシロウを演じる大貫勇輔と、再演から新たに参画したレイ役の三浦涼介に話を聞いた。3年ぶり2度目の共演となる彼らだが、この3年間で築いた厚い信頼関係をどのように役に反映するのだろうか。この2人ならではのケンシロウとレイの新しい関係性が生まれる。そんな予感がするインタビューとなった。(編集註:インタビューは9月上旬に行われました)
――写真撮影時の雰囲気からもお二人の仲の良さが伝わってきました。仲良くなったきっかけは『ロミオ&ジュリエット』(2019年)での共演ですか?
三浦:『ロミオ&ジュリエット』の稽古場で、僕が「なんだかすごい人と出会っちゃったな」と思ったのが最初です。いつも遠くから(大貫)勇輔さんのことを見ていたんですけど、僕が「大貫さんと写真を撮りたい」と話していたらカンパニーの人が近所の餃子屋さんに行く企画をしてくれて。「ようやく大貫さんと喋れる!」とテンションを上げていたら、勇輔さんは急遽別の予定が入ってしまったんです。なので一緒に食事はできなかったんですが、そのとき僕が意を決して「一緒に写真を撮ってもらっていいですか」と声を掛けたんです。それが最初のコミュニケーションだったと思います。
大貫:そうそう、餃子屋さんの前で二人で写真を撮ったんだよね(笑)。
――当時、お二人は舞台上であまり接点のない役柄(※)でしたもんね。今回はケンシロウとレイとしてガッツリお芝居をすることになります。(※『ロミオ&ジュリエット』で大貫は死、三浦はベンヴォーリオを演じた)
大貫:『ロミジュリ』から『北斗の拳』までの間も、一緒に旅行に行ったり飲みに行ったりプライベートでよく一緒に過ごしていたんです。レイはケンシロウにとって強敵であり友でありライバルでもある存在。「お前は救世主になるべき男だ」ということを、命をかけてケンシロウに伝えてくれるのがレイなんです。
初演の伊礼(彼方)さんと上原(理生)さんのレイもとても素晴らしかったんですけど、二人とはまた全然違ったレイが出来上がっています。「お前に出会ったから俺は生まれ変わることができた」というレイの台詞があるんですけど、プライベートを共にしている時間がたくさんあるからこそ、その言葉がより突き刺さってくるんですよね。りょん(三浦さんの愛称)がレイを演じているからこそ、お芝居をしながらいろんな想いが湧き上がってくるというか……間違えて「りょん」って呼んじゃいそうです(笑)。そこだけ気を付けなきゃなと思っています(笑)。
三浦:気を付けてください(笑)。僕はこの作品のオファーをいただいたとき、本当にビックリしたんです。まさか自分が去年観させていただいた作品に出演することになるなんて。出演の決め手として、大貫勇輔さんがトップを張ってセンターに立ってみんなと芝居をしているということにすごく魅力を感じました。勇輔さんとは一度ちゃんとお芝居をしてみたいと思っていたので、むしろこんなに早く共演できて嬉しいです。実際にお稽古場に入っても本当に刺激的で、彼から放たれる全てが周りの人間全てに影響しているんです。勇輔さんの力がこの作品を引っ張っているということを日々感じています。僕も自分ができることを精一杯考えながら、何か与えられるような存在になれたらいいなと思っています。
大貫:初演をやっているからこそ、そのリズムや間を壊しづらい部分がどうしても僕にはあったんです。そういうときにりょんのレイと芝居をすることで、新しい気付きをたくさん与えてもらっています。ある意味、初演の縛りをりょんが解き放ってくれているんですよ。
>(NEXT)直してほしい&尊敬するところは……
――素敵な関係性ですね。3年前に出会った頃と今とで、お互いの印象は変わりましたか?
大貫:最初はすごくアーティスティックな人だなというのと、ある意味尖っている印象がありました。だからこんなに人懐っこいというか、「(子犬をかわいがるように)よーしよしよしよし」ってしたくなるような一面があるのは意外でしたね(笑)。一方で本当にストイックな面があったり、悲しみや葛藤を抱えている内面もあったり、いろんな顔がある人間なんだなということを感じています。だからこそ、彼は幅広い役を演じることができる魅力的な俳優さんなんだろうなって。一緒に過ごす時間や、今お芝居をすることを通してそう感じます。
三浦:僕にとっての彼の印象はあまり変わらないですね。むしろもっと新しい発見がたくさんあって、一緒にいさせてもらって楽しいんです。すっごく子どもっぽいところもあるので、そこは愛すべきポイントだなと思いますね。勇輔さんは凛としていて、僕とは違う話しかけづらさみたいなものがある気がするんです。でも実は少年っぽいところがあるのがすごく魅力的なんです。あと、おうちで一緒にご飯を食べるときとかにささっとサラダを作ってくれるんですよ。しかもそれが普通のサラダじゃなくてブルーベリーとか入っているんです! 本当に驚かされることばかりですね(笑)。
――お互いに直してほしいところはありますか?
大貫:やっぱりお酒だよね(笑)。僕たち、お酒に酔ってくると喧嘩したがるんです。
三浦:謎にね。お互い熱いが故に。
大貫:あそこの芝居はあーだこーだとか。まあ、何が理由で喧嘩したかは毎回覚えていないんですけど(笑)。
三浦:「喧嘩してたよ」って人から言われて動画を見返すんですけど、見ても内容がよくわからないんです(笑)。 
大貫:あ、それで思い出したものが一つある。ピグモンっていうキャラクターがいるじゃないですか。こういうやつ(ピグモン顔になる大貫さん)。僕がその顔マネをしたら、りょんが「はあ? 何その顔」って。で、僕が「今したいって思ったんだからいいじゃん」って言い返したり。そういうレベルの喧嘩をしています(笑)。
三浦:うそ!? きっと鼻についたんですね、その顔が(笑)。酔っ払っているので覚えてないんですけど、確かにいつも大体そんな感じですね(笑)。
――逆に、尊敬しているところを挙げるとしたら?
三浦:すごくストイックだなと思います。だってこの作品のお稽古って、どれだけトレーニングをして体力があったとしても、何度も繰り返していくとどうしても体力的にしんどくなってくるんです。それでも彼は「ちょっと休憩しません?」ではなく、先頭を切って「もう1回頭からやりましょう」と言うんです。そういう仕事の仕方がかっこいいですね。
大貫:りょんは作品のために生きようとする力がすごく強いんです。どうしたらこの作品がより良くなるかということを、とてもストイックに考えている。熱さと冷静さを併せ持っているんですよね。稽古場で見ていて「めっちゃ冷めているなあ」と思っていたら、芝居が始まった瞬間にバーンと熱くなって「え、情緒大丈夫?」って思っちゃうくらい(笑)。とにかくその差がすごいんですよ。だからきっと、内にものすごい炎を持っているんだろうなと思います。
>(NEXT)再演でバージョンアップ!ケンシロウとレイの新たな関係
――激しいアクションシーンが多いこの作品に臨むにあたって、体作りはどう取り組んでいますか?
三浦:僕は特別なことは何もせず、いつも通りです。むしろ稽古中や本番中って食べなくなっちゃうんですよ。午前中からお稽古があると気付いたら夜まで食べないこともあるので、なるべくそうならないように気を付けてはいますね。おうちに帰ったら夜ご飯はちゃんと食べるようにして、これ以上痩せないようにということは意識しています。筋トレとかは特にしていないですね。
大貫:レイはフライングのためにハーネスをつけている時間が長いから、きっとそれが大変だよね。
三浦:そうなんですよ。思った以上にハーネスが太いので動きを制限されちゃうんです。フライング自体は戦隊モノや映画で経験はあるんですけど、舞台のアクションでフライングをするってなかなかないですよね。スピード感ある芝居をしている流れの中でフライングするときに、どれだけスムーズにお客様の心が途切れないようにやれるかというところがポイントになると思います。
――大貫さんは、体作りで初演時との違いはありますか?
大貫:前回は脚がものすごくしんどかったんです。身体を重くし過ぎたなという反省があったので、トレーニングは加重ではなく自重のものに変えました。食事についても、前回は頭が回らなくなったり風邪を引いたりするのが怖くてしっかり食べていたんです。でも今は1日5食にしてちょっとずつ食べています。
三浦:1日5食……!? 姉妹さんくらい食べてますね。
大貫:(笑)。夜になったら炭水化物を抜いています。稽古が始まってから3kgくらい落としていて、できればもう2〜3kg落とせたらいいなという感じです。軽くなればなるほど脚が楽になって動きやすい実感があるので、このまま本番を迎えられたらなあと。
――今回の再演では、新たにケンシロウとレイの生き様を対比させるシーンも追加されたそうですが、どんなシーンに仕上がってきていますか?
大貫:物語の舞台が荒廃した世界なので、水というものがとてもありがたいものなんです。その貴重な水を人から奪って飲むレイと、人から乞うて感謝しながら飲むケンシロウ。同じ愛のために生きた二人だけれど、レイは復讐者となりケンシロウは違う生き方を選ぶ。そんな正反対のレイという人間から、ケンシロウはある一つの真実を告げられて覚醒するんです。ここのストーリーがしっかり描かれることによって、ケンシロウの覚醒やレイの生き様がはっきりして感情移入しやすくなったと思います。僕自身も演じやすくなりましたし、プラスに働いている部分がいっぱいありますね。
三浦:(前回)自分が観客として観たとき、正直なところ、展開が早過ぎて気持ちが追いついていかない部分がありました。原作のストーリーを限られた上演時間に詰め込まないといけないですから。その点が、初演から出演されている方たちも「すごくわかりやすくなった」とおっしゃっているので、大きくバージョンアップされているのだと思います。あとは、僕と勇輔さんというプライベートの関係もある二人が芝居をするという強みもあると思うんです。そこは思う存分に使って、気持ちを繋げられるように芝居していきたいですね。
>(NEXT)稽古も佳境!「1公演1公演に命を懸けて」
――本作はフランク・ワイルドホーン氏が手掛けた音楽も素晴らしいですよね。劇中の一押しナンバーをそれぞれ教えてください。
大貫:いっぱいあり過ぎて迷うなあ。自分の曲ではないですが、「ヴィーナスの森」は唯一息が抜ける曲なのでいいなあって思いますね。初めて配信映像を観たときに、これは観る人もめちゃくちゃ体力が要る作品だなと思ったんです。だからああいう息が抜ける曲ってすごくありがたいなと。
三浦:僕も1つ選ぶなら「ヴィーナスの森」です。通し稽古のときに初めて伊礼さんのジュウザの「ヴィーナスの森」を観たんですけど、すごく素敵でした。作品の持つ熱さとはまた違った、とてもセクシーでかっこいい曲ですよね。
――もし機会があったら「ヴィーナスの森」を歌ってみたいと思いますか?
大貫:僕は歌いたい! すごく好きな曲なので。
三浦:僕は聞く方で大丈夫です(笑)。大貫さんが歌う「ヴィーナスの森」を観に行きますね(笑)。
――稽古は佳境だと思いますが、本番までに突き詰めていきたいなと思うところはありますか?
大貫:僕は、お芝居と歌のバランスですね。今までは思うがままに芝居も歌もやっていたんですけど、どうやったら観る人が入り込みやすくなるかということを考えていきたいと思っていて。前回はケンシロウとして生きることに必死だったので、冷静に、俳優としてよりブラッシュアップしていくことによって、もっともっと大きな感動を与えられたらなと。そこを突き詰めていきたいなと思っています。
三浦:僕はいかにやり込めるか、ということですね。芝居でちょっと気を抜くといきたかったところに辿り着けなさそうなので、とにかく集中力を持って臨みたいです。芝居の中で相手の目、トーン、コンディションなどをちゃんと感じて、自分自身も相手に伝えられるようにしていくこと。これがいつもの課題ですね。精一杯やりたいと思います。
――最後に、本作を楽しみにしているお客様に向けてメッセージをお願いします。
三浦:こういうご時世なので、大きな声で「みなさんぜひ来てください」と言うのはなかなか難しいところではあると思います。でも、1日でも1秒でも長くこの作品が上演できればいいなと思いますし、来ていただいたお客様には心の込もったものがお届けできるよう、残りわずかな稽古期間で自分なりに精一杯頑張っていきたいと思います。
大貫:劇中冒頭で、ケンシロウが「地獄のようなこの時代に一体何ができるのか」と自問自答するんです。まだまだ不安な世の中ですが、少しでもこの作品が観る人の救いとなり、作品が持つ愛の力で元気付けられたらいいなと強く思います。この時代にやる責任を感じながら1公演1公演を大切に命を懸けて臨みます。初演のときも感じましたが、本当にこの作品はお客様に育ててもらった作品なんです。ぜひ、今回の再演もみなさまのお力を借りて盛り上げてもらえたらなと思っています。
取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=山口真由子

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