久保史緒里(乃木坂46)が花魁役に初
挑戦 パルコ・プロデュース 2022 舞
台『桜文』取材会&公開ゲネプロレポ
ート

舞台『桜文』が2022年9月5日(月)~25日(日)にPARCO劇場にて上演される。その後、大阪、愛知、長野と巡演する。
古き良き日本を舞台に、幽玄でエロティック、情感あふれる物語をユニークな感性で美しく描きだすことに定評のある秋之桜子の書き下ろしを、俳優の心の奥に眠っている感覚を炙り出し表現させ、作品世界を多様化させる演出術で、今や引く手あまたの寺十吾が演出する。これまでも演劇集団西瓜糖などで数々の作品を生み出してきた秋之✕寺十のタッグがPARCO劇場に初登場となる。
出演者には、乃木坂46のメンバーとして活躍しながら、女優として舞台やTVドマにも精力的に出演し注目を集める久保史緒里、若手個性派俳優として、舞台・TV ドラマ・映画とジャンルを問わず活躍し今後がますます期待されるゆうたろうといったフレッシュな2人をはじめ、石倉三郎、榎木孝明ら演技巧者が揃い、明治期の吉原を体現する作品となっている。
初日に先立ち、公開ゲネプロと取材会が行われた。
久保史緒里(乃木坂46)
取材会には久保史緒里、ゆうたろう、石倉三郎、榎木孝明、寺十吾が登壇。まず最初に、寺十は「今回初めてPARCO劇場で演出をする。なにぶん初めてなのでお手柔らかにお願いします」、久保は「私もPARCO劇場に立たせていただくのは初めて。グループの外に出て単独で主演を務めさせていただくのも初めてなので緊張や不安があったが、共演者やスタッフにたくさん支えられて、なんとか初日を迎えられそうだなと感じている。こうした役柄も初めてなので、今はお客様がどんな感想を持ってくださるかを楽しみに、一公演一公演舞台に立てたらなと思う」、ゆうたろうは「僕もPARCO劇場は初めて。公演を見に来たことはあって、そのときにいつか立ってみたいなと思った劇場だったので感慨深い。初めてのことばかりでまだまだプレッシャーや緊張感があるが、無事に幕を上げられるように精一杯頑張る」、榎木は「私はリニューアル前のPARCO劇場には立ったことがあるが、新しくなった劇場では初めて。今回は脚本も演出も装置も照明も音楽も素晴らしく、ものすごい作品が出来上がったと思っているのでどうぞご期待ください」、石倉は「私がPARCOさんからお呼びがかかろうとは思ってもみなかった。この劇場でやらせていただくということは感謝に堪えない。なんとかコロナにも気を付けて完走したい」とそれぞれあいさつした。
ゆうたろう
吉原の花魁・桜雅(おうが)と、花魁の桜雅になる前の少女・雅沙子の二役を演じる久保は、花魁という役の話が来た時にどう思ったかを問われると「花魁のことを何も知らない状態からのスタートだったので最初は驚いたが、今まで出会ったことのない役なのでものすごい挑戦になると前向きにとらえている」と答えた。
稽古のときのエピソードを問われると久保は「雅沙子のときは寺十さんがいろいろな要素を足してくださって、それがだんだんやっていくうちに楽しくなってきた。当初はもうちょっと雅沙子の中にはいろいろ引きずった思いもあるのかなと思っていたが、稽古をしているうちに雅沙子はただただ楽しくやらせていただいて、いっぱい笑っている」と楽しかった様子を笑顔で語った。
小説家の霧野と桜雅の初恋の相手・仙太の二役を演じるゆうたろうは、こうした時代物には初挑戦で「最初は和服に慣れるのに大変で、着付の仕方から教えてもらって少しずつ自分でも着付けられるようになってきた。仙太の役は江戸っ子言葉のようなニュアンスやイントネーションも霧野の役と全然違うので、そこは寺十さんとしっかり本読みをしたり、ベテラン俳優の方々にイントネーションを確認していただいて臨んだ」と苦労をにじませた。
榎木孝明
久保とゆうたろうの印象について聞かれると榎木は「今回はこのお2人の若さ全開という感じで、2人がぐいぐい物語を引っ張っていってくれているので、そのパワーに私たちが引きずられている感じがしている」と答え、石倉も「やっぱり若者が持っているパワーというのはすごい。この2人には本当に引っ張られている。恐るべき若者ですよ」と同調した。石倉の方から2人に教えるようなことはあったのかという問いには「そんなことは一切ない。私が教わることばかり」と笑顔で答えた。
榎木と石倉のコメント聞いた久保は「むしろ私が支えられてばかり。稽古場で皆さんと積極的にお話しができないまま劇場入りしたが、つい先日まで乃木坂46の全国ツアー中で、明治神宮野球場での配信ライブをみなさん見てくださっていた。榎木さんも雨の中のライブを見て「風邪ひかないか心配してたよ」と声をかけてくださったりとか、劇場に入ってからよりコミュニケーションが取れるようになったので、これからさらに甘えさせていただこうかなと思っている」と座組の温かさがうかがえるエピソードを披露。
久保とゆうたろうの魅力はどんなところにあるかと問われた寺十は「とにかく若さというもの、未熟であるということがこんなに新鮮で可能性があるんだということを改めて感じている。未熟であるということは決してマイナスなことではなくて、すごく希望と可能性に満ちているという感じを受けた。ウケようとかうまく見せようといった雑念が一切なくて、とにかくまっすぐに自分の芝居に向かって進んでいく姿がとても美しかった」と2人を評した。
石倉三郎
寺十からはどのような演出を受けたのかという質問にゆうたろうは「寺十さんが『霧野の一言目のセリフを出すために、ゆうたろうとして考えてみて』と言ってくださったことがあって、僕は稽古中でもずっと霧野の中にいるという感覚だったので、霧野になるためにゆうたろうとしてどう準備するか、ということを言っていただいたときに、ああなるほどな、とちょっと肩の荷がおりた気がして、そこから良い意味でオンとオフの差ができたかなと思うので、すごく救われた瞬間だった」、久保は「私は本読みの段階から声が小さくて、それで表現も小さくなっていっていた中で、寺十さんから「とりあえず声を出してみて。それで気づく感情があったり、声を出してみてやっとわかることがあるから」と言っていただいて、思いっきり声を出してやってみたら、「お芝居をしていて楽しいな」という感情に出会えたので、きっかけをいただけてすごく感謝している」とそれぞれ寺十からもらった印象的な言葉を答えた。
寺十吾
最後に、公演初日を迎えるにあたってのコメントを求められると、石倉は「ただただお客様のために一生懸命がんばりたい」、榎木は「この脚本を最初に読んだときにすごく感動した。素晴らしい本が逆にプレッシャーになった時期もあったが、若い2人のパワーに負けないように支えつつ頑張っていきたいと思う」、ゆうたろうは「僕の役者のキャリアでこんな大きな舞台、そしてこんな豪華なメンバーと一緒にひとつの作品を作れるというのは嬉しいことだが、不安だったりプレッシャーだったりで、最初お話しをいただいたときには即答できなかった。でも、いろいろな自分と向き合い、霧野一郎と仙太の人生と向き合い、心からやりたいと思えた作品。稽古中はもちろんしんどい時間や焦りもあったが、いろいろ支えてもらいながら精一杯やってきたので、ここから一ヶ月ちょっと全力で舞台の上に生き続けたい」、久保は「桜雅として生きるのは決して楽ではないというか、苦しい場面もたくさんあったが、何よりも来てくださるお客様に、舞台上で生まれる素直な感情のぶつかり合いやたくさんの交流というものを、時代を超えてお届けできたらと思う。何よりも健康第一で最後まで駆け抜けたい」とそれぞれ抱負を述べた。
写真左から 久保史緒里(乃木坂46)、ゆうたろう
続いて公開ゲネプロが行われた。
パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』
明治四十年代の吉原遊郭で、当代随一と歌われる花魁・桜雅(久保)は、決して笑顔を見せないことでもその名を轟かせていた。紙問屋の旦那・西条(榎木)はその財力で花魁道中を出させるが、新聞記事を書くために花魁道中を見物に来ていた若き小説家・霧野(ゆうたろう)が、思わず桜雅に「何故笑わないのか、あなたは笑わなきゃダメだ」と声をかけたことから、3人の歯車は周囲の人を巻き込みながら大きく動き出していく。
パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』
これまでも大正~昭和の日本を舞台にした作品を数々生み出してきた秋之が、今作では明治~昭和初期の激動の吉原を色鮮やかに描き出した。人間の業の深さを感じさせる秋之の筆致と、久保とゆうたろうの若くほとばしるエネルギーがうまく絡み合い、悲劇では終わらない美しさと清廉さを生むことに成功している。
パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』
メインの役のみならず、登場するキャラクターがすみずみまで生き生きとしているのも印象的だ。それぞれの生きざまが醜さと美しさ、弱さとたくましさといった多面性を内包していて、時代の中で必死に生きようとしている姿が舞台上を埋め尽くし、ひとつの世界を作り上げていた。

パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』

パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』

久保は、美しさと華やかさを遺憾なく発揮しながら、きれいごとでは済ませられない“生”のエネルギーをぎらつかせる強さを見せる。ゆうたろうは二役の演じ分けも見事で、澄んだ瞳を持つ青年のまっすぐさと、まっすぐさゆえの危うさが人間らしいゆらぎとなって立ち上がる。榎木は大人の余裕で桜雅を包み込む大きさを見せながらも、霧野の登場によって心がぐらつく様を繊細に表現している。石倉が演じる髪結いの与平は桜雅をずっと見守ってきた温かさをにじませて、人間の思惑が入り乱れる中でほっと安心できる人物としての役割を担っている。

パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』
桜雅が笑わなくなった理由は何なのか。笑わない花魁・桜雅が微笑みかけるのは霧野に対してか、西条に対してか。今から約100年前の世界を舞台に、もしかしたら現代を生きる私たちよりも生命力にあふれているかもしれない彼らの、愛と宿命の中でもがく生きざまが心に残る作品だ。
パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』

パルコ・プロデュース 2022 舞台『桜文』

取材・文・撮影=久田絢子

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