ヤユヨ、自主企画でChilli Beans.と
初ツーマンーー『やゆヨ!vol.2 〜沸
騰サマー〜』ライブレポート

『やゆヨ!vol.2 〜沸騰サマー〜』2022.8.4(THU)東京キネマ俱楽部
東京キネマ倶楽部で開催された『やゆヨ!vol.2 〜沸騰サマー〜』。ヤユヨが「8月4日=ヤユヨの日」に自主企画を行うのは昨年に続き2回目。今年はChilli Beans.とのツーマンライブとして開催された。両組とも結成は2019年といわゆる同期バンドで、ツーマンを行うのはこの日が初めて。ここから仲が深まっていきそうな予感がするが、その貴重な初ツーマンの模様をレポートしていきたい。
■Chilli Beans.
Chilli Beans. Moto(Vo)
開演時刻を迎えると、ゲストのChilli Beans.が登場。Maika(Ba.Vo)のスラップベースにLily(Gt.Vo)のリズミカルなフレーズが絡んだあと、Moto(Vo)の声が重なる「See C Love」によるオープニングからしてライブの醍醐味が感じられて、のっけからわくわくさせられた。情熱的にギターを掻き鳴らす様が「これぞロックスター!」といった佇まいのLily。ノリノリになっている観客一人ひとりを満面の笑みで見つめながら、土台からバンドを支えるMaika。トーンを抑えてクールに唄ったかと思えば、シャウトしたり、子どものように無邪気に唄ったりと、その歌声で様々な表情を見せてくれるMoto。3人のキャラクターに魅せられているうちに、ライブは瞬く間に進んでいった。
Chilli Beans. Lily(Gt.Vo)
Chilli Beans. Maika(Ba.Vo)
肉体的なバンドサウンドと囁くような歌声のコントラストが面白く、途中でEDM的な展開が挿入されるのも刺激的な「blue berry」、浮遊感ある音像と多彩なリズムパターンで踊らせる「Vacance」、歌詞に合わせてMotoが数字をハンドサインしていたのも印象に残った「アンドロン」と、どの曲も個性的であることに加え、ライブの運び方、グラデーションの描き方が巧みであるため、観ている側の体感としては本当にあっという間。MCでは、対バンに呼ばれた喜びやヤユヨへの感謝を語りつつ、「今年のヤユヨの日はチリビがいただいたということで!」(Maika)と笑顔を見せる3人だ。
Chilli Beans.
観客の手拍子とともに始まったのは、ポップでキュートな(しかしよく聴くと歌詞が恐ろしい)「マイボーイ」で、ギター&ベースがユニゾンするリズミカルなイントロにハイにならざるを得ないのは「HAPPY END」。サビの飛翔感も気持ちいい。この日は雨降りで、8月にしては涼しかったが、観客を見て「すっごい! めちゃめちゃ元気じゃないですか!」と嬉しそうにしていたメンバーは「滝汗で死にそう」と笑顔。そのテンションのまま、みんなでサイドステップを踏んだ「lemonade」、ライブならではのアレンジとしてイントロのようなセクションが追加されていた「Tremolo」、そして「シェキララ」と駆け抜け、ハートフルなメッセージソング「School」で締め括った。

Chilli Beans.

■ヤユヨ
ヤユヨ リコ(Vo.Gt)
そしてヤユヨは、金のドレープ幕のかかったサブステージからすーちゃん(Dr.Cho)、はな(Ba.Cho)、ぺっぺ(Gt.Cho)、リコ(Vo.Gt)の順に一人ずつ登場し、階段を下りてスタンバイ。大正ロマンのオペラハウスを再現したというキネマ倶楽部ならではの登場シーンで観客を笑顔にさせると、1曲目にはなんとChilli Beans.「lemonade」のカバーを届け、みんなを驚かせた。オープニングからサプライズ満載。「今日をいい日に、いい日にしましょう!」というリコの言葉からも、溌剌としたバンドサウンド、ダイナミックな歌声からもこの日に駆ける想いは存分に伝わってくる。「いい日になりそう」、「Yellow wave」を終えたあとの最初のMCでは、Chilli Beans.に対して「最高のライブで沸かしてくれて感謝してます」、来場者に対して「みんな来てくれてありがとうございます」とそれぞれ感謝を伝え、「今日は楽しいって気持ちを沸騰させて、夏に負けやんくらい熱々な日にしましょう!」(リコ)と意気込みを語った。
ヤユヨ ぺっぺ(Gt.Cho)
ヤユヨ はな(Ba.Cho)
ライブのタイトルにもなっている「futtou!!!!」から演奏再開。すーちゃんの力強いビートが音源よりもさらに情熱的なテンションをもたらす同曲のあと、休むことなくテンポダウンし、シームレスに始まったのは「星に願いを」で、一転、ベースのメロディと歪むギターから始まる「おとぎばなし」ではダークサイドというべき一面を見せた。初のフルアルバム『日日爛漫』の制作や同作を携えたツアーを経て、ますます表現の幅を広げつつあるヤユヨの現在地が見て取れるセクションだ。曲間を繋ぐバンドの演奏で以って闇からの浮上を予感させると、フロアからは自然と手拍子が発生。それを見て、「いいですね、さすがです。自由にノッていきましょう」とオーディエンスに声を掛けるリコ。そうしてバンドとフロアでしっかり心を交わしたあと、「ユー!」に突入する。
ヤユヨ すーちゃん(Dr.Cho)
ヤユヨ
それにしても、レトロな服を着こなすリコの佇まいが会場の雰囲気にかなりマッチしている。リコがそのことに言及したのは「ユー!」演奏後のMC。曰く、レトロな服は元々好きだったが、最近ちょっと飽きてきたため、前回のツアーでは違う雰囲気の恰好をしたものの、再びレトロが恋しくなってきたとのことだ。「せっかくのキネマ俱楽部だからレトロ復活させたんだけど、どうですか……?」と不安そうに尋ねたり、ぺっぺから「似合っとるよ」と言われた途端「せやろ!」と表情を明るくさせたりしている姿を見ると、先ほどまで全身で自由を謳歌するように唄っていたボーカリストと同一人物とは思えないが、人一倍繊細で、一つひとつの感情と素直に向き合える彼女だからこそ、続くバラード「雨」を聴く人の元にまっすぐ届けられるのだろう。「自分が雨やったら、誰かの悲しみを洗い流してあげたいなと想像しました」(リコ)と紹介されたこの曲、リコの歌唱だけでなく、彼女の歌にぴったりと寄り添うぺっぺのコーラスも素晴らしく、はな、すーちゃんも含めた全員でダイナミクスがしっかりと共有されていた。その点は、感情を溢れさせるような「あばよ、」終盤の追い込みにも表れている。
ヤユヨ リコ(Vo.Gt)
ヤユヨ
1分32秒のショートチューン「ピンク」では、縁日のお面や水鉄砲、サングラス、麦わら帽子、ひまわりの花といったアイテムを手に取り、4人が夏らしい装いに変身する楽しい演出も。「うるさい!」を終えると、リコが「日常に寄り添うような、平凡な日々を特別なものに変える音楽をこれからも鳴らしていきたい」といった想いを語り、本編最後の曲として「キャンディ」が届けられた。平凡は特別に、闇は光に感じられる魔法。失恋したって、悲しくたって、生きていかなければならない私たちには音楽があるだろうと言わんばかりの痛快なエンディングだ。
ヤユヨ
アンコールを求める拍手に応えてメンバーが再登場すると、「どうです? 楽しいなって気持ち、グツグツグツグツ沸騰させました?」(リコ)という言葉に、客席から拍手が返ってくる。弾ける喜びそのもののようなサウンドで鳴らされた「さよなら前夜」を再会の約束に変えて、『やゆヨ!vol.2 〜沸騰サマー〜』は幕を閉じたのだった。
『やゆヨ!vol.2 〜沸騰サマー〜』
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=森好弘

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