朝夏まなと×中河内雅貴×実咲凜音イ
ンタビュー ミュージカル『モダン・
ミリー』は「見逃さないでほしいとこ
ろしかない!」

ミュージカル『モダン・ミリー』が、2022年9月に東京・日比谷シアタークリエ、10月に大阪・新歌舞伎座にて上演される。2020年4月に初日を目前に全公演中止となったものの、奇跡的に同じキャストが集って2年越しのリベンジを果たす。
物語の舞台は1920年代のニューヨーク。モダンガールに憧れて田舎から飛び出してきたミリーが、個性的なキャラクターたちとの出会いを通して、本当に大切なものを見つけるというハッピーコメディミュージカルだ。
主人公ミリーを演じる朝夏まなと、次第にミリーに惹かれていく青年ジミー役の中河内雅貴、ミリーの親友となるドロシー役の実咲凜音、この3人に上演へ向けての今の想いを聴くことができた。
2年という時間があったからこそできる『モダン・ミリー』が誕生するに違いない。そんな期待が高まるインタビューだった。

ミュージカル『モダン・ミリー』

――2年前、初日を迎えるタイミングで決まった突然の公演中止。お辛いとは思いますが、当時のお気持ちを聞かせてください。
朝夏:お稽古をしていたときから何とかして上演したいなとは願っていたのですが、舞台に限らず全てが止まる最初の緊急事態宣言が発令されて……。それまでは舞台が止まるということが現実に起こるなんて、思っていなかったんですよ。「仕事がなくなる」という怖さもありましたが、みんなで一つの作品に立ち向かってチームワークを作っているときにさようならをしなければならなくて、それも本当に悲しかったし切なかったです。命に関わることでもあったので仕方なかったけれど、当時はちょっと立ち直れなかったですね。どこにも気持ちを持っていくところがなく、悶々としていました。
中河内:僕にとっても舞台がなくなってしまうのは初めての経験だったので、複雑な感情が入り混じっていました。これからどう生きていけばいいんだろうということまで考えましたね。しかも、僕らの仕事は社会的な立場や優先度も決して高くないところに立たされていたような風潮もあって、悔しいし、でもどうにもできない自分に歯がゆさも感じました。けれど、この作品をできる日がいつかくるだろうという、漠然とした希望も抱いていて。こうして2年という月日を経て上演できる喜びがあります。それは言葉じゃ表せられないくらい、すごく嬉しいことです。当時楽しみにしてくださっていたお客様も、今回もまた公演を楽しみにいろんなことが頑張れる状況になればもっと嬉しいかな。僕らもあのときの悲しい気持ちを超えられるくらい、今はすごくワクワクしていています。
中河内雅貴
実咲:私も一緒です。まぁ様(朝夏まなと)がおっしゃったように、2020年4月は舞台がなくなるということに「え、こんなこと起こるんだ」という驚きとショックがすごくありました。そして「仕方ないな」とどこか自分を言い聞かせている部分もあったりして。私は「再演がある! どこかで絶対にできる!」と確信していたので、その希望があったから何とかしていられたのかもしれません。今回約2年後という早いタイミングでやらせてもらえることになったので、「ああよかったなあ」という想いが今は一番大きいですね。
――前回のお稽古中、役作りで苦労されたところや演出の小林香さんとのやり取りなど、印象に残っていることを教えてください。
朝夏:私が演じるミリーは元気で大胆で、女性の道を切り開くという目標を持って田舎からニューヨークへ出てきた女の子。自分も佐賀から宝塚を経由して東京へ来ているので、ちょっと被る部分はあるかなと思っていたんです。けれど、いざ役を演じてみると結構難しくて。掴みどころがないというか、ミリーっておとぼけなんですよね。お茶目でちょっと天然で、思ったことを何でも口にしちゃうような子。そのお茶目さやかわいらしさをどうやって出そうかなと、すごく悩んだんです。結果、あまりその答えをはっきり掴めないままお稽古が終わった感じがしていて。余裕もなかったですし、結構追われて作っていた感じがあります。
でも今回上演するにあたって改めて台本を読んでみたら、想像がバッと広がったんですよね。2年間いろんなことを経験させてもらって、ミリーという役をより膨らませられそうだなと手応えを感じました。良い意味で当時を忘れて、自分に残っているものプラス「もっと面白くする」とおっしゃっていた香さんの演出を受け、いろんなアイディアを出せていけたら良いなと思います。香さんからは前回のお稽古のときに「まぁちゃんがミリーを好きにならないと、ミリーはできないよね」という言葉をいただいて。当時はミリーを好きになるための材料がちょっと少なかったかなと思うので、今回はもっと深いところまで掘り下げてやりたいです!
朝夏まなと
中河内:僕自身の反省点としては、ちょっとまじめな役に作り過ぎたかなと。最初に台本を読んだときに、役どころやストーリーの流れ的に、僕の演じる役にコメディ要素はいらないんじゃないかって思っちゃったんです。でも、全部の芝居をバシッと真面目に受け取るだけじゃなくて、時には軽く受けてみたりとか、キャッチャーミットをもっと大きくできるんじゃないかなって。自分が変わって受け皿や引き出しを多くできたら、相手役の方も変わるだろうし、みんなも変わるだろうし。2年の月日を経てそう思うようになりました。
あと難しかったのは、アメリカの英語のギャグを日本語にしたときにどうしても伝わりづらかったり、演じづらくなってしまったりするところ。与えられた台本の中でやっていかなければいけないので、演出家とも相談しながらアイディアを出し合って作っていけたらいいなと思っています。
実咲:香さんは結構自由に演じさせてくださる方で、演者がやってみたい方向性を見せたらそれをジャッジしてくださる、という感じのお稽古だった記憶があります。私の役柄としては裕福な育ちの令嬢というお嬢様の役なんですけど、普段の私とあまりに違い過ぎて(笑)。普段の私は早口になっちゃうし、全然遠いなあと思うんです(笑)。お稽古のときは、役の設定の「天然である」というようなワードはあまり意識せず取り組んでいました。
そういえば最近、当時のお稽古動画を見たときに「もうちょっとここは大きく反応した方がいいぞ!」とか、いろいろ思うところがありました(笑)。時を経て客観的に見たときに改善点があったので、2年前より今の方が良いものをお届けできるかもしれないなと、ポジティブに捉えています。
実咲凜音
――朝夏さんと実咲さんは、宝塚時代に宙組でトップコンビを組んでいらっしゃいました。トップコンビの二人が退団後にガッツリ共演されることってあまりないですよね。お二人の共演の話がきたときの素直な心境は?
実咲:(朝夏さんを見つめる実咲さん)
朝夏:(実咲さんを見て)すごい聞く体制に入ってるね(笑)。私は面白いと思いました! 宝塚時代をご覧になっていた方は男役と娘役のイメージが強いと思うんですけど、私にとっては戦友という感じ。舞台人として尊敬している部分もあるし、お互い自立していた部分があるので、女優同士になってもそこに対する心構えの違いとかはなくて。特に『風と共に去りぬ』という作品ではスカーレット(朝夏)とメラニー(実咲)を演じていて、「そういえば二人で女性同士のお芝居していたね」って。なので、そんなに違和感はないんです。
――とはいえ嬉しいですよね?
実咲:もちろん! それに、どこまでもご縁があるなあって(手を合わせる実咲さん)。
朝夏:拝んでる(笑)。
実咲:宝塚にいたときから組み替えをするタイミングも一緒で、私の宝塚人生を一番見てくださっていたのがまぁ様なんです。どこかで糸が繋がっているんじゃないかというようなご縁を感じるので、もちろん嬉しいです! 宝塚では一番近くにいて、私の良いところも悪いところも素直に思ったことを全部言ってくださっていた方なので、すごく安心します。
朝夏:でも、今は逆に私がどうやって歌ったらいいのかとか、前回のお稽古中に聞くこともあったんですよ。こちらも教えてもらってま〜す(笑)。
――中河内さんから見て、このお二人の関係は?
中河内:素敵ですよ〜! 今だって本当はすーっごく話に入りたかったのに(笑)。自分たちがいたところからこうしてまた外の世界で第一線で仕事ができるのは、とても素敵なことだと思います。縁があるんだろうなというのもすごく感じるから、羨ましいです(笑)。
実咲凜音、朝夏まなと、中河内雅貴
――実咲さんは朝夏さんのことを“まぁ様”と呼んでいらっしゃいますが、中河内さんは何と呼んでいるんですか?
中河内:“まぁちゃん”です。
朝夏:(実咲さんに対して)まぁちゃんって呼んでよ。
実咲:えぇ!?
中河内:あ、いいねえ。
実咲:それは、それは……それは無理に等しいです!!
中河内:なんで? 過去は過去でしょう。
朝夏:くみちゃん〜(実咲さんの愛称の一つ)、まぁちゃんって呼んでよ〜。
実咲:まぁ様です。私にとっては死ぬまでまぁ様です。これ書いてください!
実咲凜音
――(笑)。『モダン・ミリー』はお衣裳がとても素敵だと伺っていますが、ご自身の役のお衣裳で気に入っているポイントはありますか?
朝夏:あります! 私、20年代のヘアアクセサリーが大好きなんです。あの時代ならではの独特なデザインがすごく好きなので、今回つけられるのが嬉しいです。
実咲:あ〜つけてましたね!
――実咲さんはいかがですか?
実咲:私の衣裳……?
朝夏:大きいお帽子被ってなかった?
実咲:あ、そうですね! 久しぶりに被らせてもらいました! 衣裳、本当にかわいかったですよねえ。前回の稽古場では女性キャストの衣裳合わせまでさせてもらっていて、すごくおしゃれだなと思って見ていました。目で見ても楽しめる作品だと思います。
中河内:女性陣の衣裳、めちゃくちゃ素敵ですよね。僕もその年代の文化やファッションが結構好きなんです。ちゃんと時代の流行を取り入れていて、しかも今の人たちが着ても似合う。やっぱりいいものはいいものなんだなと改めて感じました。ただ、自分の衣裳のことは全く覚えていないです(笑)。
中河内雅貴
――それでは舞台で拝見するのを楽しみにしています(笑)。音楽もとても魅力的だとみなさん製作発表でおっしゃっていました。好きな楽曲やシーンがあれば教えてください。
中河内:幕開きのオーバーチュアは、まるでテーマパークに来たかのような感覚になります。あの音楽を聞くと、「あ〜ブロードウェイミュージカルだ!」と感じることができます。訳詞も素晴らしくて、ジミーがミリーと一緒に歌う曲があるんですけど、その曲もずーっと頭に残っていますし、気がついたら口ずさんでるくらい印象に残る良い曲なんですよ。聴いていて、耳にも心にも残るんです。
朝夏:名言出た! 耳にも心にも残る音楽!
中河内:うわー、なんか恥ずかしい!(笑)
朝夏:(笑)。メロディラインがどの曲もきれいなんですよね。似ている曲はないんですけど、どの曲もとにかくメロディがきれいなんです。前回はバンド合わせまではできなかったので、あの音楽をバンドの生演奏で聴けるのがすごく楽しみです。
実咲:私が覚えているのは、まぁ様と一緒に歌っていた物語序盤のデュエット曲!
朝夏:かわいいデュエットだったね。
実咲:お互い言っていることが噛み合っていないようで、噛み合っているという曲でした(笑)。
朝夏:同じキーの曲を二人で歌っているのは新鮮でしたねえ。
実咲:そうなんですよ! あと、ミリーがジミーのことを想って歌うソロ曲があるんですけど、それもすごく素敵な曲。やっぱりメロディラインが美しくて、「きれいだなあ」と思いながらいつも聴いていました。
――劇中、ココは絶対に見逃さないでほしいポイントはありますか?
朝夏:見逃さないでほしいところしかないですね!(笑)
中河内:まぁちゃんは出ずっぱりだしね(笑)。
朝夏:そうでしたっけ?
実咲:そうですよ〜。頭からずっと出ていて。
中河内:本当にどのシーンにもいました。
朝夏:私、舞台上にセットが組まれているところを見たんです。3階建てのビルのセットがあるんですけど、稽古場では2階までしかなかったものが3階建てになっていて。ミリーは1階から3階まで登るという動きがついているシーンがあるので、舞台セットを見たときに「これやるんだ〜……」って思いました(笑)。
朝夏まなと
実咲:毎日トレーニングですね!
朝夏:トレーニングですね。走り込んで臨みたいと思います(笑)。そういえばハードだったなあ。
中河内:めっちゃハードだったと思うよ。
実咲:「一番ハードかも」っておっしゃってませんでした? それまでは『LittleWomen -若草物語-』が一番ハードだったけどって。
朝夏:確かに『LittleWomen -若草物語-』はハードだったけど、『モダン・ミリー』は実際に舞台上でやっていないからそれを抜くかもしれないよね(笑)。ダンスナンバーもいっぱいあるし! でも、今はストレートプレイをやっていてあまりダンスを踊っていないので、舞台上で踊れるというのはやっぱりすごく嬉しいです。しかも中河内さんととても素敵なデュエットを踊らせていただくので。そのシーンは「フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのような」と台本に書いてありますもんね。
中河内:それを歌って踊る場所が、ビルのセットの3階。やってみなきゃどうなるかわからないね(笑)。
朝夏:未知の世界(笑)。
中河内:でもすごく素敵なシーンなので、それも見どころの一つだと思います。
――実咲さんの見逃さないでほしいポイントはどこでしょう?
実咲:うーん……。
朝夏:(廣瀬友祐さん演じる)グレイドンとのダンスシーンじゃない?
実咲:あ〜、ものすごく踊るシーンですね! 久々にたくさん踊ります。リフトからのグルグル回転する感じで。
朝夏:すごいアクロバティックダンスだよね。
実咲:ちゃんとしたデュエットダンスというよりは、コメディらしい勢いで踊る感じのダンスシーンでしたね。あそこまでリフトされるダンスは最近なかったかもしれないです。私も鍛えておかないと!
朝夏:ということで、みんなで鍛えて臨む作品になりそうです(笑)。
実咲凜音、朝夏まなと、中河内雅貴
取材・文=松村蘭(らんねえ) 撮影=池上夢貢

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