the GazettE 約3年ぶりの大規模全国
ツアー初日に見た、“SHOW”ではない
“LIVE”

the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"

2022.05.13 羽生市産業文化ホール
「“SHOW”を見せる気はないんですよ。目の前にファンがいて、自分らがいて。そこでウチらのライブはようやく成立するわけで、それ以外はthe GazettEの少なくとも“LIVE”ではない」
ライブ活動が規制されたコロナ禍において、決して配信ライブを行わなかった理由を、前回のインタビューでこう説明したRUKI(Vo)。その言葉の真意は、最新アルバム『MASS』を掲げて3年ぶりにった全国ツアーの初日、とくと痛感させられることとなった。
RUKI(Vo)
土砂降りの荒天という実にthe GazettEらしい空模様の下、場内を埋め尽くしたオーディエンスに真っ先に叩きつけられたのは、アルバムのリード曲である「BLINDING HOPE」。ヘッドバンギングの嵐と化した客席と爆音の饗宴のなかで、燃えるような紅蓮から神秘の蒼へとステージを染めた照明のもと、RUKIが囁く《ここが世界の果て》の文言は、凄まじい説得力を持って身に迫る。そう、まさしくここは世界の果て――画面越しでは決して体感することのできない、魂と魂のぶつかり合う場所だ。
以降もアルバム『MASS』の曲順を忠実になぞり、その狭間に巧妙に旧曲を挟み込みながら、アクセルを踏み込み続けてゆく5人。2曲目「ROLLIN'」の落ちサビでは、誰からともなく心の中で合唱を果たし、「NOX」では艶やかな旋律が満場の拳を導いて、この10枚目のアルバムが“the GazettEのLIVE”のために用意された作品であることを如実に物語る。
麗(Gt)
「さすがにツアー始まる頃には声出していいのかなと思ってたけど、まだ駄目みたいで。コール&レスポンスができないのは寂しいけど、代わりにできることあるじゃん。落とすために頭があるよな!」
序盤でRUKIが放った号令は、オーディエンスのみならずメンバーをも扇動して、ドラム始まりの中盤楽曲を牽引する戒(Dr)のプレイにも力が籠もり、ビートで火花を散らしてゆく。一方でデジタリックの色の濃い「BIZARRE」からは、観る者をディープな沼底へと引きずり込み、15年以上前に発表された「Bath Room」が久々に披露されると、思わず客席がざわめく場面も。そこで情念の籠った情景を描き出し、最新アルバム曲「濁」へと繋ぐ流れは実に壮大で、まるで一本の映画のようなスケール感を感じさせた。さらにエモーショナルな歌唱の末、天の星を掴み取るがごとくRUKIが手をかざす「THE PALE」に、ギター隊のアコースティックな演奏がリリカルな風を呼ぶ「MOMENT」とアルバム曲が並べば、愛の儚さは美しい物語へと昇華。序盤の勢いはどこへやら、客席の動きをピタリと止めて魅入らせてしまう、そんな“物語の欠片”が彼らの楽曲にはあちらこちらに散らばっている。
葵(Gt)
「今日(ステージに)立ってみて、ようやく“こうだった”って。やっと帰ってきた気がして感激してます」と口にして、3年ぶりのホールツアー開幕に喜色を隠さないRUKIは、ホールならではの距離に「みんなの顏、暴れてる姿を見れるのは最高よ」と満足げ。そして「新曲、ここから飛ばしていきます。俺が引っ張っていくんで、自由に暴れてくれて構わない!」との言葉通り、「BARBARIAN」に「FRENZY」と凶悪な音を鳴らすアルバム終盤曲を畳みかけ、お馴染みの「UGLY」で駄目押しするという鬼畜っぷりを発揮した。葵(Gt)のギターリフがオーディエンスの五感に着火するや、分厚いユニゾンと共に凄まじいヘッドバンギングが風を巻き起こし、間奏では麗(Gt)がテクニカルなソロを奏でて場内に拳を突き上げさせる。そこに生まれる得も言われぬ一体感に、ステージ上では大きく上体を折りたたむ弦楽器隊の姿も。そう。この熱、この空気感は、アーティストとオーディエンスが同じ空間に身を置く、まさしく“リアルライブ”でなければ絶対に得られないものだ。
そして「お前らの想いを全部突っ込んでくれ!」と始まった本編ラスト曲は、もちろん「LAST SONG」。サビ歌詞のように声を枯らすことは残念ながら叶わなかったが、それでも、この曲に刻まれた“再会”の約束を果たせた喜びに飛び跳ねる客席をライトが明るく照らして、その様子を目にしたRUKIも拍手を贈る。5人の音と満場の手拍子が重なって生まれる響きは、とてつもないパワーを感じさせ、REITA(Ba)は後ろを向いたまま誇らしげにハンズアップ。曲が終わって、“思わず”といった体でRUKIが漏らした「よかった!」の言葉は、オーディエンスに向けられた賛辞であると同時に、コロナ禍を経てのツアーで以前と変わらぬ手ごたえを得られた安堵の表れでもあったろう。
REITA(Ba)
「ツアー初日ということで、外の天気もthe GazettEらしく絶好調。あいにく声を出せないということで、やりにくい部分もあると思いますが、そのぶんこっちがしっかり引っ張っていくんで、しっかりついてきてください」
そんな紳士的な挨拶に続いて、マイクレスで「かかってこい!」とワイルドに叫び立てる戒らしいMCで幕開けたアンコールでも、彼らの魅力の一つである歌謡的メロディ感が前面に出た初期楽曲を次々投下。盤石の演奏の上に生まれるラフなムードは熟れきった楽曲ならではで、フロント陣も自由気ままにステージ上を行き交う。当然、オーディエンス側も気兼ねなく身体を揺らすが、懐かしのロックンロール曲「Psychedelic Heroine」が始まると、予想外の選曲に場内のテンションは爆上がり。本編でアルバムに立脚した世界観をガッチリ創り上げる一方で、アンコールでは純粋にファンの期待に応えるという潔すぎるシフトチェンジは、全国13公演におよぶ今回のホールツアーで大きな武器になるだろう。
戒(Dr)
「まずは俺たちとお前らが、この時間を共有できていることに感謝。まだ世の中の状況も、みんなの思う日常には戻ってないと思うけど、明日に繋がる一歩を踏み出せたことを幸せに思います」
the GazettEのMCではおなじみの文言も、今では恐ろしいほどのリアリティを持って、こちらの胸に迫ってくる。コロナ禍の真っただ中でも、自らの信じる音楽とライブの形を守り続けてきた彼らだからこそ、一歩を踏み出せた感慨は人一倍大きいに違いない。そして、彼らの音楽の中心には、常にファンがいるのだということを、続くRUKIの言葉で改めて確認させられた。
「“音楽やれて幸せ”って言うけど、音楽やることはどんな環境でもできる。一人でもできるよ。でも、俺たちが望む音楽は……the GazettEは、みんながいないとできない。アルバムも完成形じゃない。みんなの暴れっぷりや大声、熱の一つひとつがこの『MASS』というアルバムに宿って完成形になる。だから、お前らの熱、全部持って帰るから。そのつもりで熱、飛ばしてください」
痛みを吐き出せ、そして、ココで感じた熱を忘れるな――そう訴え、生きるための力を与える「TOMORROW NEVER DIES」での締めくくりも、こんな時代だからこそ一際強く胸に響いてきた。彼らの音楽やライブのスタイルは、今も昔も何も変わらない。ただ、苦しみが増した時代には、より“眩い光を放つ希望=BLINDING HOPE”となる。だからこそ声はなくても熱狂は増し、「全員いい暴れっぷりでした! また成長して帰ってくるので、また一緒に暴れましょう。愛してます」とRUKIに言わしめたのだろう。
10枚目のアルバムを引っ提げ、タイトルにラテン語で“10”を意味する『DECEM』を冠した今回のツアーは、北は北海道から南は福岡まで全国を駆け巡ってゆく。各地で5人が受け取る熱量が『MASS』というアルバムの威力をいかに増幅させ、最終日の7月14日、中野サンプラザホール公演までにどれだけ偉大な“塊”へと育ててゆくのか。それは、これからツアーに参加する貴方たち、一人ひとりの力にかかっている。
取材・文=清水素子 撮影=Keiko Tanabe

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