祝・第2位受賞! 入賞直後の古谷拳一
(ファゴット)に直撃インタビュー~
コンクールの裏側から7月の来日公演
、JNOの活動まで

2022年5月、クラシック界にうれしいニュースが飛び込んできた。ファゴットの古谷拳一が、第73回 プラハの春国際音楽コンク―ルにて第2位を受賞したのだ。
古谷は東京藝術大学卒業後、スイス文化庁の奨学生としてスイスチューリッヒ芸術大学院に在学中。反田恭平率いるジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)正団員であり、今年7月に初の来日公演を予定している木管五重奏団PACIFIC QUINTET(パシフィック・クインテット/ベルリンにて結成)のメンバーとしても活躍している。
コンクール入賞直後の古谷に、受賞の思いやパシフィック・クインテットの公演、JNOの活動について聞いた。
現地の様子/右が古谷拳一
――古谷さん、まずはプラハの春国際音楽コンク―ルでの第2位おめでとうございます。今回の受賞についての思いや感想を聞かせてください。
今回は国際コンクールの中でも曲数については、実は少ない方で7曲でしたが、一つ一つの曲の大変な曲が多くて、本当に半端なくて毎日もがき苦しんでいました(笑)。
毎日練習して、本当に少しずつですが書かれている音符が自分自身の身体に入り込んだことでこれが良い結果に結びついたのかなと思います。
――本来20年開催のものが、22年に延期された時にはどう感じましたか?
コロナでこのコンクールは延期されたわけですが、実は8年ぶりのコンクール開催だったのです。正直この期間苦しい時もありました。しかし、また一から自分自身を見つめるきっかけもできました。
コロナ禍で流行ったリモート演奏や配信ではなく、このコンクールを通して、お客様と一体になって音楽を共有できるということが、音楽家としてこの上ない喜びだとあらためて感じましたね。
――他にも今回のコンクールで苦労されたことはありましたか?
普通のファゴットの練習はもちろん、自分の精神面の練習を一番心がけました。
自分の中で計画的にプランを練りそれを実行する、一見簡単そうですが、毎日それを継続することはとても難しいことでした。
――逆に、今回のコンクールで良かったことはありますか?
自分の心から演奏した音楽が世界のファゴット演奏家に認められてファイナルに進めたこと。そしてチェコのドボルザーク・ホールでオーケストラとコンチェルトをできたことはかけがえのない経験になりました。
自然に身を任せ、ストレスフリーな状態で生活できたこともよかったです。
――ファイナルのヴィヴァルディもフランセもどちらの協奏曲も難曲だと感じましたが、大変な力演をされているようにお見受けしました。ご自分ではいかがでしたか?
どちらも本当に難曲で、特にフランセは超絶技巧の連続だったので、今までの人生の中で避けてきておりました(笑)。コンクールという機会がフランセの協奏曲と向き合うきっかけになったので最終的には良かったかなと。これで大体自分の人生の中でファゴットの難しいコンチェルトは制覇したかなと感じています。
ヴィヴァルディは以前プラハに来た時に同じ曲を、ドボルザーク・ホールの隣にあるスーク・ホールで演奏したことがあって、今回またプラハで演奏できると思ってなかったので本当に良かったです。
オーケストラの響きはチェコのオケ特有の厚みがあり、より一層ファンタジーを生み出してくれる素晴らしいものでした。
――古谷さんは、ご自身の木管五重奏のグループ=パシフィック・クインテットでニールセン国際音楽コンク―ルでも第2位を受賞されていますが、その時と今回とで何か違いはありましたか?
ニールセンの場合はグループでのコンクールなので全く違う問題があります。自分の調子が良いからと言ってうまくいくわけでもなく他のメンバーの体調やコンディションも常にチェックして本番まで持っていかなければならないのでまた違った難しさがあります。
ソロの場合は自分を自分でオーガナイズすることが大切なのかなと思っています。
PACIFIC QUINTET(パシフィック・クインテット)
>(NEXT)7月開催のパシフィック・クインテット来日公演の聞きどころは?
――そして、そのパシフィック・クインテットでの来日公演が東京と京都で7月に開催される予定ですが、いったいどんなコンサートになるのでしょうか?
2019年から始動したこの国際的クインテットが日本に初来日して、このような機会を頂き、演奏会をできることになりました。メンバーは全員違う国籍でキャラクターも5人それぞれ違っています。
5つの楽器から繰り出される、5つの個性的な音色が、どんな風に日本で響いて、皆さんの心に届くのか注目していただきたいと思います。

左から 古谷拳一(ファゴット・日本)、ヘリ・ユー(ホルン・韓国)、フェルナンド・マルティネス(オーボエ・ホンジュラス)、アリヤ・ヴォドヴォゾワ(フルート・ロシア)、リアーナ・リスマン(クラリネット・ドイツ)

―― 選曲の狙いと聞きどころを教えてください。
モーツァルトの歌劇「魔笛」序曲は、通常オーケストラのものを木管五重奏にアレンジしたものを演奏します。オーケストラのようなたくさんの楽器で演奏しても大変な仕事量が必要な曲ですが、それを木管五重奏のためにコンパクトにしたので、何倍にも難しくなります。そんな超絶技巧をお聞きください。
ラヴェルの組曲「クープランの墓」。こちらはピアノが原曲ですが、オーケストラにも編曲され、有名になっております。特にオーボエが大活躍する曲です。そして優しいフランス的なハーモニーや木管楽器の音色の重なりをどこまで表現できるかが鍵です。
ドボルザークの「アメリカ」は原曲は弦楽四重奏で、木管五重奏でどこまで弦のダイナミックな響きと動きに近づけられるか、またさらに木管五重奏ならではの響きに変えられるか楽しみにしてください。ちなみに作曲家のドボルザークはチェコを代表する作曲家です。
バーンスタインウェストサイドストーリーは私たちのゆかりのあるPMF(パシフィックミュージックフェスティバル)の創設者バーンスタインが描いたミュージカル映画の音楽を抜粋して、美しく描写します。今年、スピルバーグがリメイクしたミュージカル映画も公開となり、その音楽の価値があらためて見直されていると思います。
――パシフィック・クインテットは、古谷さんにとってどんなグループですか?
国を超えた家族という感じです。
喜びを皆で分かち合い、落ち込んだ時も慰め合い、お互いの好きな食べ物嫌いな食べ物、行動や性格も常に理解しあっています。
PACIFIC QUINTET(パシフィック・クインテット)
>(NEXT)古谷にとってのJNO、反田恭平とは・・・
――古谷さんは反田恭平さんが結成されたジャパン・ナショナル・オ―ケストラ(JNO)のメンバ―でもいらっしゃいます。JNOについては、どう感じていますか?
自分と同世代の演奏家が世界中から集まり、日本から世界へ、世界から日本へと素晴らしい音楽を常にサイクルのように共有できるようなオーケストラに成長しています。自分自身もこの中で演奏会を重ねるごとに毎回メンバーの魅力がさらにレベルアップし、お互いを高め合っていると感じています。
――反田恭平という音楽家をどう見ていますか?
彼はピアノの実力はもちろん、行動力やコミュケーション力も備えたバランスの取れた人で本当に尊敬しています。
彼の行動が、JNOの皆をより一層素晴らしいアーティストに成長するきっかけをくれている気がしていますし、まさに周りの人を常に光を照らしてくれるような太陽の存在です。今回のコンクールでの受賞も、彼のような人やパシフィック・クインテット、JNOの仲間から受ける刺激に励まされるところもあったように思いますし、素晴らしい音楽仲間に囲まれて、音楽活動ができることに幸せを感じますね。まずは、パシフィック・クインテットの初来日コンサートで、ここ数年で僕らが吸収した全てを音楽に込めて、皆さんに感じてもらいたいと思います。
反田恭平、古谷拳一

アーティスト

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