鈴木浩介、相棒役 井上芳雄と戸惑う
舞台『奇蹟 miracle one-way ticket
』で初めての語り部役に挑戦「微妙な
さじ加減に気をつけています」

数々の話題作を上演するシス・カンパニーによる舞台『奇蹟 miracle one-way ticket』が4月13日(水)より大阪森ノ宮ピロティホールにて開催される。劇作家の北村想と演出家の寺十吾が手がけた同作は、記憶をなくした私立探偵、法水連太郎(のりみずれんたろう)とその親友、楯鉾寸心(たてほこすんしん)のバディ物語で、ふたりが迷いの森へと入り込んでいくというもの。楯鉾寸心役をつとめたのは、ドラマ『ライアーゲーム』(2007年)や『ミステリと言う勿れ』(2022年)で知られる俳優、鈴木浩介。「最初は設定に戸惑いがあった」という鈴木に、この作品のおもしろさについて話を訊いた。
鈴木浩介
――今作は「依頼を受けた探偵が記憶をなくし、依頼者は誰なのか、何を調査するのかを忘れる」という話ですね。
最初はその設定に戸惑いがありました。一方でお客様は、「どんなミステリーになるんだろう」とワクワク感があるはず。いかようにも考えられる余白があり、その余白を楽しむ魅力があると思います。
舞台写真撮影=宮川舞子
――抱いていた不可解さについては、世田谷パブリックシアターでの上演を経て、現在はかなり咀嚼できていますか。
ちゃんとクリアにして舞台に立っています。解き明かしていく部分については北村想さんの頭のなかにあり、それについてディスカッションをしていきましたから。結局「記憶をなくしているからね」でまとめられるところもあって、しかしそのなかで落としどころを見つけるのがおもしろかったです。
――ミステリーならではの設定をシャープにしていって、研ぎ澄ませた結果がこの内容なんだと思いました。
北村さん自身、さまざまなミステリーを観たうえで本を書かれたはず。つまりミステリー好きとしてはたまらないオマージュがたくさんある。もちろんミステリーが苦手な人も楽しめる内容です。
鈴木浩介
――この作品は「奇蹟」という漢字を使っているように、スピリチュアル的な要素もあるとのことですが。
1973年頃から1984年頃のマリア信仰が描かれているんです。手に十字架があらわれたり、マリア像が涙を流したりとか。
――カトリック教会が関連した出来事ですよね。それが絡んでくるとは。ますますどんなストーリーなのか、つかめなくなってきました(笑)。
おっしゃるように、演じながらにして迷宮に入ってしまうような物語なんです。だけど、お客様が迷いの森から出られる道しるべを立ててくれる。そんな展開なのです。僕らが迷っていてもお客様が答えを見つけてくれるから、そこまでは耐えて、耐えて、やっていく。これは今回の舞台に限らず、僕にとって作品とは「観せる」という感覚じゃないんです。お客様と時間を共有するためにいつも舞台に立っています。
鈴木浩介
――主人公の探偵を演じる井上芳雄さんは劇中、歌も披露されているそうですが。
芳雄さんはすごく信頼できる役者さんですね。帝劇(帝国劇場)で主演をはっているほどの方ですし、軸がぶれないんです。僕らはその周りで遊ばせてもらっている感覚。こんなに安心感を持って臨める舞台は珍しいくらいで。そんな芳雄さんの歌が、物語をまとめあげていきます。
――井上さんの歌を聴かれた感想はいかがですか。
あまりに心地良すぎて、「本当に上手だな」という感想しか出てきませんでした(笑)。煙(けむ)に巻いたような物語を、芳雄さんの歌声が乗り越えていくというか。あまりにうますぎて、舞台中は背中を向けてこっそり笑ってしまうくらいなんです。
舞台写真撮影=宮川舞子
――同じく共演されている井上小百合さんも劇中、特技を披露されているそうですが。
小百合さんはもともとサックスをやっていらっしゃったそうで、劇中でも演奏しています。お客様の前で楽器を演奏するのは、ものすごくプレッシャーがかかるはず。それを軽々とやっているように見せる。そして、とても楽しんで演奏していらっしゃる。小百合さんの演奏シーンは見応えがあります。
――そんななか、鈴木さんは何か披露されているものはあるのでしょうか。
うーん、ないですね……(笑)。
舞台写真撮影=宮川舞子
――ハハハ(笑)。でも役回りとしてストーリーテラーということで、台詞量がすごいんですよね。
そうです、すごく多いです。いろんな作品に出演してきましたが、今回のような物語の案内人をやるのは初めてで、新鮮さがあります。ただ、すごく難しいですね。語り部としての瞬間は、自分は楯鉾寸心なのか、鈴木浩介なのか。その微妙なさじ加減に気をつけています。
――そこをしくじってしまうと、その後の物語にも影響が出てしまうわけですね。
だから、お客様と「握手」ができる瞬間を大切にしています。それがないと難しくなってしまう。毎公演、その瞬間はいつも緊張しています。大阪公演でもお客様と「握手」ができたらと思っています。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=田浦ボン

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