ハラミちゃん

ハラミちゃん

【ハラミちゃん インタビュー】
年代をつなぐ架け橋だったり、
伝道師みたいな役割を果たしたい

自分が好きなものを
スパイスとして入れていきたい

「947」は「ひとり」とは趣が違っていて、イントロや間奏で現代音楽のようなテイストを活かしていますね。

さっき言ったことと真逆にはなるんですけど、私のパーソナルな人格として好きな音楽は、ポストロックとかモダンジャズ、プログレとかだったりするんです。変拍子にもまったく抵抗がない。でも、それをハラミちゃんとしてゴリゴリやっていくのは違うということは分かっているので、キャッチーなインストを作りつつ自分が好きなものをスパイスとして入れていきたいというのがあって。それが合わさったのが「947」です。

ハラミちゃんがポストロックなども好きだというのはすごくワクワクします。それに、そういう面を押し出さないところにセンスの良さを感じます。

どうなんでしょうね?(笑) でも、そう感じてもらえたなら良かったです。「947」はポストロックとかモダンジャズの要素を活かした曲を作ろうと思って作ったわけではないんですよ。“947”というのは日本武道館への日数を表していて、それが自分にとってどういうものだったかという大振り返り会をしながら曲を作っていく中で、ひと言で表すなら冒険だったとな思って。それこそ空を飛んだり、海の中に潜ったり、すごく強い風に当たったりするような日々で、痛みを感じることもあるけど、でもやっぱりすごく幸せで、すごくたくさんの愛をいただいたんですよね。だから、晴れやかな曲にはしたいと思ったんです。その上で冒険感を出すとなった時に、自分の好きな変拍子だったりを入れるとマッチするということで取り入れさせていただきました。

“自分が好きなものありき”ではなくて、世界観を表現するのに最適だったので活かされたんですね。そして、3曲目の「ひとり」は温かみと切なさを湛えたバラードです。

「ひとり」は今年に入ってから作った曲です。いつか春とか桜とかをテーマにした曲を作りたいとずっと思っていたんですよ。このアルバムが3月発売と決まった時に、そういう曲を入れたいと思いました。それで、「ひとり」を書いて、急遽入れさせてもらって。“ひとりぼっち”ってすごく孤独な印象を受けますけど、人間というのは実はひとりじゃないですか、どんな時でも。特に春は卒業や入学など、環境の変化がある季節で、みんながいればいるほど逆にひとりを感じることが多いですよね。いろんなことに敏感になる時期な気がしていて、そこで別に人間というのはひとりでいいし、ひとりが正解だし、ひとりは寂しいことじゃなくて、むしろ素敵なことだというのを、あまりひとりっぽくないハラミちゃんが言うことによって、少しはみんなの気持ちを落ち着かせることができるのかなと。そういうことを思いながら桜が感じられるような春の曲を作って、あえてタイトルを“ひとり”にしました。

人は大人になっていく中でひとりは寂しいことではないと思うようになりますので、今のハラミちゃんの等身大の心理を表した曲とも言えますね。それに、「ひとり」の中間部の速いアルペジオは桜吹雪を巧みに表現していて。

そこはまさに風がパァーッと吹いて、桜の花びらが舞い散るイメージで、何かが変わる予感を表現しました。“ひとりは素敵なことだよ”というのを伝えるためにはずっと切ない感じだとそのままで終わってしまうから、最後に少し盛り上がる前のブリッジとして風が巻き起こっているようなフレーズを使ったという感じです。

「ひとり」はこれからの季節にフィットする曲ですので、ぜひ多くのリスナーに聴いてほしいと思います。もうひとつ今作を聴いて感じたことですが、ハラミちゃんのピアノは抑揚のつけ方の巧みさやダイナミクスレンジの幅広さなども注目です。

いろんな持ち味のピアノ奏者さんがいる中で、自分自身が強みとして思っていたいのがおっしゃっていただいたとおりダイナミクスの部分なんです。小さい頃のピアノの先生の教えになっちゃうんですけど、“ピアニッシモの種類を50種類出せるようになりなさい”と言われて。

えっ! 50種類!? 50種類ですか?

はい(笑)。どう考えても3つくらいが限界で、“この人は何を言っているんだろう?”みたいな(笑)。でも、そのあといろんな人生経験を積ませていただいていく中で、“ピアニッシモ=弱い”ではないなと気づきました。例えば「そばかす」を弾く時のピアニッシモと「春よ、来い」(松任谷由実)を弾く時のピアニッシモは絶対に違っていて、そこに対してどれだけ差をつけられるか、どれだけ指のタッチを工夫できるかを考えますね。先生に言われた時からすごく自分の中で意識してきたことですし、今回はいろんな年代の楽曲やいろんな曲調があるので、音の弱さの種類ということに関しては今の自分ができるものをフルで入れ込みたいという想いがあって、そういう部分は意識しました。

OKMusic編集部

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