[Alexandros]川上洋平、レオナルド・
ディカプリオ主演のブラックコメディ
『ドント・ルック・アップ』について
語る【映画連載:ポップコーン、バタ
ー多めで PART2】
でも、『ドント・ルック・アップ』では地味な天文学者の教授の役なんだけど、結構抑えめな演技で惚れ惚れしました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でブラッド・ピットがスタントマンの役を演じてアカデミー賞を取った時に、「抑えめの演技が良かった」みたいな評価もあって。かつてはブラッド・ピットも『12モンキーズ』とか『ファイト・クラブ』とか癖の強いノリが前に出てる時期もあったけど、静かめな演技で初めてアカデミー賞を取った。今回のディカプリオの演技にはそれに近いものを感じました。
■役者としてのすごさを見せつけられた
相手役がジェニファー・ローレンスって聞いて、ディカプリオが大きな演技をしてジェニファー・ローレンスが抑え目なのかなと思ったら逆で。ディカプリオが彼女に対し、「まあまあまあ」って抑えるような、一歩引くような役だったのが意外でした。でもそれがすごく良かったです。感情を爆発させる場面もあって、あそこだけ唯一「ディカプリオ来た!」みたいな(笑)。今回でさらに好きになりました。だって、この教授ってオタクっぽいっていうか、いわゆる陰キャだと思うんですけど、それをアイドルみたいなみんなの王子様キャラから始まって主役らしい主役しかやってこなかったディカプリオがある種淡々と演じていて。影が薄いんだけどちゃんと感情移入できる。マーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では「もうレオナルド・ディカプリオ!」って感じがありつつ「こんなことまでやっちゃうんだ!」って驚きがあったけど、そことはまた全然違う「こんなこともできるんだ!」っていう驚きがありました。役者としてのすごさを見せつけられた。これがブラッド・ピットだったらちょっと無理があったんじゃないかな。だってブラッド・ピットってすごくかっこいいんで、特殊メイクとかしないと厳しいんじゃないかなって。
日本の役者さんだったら山田孝之さんとかもそうなのかもしれないですね。ディカプリオとは10歳ぐらい違うけど、昔は爽やかなイケメンキャラだったのに幅がすごい。だから、最初はストーリーのおもしろさに引き込まれて、でもあとでよくよく考えたら、「あれディカプリオだよな」っていう興奮を感じました。
それとマーク・ライランスも素晴らしかった。イーロン・マスクみたいな存在の役で出てて、顔はマーク・ライランスのままなんですけど、喋り方も表情も役にすごく入ってて最初わかんなかったですね。だから役者さんってすげえなって思いましたね。
これだけの役者陣がそういうお芝居をしているからというのもあるかもしれないですけど、なんか舞台感があったんですよね。だから僕が予告を観て感じた感覚もあながち間違ってなかったっていうか。他の惑星に行くような壮大さもあるんだけど、なんかこじんまりとした印象がある。
彗星が衝突して地球が終わるみたいな映画って割とあるけど、最後の最後まで政府がパニックにならないところもおもしろかったし、終わり方もすごく好きでした。エンドロールのあとまで観てくださいっていう。
コメディが得意な人が描くシリアスな題材の作品ってすごく辛辣で的を得てるって思いましたね。『アス』とか『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールも元々コメディアンですもんね。ジョークって人間の情けなさの真ん中を捉えるからくすぐったかったりドキッとするんだろうなって。『ドント・ルック・アップ』は登場人物みんなに対して人間の情けなさが感じられて。でもそこも笑えるよねっていう絶妙さがありますよね。アダム・マッケイはその辺がよくわかってるなって。客観的にそれぞれの人間観察ができるような楽しみ方もできるし、うまいですよね。
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