WurtS初のオンラインライブ 仕掛け
と遊び心に満ちた一部始終を目撃した

WurtS ONLINE LIVE 2021 supported by ZONe 2021.12.26
WurtSが12月26日(日)にオンラインライブ『WurtS ONLINE LIVE 2021 supported by ZONe』を開催した。
「研究者✕音楽家」という肩書きで2021年に本格的に活動を始めたWurtSは、作詞・作曲・アレンジ、アートワーク、映像制作に至るまですべてセルフプロデュースで手掛けるソロアーティスト。12月1日に1stアルバム『ワンス・アポン・ア・リバイバル』をリリースしたばかりのタイミングで開催された初のオンラインライブは、マルチな才能の持ち主ならではの“仕掛け”に満ちたものだった。
ライブの始まり方も通常のオンラインライブとは全く違っていた。カラーバーの上に「W’ s Project」と書かれたオープニング映像から、画面がいきなりモノクロに切り替わる。海外ニュース番組風のザッピング映像を経て、司会者が登場。レトロアメリカンな音楽番組のノリで「皆さま、WurtSってご存知でしょうか?」「さっそく歌っていただきましょう、それじゃよろしく!」と紹介して画面が切り替わり、「僕の個人主義」からライブがスタート。
にしても、何やら意表をつかれる展開である。WurtSは白いシャツにネクタイ、キャップを覆面がわりに深くかぶったスタイル。ドラム、ベース、ギターをサポートに迎えたバンド編成だ。ステージ背後には電飾のロゴと、アルバムのジャケットにも似たキラキラとした装飾が光る。「SIREN」から「魔法のスープ」ではドレス姿のエレガントな女性が登場し舞い踊る。ライブ映像もモノクロで、映像の縦横比も旧型のブラウン管テレビのもの。そして画面左下には「1957 1103」の数字。昔のテレビを観ているような感覚だ。
曲が終わると、画面に「RABBIT TO THE MOON」というロゴと共にソビエト連邦の人工衛星スプートニク2号に乗せられた“宇宙飛行犬”ライカのニュース映像が挟まる。ここで「あれ?」と、ピンとくるような感覚がある。ひょっとしたら左下の数字は年月日を意味しているのではないだろうか? ちなみに、ライカが宇宙に旅立った日は「1957年11月3日」だ。
またも司会者が登場し、ブタのマスコットとの掛け合いで曲紹介。映像は鮮明なカラーに変わり、画面の左下には「1969 0720」の文字。続いては「檸檬の日々」だ。WurtSの周りをバニーガールが踊る。さらに「解夏」で小気味よいビートとキャッチーなメロディを聴かせると、今度は画面がカラーのざらついた色調になり、左下の数字は「1981 0412」。どうやらこれ、通常のオンラインライブではなく、時間を飛び交いながらパフォーマンスを繰り広げる一つのSF的な映像作品として作られているようだ。ちなみに、1969年7月20日はアポロ11号が月面に着陸した日、1980年4月12日はスペースシャトル・コロンビアが初めて宇宙に到達した日である。
続く「リトルダンサー feat. Ito (PEOPLE 1)」では、PEOPLE 1のItoがゲストボーカルに登場し、「ブルーベリーハニー」へ。オルタナティブ・ロックのサウンドにちょっと気だるい感じのメロディを乗せた曲を続ける。さらに「このアルバムは、これからの飛躍と、これまでの音楽をリバイバルするというメッセージを込めて作りました」――とWurtSがアルバム『ワンス・アポン・ア・リバイバル』について語るトークを挟んで、後半へ。
前半はバンド編成のナンバーが中心だったが、後半はサンプリングをフィーチャーした「NERVEs」から「BOY MEETS GIRL」へと、徐々にエレクトロ・ポップへと軸足を移していく。曲が終わると画面が乱れ、謎のウサギのキャラクターが「俺は2052年からやってきた、今から言うことをよく聞いてくれ」――と警告を発する数秒間をはさみ、司会者が「失礼、電波が乱れたようです、気を取り直して次の曲いってみよう」と「Talking Box」へ。なんだか不穏な展開だ。画面左下の数字は「1998 1204」から「2011 0711」へ。何らかの宇宙開発にまつわる日付だろうか?
「Talking Box」ではステージが転換し、バンド編成からDJセットへ。場所もカラフルな電飾のステージからコンクリートの壁をバックにしたモノトーンの空間へと一転する。歌詞のフレーズがプロジェクションマッピング的に映し出される壁を前にマイクを握り、「Capital Bible」ではラップも披露する。
曲が終わると、「番組からのお知らせです」と司会者が告知。「科学技術会社RABBIT TO THE MOONが月移住計画を進めています。そこで、月で暮らす最初の人類を募集しています」と語り、「詳細はこちらのリンクからアクセスしてください」と、画面には「https://wurts.jp/2022/」のURLが表示される。早速アクセスすると、なんだか意味深な写真が。
「え? え? どういうこと?」と思っているうちに、ステージは再びカラフルなバンドセットへ。キラキラと輝く照明のライトを背後に「わかってないよ」をプレイ。画面左下は「2021 1226」。ライブのクライマックスでようやく“現時点”に到達した、ということか。続く「ハイジャックサマー」では隣にチアリーダーが踊り、ラストは「地底人」。エネルギッシュな演奏、満面の笑顔のチアリーダー、そして真ん中でクールに佇み歌うWurtSというコントラストが印象的だ。
「ありがとうございました」と一礼してWurtSがステージを去ると、最後の画面にはスペースシャトルや月の映像、そして「RABBIT TO THE MOON」というロゴが映し出される。意味深な余韻を残して、初のオンラインライブは終了した。
まだまだ計り知れない――。それが観終えての率直な印象だった。これまでもミュージックビデオで様々なたくらみを形にしてきたWurtSだけに、オンラインライブも一筋縄ではいかないセンスと悪戯心を感じさせるものだった。

取材・文=柴那典 撮影=高田梓

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