あいみょん弾き語り日本武道館公演に
思う、伝え合うということ

11月30日、あいみょんが、東京・日本武道館にて弾き語りツアーの追加公演『AIMYON 弾き語りTOUR 2021 “傷と悪魔と恋をした♡ in 武道館”』を開催した。彼女が日本武道館でワンマンライブをするのは2019年以来2回目。本記事では、当日の模様をレポートする。

Text:Sotaro Yamada
Photography_Yuri Suzuki
暗転した会場の中、ステージ中央だけに仄かな光りがあたり、ギターを持ったあいみょんがぼんやりと浮かび上がる。表情も見えないほどのままならない視界の中、あいみょんの歌声とアコースティックギターの音色だけが会場に響く。彼女は自身2度目の武道館ワンマンを、今回のツアーのために書き下ろした新曲『傷と悪魔と恋をした!』でスタートさせた。

ゆっくりステージに明かりが灯ると、かねてより隠れた名曲として人気が高く今年CMソングになったことで脚光を浴びた『青春と青春と青春』、続けて、メランコリックなアルペジオではじまる『ポプリの葉』を披露。フロアから大きな拍手が起きた。

たとえコロナ禍であっても、オーディエンスとの距離の近さを感じられるのがあいみょんのライブにおけるひとつの特徴だ。スケッチブックにメッセージを書いて掲げるファンや昔のツアーグッズなどを持参しているオーディエンスを見つけては声をかけ、メッセージを読み上げてはそれに答え、まるで路上でお客さんとやり取りするかのようにラフな会話が繰り広げられる。前列だけでなく会場の奥にまで目を配り、すべての来場者とコミュニケーションを取ろうとする。こうしたやり取りに贅沢なまでに時間が使われていたが、この何気ないMCタイムにも、「伝える」ことに重きを置いた彼女の音楽のスタンスが表れているように感じられた。
2年前の武道館公演では最初に披露された『マリーゴールド』で会場を温め、紫の照明に照らされる『スーパーガール』とザクザクしたギターと小気味良いグルーヴが特徴的な『朝陽』で雰囲気を変える。

「こっからはゆったり聴けるセットリストにしたので、彼氏の肩にちょこんとしてくれてもいいし、寝てもいいし、ゆったり聴いてくれたら」と、『裸の心』『恋をしたから』、そして先日リリースされたばかりの『ハート』を、それぞれ情感をたっぷり込めて披露した。

さて、この日はあいみょんメジャーデビュー5周年の日である。フロアのあちこちに「5周年おめでとう」というコメントが見える。それらに対し丁寧に感謝を述べるあいみょん。

「5歳になりました。いくらでもひとりで音楽はつくって歌えるんやけど、みんなの前に立って歌えてるこの5年間は、すごい幸せやと思いました。みんなのおかげで日々が楽しいです。ありがとう」

大きな拍手が起きたあとは、「知ってる人おらへんかもしれへんな、って思ってちょっと不安ながらセットリストに入れてみたんですけど、18歳くらいの時につくった曲で、路上ライブで必死に”伝われ〜”と歌ってた曲です。まさかこの曲たちが路上から武道館に来れるなんて」と、インディーズ時代に発表された『夜行バス』と『19歳になりたくない』を披露。今聴いても素晴らしいメロディー、素晴らしい楽曲で、新曲として発表されても違和感があまりない。これを18歳の時すでに完成させていたのだから、彼女は最初からほとんど完成されていたのかもしれない。
岡本太郎へのオマージュを捧げる『TOWER OF THE SUN』ではブルースハープを吹き、オレンジ色の複数のスポットライトがステージから天井にかけて三角形の塔を形作る。一方、『生きていたんだよな』では照明を落とし、ほとんど視界がない中で彼女の歌を聴くことになった。ラスサビでピンスポがあいみょんに当たった時はカタルシスがあったが、それよりも、歌詞の内容と対面させる効果が強く、歌の魅力を最大化させるための引き算の演出が憎い。 こういうシンプルかつ大胆な演出ができるのは歌と演奏に自信があるからだろうし、周囲のスタッフの信頼を得ているからだとも言える。

21歳でデビューして以降、数々の名曲を発表してヒットさせてきた彼女のキャリアは、はた目には順調に見える。しかし本人としては、22歳から23歳の頃、音楽に対してどうしていいかわからない時期があったという。そのがむしゃらだった頃につくった曲だと知ると、『愛を知るまでは』で歌われる不安と希望と決意は、より身体に染み入ってくる。この曲で歌われる「夢」のひとつが武道館でのライブなのだろうか。

『今夜このまま』ではオーディエンスがBメロから一斉に手拍子で演奏に参加し、『サラバ』では、歌い出しの歌詞を間違えるアクシデントがあったものの、「あ、間違えちゃったな……」と髪をかき乱す仕草のキュートさでフロアはむしろ盛り上がる。彼女を励ますような大きな拍手に包まれる中で仕切り直し、悲しみから一歩踏み出すような曲で聴かせる。
「5年目のシンガーソングライター・あいみょんをこの場で見ていただけたことがすごく嬉しくて楽しくて、幸せでした。ありがとう。最後の曲、みんな、立てますか?」とオーディエンスを立たせ、それからマイクをオフにして、「最後の曲はほんまにみんなと大声で歌いたいなと思ってる曲やから、今日はせめて身体だけでも目一杯動かしてもらって、次会える時に備えてもらったらなと思います。準備大丈夫ですか?」とフロアに語りかける。そうしてラストは『君はロックを聴かない』。オーディエンスは思い思いに手を振り、手拍子をし、ハッピーなムードと一体感が生まれた。

「なんかすごいドキドキしちゃった。会える機会がこの2年間で少なくなってしまって、約束ばかりになってしまって、このツアーもすっごい待たせてしまったと思ってるんですけど、わたしは、とことんみんなに会いに行って、いっぱい曲をつくり続けたいと思っているので」と、2022年にはファンクラブツアーとアリーナツアーを開催することを発表。再び会場は大きな拍手に包まれた。

「今日は本当にありがとうございました。6年目もよろしくお願いします! がんばります! 大好きです、みんなのことが!」とステージの端から端まで手を振りながら歩きまわり、オーディエンスが掲げるスケッチブックに書かれたコメントに触れ、名残惜しそうにしながらステージを後にするあいみょん。こうして2度目の武道館公演は終わった。

ポップな曲、しんみりした曲、刺激的で本質的な歌詞で聴かせる曲、大阪で路上ライブをやっていた時期の曲などが織り交ぜられたセットリストで、彼女の本質と、メジャーデビューしてからの成長と、現在の勢い、それらすべてを感じられる内容のライブだった。

あいみょんの歌は、歌詞の内容が入ってきやすいとよく言われる。それはなぜだろうか。言葉選びのうまさ、音への乗せ方、声の良さ、歌のうまさなど、いろいろな要素が考えられるだろうし、それらが組み合わさった結果なのだろうが、もっとも重要なのは、それ以前のスタンスの部分なのではないか。つまり、ただ一方的に音楽を発信するのではなく、伝え合おうとすること。そのことを重要視していること。それがあいみょんの本質なのではないか。そんな感想を抱かせるライブでもあった。

セットリスト 1. 傷と悪魔と恋をした! 2. 青春と青春と青春 3. ポプリの葉 4. マリーゴールド 5. スーパーガール 6. 朝陽 7. 裸の心 8. 恋をしたから 9. ハート 10. 夜行バス 11. 19 歳になりたくない 12. TOWER OF THE SUN 13. 生きていたんだよな 14. 愛を知るまでは 15. 今夜このまま 16. サラバ 17. 君はロックを聴かない

あいみょん

公式サイト
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あいみょん弾き語り日本武道館公演に思う、伝え合うということはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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