今井翼「面白がってもらえる役者に」
 リーディング・コンサート『ベート
ーヴェンからの手紙』インタビュー

ベートーヴェンが残した手紙の謎に迫る朗読劇と、読売日本交響楽団チェリスト渡部玄一率いるトリオによるベートーヴェンの名曲の生演奏を融合させたリーディング・コンサート『ベートーヴェンからの手紙』が2021年12月3日(金)、4日(土)、彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールで開催される。
本作で、ベートーヴェンのピアノの弟子であるフェルディナント・リース役を演じるのは、今井翼。作品に対する意気込みのほか、40歳になった今の思いを尋ねた。
初の朗読劇「声を通した仕事をしたいと思っていた」
ーーまずは『ベートーヴェンからの手紙』への出演が決まったときのお気持ちを教えてください。
朗読劇は今回が初めての経験なので、未知な部分がたくさんあります。ただ、役者としていろいろな表現をする中で、声を通したお仕事もしたいという思いは以前からあったので、不安もありますが、今はしっかりと皆さんにこの『ベートーヴェンからの手紙』という作品をお届けしたいなと思っていますね。
ーー初めての朗読劇ということで、今井さんにとっても「挑戦」と。
そうですね。まさに挑戦ですね。
ーー今回の脚本をお読みになったときの印象をお聞かせください。
晩年、ベートーヴェンは難聴という絶望に陥りながらも、それを跳ね返すエネルギーがあった。そこが、彼のイメージである“情熱”の部分に関連しているのかなと思います。その一方、人に恋をすることで、彼の芸術が生まれてくる。そこもとても大切な要素だったと思うんです。彼の耳が聞こえなくなり、どんどんと(心を)乱していく姿だけではなく、そういったエピソードから一人の人間として彼の持つ繊細な人柄も伝えていきたいと思います。
ーー今回、演じられるのは、ベートヴェン本人ではなく、実在した弟子のフェルディナント・リース。役については今、どんなことを考えていらっしゃいますか?
一番近くにいた弟子として、周囲の人がイメージするベートーヴェンではなく、本当の彼の姿を知っています。意外とデリケートで、傷つきやすい、人間べートーヴェン。僕の演じるリースはストーリーテラーのような役割もするのですが、芸術家というよりも、ベートーヴェンの人間性が伝えられるようにしたいです。
ーーミュージカル『ゴヤーGOYAー』のときもそうでしたが、実際の人物を演じることになったとき、今井さんはどういうふうに役作りを深めていかれるのですか?
正直、役作りというよりは、自分が本を通して捉えた気持ちと、役者同士のキャッチボールや呼吸を大事にしたいと思っています。その先で初めてお芝居は成立するものだと思っているんです。ましてや今回は、声のみで表現するというアプローチ。しっかりとこの本を咀嚼したうえで、生演奏のベートーヴェンの音楽にあわせつつ、客席にいるお客様一人ひとりの中で、常に好奇心が湧き出るような時間をお届けできたらいいなと思います。
ーー他の共演者の方とはお話しされましたか?
まだどなたともお会い出来ていません。今は自分の時間の中で、この台本と向き合って過ごしています。どの現場もそうですけど、実際に現場に行って演出家さんや他の役者の方にお会いして、お稽古をすればいろいろなものが見えてくるのかなと思いますね。今回は生演奏もありますので楽しみにしています。
ーー今回、生演奏というのも非常に魅力的ですよね。
そうですね。非常に贅沢で、上質なリーディングコンサートになると思います。クラシックに詳しい方だけではなく、どなたでも何かを発見したり、魅力を再認識できたりするのかなと思います。
ーーご自身はベートーヴェンの音楽に関しては何か思い入れはありますか?
今回、この作品に出演が決まってから、日常生活の中でベートーヴェンの音楽をかけるようにしています。ベートーヴェンの音楽を聴くと、気分も頭もすごく冴えてきて。それこそクラシックが持つ癒しの力なのでしょうか。一方で、とても情熱的なものや喜怒哀楽を感じることもあります。一言では形容しきれない世界が自分の中に立ち上がるんですよ。
今井翼、40歳。「面白がってもらえる役者に」
ーー10月にちょうど40歳になられました。おめでとうございます!
ありがとうございます。
ーー年齢については、今、どう捉えていらっしゃいますか?
幼い頃から僕は芸能界でお仕事をさせていただいていますが、歳を重ねることを楽しみたいとずっと思ってきました。40歳を迎えられたことはすごく嬉しいです。先日は、母親に無事に40歳を迎えられた感謝を込めて、プレゼントを送りましたね。
ーー素敵ですね!お母様も喜ばれたのではないですか。
そうですね。サプライズだったので、すごく喜んでくれました(笑)。
ーー40歳を迎えられた今、ぜひ今後の夢や野望を教えてください。
こうして一つ一つの仕事と向き合いながら感じることは、すべてが大事なチャンスですし、ご縁だということ。そのことは、いつも忘れずにいたいと思います。一つ一つの経験が今後の自分自身を成長させると思いますし、その成長を自分で感じられることが嬉しい。なので、まずは一つ一つの仕事と真摯に向き合いたいです。
具体的な目標としては……今は「俳優」という肩書きで活動させてもらっていますが、あえて狙ったキャラクターや印象を作ることはしたくない。見てくださる方に面白がってもらえるような俳優になりたいですね。
ーー年を重ねるごとにまた面白さが増していく。そういう俳優さんですか。
そうですね。僕が素敵だなと思う方々って、女性も男性も、年齢を重ねてもチャレンジをして、かつ、それが楽しそうなんです。僕も、今回のこのリーディング・コンサートもそうですけど、いただけるお話に感謝して、この経験がまた人生に良い影響となるように、皆さんの声を大事にやっていきたいなと思っていますね。
ーーさきほど「声のお仕事をしたい」と思われていたエピソードがありましたが、何かきっかけはあったのですか?
自分の声って、あくまで自分での感覚で、他の人にどのように聞こえているのか、自分では分からないじゃないですか。僕もいまだにテレビを見て「自分って、今こんな声なんだ」と感じますし。そんな中、いろいろな方から「声をもっと生かした方がいいよ」というお言葉をいただくことが増えて、自分の中でも何か興味が湧いてきた感じです。
ーーなるほど。そこにも周りの方のご縁があって、声が聞こえてきて、やってみようかな、と。
そうですね。褒められることは嬉しいことなので(笑)。年々声帯が下がってきて、どんどん低く響く声になっていますし、声を通してのお仕事もいろいろとやっていきたいです。
ーーファンの皆様もこれからの活躍をますます期待されてると思います。最後に今回の公演、たった2日間ですけれども、楽しみにされてるお客様に改めて見どころと意気込みをお願いします!
ベートーヴェンの人間性というものを、情熱的な一面だけではなくて、繊細さを持って描いている作品です。音楽と一緒に、その時代背景や人間関係を語った朗読劇をお楽しみいただきたいですね。
取材・文=五月女菜穂

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