恥を恥とも思わない、ちゃんみなの集
大成『ハレンチ』

ハレンチ、漢字で書くと破廉恥。このワードからあなたがイメージするのはどんな状態、人物、事象だろうか。ちゃんみなが放った「恥を恥とも思わない」という言葉は、常識を超えていったり、すでにあるものを破壊する前向きな意味にも受け取れる。

ちゃんみなの存在を広く知らしめた前作『Never Grow Up』から約2年。『Angel』や『美人』などリアルで濃厚な感情が溢れる作品をリリースしてきた彼女。それらの濃厚なナンバーに加え、アルバム曲ではJ-POPマナーに則りながら、その天井を打ち破るようなサウンドとアレンジ、そして新しい言葉を紡いでいる。メジャー・デビュー5年目を迎え、確実に代表作になりそうな本作について訊いた。

Photography_Sakura Nakayama
Interview&Text_Yuka Ishizumi
Edit_Miwo Tsuji

恥を恥とも思わない

――前作の『Never Grow Up』は「大人になれない」という意味と「大人にならない」という両面の意味があったと思うんですが、今回の『ハレンチ』はどういうことがテーマとしてありましたか?

ちゃんみな : 裏テーマとしては「日本・東京」っていうのがあります。日本のサウンド文化みたいなものを取り入れて、J-POPに寄り添った作品になっていると思います。新曲のタイトルが全部日本語というのもこだわった部分ですね。

――「ハレンチ」という言葉は、どこから?

ちゃんみな : ハレンチって言葉自体は、マイナスのイメージで使われることが多いですよね。「これはハレンチだよね」とか、人をけなす時によく使う言葉だし。だけど、言葉としては恥を恥とも思わないという強い意志がある言葉で。私とも共通点があるなと思って。

――シングルも含めると長いスパンの曲が収録されていますが、特にアルバムの軸となった曲はありますか?

ちゃんみな : やっぱり「ハレンチ」ですかね。もともとアルバムタイトルは『ハレンチ』と決めていたんですけど、曲がずっとできなくて、スランプに入っちゃったんです。『美人』をリリースした後、言い切った感もあってか、賢者タイムみたいになっちゃって。それを抜け出すきっかけになったのが「ハレンチ」ですね。この曲が完成して、やっと開けていったなという感じはします。
ハレンチ (Official Music Video)

――この曲では、どんなことを書けた実感がありますか?

ちゃんみな : 私のスランプのことです。苦しくて悶える中で書いた曲なので、それが表現されています。

日本語にしかできない表現を

――コロナ禍が創作意欲に影響を及ぼした部分もありましたか?

ちゃんみな : ありますね。ないと思っていたんですけど、ありました。例えばライブができないとか、そういう分かりやすい変化はもちろんありますが、その他で言うと普段からあまり家を出るタイプではないので、あんまり影響がないように思っていたんです。でも、スランプがあったのも、コロナ禍であったことが少しは影響しているんだと思います。元々スランプとか経験したことがない人だったので。

――例えばどんな影響がありました?

ちゃんみな : まず、インプットが全くなかったんですよ。別にコロナ禍だって恋愛はできるけれど、恋愛云々よりも、まず友達にも会えないじゃないですか。そうすると「最近こういうことあってさ」とかも話す場がない。話す場がないと、自分が何を考えているのかも分からない。自分の悩みも、自分が何をアウトプットしたいのかも分からなくなってくるんですよね。インプットがないから。旅行とか海外にもにも行けないから、リフレッシュもなかなかできないし、ずっと水中にいるような気持ちですね。それがたぶん曲作りにも影響していて、スランプにも繋がったんだと思います。

――その状況を乗り越えてアルバムが完成したということですよね。特に新しいところを切り開けたなと思う曲はありますか?

ちゃんみな : 『太陽』ですかね。サビの一発目を、一言であんなにシンプルに投げたのも自分の中では新しい試みだったと。

――「太陽だ」の部分ですね。

ちゃんみな : デビューしたばかりの頃って、日本語で歌詞を書く習慣があまりなくて。自分の中では日本語が劣っているのがコンプレックスだったんです。自分が思っている感情はこんなにあるのに、日本語だとここまでしか表現できないっていうのがすごくコンプレックスだったので、本をたくさん読んだんですよ。辞書を読んだりとか。それが積み重なって、今こういう歌詞を書けるようになったんですけど。多分その中で日本語の素晴らしさみたいなものに気づいて、今回の作品には、日本語でしかできない表現をたくさん入れたいなと思ったんです。
――なるほど。

ちゃんみな : 例えば『太陽』は、洋楽ライクなサウンドですけど、「太陽だ」っていう歌詞は、日本語がいちばんグッとくると思うんです。結構挑戦的でしたけど、うまくハマったなと思ってますね。

――『太陽』からは、痛々しさのようなものも感じました。

ちゃんみな : 恋愛っぽく落とし込んでいますが、『ハレンチ』の歌詞でいう“君”は、私にとって音楽や作曲なんです。「だから二度と私を離れないで」というのも曲が書けなかった時の私の気持ち。歌詞を書いている時は、入り込んじゃっていて、何について書いているのか正直分からないんですけど、後から読むとそういうことなんだなって自分で思いますね。やっぱり音楽という存在は、私にとっての太陽だし、私の全てなんです。

――コロナ禍ということもあり、それぞれにとって色々な想像できる歌詞ではありますね。

ちゃんみな : そうですね。なので、あえてはっきりはしなくていいと思っています。『ハレンチ』も『太陽』も、それぞれが自由に想像していただければと。

――歌詞でいうと『東京女子』もすごく気になりました。歌詞に出てくる“女子”に対して醒めた眼で見ているスタンスなんでしょうか?

ちゃんみな : 皮肉的な面もありますけど、それと同時に私の一面でもあります。世の中のノーマルというか。この一面は、みんなが持ち合わせていると思っているんです。

――「東京エレクトリックサッド」っていいラインだなと思って。

ちゃんみな : ありがとうございます。

――このアルバムは、ちゃんみなさんにとってどういう存在になりそうですか?

ちゃんみな : 私の活動において「分岐点」となるアルバムだと思いますし、今後の活動の「伏線」にもなると思いますね。

念願の武道館ライブは、今の「集大成」

ジェニーハイ「華奢なリップ」feat.ちゃんみな

――最近のちゃんみなさんは、自身の作品以外にフィーチャリングも引く手あまたですね。ジェニーハイの『華奢なリップ』は、今回のアルバムの音楽性とも近い部分があると感じました。中嶋イッキュウさんと歌ってみていかがでしたか?

ちゃんみな : 普段はソロなので、ツインボーカルが新鮮でした。声の相性も、自分で聴いていてもすごく良かったし、ご本人も明るくて優しい方なので、すごく楽しかったですね。
Saweetie – Best Friend (feat. Doja Cat, Jamie & CHANMINA) [Official Lyric Video]

――Saweetieの『Best Friend(feat. Doja Cat, JAMIE, CHANMINA)』は?

ちゃんみな : 海外の方からも反響が大きくて、元々Sweetieの楽曲もよく聞いていたので、すごく光栄な気持ちでいっぱいでしたね。“Best Friend”というテーマもあってか、あれからJAMIEとも仲良くなって、DMでもやり取りするくらいになりました。

――10月15日には初の武道館公演が開催されますが、念願だったというのが少し意外でもありました。日本武道館にどんな思い入れが?

ちゃんみな : 1つの目標でもありますし、アーティストとしては立ちたい舞台です。武道館に立ったらこうしようって、ずっと決めてたものがあるので、それがやっとできるなっていう。もちろんゴールではないですが、1つの目標として叶ったことは嬉しいですね。今までのちゃんみなの集大成を見せることができるのが楽しみです。

『ハレンチ』

・初回限定盤
・通常盤

【収録曲】 01. 太陽 02. Angel 03. 君からの贈り物 04. ハレンチ 05. ボイスメモ No. 5 06. ホワイトキック 07. ピリオド 08. Picky 09. 想像力 10. 東京女子 11. ディスタンス 12. Morning mood 13. ^_^ 14. 美人 15. 花火 16. Never Grow Up (Acoustic Version)

◆DVD収録内容 (初回限定盤のみ) THE PRINCESS PROJECT 5 @ Nakano Sun Plaza Hall 2021.05.25 -Day01. Angel 02. LIGHT IT UP 03. Very Nice To Meet You 04. Needy 05. 美人 06. ダリア -Night07. Rainy Friday 08. Princess 09. Never Grow Up 10. ダリア

ちゃんみな

公式サイト
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恥を恥とも思わない、ちゃんみなの集大成『ハレンチ』はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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