山野ミナ

山野ミナ

【山野ミナ インタビュー】
アトリエみたいにいろんな色彩が
楽しめるものになればいいなと思った

“山野ミナのアトリエへようこそ”
って感じです(笑)

そして、今回のメジャーデビューアルバム『L’ATELIER』ですが、高橋幸宏さんがプロデューサーという。幸宏さんとは数年来の交流があるとのことですが。

4~5年前から交流させていただいています。共通の知り合いがたくさんいて、SNSなどでも共通の知り合いというところに常に幸宏さんが出てきていたんですよ。幸宏さんのところにも私が出ていたみたいだし。そんな中、私が自分の描いた絵をSNSに上げていたら、幸宏さんがそれに興味を持ってくれて。共通の友達もいるので、“じゃあ、今度みんなで飲みに行こう”ということになり、そこから交流が始まりました。音楽のことも、絵画のことも、相談させていただいて…まぁ、お酒の席でしたけど、何年か前に“いつか曲を作ってあげるね”と言ってくださったんですよ。なので、今回アルバムをメジャーから出すってなった時、とにかく勇気を振り絞って“今度メジャーからアルバムを出すことになったので、曲を提供していただけませんか?”とお願いしたんです。そうしたら“自分がやるからにはちゃんと関わる”と言ってくださり、こういうかたちになりました。

では、共同プロデューサーの伊藤ゴローさんは幸宏さんのご紹介で?

ゴローさんは私がブラジル音楽をやっている時にブラジル音楽系のイベントとかで何度かご挨拶したことがあって、実は顔見知りだったんです。で、幸宏さんが“ゴローちゃんに手伝ってもらいたい”ということでご指名されて。

なるほど。アルバムには“どんなふうにしよう”といったコンセプトなどありましたか?

私の中にはヨーロピアンサウンドっていうのが常にあるので、そこにボサノヴァなどのラテン音楽の要素を加えました。

ミナさんが作詞作曲した冒頭の「約束」や「ダメな男」には、これまでミナさんが歌ってきたボサノヴァやフレンチポップなどのヨーロピアンサウンドとはまたひと味違った日本情緒というか、情念のようなものが感じられました。

そうですね。そういった情念のようなものは、シャンソンの世界観と近いかもしれないです。私はエディット・ピアフをひれ伏すぐらい尊敬しているので、そこからの影響が大きいと思いますね。

2曲目「ダメな男」など、まさに日本的な情緒というか、もっと言えば演歌にも通じるような情念が感じられますが、シャンソン的な歌唱やサウンドに見事に昇華されている感があります。

そう言っていただけたら本望です。前作は“日本の歌謡曲のような琴線に触れるメロディーとヨーロピアンサウンドの融合”をコンセプトに作ったんで、根本的には常にそれがあって、そういうスタイルを自分のものとして確立したいんですよね。

冒頭の「約束」や「ダメな男」ではそれが理想的なかたちで具現化された感じですね。あと、カバーがいくつか入っていますが、これらはミナさんが選んだものですか?

「LA ROSA」は私で、「海辺の荘」は幸宏さんのファンの方からのリクエストです。ブレッド&バターの「ピンク・シャドウ」も私が選びました。

で、ミナさんが作詞作曲した「青空と狂気」でまた世界観がガラッと変わりますね。すごく壮大でファンタジックなサウンドになっていて、そこに乗る歌詞がぶっ飛んでます(笑)。

実は「青空と狂気」って幸宏さんのSNSにアップされていた写真が元ネタなんです。幸宏さんが軽井沢で撮ったものなんですが、青空の中に大きな氷柱がぶら下がっていて、“青空に凶器”という言葉が添えられていたんです。私はそれを見て“これで歌を作りたいです”と幸宏さんに言ったら、幸宏さんも“いいね”と言ってくださって。で、私が“青空に狂気”とタイトルをつけたら、幸宏さんが“青空と狂気”がいいんじゃないかと言ってくだり、そうやって生まれた曲なんです。美しい青空を背景に鋭利な氷柱がぶら下がっていて、その美しさと恐怖の紙一重みたいな世界が好きで。

歌詞では“妙な気分だな”という極めて個人的な感情から、一気に冥王星まで世界が広がっていきます。ある意味、視点が絵画的ですよね。

そうですね。曲にまつわる絵も描いたので、今度個展で披露しようかと思っています。それは歌詞カードにも一部掲載されています。

ラストの「Yo soy Yo」は幸宏さんの書き下ろしです。ボサノヴァやラテンのリズムを咀嚼した音楽はしばしばやられている幸宏さんですが、ここまでストレートなラテンは初めてじゃないですかね。ミナさんをイメージして書かれたとのことですが、途中で教会音楽っぽいパートが入ってきたり、やはりひと筋縄ではいかないですね。

もう5年もつき合いがあるから、本当は弱いくせに強がっている私の性格をすごく知っていらっしゃるので…そういう曲ですね(笑)。スペイン語の部分はすごく強気な女子なんですよ。“私はあなたのものにはならない”と。でも、日本語詞の部分はすごい弱気になっていて…日本語詞の部分は幸宏さんが書いたんですが、“側にいたいな”みたいな本心が出ています。そのギャップを描いた曲ですね。

こうしてアルバムを聴いてみると、曲ごとに表現が変わり、それが描き出す色彩感もさまざまです。それをまるで俳優のように演じ分けていますよね。

そうですね。もちろん自分の声を伝えることや自分の声を認識してもらうことはすごく大事だとは思うんですが、曲によって歌い方が変わったり、声の表現が変わったりっていうのは、今回の“アトリエ”っていうコンセプトに合っているんですよね。いろんな表現があって、いろんな曲があって、いろんな世界があって…まさにアトリエみたいにいろんな色彩が楽しめるものになればいいなと思ったので、あえて自分をあまり出さないようにしているかもしれません。

最後に、改めてアルバムの聴きどころは?

山野ミナのさまざまな一面があって、時に男を歌ったり、時に女を歌ったり、時にどっちでもなかったり、時に冥王星を歌ってみたり、バラエティー豊かなものになっているところですかね? あと、サウンドもゴローさんのこだわりで普通じゃないものに仕上がっているので、ぜひアルバム一枚まるまる通して聴いていただきたいです。“山野ミナのアトリエへようこそ”って感じです(笑)。

取材:石川真男

アルバム『L'ATELIER』2021年8月25日発売 日本コロムビア
    • COCB-54335
    • ¥3,000(税込)
山野ミナ プロフィール

ヤマノミナ:大阪出身、大阪芸術大学美術学科卒業のシンガーソングライター。ジャズレコードコレクターで絵画や彫刻品などのコレクターでもある父を持ち、幼少の頃から自然とジャズやアートに触れてきた。大学4年間では美術を学び油絵を描いていたが、在学中に出会ったミュージカルの舞台に衝撃を受け、舞台の世界を志すようになる。ミュージカルの養成所で歌やダンス、芝居を習い数々の舞台経験を経て、2010年より関西のジャズハウス中心にジャズ・ボサノヴァなど歌い、ライヴ活動を開始。14年にはボサノヴァアルバム『Brasilian Groove featuring MinaYamano』にゲストヴォーカルとして参加し、独特な歌声と正確な発音で好評を得た。16年、ギタリスト平岡遊一郎氏をサウンドプロデューサーとして迎え、1stミニアルバム『VIROU AREIA』を発表。17年より画家としての活動も再開し、銀座のギャラリーカメリアでの初の個展を開催。日本人離れした独特の色彩感覚と音楽的なタッチには定評がある。そして、21年8月にプロデューサーに高橋幸宏を迎え、アルバム『L'ATELIER』でメジャーデビューを果たす。山野ミナ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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