w.o.d. ソールドアウト続出!初の全
国ワンマンツアー、東京公演を振り返

バック・トゥ・ザ・フューチャーIII

2021.6.25(FRI)リキッドルーム
5月から続いたw.o.d.のツアー『バック・トゥ・ザ・フューチャーIII』が6月25日、東京・リキッドルームでファイナルを迎えた。残念ながら大阪公演は8月に延期されたものの、動員規制が前提とはいえほとんどの公演がソールドアウトだそうで、彼らの勢いがひしひしと感じられる。もちろんこの日もそうだ。
本来なら流れを追いながら何が起こったかを文章で再現していくところだが、大阪公演の延期によりセットリストの詳細を公開できないため、ライブレポートというより僕個人の印象記に近いものをお届けしたい。
来場者情報の記入、マスク着用、検温、手指消毒を義務づけられ、酒類の提供は再開されたものの大きな声や動きは禁止。とはいえ、もともとw.o.d.のファンはひとりで来て勝手に楽しんでサッと帰っていくタイプも多いから、3月のフライングライブのときも思ったが、静かなのもそれはそれでいいものだ。そのぶん音楽が十分、というかお釣りがくるほどやかましいのだから。
おなじみの出囃子、ヴァニラ・ファッジによる「Ticket to Ride」(ビートルズ)の引きずるようなカバーバージョンが流れるなか、3人がステージに上がる。サイトウタクヤ(Vo&Gt)はストライプのパジャマシャツにチェックのイージーパンツ、Ken Mackay(Ba)はホッケーシャツに黒のパンツ、中島元良(Dr)はTシャツに短パンにキャップ。いつも思うことだが、自由を愛するw.o.d.の姿勢を体現したバラバラな出で立ちである。
先述した通り観客のノリ方、楽しみ方が人それぞれなのも、そんなバンドの姿勢を反映しているのだろう。サビでみんなが同じ振りをするようなことはなく、拳を突き上げる人もいれば、腕組みをして静かに体を揺らす人もいて、ただ立っている人や、V系ファンのように“咲く”人もいる。若者が大部分だが、中年以上の人もいる。男女比やファッションにも顕著な傾向はない。とにかくいろんな人が集まってそれぞれ勝手に楽しんでいる雰囲気が心地よい。
3rdアルバム『LIFE IS TOO LONG』のリリースツアーという名目だが、セットリストは最新作にこだわらず3枚のアルバムからまんべんなく選曲。ポイントになる箇所に新作の収録曲を配していた。サイトウは以前「“こんなライブをしたい”というアイデアからそれに合う曲を作ってステージに持っていく」と話してくれたが、その言葉通りに効果的だった。
ドラム(特にキック)を筆頭に、ベース、ギター、ボーカルと、3人が繰り出す一打一打のすべてがケツに腹に鼓膜に響き、すっかり触れる機会が減ってしまったライブミュージックの愉楽を久しぶりに堪能させてくれる。アグレッシブなロックナンバーではスタジオバージョンより重心がうんと下がり、地鳴りのようなリズム隊の上でギターと歌がフロアを縦横無尽に撃ちまくる。その一方で、ミディアムバラードでは丸裸の詩情がそのまま心に飛び込んでくる。この幅がw.o.d.の強みである。パワートリオならではのw.o.d.流ダンスミュージック「踊る阿呆に見る阿呆」やドラマチックな「relay」、万感を込めて歌われた「あらしのよるに」に新境地を感じた。
音の壁にフィジカルに圧倒されるもよし、じっくり耳を傾けてアンサンブルを味わうもよし。心からいいバンドだなと思う。いつものようにMCは少なかったが、サイトウが照れながら訥々と発する言葉には、だからこそ伝わるものがあった。「ほんまに好きなんすよ、ライブ」「また自由に遊べたり、一緒に歌えたりしたらいいなと思って」は掛け値なしの実感だろう。
最後の曲の前に発表された通り、昨年予定していたものの中止を余儀なくされた対バンツアー『スペース・インベーダーズ5.5』が今秋に仕切り直し開催される。感染状況に一喜一憂する日々はまだ続きそうで、ライブを愛し自由を愛するw.o.d.にとっても、ライブミュージック全般にとっても試練が続くが、ステージの上も下も不安なくのびのびと音楽を楽しめる日を待ちながら、今は可能な範囲で楽しんでいきたい。

取材・文=高岡洋詞 撮影=小杉歩

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