【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#204
作曲家・小林亜星の言葉

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

『それを出したら幾らもうかるんだ』っ
て言われてもね。僕たちの歌はばくちだ
からね。そんなこと言われて分かるもん
じゃない。幾らもうかるって言われたら
、作れないですよ

より

今回の名言は、ノンフィクション作家・田崎健太による『伝説のクリエイターたちの軌跡』シリーズの小林亜星編より抜粋。小林が和製ジャズに心奪われた少年時代から始まり、全4回にわたって小林の音楽人生とその哲学が凝縮された名エッセイである。話の中で田崎が、小林の大ヒット作をあげて「『北の宿から』のような、老若男女、幅広い人間が口ずさむ流行歌が消えて、久しい」と話す。小林は、その理由の一つを「バブル崩壊もあるけど、ある時期からレコード会社で現場の人たちに決裁権がなくなった。銀行から来た人が権限を持っていて……」と語り、今回の名言へとつながる。小林曰く、「昔はね、5、6人で曲を作ろうと考えていて、4人が反対でも1人が当たるって主張したら、出せた。そういうのが当たる。今は3人OKで2人反対。まあ、それでもいいかっていうのを出すから当たらない」。「音楽理論的にもう新しい発見はない。行くところまで人類は試みちゃったのかもしれない」とも主張。驚くことに小林は、この記事の中で、“予定では88歳で死ぬことになっている”と予言めいたことを明かしていた。そして、「『未練はないんですか』と尋ねられると『嘘みたいだけれど、ないんだよ』ととぼけた口調で言った」というエピソードも奇跡めいている。
小林亜星(こばやしあせい)
1932年8月11日生まれ、東京都渋谷区出身。作曲家、作詞家、俳優、タレント、歌手。高校生の頃からバンドを組み、進駐軍のクラブなどで音楽活動を始める。1955年、慶応義塾大学経済学部卒業後、一般企業に就職。しかし2週間で辞め、作曲家を志して大学の先輩にあたる服部正に師事する。 出世作となった、1961年のCMソング・レナウン「ワンサカ娘」をはじめ、レナウン「イエイエ」、サントリーオールド「夜がくる」、エメロン「ふりむかないで」、明治製菓「チェルシー」、ブリヂストン「どこまでも行こう」、 日立「この木なんの木」など、 次々とヒットCMソングを世に送り出す。1969年には「イエイエ」「エメロンシャンプー」他のCM音楽作曲により、第6回放送批評家賞(ギャラクシー賞)を受賞している。1972年、「ピンポンパン体操」が200万枚の売上を超す大ヒットを記録し、日本レコード大賞童謡賞を受賞。1974年には、巨体を買われて、向田邦子作のTVドラマ『寺内貫太郎一家』に主演で俳優デビュー。お茶の間でも親しまれる存在となる。それ以来、俳優やタレントとしても活躍。1976年、都はるみの「北の宿から」で日本レコード大賞を受賞。 歌謡曲以外に、ドラマ(『向田スペシャル』『裸の大将』『三匹が斬る』など)やアニメ(『狼少年ケン』『ガッチャマン』『ひみつのアッコちゃん』『魔法使いサリー』『怪物くん』『あさりちゃん』など)の音楽も数多く作曲している。2002年、NHK連続テレビ小説『さくら』では、 主人公さくらの祖父役で俳優として円熟味を増した演技を披露した。2015年、日本レコード大賞功労賞を受賞。2019年には、アルバム『小んなうた 亞んなうた 〜小林亜星 楽曲全集〜』を発売。2021年5月30日に心不全により死去。享年88。
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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