逢坂良太&洲崎綾『劇場版シドニアの
騎士 あいつむぐほし』対談「自分の
力以上のものが出せた実感もある――

弐瓶勉の漫画を原作に2014年にTVシリーズ第1期、翌年には劇場版総集編とTVシリーズ第2期が放送・上映されたアニメ『シドニアの騎士』。6年の時を経て、完結編となる劇場アニメ映画『シドニアの騎士あいつむぐほし』が5月14日から公開される。太陽系が滅んだ1000年後の未来を舞台に“身長差15メートルの恋”を演じた谷風長道役・逢坂良太と白羽衣つむぎ役・洲崎綾に、「本番中に泣いた」というほどの思いを込めた今作の見どころを語ってもらった。
初めて観る人でもわかりやすく凝縮された劇場版
――今回の『劇場版シドニアの騎士あいつむぐほし』が決まったときは、どういった気持ちでしたか?
逢坂:最初に聞いたのって……。
洲崎:いつだっけ? っていう感じ。
逢坂:総監督の瀬下(寛之)さんとはTVシリーズが終わってからもちょこちょこ食事に行かせていただく機会がありまして、そこでいろいろ進捗状況とかの話を聞いていたんです。たしかそういうところで「決まりました」みたいな感じで言われた記憶がありますね。めちゃくちゃサラッというから、驚くにも驚けず(笑)。後々実感として湧いてきたんですけど、やっぱり嬉しかったですね。TVアニメの第2期が「もうちょっとで最後まで行けるのに!」というところで終わったので。気持ちとしてはワクワクと、久しぶりにやるのでちょっとドキドキもしました。
洲崎:原作も、第2期が終わってすぐくらいに完結したじゃないですか。だから、いつ(続きをアニメで)やるんだろうとずっと長い間思っていたんですけど、ついに完結することが決まって。単純にスクリーンでまたシドニアのみんなに会えるということがすごくうれしかったです。
撮影:加藤成美
――台本を読んだとき、どういった思いがありました?
洲崎:持ってきましたよ(私物の台本を取り出す)。
逢坂:分厚いなと思いました(笑)。
洲崎:そうだよね!(笑) プレスコ(声を先に収録し、それに合わせて作画する方式)なんですけど、普通のアフレコ(絵の口パクに合わせて声を当てる収録方式)だったら映像を見ながらセリフを追えばなんとなくわかるけど、小説を読み込むみたいにト書きを読まないと場面がわからないじゃん?
逢坂:そうなんですよ。だから、ほかのアニメの台本よりもト書きが細かく書かれていて。
洲崎:むちゃくちゃ多いよね、ト書き。
逢坂:セリフのところも「必死に」とか「決意のブレス」とか入っているんですけど、「こういう気持ちだよ」といったことが細かく書かれているので、そういう意味ではどういう気持なのか作りやすい台本ではありました。
洲崎:私はこの台本を読んだはじめの感想は「わかりやすい」でした。やっぱり、独特の世界観のなかでの単語やキーワードがいっぱい原作にも出てくるのですが、本当にコアに読み込んでいるファンじゃないと「え、何がどうなってそうなるんだ?」みたいなことがけっこうあると思うんです。やっぱり(今回の劇場版が)初見で初めて「シドニア」にふれる方もお客さんの中にもいらっしゃるでしょうし、TVアニメを全部追えていないという方にも、わかりやすく凝縮された内容になっているというか。とても入りやすいなと思いました。
逢坂:我々にとっても、これまでの経験が生かされた台本づくりになっているんだろうなということはすごく感じました。基本的にプレスコで録っているので、最初のほうは「ここはもうちょっとほしいです」とか「ここが追加されたのでお願いします」とかけっこう録り直しが多かったんですよ。そういうことが今回はあまりなくて。
洲崎:うん。あとは、単純に台本を読んで10年後の世界なんだっていうのがまずびっくりして。つむぎはほぼ変わらないんだけど、(長道は)なんか凛々しくなってたもんね?
逢坂:そう、顔がかっこよくなっていて(笑)。10年という月日を感じられるようにと考えるとあそこまで変えたほうがいいのかなと思いました。
洲崎:あとは、山野(栄子)の弟、稲汰郎が出てきたり。あれ、(内田)雄馬がやってたよね? 私ははじめ、ななちゃん(栄子役・森なな子)が弟もやるのかなとかいろいろ考えていて。あとは、融合個体・かなたのCVも任されたらどうしよう、ぜんぜん無理だよって(笑)。
逢坂:あはは(笑)。
洲崎:原作を読んでいて“かなた”が出てきたときに、ここが映像化されたらどんなふうになるだろうと思って。これ(演じるの)私かなあ? って“かなた”の声をちょっと出してみたときがあったんです。だから、(配役を見て)ちょっとホッとしました。「良かった、落合(CV:子安武人)がしゃべってる」って(笑)。
――台本を読んで、終わってしまうことに寂しい気持ちもあったりしましたか?
逢坂:寂しさより、どちらかというと嬉しさのほうが強かったです。「最後までやれた」っていうね。
洲崎:うん、そうかも。まだ公開前ということもあるんですけど、寂しいとか“ロス”みたいな気持ちにはまだぜんぜんなれなくて。逆にスタッフさんと同じようにお客さんの反応はどうなんだろうっていうドキドキした気持ちがまだずっと続いている感じです。
逢坂:そもそも収録の時期が1年半くらい前で、「完結したな」とそこでは思いましたけど、「公開もずっと先です」みたいな話も聞いていたんです。だから、皆さんに観てもらえるまではぜんぜん終わったという実感はありませんね。
洲崎:手を離れた感じがぜんぜんしないというか。
撮影:加藤成美
「マジで海苔夫が主人公なんじゃないかっていう(笑)」(洲崎)

――TVシリーズ第1期から今回の劇場版まで含めて、お気に入りのシーンは?
逢坂:(劇場版『シドニアの騎士あいつむぐほし』の)デートシーンじゃないの?(笑)
洲崎:あははは(笑)。TVシリーズの第2期はたぶんラブコメにちょっと振っているというか、長道のハーレムみたいになっていて(笑)コミカルなシーンも多かったんですね。そのなかで、つむぎがコタツから出たり入ったりする、めちゃくちゃかわいいシーンが気に入っています。あとは、TVシリーズ第1期の星白閑を演じていたときのシーンはけっこう鮮明に記憶に残っていて。一緒に「浮遊槽」で海を観たりとか、あとは「重力祭」に一緒に行ったりとか。星白機が大破して宇宙を何日も漂流するところは、生命維持もギリギリなんだけど、どことなくロマンティックな感じがしたりして、素敵なシーンだったなと思います。
逢坂:すごい素敵なシーンだったのに、公式が「星白水」とか作るから(2015年、講談社漫画賞の贈呈式で参加者に配られた非売品)ネタみたいになって(笑)。
洲崎:そうだ! ペットボトルの。でも、バズる要素がいっぱいあるよね。やっぱり弐瓶先生は天才なんだなって。
逢坂:原作の中では「星白水」とは言っていないけどね(笑)。
撮影:加藤成美
――逢坂さんは印象に残っているシーンは。
逢坂:近々で録ったのは劇場版だから、やっぱり劇場版の思い出が強いです。
洲崎:「光合成」じゃない?
逢坂:光合成……。光合成はラッキースケベではあるんですけど、基本的にボコボコにされますからね。やられてる方はたまったもんじゃない(笑)。今回の劇場版での、岐神(海苔夫)と長道のシーンは、それまでの岐神との関係性だったり、岐神もいろいろ背負い込んで落合に操られて……みたいなところもあって。すごくくるものがありましたね。
洲崎:マジで海苔夫が主人公なんじゃないかっていう(笑)。あのシーンは私もすごく感動しました。
逢坂:稲汰郎もそうなんですよ。稲汰郎は、よくスレなかったなと思いますもん。絶対に不良になってるよね、あれ。
洲崎:本当にそうだよね。いいやつだよ、稲汰郎。どのキャラもすごく活躍していて、見せ場があって、本当に皆さんで大事に大事に劇場版を作ったんだなという感じがすごくしました。
――長道とつむぎ以外のキャラクターも含めた関係性やSF設定、戦闘シーンなどいろいろな見どころがあります。おふたり的には、どういった要素がいちばんツボでしたか?
逢坂:男なんでね、やっぱり戦闘シーンかなという気はしますね。他のアニメと比べても、やっぱりスピード感がぜんぜん違うなって。なんだったら、たまにちょっと目が追いつかないときもあるくらい早くて。「今どういう展開になってる?」って。
洲崎:うん。たしかに。
逢坂:そこは台本を読んだだけではわからない部分でもあって。完成した映像を観たときはすごいなと思いましたし、演じられてよかったなと思います。ここまでクオリティ高く完成させてくれたのを観ちゃうと、逆に自分のほうが「ここはもうちょっと上手い演技ができたかな」と考えちゃう部分もあったりするんですが、そういうふうに思うときりがないので心にしまっておきますけど。逆に、僕らの芝居から伝えられるものがあったのかなって。(スタッフの)皆さんに少しでも気合いが入ってそういうシーンが完成したのかなと……思うようにしています(笑)。
洲崎:ツボっていうと難しいんですけど、やっぱり私はつむぎと長道のシーンがすごく好きだし、普段は戦闘シーンで宇宙を飛び回っているつむぎが、居住区の上空を長道につれられて一緒に飛んでいるときは普通の等身大の女の子に戻っちゃって「怖いっ!」ってなっているところがすごくかわいいなと思いました。
――つむぎを演じるとき、女の子感を出すときと融合個体の超越した感じを出すときで演じ方は違うんですか?
洲崎:基本的には、私のなかで小さいつむぎと大きいつむぎを演じるときのテンションはけっこう差があるのですが、大きいときはあんまり意識して変えようとかはしていなくて。逆に言うと、戦闘シーンではすごく強く見えるつむぎですが、ずっと女の子としての気持ちはずっとあるので。怖い気持ちはあるけど頑張って戦っているというイメージです、私は。
撮影:加藤成美
セルルック3DCGの進化のすさまじさを劇場で確認してほしい
――今回、コピーとして「身長差15メートルの恋」という言葉がありますけど、長道にとってつむぎはどのような存在だと感じられていますか?
逢坂:あんまり種族とか関係ない気がしますよね。そもそも、中性やクローンとか、けっこういろんな人たちがいるシドニアの中なので。大きかろうが小さかろうがたまたまっていう。
洲崎:つむぎは融合個体だし、長道も特殊な生い立ちだし。お互いに普通の人間とは少し違うというか。種族も違うし見た目もちょっと周りとは違うかもしれないけど、お互いそういうもの同士だから、共感できるところもあっただろうし。ちゃんと心で会話している感じがすごくするというか。
逢坂:つむぎ自体は少し気にしているから、(気持ちが)ローのところに入っちゃうんですけど。長道はぜんぜん気にせずに。
洲崎:気にしてないよね、何も(笑)。
逢坂:「なんでそんなに悲しんでるの?」くらいの(笑)。基本的にずっと心配はしているんですけど、そういったところで成長は感じますね。前だったら「どうしよう」とか「なんて声をかければいいんだ」みたいになっていたと思いますけど、今の長道だったらちゃんと「自分の想いはこうだよ」と伝えられるので、そういうところで大人になったなとも思いますし。
撮影:加藤成美
――最後に、完結編を楽しみにしているファンに向けて、この作品に込めた気持ちを。
逢坂:とりあえず一言で言えるのは、全力で芝居をしました。なんだったら、本番中に泣きましたし(笑)。
洲崎:泣くよね。
逢坂:それくらい気合を入れてやりました。一緒にいた後輩の子が「すごい良かったです」と言ってくれて。褒めてもらえると嬉しいというのもあるんですけど、やっぱり自分の力以上のものが出せた実感もあるので。その部分も含めて、映像と曲とが重なったときにどうなったのかとか、皆さんの目で確かめていただいて。きっと満足してもらえる。なんだったら何回も観ていい作品になっていると思っています。ぜひ楽しみにしていただければと思います。
洲崎:試写会のスクリーンで観させていただいたときに、重低音と振動がすごくて。本当に自分がその世界にいるみたいな気持ちになるくらい、没入感がすごくて。本当にポリゴンさんのCGもそうですけど、たぶんTVシリーズの第1期、第2期と観て6年空いて今回の劇場版で。たぶん初期の頃しか知らない人が観たらびっくりしちゃうんじゃないかっていうくらいCGも進化していて。本当にクオリティがすさまじいです。素晴らしい映画になっていると想うので、見どころも語り尽くせないくらい詰まっていますので、ぜひ劇場でご覧ください。
取材・文:藤村秀二 撮影:加藤成美

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