平原綾香、主題歌にこめた思いとは 
レビュー仕立てのアイスショー『LUX
E』インタビュー

フィギュアスケートと歌舞伎のコラボレーションを実現させた『氷艶hyoen2017 -破沙羅-』、『源氏物語』の世界を氷上に描き出した『氷艶hyoen2019 -月光かりの如く-』と、新感覚のアイスショーを作り出してきたチームが再集結しておくる『LUXE』。アイスダンスの現役選手としても活躍する髙橋大輔が光の国の王子に扮し、世界を巡るというレビュー仕立ての作品だ。2019年公演に引き続き登場する平原綾香に、作品への思い、自作主題歌への思いを語ってもらった。
ーー2019年公演に参加されていかがでしたか。
一言では表せないようないろいろな経験ができました。さまざまなジャンルの人たちが集まって、歌手も俳優も滑り、スケーターも歌って演技もするこんなショー、世界中探してもどこにもないんじゃないかなというくらい画期的な作品に出させてもらって本当に楽しかったです。
ーーご自身も滑ってみていかがでしたか。
氷の上ってすごく滑るんだなって思いました。スケーターにとっては当たり前のことかもしれませんが、改めて、皆さん、氷の上で本当にすごいことをされているんだなと。私も滑りながら歌いましたが、滑らない床がどれだけ歌いやすいか実感しました。スケートで滑りながら歌う練習をしていた最中に、自分のコンサートがあったんですが、歌いやすくてしかたなくて……。滑らない床ってこんなに歌いやすいんだっていうことに感謝できました。すーっと滑っていても、ちょっと段差があったりすると、声が震えないようにしなきゃいけない、そんなこともありましたし、踊りながら歌うことは経験していますが、それとはまた違う繊細な身体の動きを必要としていて。いい経験ができました。
スケートの練習風景より 平原綾香
ーーそれまでに滑った経験は?
私は、小さいときに遊びで一回か二回は滑った程度でしたが、フィギュアスケートを観るのは大好きで。実は、フィギュアスケートを滑りながら歌うというのがデビュー当時からの夢だったんですが、前回、それが叶ったんです。まさか今世で叶うとは思ってもいなくて。フィギュアスケートってもう本当に素敵なので。ああやって滑りながら歌ったら最高のエンターテインメントだな、あんな風に滑れたらいいななんて思いながらずっと観ていたんです。デビュー当時、インタビューでよく話していた夢でしたが、そのインタビューを聞いてということではなく、前回演出された宮本亞門さんから声をかけていただいて。言葉にして言うと叶うんだなって思いました。デビューしてから、2007年の『日米対抗フィギュアスケート』でテーマソングの「To be free」を担当して、その曲で滑られた浅田真央さんのエキシビションで歌ったり、国歌斉唱をしたりということはありましたが、自分が氷の上でスケート靴をはいて滑って歌うという経験はなかったので、昔から観ていたあのスケーターたちが実際にいるというのが不思議で。あまりに近すぎるとだんだんすごさがわからなくなってくるというか。
だって、大ちゃん(髙橋大輔)と一緒に滑るなんて本当にすごいことなのに、そばにいるとだんだんそれが普通になってきて、ふと我に返ると、すごいことをさせてもらっているんだなって。今回のリハーサル中も、大ちゃんと(村元)哉中ちゃんの練習を見ていたら、ファンの方はこれを見たらもう倒れちゃうんじゃないかっていうくらい本当に素晴らしい滑りで、ふと我に返ってああ幸せだなと感じる、そんな現場です。
ーー今回はレビュー仕立ての作品となっています。
私は前回よりは滑らない、歌手としての登場がメインと言われていたのですが、どうやらけっこう滑るみたいです(笑)。だから、歌もスケートも練習しなくてはいけないですね。公演はレビュー形式なので、いろいろな世界を楽しめます。今は旅行をするのは難しいですが、『LUXE』という作品を通して旅してくださいというのがテーマのひとつでもあって。でも、自分自身、何か本当に旅ができちゃうなって感じる世界観、衣裳、そしてみんなの滑りがつまった、目が離せない作品になると思います。

平原綾香

ーー役どころをお聞かせください。
みんなそれぞれ何役か演じたりしますが、私は最初のシーンで“シバの女王”を演じます。中東みたいな雰囲気のものは大好きですし、衣裳も素敵なので、楽しみたいなと。パリのシーンでは“ダイヤモンドの歌手”に扮して、キラキラした衣裳で主題歌「LUXE ‐リュクス‐」と、「愛の讃歌」や「黒い鷲」といった有名なシャンソンも歌います。「愛の讃歌」は本当にいい曲だなと改めて感じていて、ずっと聴いていたら夜中涙が出てきてしまったくらい。私自身いい曲に出会えていますね。いろいろな国を旅するレビューですが、音楽の旅行もできる感じがしていますし。二幕では“パッショネイトの歌手”として、サンバの衣装を着て、「ラ・バンバ」をみんなで歌います。この衣裳が、まさにリオのカーニバルで使われているような緑の豪華絢爛なものなんです。柚希礼音さんは羽根を背負ってのダルマの衣装で、ハイレグもすごくて。他にもいろいろなシーンがありますが、私一人だけでも本当にいろいろな世界を旅できる感じです。
ーー今回、宝塚歌劇団の演出家である原田諒さんが初参加されています。
歌詞がけっこう早口な部分が多いですが、それは宝塚仕様なんだとうかがいました。宝塚のレビューって少し早口が多いらしくて。宝塚独特の譜割りというか、世界観というか、テンポがいいし、歌詞もいっぱい詰め込んで軽快に歌うというところがあるみたいです。宝塚にはお友達が何人かいるので観に行ったこともありますが、やっぱり素晴らしい世界ですよね。宝塚ならではのきらびやかさや、宝塚ならではのやりきる感、そして、いろいろな国の音楽をやっていてもちゃんと宝塚印がついているようなところがあって、それはすごく勉強になっています。もっと大きくもっと華やかにというところを、宝塚フレーバーから教わっている感じがします。
平原綾香
ーー平原さんの作った主題歌を、髙橋大輔さんがインタビュー時にかっこいいとおっしゃっていました。
大ちゃんにほめられて、うれしかったです。頑張って作ってよかったなって。今回、主題歌も制作できるということで、2019年公演のときに学んだ知識を、スケーターの人たち、出演者の人たちにどうやったら表現していただけるだろう​と考えに考えた結果できあがった歌なので、ほめられて安心しました。もちろん、“旅”もひとつのコンセプトではありますが、私の中では、コロナ禍で作った歌なので、みんないっぱい我慢してきて、いっぱいつらい思いもして、どこにも光が見えないような気持ちになってしまったこともあると思うんです、私もそうだったので。でも、そんなときに、この曲を聴いたり、今回の作品の世界にふれたりしたときに、何か立ち上がるきっかけになるような曲になったらいいなと思っていて。キーワードは「立ち上がる」なんです。苦しくてもそれでも生きていく、苦しくても立ち上がる、病から立ち上がる、失恋から立ち上がる――。やっぱり、立ち上がることはとてもしんどくて、大変なことが多いと思うんですが、苦しくても立ち上がれるということを伝えたい、どんなに傷ついても立ち上がれるということをみんなで証明していこうよという気持ちで書きました。歌うときはどうやら空中ブランコに乗っているらしいので、やはりただでは歌えないなっていう感じですが(笑)。
今回、劇中の主題歌のアレンジや打ち込みも担当させてもらっています。自分が思う『LUXE』のイメージを、誰かに頼むのではなく、自分で作ることができたのは、私の音楽人生において大きな第一歩になったような気がします。実はレコーディングも自分で行ったんです。コロナ禍だから何でも自分でやらなくてはいけなかった部分が、自分を鍛えてくれたというか。大変でしたが、いい経験になったかなと思っています。
ーー他ジャンルの方とのコラボレーションで得られるものとは?
その道のプロが集まっているので、得られるものが本当に多いです。スケーターの方が実際にスケートを教えてくださるし、歌手たちはスケーターの人たちに歌を教えて、俳優の方はスケーターの人たちに演技を教えて……。みんなそれぞれ自分の技を伝え合う、そんな経験は本当になかなかできませんし、この現場だけだなと思います。こういう大きなカンパニーだと、グループみたいなものができてしまう可能性もありますが、それが一切ないのがすごいです。みんな仲良しで、それがすごく心地いい。でも、自分の身は自分で守らなきゃいけない現場でもあります。氷の上に立ったら、誰かが助けてくれるわけではないので、そこはミュージカルやコンサートとはちょっと違うところです。このタイミングで出てくださいねというのがないので、自分でタイミングを見て出なきゃいけない、そこはしっかり気を張っていないとというのがあります。
平原綾香
ーー平原さんの歌で髙橋さんが滑るシーンもあるとか。
「黒い鷲」で“かなだい”のダンスがありますし、二幕、主題歌で滑るシーンがあって、楽しみです。それと、最後の曲で、光の王子とシバの女王のデュエットがあって、それもすごく楽しみです。玉麻尚一先生が作られた、とても感動する曲なんです。
ーー歌う上で、髙橋さんのスケートに刺激を受けたりということは?
大いにありますね​。私は歌うとき、自分の身体は動かしていなくても、心の中ではいっぱい手を広げて歌っているんです。そこを、まさに目の前で、自分の歌に合わせて手を広げて滑っている姿を見せてもらえるので、とても歌いやすい。歌を支えてくれて、刺激してくれます。私もクラシック・バレエをずっとやっていたので、クラシック・バレエの表現のイメージもあるのかもしれませんが、フィギュアスケートはさらにスピード感もあるし、氷の世界が広がっているので、非常に刺激を受けて歌えていると思います。
ーー見どころをお願いします。
最後多分お客様は泣いてしまうんじゃないかっていうくらい、音楽だけでも感動する作品だと思います。ラストで大ちゃんも私も歌いますが、光の王子が本当に光になってみんなを照らすような感じで終わるんです。本当に髙橋大輔くんってスーパースターだな……という感じで、感動して終わる。だから、歌も聞き逃せない、目も演技やプロジェクションマッピングを見逃せない、一回観ただけでは気が済まない作品なのではないかな。前々回、前回もそうでしたが、今回の作品は息もつかせぬ演出というか、さらに目まぐるしいと思います。コロナ禍でみんながいろいろ我慢してきたこと、したくてもできなかったことを、目の前で観られる、体験できるという……本当に夢の世界です。
『LUXE』というタイトルに戻っていくと、自分自身、自分が本当に大切にしているものは何だろうとか考えるようになりました。この作品でも思うのは、やっぱり、何かあったかいもの、今ふれあえないからこそ伝えたいものがあるなと。私はいつも音楽で、抱きしめ合えないけど音楽のハグを届けたいと思って頑張っていますが、この『LUXE』という作品も、皆さん一人ひとりを抱きしめるようなあったかい作品だと思うので、ぜひ抱きしめられに来てほしいです。
平原綾香
取材・文=藤本真由(舞台評論家)

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