『ロング・グッドバイ』(発売元:20世紀スタジオ)

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『ロング・グッドバイ』その4:杉作J
太郎のDVDレンタル屋の棚に残したい
100本の映画…連載5

杉作J太郎の

DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
2本目その4・『ロング・グッドバイ』 物語の展開がすばらしいわけではない。どちらかといえば退屈である。最後まで興味を持ち続けることが難しい人もいるかもしれない。驚くようなこともあると言えばあるし、ないと言えば、ない。痛快ではない。爽快でもない。ハラハラすることもほとんどないし、手に汗を握るわけでもない。なんとなくぼんやりと事件が起きて、なんとなく解決していく。そしてその合間合間に探偵、フィリップ・マーロウのセリフ、「ま、どうでもいいけど」が呟かれる。森川公也の声で。
 私は魅了されてしまった。
 ビデオデッキで興味のないものまで録画していたことは前述したが、それがよかった。一度しか見なかったら私はこの映画に気付いただろうか、とぼんやり思うことがある。
 なんか、気になって。録画してあったからまた見て。また見て。その頃には気が付いていた。こんな大傑作はないのではないか、と。この映画はアプローチが違うのだ。面白い物語を描こうとしているのではない。観客を驚かせようとしているのでもない。
 とにかく言える。
 こんな面白い映画はない!
 たしかスターリンのコンサートの日だったと思う。
 後楽園ホールだった。漫画雑誌ガロの平口広美先輩に映画「ロング・グッドバイ」が好きだという話をした。「仁義の墓場」の話をしていてそうなった。平口先輩は言った。
「うん、ロバート・アルトマンはいいね!」
 本当にいいね、と笑顔で頷きながら言った。忘れられない。その日、コンサートの途中で蛭子能収先輩が居眠りをしていて終わった後「眠れるかどうか実験してみた」と言ったこともさすが芸術映画を好きな蛭子先輩である。そのあと入った水道橋の居酒屋で隣りの席になぎら健壱さんがいらして合流した。そこでもまた映画の話をした。
 いろんな映画がある。
 いろんな意味で面白かった映画がある。
 なにがどう面白かったかを最も説明しにくいのが映画「ロング・グッドバイ」である。だから毎回読み切りのつもりでスタートした連載なのに今回で映画「ロング・グッドバイ」四回目だ。心ならずもなので今回は終わらせたい。
 映画「ロング・グッドバイ」は言葉で説明できない面白さなのだ。
 文章で説明できない面白さなのだ。
 そして、その面白さのジャンルも笑えるわけでも怖いわけでも興奮するわけでもない。
 おそらく、慌ただしい毎日をすごしている人がもしもいたら、この映画は面白くないだろう。SNSの、いいね、とか、リツイートとかの感覚では絶対に出会えない。というか、目に止まらないだろう。
 なにがなんだかさっぱりわかっていないのに、わかったように思わなければならない速度で流れていく、その速度では見えないものや感じ取れない感覚がたくさんあるのだ。
 だからそうしたいまの世の中に、ついていけないと感じて落ち込むことはない。
 みんなすごいなー、なんて感嘆する必要はない。
 ゆっくりと、ぼんやりと、手探りで、自分の速度で自分の世界を歩いていればいい。歩かなくても寝てればいい。
 この映画「ロング・グッドバイ」はそんな映画だ。
 世の中、いろんなやつがいる。
 いちいち驚くこともない。
 ま、どうでもいいけど。
『ロング・グッドバイ』(1973年・ユナイト
出演/エリオット・グールド、ニーナ・ヴァン・バラント、マーク・ライデル、ヘンリー・ギブソン、デビッド・キャラダイン、アーノルド・シュワルツェネッガー、スターリング・ヘイドン
脚本/リイ・ブラケット
撮影/ヴィリモス・スィグモント
音楽/ジョン・ウィリアムス
監督/ロバート・アルトマン
(この項、つづく) 
<隔週金曜日掲載>
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【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:Jさん&豪さんの世相を斬る!(残侠風雲編)@ロフトプラスワン(ロフトブックス)
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