AKB握手会事件、知識人の主張がまっ
たくの的外れ！

　AKB48の握手会で、メンバーが刃物で切りつけられる事件が発生し、アイドル業界に激震が走っています。この事件に対し、アイドル好き、というかAKB好きの知識人の皆さんは、「この事件を握手会に原因があるとする論調は間違っている。犯人はアイドルオタクではなく、『襲う相手は誰でも良かった』と言っている。握手会でなくとも同様のことが起こりうる可能性はいくらでもある」的な主張をしています。
　はい、確かにその通りかもしれません。たまたま事件が起こったのがAKBの握手会であっただけ。今までずーっと握手会をやってきてこんな問題は起きなかったし、犯人はアイドルオタクじゃないから、アイドルオタクに問題があるわけでもないし、云々。そうでしょうとも、そうでしょうとも。おっしゃることは分かります。でも、悲しいかな、そのような主張で握手会に否定的な意見が湧き上がるのを止めるのは残念ながら不可能かと存じます。

　宇野常寛さんや小林よしのりさん、中森明夫さんらが、今回の事件の問題は握手会にあるわけではない、と声高に主張しています。アイドルオタクにはスムーズに受け入れられる言説でありましょう。でも、アイドルに興味がないその他大勢の人にとってみると、論点はそこにはないんじゃないでしょうか。
　なぜ握手会が叩かれるのか。それは、セキュリティー云々の問題じゃなく、“気持ち悪い”から。これに尽きると思います。興味がない人にとってみれば、CDを何十枚も何百枚も買って、大量のキモいオッサン達が少女と握手をする、少女が握手をさせられる、という催しは気持ち悪いものとしか思えないでしょう。
　たまたま、こういう事件が起きたので、握手会にスポットライトが当たり、批判が増えています。しかし、その批判は、実は、セキュリティーとかに対して向かっているのではなく、こんな気持ち悪いことが行われていていいのか、というものではないでしょうか。
　一部の大人の金儲けで、少女が笑顔を振りまきながら握手をして、バカな大人達がどんどんお金を使いまくる。そんなビジネスがあまりにも、外から見ると不健全過ぎるから、そこに批判が集まっているのだと思います。

　だから、アイドルオタクの犯行じゃない、とか握手会じゃなくても事件は起きる、とか握手会は基本平和なイベントだ、とかっていうのを、知識人の方々が、いかにその知識をもって、主張しようとも大多数の人には一切響きません。もしそんなに握手会とアイドル商法を弁護したいんだったら、握手会がいかに気持ち悪くないか、を説いた方がいいんじゃないでしょうか。まあ、そんなことは不可能でしょうけど。
　まあ、握手会が気持ち悪いのはあまりにも自明ですが、そんな中、握手会をやらないアイドルグループ・ももいろクローバーZのファン、通称モノノフの一部が、「ももクロは握手会なんてやらずともやっていってる」と誇ったようにしてるのも気持ち悪いですけどね。
　ももクロが最初の3年くらい、いっぱい握手をして頑張ってこなかったら、流行りモノしか情報を受け付けないようなモノノフまで、決してももクロという存在は届かなかったでしょうにね。アイドルがPerfumeやAKB、ももクロくらいまでブレイクするってのは本当に奇跡的なことでしょうけど、握手会を全てなくしちゃうってのは、そんな奇跡をさらに限りなく不可能なことにしてしまうことになるでしょう。「ももクロしか」って言ってる人達は、まあそれでいいんでしょうけどね！

（文・海野ツネヒロ）

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