「5人を助けるために1人を殺しても良
いか」~和田琢磨、荒牧義彦ら出演『
舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtu
e and Vice 2』ゲネプロレポート

人々の精神が数値化される近未来で、正義を問われる刑事たちのドラマを描くアニメ作品「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズ。公安局刑事課三係を舞台にしたオリジナルキャラクターたちによるスピンオフストーリーで、2019年4月に舞台版第一弾が上演された。本作『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2』ではその前日譚でもある嘉納火炉(和田琢磨)の過去を描くという。
嘉納火炉役 和田琢磨
舞台第一弾でも役者たちが繰り広げる芝居、アクション、映像技術、そして重厚感あるストーリーなどで観客の心をぐっとわしづかみにしていた。今回は嘉納の過去が描かれることでここから第一弾につながるのかと、すとんと腑に落ちた人もいるのではないか。
舞台は嘉納が執行官という立場から監視官に昇進したところから始まる。御子柴夕(中尾暢樹)、逆咲一花(青野楓)、周麟太郎(弓削智久)の3人の執行官、そして相談役として斎記冬真(藤本隆宏)を迎えた三係は、とある事件の調査に向かう。
左:周麟太郎役 弓削智久、右:逆咲一花役 青野楓
御子柴夕役 中尾暢樹
今回も通信機器が活躍する。この演出は見事。
前作を観ている人には『PPVV2』の制作発表以来、気になったポイントがいくつかあったと思う。ストーリーや登場人物の観点から注目度が高かったのはおそらくこの3つだろう。
・嘉納火炉の過去
・神宮寺司(荒牧慶彦)というキャラクター
・光宗悟(多和田任益)というキャラクター
前作で九泉晴人(鈴木拡樹)とともに三係の監視官をしていた嘉納。前作のエンディングにも関係する話になるのだろうというのは誰もが予想するところ。
そして今や2.5次元舞台をけん引するほどの実力派俳優・荒牧慶彦。彼が演じる神宮寺司は嘉納たち三係が調査することになった特別自治区、通称《NND》の治安維持組織の構成員だ。神宮寺の武器は刀。見事な刀さばきで、三係と対立を深める。物語が進むにつれて次第に浮き上がってくる《NND》の闇……そして神宮寺は積年の想いを絞り出すかのように話し始める。
神宮寺司役 荒牧慶彦
また、今回、光宗悟(みつむねさとる)役で出演している多和田の存在も気になるところだろう。前作では蘭具雪也(らんぐゆきや)役として出演している。光宗は《NND》側の人物として登場する。彼の人物像、そして前作との関わりが判明した時、さらに大きな闇が露見する。
光宗悟役 多和田任益
物語のキーワードは、公安局宛に届いた死体入りのスーツケースに添えられた「トロリー・プロブレムを見過ごすな」というメッセージ。「5人を助けるために1人を殺しても良いか」という論理学上の問題である。この世界の闇、その深淵にあるもの、闇を払おうともがく人、自分の正義を貫くために必死になる人、そして暗い世界で小さな光を見る人……。この世界で嘉納は何を選択するのだろうか。
『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2』ゲネプロより
前作で、大城奏人(おおしろかなと)役で出演していた池田純矢が今作では脚本と演出補助を担当している。特に前作を観ている人は必見の舞台になっており、エンディングでじんわり泣かせてくる。まるで1本の映画を見ているようだった。「PSYCHO-PASS サイコパス」の専門用語は難しいようにも思われるが、もちろん作中に説明もあるので予備知識がなくても楽しめる。
本作の後、嘉納がどうなってしまうのか。その答えは舞台第一弾にある。
『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2』ゲネプロより
『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2』ゲネプロより
取材・文・写真=松本裕美

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