おすすめ書籍:「鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋」鴻上尚史(朝日新聞出版)

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鴻上尚史の人生相談がキモい:ロマン
優光連載156

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第156回 鴻上尚史の人生相談がキモい『AERA dot.』で連載している『鴻上尚史のほがらか人生相談』の中の相談が原因で、鴻上尚史さんのことが一部で話題になっているようです。何を言ってしまって、そんなに不快がる人を多く生んでしまったのか気になって読んでみたら、確かに怒られそうだったり、「キモっ!」っと思ってしまうようなところが含まれる感じのものでした。
 相談者はこの春から推薦入学で大学生になるのが決まっている中学高校と男子校に通ってきた童貞の高校生。六年間ほとんど同年輩の女性と接さずに来たため女性に不慣れ。大学生になったら彼女が欲しいし、モテたい。女慣れしてないのがバレてダサい人として扱われることを恐れている。どうしたらスマートな大学生に見られるようになるか。こんな相談です。昔の北方謙三先生に相談していたならば「ソープに行け」と言われてるだろうし、わりと本当にそれでいいのかもと思わされるような相談ですね。
 まあ、なんというか質問自体がよく読むとちょっと変です。モテて彼女をつくるために女慣れしているカッコいい大学生に見られたいというだけの話に、わざわざ童貞であることをアピールしてくることは必要ないのです。不必要に性的なことを入れてくる彼の様子に「彼はセックスしたくてたまらないだけでは?」と思う人も少なくないでしょう。
 そもそも、モテたいのか、彼女が欲しいのかはっきりしてほしいです。モテるというのは、自分から意図的にアプローチしないでも複数の人に好意を抱かれるような状態のことだと思うんですよ。好きな人と付き合うのに、別にモテという状態はいらないのです。彼女が欲しいと言いつつ、不特定多数に言い寄られることを夢見てる時点で、本当は誰でもいいからセックスしたいだけでなのではという疑いがさらに強まります。
 相談者の言葉を引用しますが「どうしたら、スマートな大学生になれますか。フリでもいいので、女の子に慣れている雰囲気を身につけたいです。」ってどういうことよ? って感じですよね。まず、女の子に慣れている雰囲気ってなんだよと思います。異性と接することに慣れてない人というのはわかりやすいですけど、慣れてる雰囲気っていうのは何を意味するのでしょう。色んな女性と遊んでそう、セックス経験が豊富そうな雰囲気ってことでしょうか? その上、そういう男になるという努力もせずに、そんな風に見られたいとはちょっと図々しいのではないでしょうか。
 だいたい、女慣れしてないとダサいやつだと思われてモテなくなるのではという心配も意味がわからないです。女慣れしてなくてもダサくない人はいるし、ダサくない人が女慣れしてなくても悪い風に思われないわけですよ。純情だとか思われて、かえってプラス評価になるかもしれません。それをこのように考えてしまうのは、彼の頭の中には、女慣れしてない=セックス経験に乏しい=ダサい=女の子に相手にされない、という童貞コンプレックスがあるようにも思えます。
 もしかしたら、彼は別にそこまでセックスに執着はなく、単に「童貞」とか「モテたい」みたいな言葉を入れたら面白くなるかなと思って書いただけかもしれません。しかし、それはそれで痛々しい感じがするわけで、困った子感は拭えません。
 鴻上さんも彼の考え方のおかしさには気付いてはいたのでしょう。彼の相談自体には、スマートな大学生になりたければ、フリとかしても仕方がないし、何かに一生懸命打ち込んでみたら、人から認められるようになって、本当の意味でのスマートな大学生になれるのではというような意味の返答をしているわけで、これはその通りのような気がします。
 ただ、女性に慣れるためにはどうすればいいかというアドバイスもしてるわけですが、これが何か変なんですよね。女の子を130キロ、80キロとバッティングセンターの球速に例えて格付けするのは失礼な話です。あと女の子を苺に例えるのも、おじさんのキモさ全開な感じがして辛いです。
 彼は恋愛以前の段階で、女性と普通にコミュニケーションがとれるようになることが必要なのだとは思います。男子校に六年間も通って生身の同年輩の女性と接する機会がなかったような人は、過剰に女性を性的に見たり、変に美化したり、幻想が育ちすぎてる場合があります。相談内容から察するに、彼もそんな感じではないでしょうか。そんな感じで付き合うことを目的に女性に接していっても、女性にひかれるだけです。そこを脱するためには、付き合うとかそんなもんは捨てて、色んな女の子と話していき、同じ人間として仲良く交流できるようになるのが先です。別に一対一とかじゃなくてもよくて、男女交えてみんなで話すとかでもいいわけだし。練習とかじゃなくて、ズレを修正していくことが必要なのです。
 鴻上さんも似たようなことを後半は言っているのですが、前半部の同じクラスの女性に話かけるならという下りがおかしいせいで台無しなんですよね。球速にしたら130キロくらいのクラスの可愛い女子に話かけるのはハードル高いから、80キロくらいの 女子校に六年間通って男性慣れしてない「男性と会話することに怯えている女性」で練習するのがいい、でも130キロくらいの子は結局クラスの3割打者みたいな男たちがかっ飛ばしていくから基本的にクラスではやめとけという話なんですけど、序列をつけてるのもヒドいけど、そもそも前提となるところが何かおかしくないですか? 良い悪いは置いといて(というか悪いのですが)可愛い子を女慣れの練習台にするのは話かけること自体がハードル高いから、話かけやすいレベルが低い子で練習しろというのは論理的には理解できます。でも、可愛い子はクラスのモテるやつがどうせもってくからクラスで練習はやめとけって言い出すわけですよ。じゃあ、可愛い子は練習台じゃなくて本命で、そこで本命見つけても他のやつに持ってかれるからムダだからやめろって話になりますよね。そうなると「ここでの女慣れって、口説きが上手くなること? 下に見た女口説いて練習しろってこと?」って考えてしまいますね。
 だいたい、相談者自体もそうなんですが、鴻上さんの「女慣れ」の定義、「単に普通に女性と接することに慣れてる」ことなのか「女性と付き合い慣れてる」ことなのか曖昧なんですよ。ちゃんと「女慣れ」という言葉を定義しないで雑に話進めていたら、とんでもないことを無意識に言っちゃってたって感じなんすかね。
 そもそも、「男性と会話することに怯えている女性」を女性に慣れるための練習台にしようというのが色んな意味で間違ってますよね。まず、相手に失礼です。バカにしています。それは大前提ですよね。「弱そう女だから簡単にコントロールできる」と思ってるようにとられても仕方ありません。ヤバいです。
 相手の都合を考えてないのも失礼です。なんで、お前が女を口説くのが上手くなるのに勝手に協力させられなければならないのかって話ですよ。男性と話すことに怯えてるような女性にとって、頭の中は女にモテたいという気持ちでいっぱいの女性とまともにコミュニケーションをとれないような奴の相手をさせられるのは苦痛でしかありません。 異性と接するのに不馴れな人が接しやすい異性は、コミュニケーション能力が高くて優しい男女分け隔たりなく接することができるような人物であって、異性に接するのに不馴れな異性ではないのです。
 それに「男性と会話することに怯えている女性」と話すなんて、めちゃくちゃハードル高くないですか? 普通に女性と喋ることに慣れてる人でも難しいでしょう。話しかけることはできても、女性と普通に接することができないような奴となんか絶対に会話弾まなくて、男の方も辛いだけじゃないでしょうか。しかも、こういう風に舐められがちな人はそういう相手の舐めた態度に敏感です。それ相応の態度をとられても仕方がありません。「怯えてる=弱い=断れない」みたいな発想が鴻上さんの中にあるのかもしれませんが、男性と話すことに怯えてるということが、弱いとか、断れないということに直結しているわけではありません。逆に相手への怯えから強い拒絶を示してくる場合も多いのではないでしょうか。
 一番変だと感じるのは「男性と会話することに怯えている女性」と可愛い子が対比させられているというところです。「男性と会話することに怯えている女性」と対比するなら、「男性と会話することに慣れている女性」だし、可愛い子に対比するなら可愛くない子でしょう。「男性と会話することに怯えている可愛い女性」なんて普通にいるのではないでしょうか? 大学のクラスに実際そんな子いたし、現実にそういうタイプにあった人も多いでしょう。なんか変ですよね。もともとは「男性と会話することに怯えている可愛くない女性」と書こうとして、可愛くないはさすがにひどいから削った結果、整合性がなくなったのでしょうか? 自分は鴻上さんじゃないから、本当のところはわかりませんが、色々と文章としておかしいということはわかります。なんか雑なんですよね。雑さゆえに、無意識に本人も無自覚な女性への偏見が漏れてしまった感じなのかなとも思います。あと女性を苺に例えるのは変に性的な匂いがしてきてキモいです。
 最後に、男子校の寮に六年間入っていて、接するどころか生身の同年代の女性をほとんど見たことすらなかった自分から相談者に言えるのは、そういう感じだといつまでたっても彼女できないから、女性を恋愛対象としてのみとらえるのではなくて、まず相手を人間として尊重して接することが大切なのだと思います。そうすれば相手も君のことを尊重してくれるでしょう。そうなって初めてスタートなのだと思います。
(隔週金曜連載)
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