イラスト:(C)Olga Ivanova/123RF

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 隣国中国の政権「中国共産党」。世界の約5分の1、14億人を抱える経済大国中国の独裁政権だ。この政権の身の振り一つで、日本の暮らしにも多大なる影響を及ぼす。

 にも関わらず、その実態はあまり理解されていない。メディアが報じるのは官僚の発言や外交問題など、ややこしい政治の話ばかりで頭に入ってこない。「胡散臭い」「お金や権力にまみれている」など、ぼんやりしたネガティブイメージだけを抱いている人も多いだろう。
 そこで本稿では、「中国一般庶民にとって中国共産党(員)とはどんなものなのか?」という視点から、在日中国人を取材した。
 外交上の相手となる中国共産党が、どんな人たちによって担われているのか分かれば、ニュースの見方も変わるかもしれない。
党員はエリートじゃない!? そもそも、中国人=共産党員と思っている人も多いだろうが、そうではない。党員数は約9000万人。とんでもない数だが人口の約7%だ。換言すると、中国人は(ほとんどが)共産党支持者だが、党員は一部エリートということだ。
 また、共産党以外にも、1949年の中国建国以前に結党された、民主党派と呼ばれる合法的な政党が8つある。
 しかし中国共産党と民主党派は「与党と野党」の関係ではなく、「支配政党と連立与党」のようなもの。民主党派の8政党は共産党の補佐的な役割しか担えず、国家を指導する力も裁量もない。各党派の党員数は数万~20万人程度だから、その規模にも大きな差がある。加えて非合法の党派もあるにはあるが、建国以来、中国は新たな政党の結党を禁止・弾圧している。ゆえに実質的に「一党独裁」ということだ。
 では、共産党員になるにはどうすればいいのか?
 まずは学校教育の面から見よう。思想教育は小学校入学時から始まる。教育内容は割愛するが、簡単に言えば「祖国を愛し、社会主義を愛し、共産党を愛する」という愛国・愛共産主義教育だ。興味深いのはこれらが子供たちに刷り込まれていく過程だ。
「小学3年生から、優秀な生徒は(赤いネッカチーフ)を巻けるようになります。勉強ができて生活態度が良かったり、みんなのリーダー的な存在だったりする子が先生に選ばれるんです。『選ばれた子しか巻けないよ。いずれ共産党員になれる子だけが紅領巾を着けれるのよ』と、先生はよく言ってました。最終的には生徒全員が巻けるんですが、子供の頃は先生に褒められたいし、紅領巾を早くから巻ける子はカッコいい憧れの存在でした」
 と、都内の中華料理店店主(40代男性)。
 赤いネッカチーフを巻くことは、共産党の青少年組織である「中国少年先鋒隊」に入ることを意味する。小学校単位で組織される共産党のボーイスカウトのようなものと理解されたい。
 14歳以上になると「中国共産主義青年団」(共青団)へとステップアップする。共青団は、28歳までの青年で組織される実質的な中国共産党の下部組織だ。最初に入団できるのは、クラスの学級代表や風紀委員になるような子供たち。先生の指示(=愛国・愛共産主義の教え)を従順に遂行できる、「聞き分けのいい子供」から入団が許されるのだ。
 そして、共青団に入ると赤いネッカチーフを外す代わりに、国旗をモチーフにしたピンバッチを身につけることになる。
「教師の言うことを聞かないと共青団には入れない。真面目なやつから順にピンバッチ組になっていく。みんながリーダー的存在を目指したいって思わされるのもあるけど、中学や高校に入ってまで紅領巾をしてると『ダサい』って感じが強い。紅領巾を早く卒業したい雰囲気もあって、卒業する頃にはみんな共青団に入ってる」(留学生A)
 このようにファッション的観点から共産主義教育を受け入れていった、という話はいくつも聞いた。ナチスドイツが軍服のデザインをファッショナブルにして若者を惹きつけたという逸話に通ずるところがある。
結果、公教育の現場で学生にはリーダー格=党員というイメージが植え付けられていく。同時に、共産党サイドは次世代のリーダーとなる人材を発掘できるというわけだ。
 共青団から党員になるにはもう一つハードルがある。最短で党員になるには、大学進学後、大学構内に設けられた「党校」(党員予備校のような機関)で約1年間の思想教育を受ける必要があるのだ。党校に入るには、高校時の教員から推薦が必須。「大学の党校に入るのは高校時代に生徒会とか学級代表とかをやってクラスのリーダー的な働きをしていた人が多い」(留学生B)らしい。
 党校の授業は大学のカリキュラムとは全く別にあり、党の政策などを学び週1回「思想レポート」を提出しなければならない。党の思想と合致しているかを党員に厳正にチェックされる。課題をクリアし、党員2人以上の推薦を受けられると、晴れて党員になれる。
 ちなみに、エリートコースではないが大学に進学せずに党員になる人も多い。統計では、大卒(短大卒)以上の学歴の党員比率は現在約46%。高学歴化の流れにあるという。
 いずれにしても、党員になる人材は「学業とは別に党の思想を学ぶような意識高い系エリート」であり「周囲のリーダー的存在」の集まりのようだ。が、ある大学教授は嘆いて言う。
「党員になるのはエリートじゃない。賢い学生ほど党員を目指さないし、海外に行く。党員になるのは2流の学生。バカしかいない」
 日本も“残念な”政治家はいるから同じだろうが、この教授の発言のニュアンスは少し違った。つまり、 《党員になるということは党の方針を盲目的に信じられるということ。そこに疑問を抱いたり、矛盾に対して行動を起こせる“考えられる学生(賢い学生)”は党員になれないし、ならない。本当に優秀な人材は海外に流出している》ということだ。
 時に弾圧の対象になり得る知識階層の教授としては、積もる思いがあるのだろう。また、留学生Bは「出しゃばって仕切りたがるヤツが党員を目指す」とも言う。なんとなく、共産党員の“気質”が分かる発言だ。
続きは実話BUNKA超タブーvol.46に掲載。現在主要電子書籍サイトから「電子書籍」扱いで発売されています。すぐにお求めいただけます。
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http://www.coremagazine.co.jp/cho_taboo/vol-46.html
イラスト:(c)Olga Ivanova/123RF

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